空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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第11話

闇の中を彼等が蠢き始めた。これから始まるのは喜劇の幕開けに相応しいとは呼べるものでは無い。これは唯の日常、ただキャストが違う。勇者では無く悪であった、悪である事を気付かぬ彼等の日常

 

ーーだが彼等が喜劇に相応しくないと言う事ではない。役者は1流、故に見る価値はあるだろう。

 

吉良吉影は静かに暮らしている

 

杜王町、特に述べる所が無い至って普通な町。強いていうならば名物のごま蜜団子くらいだろうか?そんな町の外れを1台の車が走る。車から見える風景は町から外れれば外れる程家々が見えなくなり、木々ばかりが見え始める。

 

「さて…今日はどうしようか。何かしたい事はありますか?」

 

男が車を運転する。他に乗っている人はおらず1人で乗っている筈なのに楽しそうに話している姿はまるで彼以外の誰かが此処にいるかのようだ。

 

「そうだね、今日は家でゆっくりとしようか」

 

誰もいない筈なのに1人で相槌を打ちながら楽しそうに話しをする男。彼の名前は『吉良吉影』杜王町にあるスーパー『カメユー商店』に勤めるサラリーマンで、服はヴァレンティノのスーツとドクロをあしらったネクタイを好んでつけている。仕事は真面目にそつなくこなすが情熱はない。エリートっぽい気品ただよう顔立ちと物腰で女性からはもてるが、会社の人からは配達とか使いっ走りばかりさせられている。悪い奴ではないらしいが特徴のない影の薄い男だと認識されている。

 

いわゆる顔は整っててモテるにはモテるけど善良で使いっ走りにされる影が薄い男だと周りから認識されていると言う事だ。まぁこれは別に詳しく知る必要は無い『彼』が一体どんな男なのか、それを少しでも分かってくれたら良い。

 

「前の社内マラソン大会で赤っ恥をかきそうになってね…今度ぶどうヶ丘高の前にスポーツジムがオープンするそうだが…真剣に会員になることを考えたよ…体力をつけなくっちゃあな…」

 

「でもあーゆートコの会員ってのはどーなんだろうな?

一週間もフロに入ってないヤツがチンポいじった手で同じダンベル持ち上げたりプールに入ったりするのかな?」

 

潔癖症なのか、普通はそこまで気にする事は無い事を話しながら話を続ける。彼の他にこの車に乗っている者はいない、そう…彼以外に『乗っている者』はいないのだ。

 

「貴方は一体どう思いますか?」

 

チラリと吉良は助手席の方へと目を向ける。そこにあったのは『腕』それも『神秘的でいつの時代から存在しているのか分からない』そんな厳かな雰囲気を出した『遺体の腕』だった。その腕を見ればその神秘的な姿に目を奪われそれを手に入れようとするだろう。その『腕』にはそれ程の存在感があった。

 

「貴方が私の元へ来てから私は何時も満たされている。貴方が来てから私の生来からの殺人癖も『すっかり無くなったし』そのお蔭で私は『静かに暮らす』事が出来ている」

 

彼は『植物の心のような静かな生活』臨んでいる、そして彼には生来からの殺人癖があった。普通に考えてそんな男が『静かに暮らす』事は不可能だ。だが彼は今『静かに暮らす事が出来ている』

 

「あの変な男には感謝してもし足らない。確か…『蜘蛛』と名乗っていたな、親父が持っていた『弓と矢』をくれてやるだけでこんな素晴らしい物をくれた彼には本当に頭が上がらないよ」

 

片手で車を運転しながら腕を触り顔を恍惚にして頬刷りをする。

 

「フフフフフ…貴方を強奪しに来る存在がいるかも知れないとか彼は言っていたがそんな奴は私の『キラークイーン』で消し飛ばしてやる」

 

そう言いながら彼の背中から現れる謎の存在『キラークイーン』まるで猫のような顔をしており身体は鍛え抜かれたボクサーのような肉体美。そしてその腹回りにはそんな自分を誇示するようなチャンピオンベルトのような物を巻いていた。

 

「フフフフフ…満たされた『人生』とは、きっと今みたいな事を言うんだろうなぁ……幸せだよ。本当に、『生きてる実感』をこんなに感じれる私はなんて『幸せ』なんだぁ……」

 

そう言いながら吉良は自分の住まう場所へと戻っていく。今、他の何よりも彼にとって大切な『腕』と共に

 

