空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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第2話

藤井蓮にとっての空条承太郎とは?

 

諏訪原市内の私立月乃澤学園、そこの一生徒である藤井蓮、彼は教師のつまらない授業の説明を聴きながら頭をボンヤリと別世界へと飛ばしていた。教科書をツラツラと読みながら説明していく教師の有難いお説明がまるで催眠術をこちらに掛けているのかと邪推してしまう程に、周りの生徒達を見渡せば半数の生徒が昼の陽気に耐えられなくなったのか夢の世界へと旅立っている。学生時代誰でも一度は旅立ってしまうものだろう、教師も経験があるのかそんな生徒の姿を一瞥し苦笑いをすると再び教科書の説明へと戻っていく。

 

眠りの中へと旅立っている者達の中には彼の親友である遊佐司狼が机に突っ伏し夢の世界の住人の1人と成り下がっている。もう一人の親友である綾瀬香純は真面目そうに先生の言葉をキッチリと聴きながら時折入る詳しい説明にフンフンと頭を頷いたりしてノートをキッチリと取り勧めている。そうして平和に授業が進んでいる中、ガラリと教室のドアが開きツカツカと良い音たてて1人の男が入って来る。ガタイはとても良く身長は180を超えており、顔は外国人のように彫りが深く整っており女性がみればかなりの好感を抱くような姿をしていた。だがそんな彼が入ってきた瞬間、起きている者達の中で少しざわめきが走る。まるで彼がこのクラスで歓迎されていないかのように

 

「すまねぇ、遅れた」

 

「空条承太郎君…どうして遅れたのか説明出来ますか?」

 

高校生にしては低い声で謝罪をする男の名前は空条承太郎。学校の噂ではかなりのヤンキーであり、10人以上の札つきのワル相手を全員無傷で返り討ちにしただの、料理屋で「不味い」から金は払わんと言って無銭飲食したりとあげればキリが無い程の悪評が挙げられる、そんな男だ

 

「…少したばこを吹かしてたらこんな時間になった。すまねえな」

 

「そう…ですか。では席に座って下さい」

 

教師の言葉通りに自分の席に座るとそのまま足を机の上に置いて眠り始めようとする。そんな彼の隣に座っている蓮は先生からのこいつ何とかして助けてアピールを感じるもそれをスルーしつつ腕で頭を抑えつつ承太郎と初めてあった時の事を考え事を始める。

 

それは彼が高校入学の際に体験した事だ。高校生になり、初めての高校へと脚を進めている際に一つ不思議な集団を見付けた。如何にも僕達不良ですと言わんばかりの男達が1人の少女をイヤラシイ目で見ながら怖がらせるように大声で威嚇していた

 

「何じゃワレいてこますぞ!おおん!」

 

「ごっ…ごめんなさい」

 

「ごめんですんだら警察はいらんねん!聞いてんのか!オイ!これは慰謝料払ってもらわんとあきませんなぁ!」

 

「うっわー…最悪!女の子を寄ってたかってとか男としてどうかと思うよ!ねぇ蓮!」

 

一緒に登校していた綾瀬の言葉に返事を返しながら何時でもあの男達と少女の間に入れるように近づいて行く

 

「そうやなぁ!でも俺達は優しいから金はいらん。違うか?」

 

「そうだなぁ…お前の身体で支払って貰えればええわ!」

 

どう見てもそれが目的にしか見えず、男の中の1人が気弱な少女の肩を掴みながら自分の方へとゆっくりと近付けていく下品な笑みが少女の顔を強ばらせこれから起るであろう事に身体をガクガクと震わせる。

 

そうして男が少女と身体を密着させようとする。蓮は男の手から少女を離させようとした瞬間、男の顔面に誰かの拳がクリーンヒットし遠くへ飛ばされ、そして少女の前に立ち男達の視線からをその大きな巨体を持って遮る。

 

「ゲフェッ!?」

 

「男が寄ってたかって女を虐めてるんじゃねーぜ。かっこ悪いとか思わねーのか?」

 

「へっ……?だっ…誰ですか?」

 

「…良いからさっさと学校に行きな。そろそろ遅刻する時間になるぜ」

 

「はっ…はい!ありがとうございます!」

 

少女の礼に素っ気なく返事をするとそのままイキナリの事に混乱している男達をジロリと睨みつける。そうして出遅れた蓮の方を見るとその隣で竹刀を持ってフンスンフンスしている綾瀬を見て素っ気なく言葉を発する

 

「手伝うよ!こんな男達は1回懲らしめてやらないと!」

 

「余計なお世話だ。彼氏はこの暴走馬鹿をとっとと連れて登校するんだな」

 

「かっ…彼氏……!?」

 

「いや…彼氏じゃないけど」

 

「…やれやれだぜ。良いからさっさと行きな」

 

蓮の言葉にムーっと顔を膨らませる綾瀬と蓮を見比べてため息を吐きながら疲れたように吐き捨てる

 

