近すぎて見えない   作:青野

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作者「寒い」

千早「あと五分・・・あと五分」

椎名「ほら二人共早く起きないと遅刻するから!」

作者「いいじゃんいいじゃん、小説の中は夏休みなんだから」

千早「そーだ、そーだ」

椎名「あ?」

作者・千早「すみませんでした」


第十四話 夏休み

 

 

 夏休み。

 全ての学生における長期休暇たるものだ。高校生の一年、二年といえば一番この夏休みを有効活用して遊べる休みである。

 一応、来年から受験生という立場から勉強も手を抜いてやれる訳でもないので、八月の始めまである夏期講習は千早たちは全員参加した。

 

 最終日が終了した次の日、千早、椎名、連太郎、恋奈の四人は電車に乗ってゆらゆらと揺れていた。そう、今日から彼ら四人で一泊二日の海に旅行に行くことになっている。

 

 え?そんな金が椎名にある訳がない?NONO、忘れたのか?いつか千早がショッピングモールで当てた特別賞。それが、旅行券であった。

 

 四人席で窓側に千早と椎名、通路側に連太郎と恋奈が座っている。

 

「にしても、今日泊まる旅館っていわくつきの部屋があるらしいな」

 

 連太郎がガイドブックを見ながらそう言う。

 

「ん?千早、どうしてそんなに顔色が悪いの?」

 

「いや、ちょっといわくつきにあまり良い思い出がなくてな」

 

「あはは・・・まぁ、別にそんな部屋に泊まる訳じゃないんだから。ほらほら、ポッキー食べる?」

 

「うん」

 

 椎名から受け取ったポッキーをもぐもぐと食べる千早。すると、唐突に連太郎が口を開いた。

 

「そう言えば、なんか千早と如月って仲いいよな」

 

「うーん、まぁ、そう言われるとそうだな。どっちもてきとうに思っているから?」

 

「ちょっと、千早それは酷くない?私と千早は中学時代色々あったからね。そう、あれは私が中学二年の頃」

 

 徐に椎名は中学時代の頃を話し始めた。

 

「あ、駅に着いた。乗り換えだぞ」

 

「えっ!今から私の回想シーンに入るんじゃないの!?」

 

「いや、俺アニメとかゲームの回想嫌いなんだよ。物語の進行上話さないといけないのはわかるんだけど、さっさと話し進めろ派だから」

 

「そんなこと言われても知らないんだけど」

 

「うん、やっぱり仲いいな」

 

 そんなことをしていると彼らの乗る電車は目的の駅へとたどり着いた。駅から歩いて直ぐに旅館が見えてくる。朝からチェックインすることが出来たので海にいく準備をしてすぐ近くにあるビーチへとやって来ていた。

 

「海だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 シートを引いてパラソルをセットした千早と連太郎。それに後から椎名と恋奈がやって来た。

 

「おう、テンション高いな」

 

「だって、海だよ!海って久しぶりだなぁ」

 

「そう言えばそうだな。中学の時に行ったきりだな」

 

 そう言っていると椎名は千早の方を向いてジャジャーンとセクシポーズを取ってくる。私の水着がどうだ!と言わんばかりに。

 

「ふむ・・・・」

 

(スタイルとしては申し分はない。細すぎでもなく、太りすぎている訳でもない。胸も決して小さくはなく、むしろ十六歳にしては普通と言えるほうだ。いや、知らんが。だが、今後に大いに期待出来る。肌も色白で綺麗だし、髪もいつにも増してサラサラしている。身につけている黒のホルターネックのビキニは椎名の体によく似合っている)

 

 ジーと見てくる椎名の視線に気づいた千早は咄嗟に頭の中にある言葉を吐こうとするのだが、何を言ったらいいのか分からない。

 

「似合ってる・・・うん、似合ってる」

 

 だが、頭の中のことを全て言うわけにもいかず、無難な言葉と言っている。すると、椎名はその言葉を待っていたと言わん限りの笑顔で「へへ、ありがとう!」と答えた。

 その二人の空気に入ることが出来ず、置いて行かれた残りの二人はもはや何も言うまいとひっそりと影を落としたのだ。

 

 全員が揃ったところで早速買ってきたスイカを準備した。サッと千早の目に目隠しをつける。

 そうスイカ割りを今からしようとしているのだ。

 

「スイカ割りなんて初めてやるな」

 

「私も初めてだな、こういうの」

 

「あれだろ?目を隠したまま叩くんだろ。リア充を」

 

「いやいや、違うから。ターゲット間違えているから」

 

「さてと・・・さぁ、指示くれ」

 

 千早は今一度目隠しを付け直すと用意された木刀を上段に構える。千早の正面から右側にスイカは位置している。

 

「正面左にあるぞ」「振り返って五歩先かな」「むしろ千早君の足元に」

 

(・・・ダメだ。全く参考にならない。もっと、もっとスイカのオーラを感じるんだ。緑に黒の縞々を・・・やれる、俺ならやれる)

 

 スイカの微々たるオーラを感じ取った千早はスイカの位置へと咄嗟に移動して上段に構えた木刀をスイカに向けて一気に振り下ろした。

 確実に捉えたと思った千早の感触とは真逆に木刀は地面に衝突した。

 

「え?」

 

 ハラリと目隠しを取り外した千早はその場にあるスイカの状態を確認した。

 

(スイカが割れていない?ていうか、木刀が逸れた?どうしてだ?見ていて何も変化はないぞ?)

 

 千早はそう思ってスイカを触ってみるのだが、掌にヌチョという気持ちの悪い液体がつく。

 

「・・・誰だ!スイカにローション塗ったやつ!!!おい!そこの三人!」

 

 見るからに空のローションをゴミ袋に片づける三人を指さしながら千早は叫ぶ。

 

「おい、お前らぁぁぁぁぁ!」

 

 なんやかんやこうして彼ら彼女らの旅行は幕を上げた。

 

 その後はおたがいにバシャバシャと浅瀬で水をかけあったり、ぷーかぷかと浮き輪で浮いたり、ビーチバレーしたりなど。普段篭ってゲームをしている千早から考えるに全く有り得ない状況であった。

 しかし、それが彼に何かしらのマイナス面があるかと言われたら分からない。分からないけど、楽しいと思えるのは少なくともマイナスではない。

 

「案外、こういうのも悪くないな」

 

「どうしたの、急に?」

 

 ポケーと休憩していると千早がそう呟く。それを聞いた椎名は詳しく聞きたいと質問する。

 千早はそれにペットボトルのお茶をグビッと飲んで話す。

 

「いや、俺はずっと閉じ篭ってたからな。そこを連れ出したのは・・・椎名のおかげだし」

 

「閉じ篭りは今も変わらないと思うんだけど」

 

「根っからのインドアが改善された訳じゃないけど、これでも感謝してるし」

 

「・・・ふーん、最近素直になった?」

 

「素直って、何に?元からこうだよ」

 

「元からって・・・まぁ、いいけど」

 

 そうこう話していると焼きそばやらお菓子やら買ってきた連太郎と恋奈の姿が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と、いうわけで『腐女子とオタクと時々ラブコメ』から『近すぎて見えない』というタイトルに変えました!
ないようは変わってないよ

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