彼は『殺人鬼』だった。そして今は『殺人鬼』では無い。だが…もしも彼が『遺体の腕』を失ってしまえばその通りでは無くなるだろう。きっと怒りに狂い奪った者を殺してでも手に入れる筈だ。

 

吉良吉影は静かに暮らしている。それはこれからもずっとそうなるつもりだしそうするつもりだ。

 

ファニーバレンタインはナプキンを取りたい

 

最も素晴らしいアメリカ大統領は?とアメリカ国民から聞けば皆口を揃えて「ファニーバレンタイン」と答える。ファニーバレンタイン。アメリカの現大統領であり、最も優れた大統領だと国民から賛辞を受けている男だ。

 

「SBRでの興業収入、それによる経済効果は凄まじい。私の支持率も上がりこのペースでいけばアメリカがこの世界のナプキンを取るのも時間の問題だ」

 

ホワイトハウス。大統領執務室でペンをせわしなく動かしながらファニーはボソリと呟く。アメリカが世界のナプキン…つまり、アメリカが世界の頂点に立つ事。それがもう直ぐ叶う事実に喜びを感じながら書類にペンを走らせていく。

 

「それもこれも…この『心臓』を手に入れてからだ」

 

そう言いながら自分の胸に手を置く。とある男から譲り受けた『心臓』それを手に入れた自分。それが持つパワーによって『幽波紋』に目覚め、そしてそれが持つ凄まじい力に気付いた彼は自分のスタンドをアメリカの更なる繁栄の為に使う事を決めた。

 

「私よ…来週コナー社が不祥事によって大打撃を負う。この世界とは関係無いかもしれないが気をつけろよ」

 

「そうか…忠告感謝する私よ。このアメリカ優数の車会社、コナー社の大打撃。それは流石に見過す事は出来ない。回避する為に手を貸してくれないか?」

 

「当然だとも。アメリカの危機はどんなものであれ排除する」

 

ファニーはもう一人の『自分』と話をしながら仕事をする。普通は理解が出来ない現象だが彼にとっては慣れた光景だ。

何故ならばこの光景は『彼自身が起こした』のだから。

 

彼は一番最初にアメリカがナプキンを最初に握る事を望んでいる、その為ならば何でもする。

 

「では、コナー社の現社長には退場願おうか」

 

「そうだな。それが良い、そして私の息のかかった者を社長の座にいてもらった方がコナー社もアメリカにとっても素晴らしい事だ」

 

「「我が行動に一変の曇りなし。全てが正義だ」」

 

もう一人の自分と共にこれからの手筈を話し合う。全てはアメリカが世界の中心となる為に。アメリカがナプキンを最初に握る為に

 

「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」

 

ファニーが執務室に置かれている星条旗に包まれたと思えばその姿を忽然と消す

 

「では、手筈通りに頼むぞこの世界の私。私の代わりの仕事は私がしておくとしよう」

 

ファニーバレンタインはアメリカを愛している。アメリカを世界の中心にする為ならば自分の命すらも投げ捨てる『覚悟』がある。全てはアメリカが世界の中心に…『アメリカがナプキンを初めに握る為に』

 

その為ならば犠牲は厭わない。必要経費だと割り切る事が出来る。だからこそ彼は人々から信頼される大統領であれるのかもしれない。その行動に一変の曇りなくアメリカの為に尽くす献身

 

現アメリカ大統領。ファニーバレンタイン人々から愛され尊敬される存在。彼の望みはただ一つ『アメリカの繁栄』だ

 

 

ジョセフと蜘蛛は考える。これからの手筈を、いかに『遺体』を『黒円卓』から守り抜くかを

 

「蜘蛛よお前が手にいれた『遺体』は一体どうしている?黒円卓であるお前が秘密裏に持っておくには限界があるじゃろう?」

 

「ご安心ください『心臓』と『右腕』は『遺体』が望んだ人へと渡しております。遺体の恩恵を受けている優れたスタンド使いである彼等ならば間違いなく黒円卓の手から遺体を取られる事を防いでくれる筈でしょう」

 

「『心臓』と『右腕』か…スピードワゴン財団が保管しているのと含めて足らない遺体は…」

 

「えぇ…『眼球』と『脚部』そして…『延髄』が未だ所在が分かっておりません」

 

「『延髄』の所在が分かっておらんのは不味い…不味すぎる。どうにか奴らの目を掻い潜り探さなくては」

 


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