「何じゃテメェ……って、へぇコイツもけっこう可愛いじゃん。ってかさっきの奴よりもマブくね?」

 

不良の言葉に綾瀬を庇うように蓮が目の前に立つ、その姿に不良は顔を歪ませるが蓮の貧相な背丈やどう見てもそこまで鍛えられていない肉体を見て鼻で笑う

 

「オイ!そこのデカブツ!テメェのせいでタカチンの鼻っ柱が潰れてまるで豚みたいな顔になっちまったじゃねえか!」

 

「責任とれやゴラァッ!」

 

「…この空条承太郎は所謂不良のレッテルを貼られている。喧嘩なんてしょっちゅうで親を何回泣かせてしまったのか分かんねぇ」

 

「あぁ!イキナリ何言ってやがんだ!」

 

「そんな俺でも…女を囲んで暴行を加えるような事だけは絶対にしない。力で非力な奴を無理矢理捩じ伏せるような真似だけは絶対にしねぇ」

 

「何だよ…テメェは……」

 

底冷えするような承太郎の声に不良は困惑したような声をあげる。承太郎の目は完全に座っており、後に承太郎が蓮にこの事を語った際には「あの時は完全にプッツンと頭にキてたな」と語っている。

 

「簡単に言ってやる。『ちょっと向こうまで面かせ』って事だぜ」

 

その言葉を最後に不良達はまとめて蓮達が見えなくなる所まで承太郎に引きづられていき、その姿を暫くの間見つめていた2人は頷きあい入学式に遅れないように校舎までの道のりを走り始めた。

 

余談だが2人はギリギリ入学式に間に合ったが承太郎が学校に入ったのは入学式が始まってから1時間後の話である

 

初めてあった事を思い出し、思わず笑ってしまう。それから承太郎と同じクラスになり、なんやかんやで交流を持つようになった。互いに余り詮索させるのを嫌う性質のせいか案外波長が合い、なんやかんやで仲良くやっている。

見た目の事もあり、女生徒から莫大な人気を誇っているがその反面噂や彼の行動のせいでいろんな生徒から怖がられている事もあり、彼が案外世話焼きな事等は知られていない。おそらく学校で知っているのは交流を持ってる俺達くらいだろう。

 

「おい承太郎。先生が困ってるから足だけは下ろしとけって」

 

「…仕方ねぇな」

 

蓮の言葉に小さくそんな事を言いながら足を下ろし先生が授業をしている姿をたいくつそうに見詰める。

なんやかんやでコイツは良い奴なんだが色々と損をしている。真面目すぎでこんなになってしまった言うかなんと言うか

まぁ…そんな奴なんだ。空条承太郎って奴は。堅物で、クールぶってるけど心の奥は熱い男

 

何時も女子にキャーキャー言われた後疲れた顔をして隣で寝ている姿は思い出すだけでも面白い

 

「オイ蓮、何がそんなに可笑しい?」

 

「いや…なんでも……ププッ」

 

「…やれやれだぜ」

 

まぁ…なんやかんで良い奴だと思うよ。承太郎は

 

 

遊佐司狼にとっての空条承太郎とは?

 

「チッ煙草が切れたか…一本くれ。今度で倍にして返してやるから」

 

「…勝手に取りな」

 

「サンキュー…はぁ美味ぇ。やっぱ授業をフケて吸う1本は堪らねぇな」

 

「「……(スパー)」」

 

屋上の給水タンクの下で2人のヤンキーが椅子に寝っ転がってたばこを吸う。1人は良く授業をサボる事に定評のある遊佐司狼。藤井蓮、綾瀬香純の昔からの付き合いであり、空条承太郎の数少ない友人の1人である。

 

承太郎が煙を輪のようにして空へと吐き出していく、そんな姿をみて司郎も煙を輪のようにして吐き出していく。

やってみればこれが案外難しいのだと言う事が分かるが2人は慣れたものなのか簡単にポンポンと輪を作り出していく

 

「あー…こうなんか面白い事そこら辺に転がってねーかなー」

 

「…そこら辺の不良でも殴ってきたらどうだ?」

 

「それは無いな。なぁ承太郎、お前モテるんだから1人くらい紹介しても」

 

「めんどくせぇ」

 

司郎の言葉を高速でバッサリと切り捨てる。顔は嫌そうに歪んでおり、彼が女子にどんな感情を抱いているのかが分かる

つまりはモテる男の悩みと言う訳だ。爆発しやがれコンチクショウ

 

「だよなぁ…こう、何か面白い物は何処かに転がっていないものか」

 

「おい、司郎。こっちを見ろ」

 

「何だよ…って、お前マジかよwwちょwww何それスゲェwww」

 

司郎が承太郎の方を見ると大道芸人よろしく承太郎が煙草を複数口に咥え、その全てを口の中でひっくり返すという良く分からない姿があった。

その姿に腹を抱えて笑う司郎と少し満足げな承太郎は二人して馬鹿丸出しである

この姿を蓮に見られたら馬鹿笑いが2人に増えるだろう。

 

