空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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第3話

その日、空条承太郎は学校に行かず別の場所へ向かおうと足を進めていた。彼は世間一般的には不良と認識されているが学校は大体行く男である。まぁその理由も自分が学校に行かなくなったら大切な母親が「承太郎が不良になっちゃった!」と更に泣きわめくのが目に見えているからである。家族が心の底では何よりも大切な承太郎にとって母親を泣かすのは本意では無い。

 

「さて…あの馬鹿は一体何処にいるのか」

 

独り言を呟きながら向かうのは病院、そして其処には彼の数少ない友人が入院しているのだ。

藤井蓮と遊佐司狼。承太郎の目から見ても阿吽の呼吸を持っている彼等が血塗ろの殴り合いを行い、今蓮が病院の一室で入院していると言う話を綾瀬から聞いた承太郎は土産を手に彼の元へと足を進めている

 

「きゃー!どうしたのよJOJO!学校はサボり?だったら一緒に何処かに行かない?」

 

「ばっかねーJOJOが学校を休むわけないじゃない!今日はきっとお休みなのよ!お や す み !そうでしょ?ねぇJOJO?」

 

病院へと足を進めていた承太郎の周りを昔の同級生の女子達がキャーキャーと黄色い声を上げながら彼の周りを囲んでいく。だが承太郎は彼女達に反応せず黙々と足を目的地へと進めていく、いや、良く見れば何時もの寡黙な表情に少し歪みが出来ており、それは彼女達が承太郎の周りでペチャクチャペチャクチャと話をすればするほど顕著になっていく。

 

「何よこのペチャパイ!あんたまだJOJOの事を狙ってる訳!?色気を使ってJOJOを落とそうだなんて百年早いのよこのペチャパイ!」

 

「はぁ?色気なんて使ってないわよブスはこの程度の事で色気が云々言い始めるから困るわ」

 

そこから始まる「ペチャパイ」「ブス」の言い争い、彼女達の言葉を暫くの間無言で聞いていた承太郎に限界に来たのかカッ!と目を見開き彼女達を怒鳴りつける

 

「喧しいッ!鬱陶しいぞ!このアマ!」

 

一瞬の間だけ彼等の中を沈黙が包んだが、直ぐに彼女達は嬉しそうな悲鳴を上げて誰が言われたのかの言い争いを始める。

 

「……キャー!私が言われたのよー!」

 

「はぁ!?私に決まってるでしょ!JOJOは私に向かって言ったんだから!」

 

ギャーギャーと騒ぐ彼女達を置いていく為に歩く速度をかなり早めてその場を去っていく承太郎、彼はこの人生の中でこの場合は逃げた方が良いと言う事を学んでおり、だからこそ逃げられる時には直ぐに逃げる。これが彼の女性の付き合い方の一つだ

 

君子危うきに近づかざる。というものだ

 

そうして彼のお目当ての病室に行くと、所々に包帯を巻いた蓮が何をする事でも無しに惚けた顔をして天井を見つめていた。そんな蓮に何時ものように承太郎は語り掛ける。

 

「久しぶりだな蓮」

 

「承太郎か…お前が来るなんて考えても無かったな。学校はどうしたんだ?休みだったか?」

 

「自主休講って奴だ。後これは土産だ。取り敢えず暇を潰せそうな物を適当に見繕って来たが」

 

「ん、ありがとな」

 

適当と言う割には携帯ラジオとイヤホン、他には携帯ゲームに色々なソフト。ぶっちゃけ全部がここに来る際に電気屋で購入してきたのか電気屋の袋そのまま渡してくる豪胆っぷり。これには蓮も驚いて承太郎に本当に良いのかを確認しようとするも

 

「気にするな。さっさと傷を癒して綾瀬のヤローを安心させる事だな」

 

それだけ言うと他に何も言う事は無いと言わんばかりにベットの隣にある椅子に座り込み何も言わずただ蓮を見詰める。

いつも通りの反応に蓮は苦笑いをしそうになるが感謝の言葉をもう1度伝えるとゲームのソフトが何なのかを確かめていく。

 

大相撲ポータブル…相撲ゲーとは珍しいな

秋場所大相撲完全版…また相撲ゲーか、俺はそこまで相撲が好きな訳じゃないんだけどな

エフメガ…レーシングゲームか、良い感じだ

実況プロ野球…流れ来てるな

相撲完全記録!幻の関取を打ち倒せ!…もうお腹いっぱいだよ。相撲は!

