「なあ中川」
「ん、なあに? 桂馬くん」
「休日って素晴らしいな」
「……否定はしないよ」
ハクアがやってきてなんやかんやあった日の翌日。僕は休日を満喫していた。
え? エルシィに色々問い詰める話はどうなったって? ふん、今は休日だから関係ない。
ちなみに、駆け魂60,000匹とか言われて現実逃避してるとかそういう事では断じてない。
「桂馬くん、何か無理矢理ゲームに没頭して現実逃避してるように見えるんだけど気のせい?」
「おいお前、心を読んだのか?」
「え? 何の事?」
「……いや、何でもない」
どうやら普通に現実逃避してるように見えただけらしいな。
……ああそうだ。こんな事したって現実が変わらないのは分かってるさ。
だがしかし!! 僕の神聖なるゲームタイムを邪魔する者は何人たりとも……
「おっはよ~! エルシィ居る~?」
……何か地区長とか名乗る悪魔がやってきた。面倒事の予感しかしない。
面倒だからお引き取り願いたいんだが……昨日の件がある以上はそういうわけにはいかんよな。
それじゃあ、まずは互いの紹介でもしておくか。
「中川、紹介するぞ。
こいつがある意味エルシィよりもポンコツな偽優等生のハクアだ」
「ちょっと待ちなさい! どういう紹介のしかたよ!!」
「んで、こっちが中川。中川かのんだ。
首を見れば分かると思うが、昨日言ったもう1人の
「初めまして、中川かのんです。
昨日の事はある程度は桂馬くんから聞きました。どうぞ宜しくお願いします」
「へぇ、桂木と違って礼儀正しいのね。握手してあげてもいいわよ?」
「わぁ、ありがとうございます!」
ただ紹介しただけでも随分と個性が出るなぁ……
おそらくはどちらも初対面の人間を相手にする対応をしてるだけなんだろうけどな。
優等生として集団のトップに立っていたハクアと、営業スマイルに慣れてる中川とでは全く違うのも当然と言えば当然だが。
「それで、何の用だ? エルシィはまだ寝てるが」
「あれ? まだ寝てるの?」
エルシィはあれから一向に目を覚まさない。
特に異常は見受けられないので放っておけばそのうち起きるとは思うが。
「まあいいわ、ちょっとお前に用事があったのよ」
「僕にか? 一体何だ?」
「あ~、ホラ、私さ、ほんの取るに足らないちょっとしたミスをしちゃったじゃない?
それでその件の始末書を書かないといけないのよ」
「……その些細なミスで僕は死にかけたんだが?」
「無事だったんだから良いじゃない♪
それで、私は肝心な部分の記憶があやふやだったからちょっと手伝ってほしくてね。
と言う訳で、ハイっと」
ハクアが羽衣を変形させテーブルの上を覆う。
そして羽衣を取り払うと手品みたいに何かを取り出した。
どうやら何かの模型と、それを覆うピラミッド状のガラス……に似た何かだな。
「じゃじゃーん! これが今回の始末書よ!」
「……うちの学校の模型か?」
「そゆこと。しかも、中に居る土人形たちが動いて当日の状況を完全に再現するの」
「それは普通に凄いな」
「でしょ? これを見れば上の人達も私の有能さをちゃんと分かってくれるわ!」
「いや、始末書なんて書いてる時点で有能じゃないだろ」
「ん? 何か言った?」
「いやだから、始末書なんて
「ん? 何か言った?」
「…………」
無限ループになりそうだから放っとこう。
さて、僕にこんな始末書作りに協力する義務は無いが……しっかり作れば『当時の状況を人に伝える物』としてこれ以上優秀なアイテムは無いだろう。
正確に作って中川と情報を共有しておくのは悪い事じゃない。
だが、なぁ……
原作でハクアが家にやってきたのは事件の翌日とは明言されてませんでしたが(むしろ1日以上開いてた気がしますが)、駆け魂に操られていた生徒多数が午後の授業をサボって騒ぎになってないのは妙だと思うのできっと土曜の午前中のみの授業だったんだろうと勝手に解釈してみました。
真相はどうだったんでしょうね? 特に設定されてなかっただけな気はしますが。