「ヒー…笑った笑った。なぁ、その状態から何か別の事出来るか?」

 

「見たいか?」

 

「止めてくれこれ以上やられると俺の腹がエラい事に」

 

その瞬間プシュと心地の良い音がなりそのままグビッグビッと承太郎はジュースを飲み始める。漢らしい一気飲みだ。

だがその姿を見て更に司郎は大爆笑をし始める。何故なら承太郎はそのままの状態で煙草を消さずにそのままジュースを一気飲みしているのだから。ひとしきり笑った後、司郎は面白そうな顔をして承太郎に頼み込む。

 

「ちょっと俺もやりたい。もう少しくれ!」

 

「…やれやれだぜ」

 

隣で馬鹿が悪戦苦闘している姿を見ながら承太郎は煙草をゆっくりと吸う、そして日頃の疲れも吐き出すようにゆっくりと煙を吐き出していく。暫くの間、互いに無言の時間が始まるがそれをお互いに気にする事は無い。何故ならばこれが彼等の付き合い方であるからだ。

 

空条承太郎は寡黙な人間だ。多くは決して語らず、語るのも極わずか。承太郎の仲の良い人達の中から上げると1番喋らないと言っても可笑しくないだろう。寧ろぶっちぎってトップといっても過言では無い。司郎も寡黙過ぎる承太郎の事は本来あまり好みでは無い筈なのだが何故か何処か引かれてしまう部分がある。

 

「(コイツと一緒にいると全てが新鮮に感じるんだよなぁ…何故だ?)」

 

何時も感じている既知感、デジャヴと呼ばれる者を承太郎と一緒にいる時は何一つ感じない。当たり前の事なのだがこれが初めての感覚と言う事を感じてしまう。意心地の良さで言うならば蓮の次に承太郎といったランクである。

 

承太郎は寡黙だが決してつまらない男ではないそこも彼にとってはプラスな所だろう。だからこそ互いに仲が良いのだが

 

「…ちっ。またか」

 

突然の承太郎の舌打ちに司郎はいつものアレだと察する。

 

「どうした?もしかしてまたアレか?」

 

「あぁ…どうやらまた俺の亡霊が何かを取ってきたようだな」

 

承太郎の手には新しい煙草の箱が置かれており、それが何時ものアレが起きたのだという証拠である。

 

この学校の噂の一つに空条承太郎には亡霊がついている。だから承太郎は数十人対一でも喧嘩に勝つ事が出来ると言う噂がある。まことしやかに流れているこの噂は実は全て事実である。だが亡霊を見たものは誰もいないし、どんな姿なのかを知る人もいない。そのせいでこの噂は見た目ヤバイ本人の事もあり、まことしやかに流れているだけなのだが

 

「…本当に見えないんだよな?」

 

「おう。青くてゴツクてムッキムキ、オマケにお前が欲しいと心の何処かで思ったものを持ってきてくれるハイスペック幽霊なんぞ見えねえよ」

 

「……やれやれだぜ」

 

ため息を吐きながら新しい煙草を手で持っておくとまるで独りでに火がついたように火がボッと付く。そんな姿を見ても司郎は驚いた様子は見られない、見慣れたのか軽口を叩くくらいだ。

 

「俺もその亡霊欲しいぜ。便利そうで羨ましい事」

 

「やれるもんなら何時でもくれてやるんだがな…コイツ俺の傍を離れる事が物を取りに行く時くらいしか無いんだ」

 

承太郎の重い口調から心底疲れているのが分かる。最初亡霊が出てきた時、承太郎は亡霊が何をするのか分からないと刑務所に入ろうとしたが綾瀬と蓮がそれを急いで止めた。素晴らしい友情である。尚、司郎はその光景を面白そうにゲラゲラ笑っていた。畜生である。

そんな事をしていると授業が終わった事を知らせるチャイムが鳴り響き、ワイワイガヤガヤと人が動き始める音が屋上まで聞こえ始める。

 

「なぁ承太郎」

 

「…どうした?」

 

「今…何時間目が終わったんだっけ?」

 

「確か…これで昼休みになった筈だ」

 

タラり、2人の顔から汗が流れる。屋上は風通しも良く、決して汗を流すような環境では無い。ならば何故汗を流すのか?それはとても簡単な事であり

 

「さーって昼休みまでサボった2人は何処にいるのかなー?」

 

「…一応今なら許してくれるだとさ。さっさとそこから降りてこいよ二人共」

 

ヤンキーが2人に増えた事により、何処ぞの誰かさんの目が厳しくなったからである。自業自得、ここに極まれりと言った所かこの後2人は諦めすごすごと降りていったらしい。

 

遊佐司狼にとって空条承太郎とは中々に面白く、一緒にいて新鮮に感じる男だ

 


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