 

相撲だった。見事な相撲祭りだった。蓮は承太郎のチョイスの悪さにドン引きしたくなるも折角持ってきてくれた物にケチをつける訳にはいかないと思い取り敢えず何かプレイしてみようとソフトを選ぶ。

 

「(安全牌が2つしか無いけど…ここまで相撲推しされちゃぁやらなきゃ駄目だよな……)」

 

そう思い取り敢えず相撲ゲーを起動しゲームを始める。始めたゲームは『相撲完全記録!幻の関取を打ち倒せ!』をプレイし始めるがこのゲームまさかのRPGらしく、デブで駄目駄目な主人公が現れる強敵相撲取りを打ち倒していくというものであった。斬新過ぎるだろと心の中でツッコミを入れながらもプレイすると中々に面白くゲームの世界へと引き込まれていく。暫くの間ゲームをすると、ふと承太郎が自分に何も聞いてこない事に気付く。司郎との一件は承太郎も気になっているだろうに承太郎は今までの会話の中でその事に触れる事は無かった

 

「なぁ…承太郎。何か聞きたい事はないのか?」

 

「…特にねぇな。話したくなったら話せば良い」

 

そう一言だけしか承太郎は言わない。蓮は別にコイツになら話しても良いとは思っているのだが、敢えて踏み込まずただ一緒にいる。そんな承太郎の不器用な心遣いを感じ、思わず顔が笑ってしまう。

 

「そうか…だったら別に良いけど」

 

「…やれやれだぜ」

 

互いに不器用だからこそ分かり合えるものもある。たった2年程度の付き合いだが蓮とって承太郎は既に日常の中の大切な一つだ。まぁ…それを口に出す事は決して無いのだろう。それはお互い様かと心の中で苦笑し蓮はゲームの世界へと戻って行く。

 

承太郎は何も言わずただ隣にいるだけ、時間が流れ夕方に近くなるとそろそろ帰ると言って病室から出ていこうとする背中を見詰めるとふと頭の中で知らない映像が流れ込んで来る。

 

それは…黄金の精神を持った男が吐き気を催す邪悪に立ち向かい如何なる『困難も乗り越え』戦っている姿、運命を、道を自ら切り開かんと悪に屈しない『勇気』を持って戦い抜き、誰よりも寡黙で、誰よりも仲間の事を思いやり『優しさ』を持った一人の男の戦いの一ページ

 

それは…ザザッ……吐き気を催す邪悪、悪の化身。悪のカリス

 

貴様、見えているな!

 

「…………ッ!」

 

「…どうした?」

 

さっきまで見えていた映像はまるでブレーカーを切ったようにブツリと切れて、承太郎の調子を伺う声が聞こえて来る。

さっきのは何かの思い違いだと決めつけ承太郎に気にするなと伝えると、承太郎は不思議そうにしながらもそのまま部屋を出ていく。

 

「何だったんだ…アレは?」

 

あの映像を思い出そうとしても、もう思い出せないのか記憶の中からすっかり消えてしまっている。そうして蓮はさっきの事を忘れさっきのゲームの続きを始める。

 

「忌まわしきジョースターの血統を根絶やしにした筈なのにジョナサンの身体がまだ生き残りがいると言わんばかりに反応する……」

 

男が肩を抑え何かを感じだのかフッと空を見上げる。空はまるで漆黒に包まれているかの様に黒く、男の周りはまるで神殿が壊れたのかその瓦礫か散乱している。

 

「今度こそ、便所のこびり付いた糞のようなジョースターの血統は完璧に根絶やしにしなくてはならない」

 

「このザ・ワールド…いや『ザ・ワールド・オーバーヘブン』の力を持ってして根絶やしにしてくれよう」

 

男の後ろにまるで従者の様に控える謎の存在が虚空より現れる。そして男は誰かを呼ぶように指をパチンと鳴らすとフードを被った男、女、動物達が家臣のように控える。そしてその中から複数の者達を男は選び何処かへ向かうように命じる

 

「次は貴様だ」

 

それは一体誰に向かって言った言葉なのか?だが分かることは一つだけ、この男が敵だということだッ!

 

見るだけで分かる、まるで黒々しいコールタールを煮詰めて更に黒くしたような吐き気を催す存在ッ!この男は紛れもない『悪』そのものだ!

 


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