もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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アナザーエピローグとその考察

 結さん発案による桂馬くん誘拐計画が立ち上がった。

 いや~良かった。これ以上ダラダラと時間だけが過ぎ去ったら私から言わなきゃならなくなってたよ。定期的に様子を見に行ってるエルシィさんによれば本当に体調が悪くなったらしいし。

 都合の良すぎるタイミングな気がするけど毒薬でも飲んだんだろうか? 桂馬くんならやりかねないけど。

 

 と言う訳で今、私たちは五位堂家の屋敷前に居る。

 早い方が良いとは思うんだけどさ、ロクな計画も立てずに大丈夫なんだろうか?

 まぁ、エルシィさんが羽衣を活用すれば何とかなるかな。

 

 

 

 

 適当な裏口を強引に突破したと思ったら警報が鳴り響き警備の人がワラワラと出てくる。

 

「侵入者だ! 奥様に報ゴフッ」

「な、何だコイツら応援をグハッ」

 

 そしてエルシィさんがなぎ倒していく。

 

「さぁ、お兄様が居るのはあっちの方です! 急ぎましょう!!」

「う、うん……」

 

 誘拐の風景としてこれは正しいのだろうか? 決して正しくない気がする。

 ……まあいいか。攻略できればそれで。

 

 

 

 寄ってくる警備の人を切り抜け、階段を上がったり下がったりし、廊下を何度も曲がって桂馬くんの居る部屋へと辿り着いた。

 屋敷の構造が複雑……じゃなくて、エルシィさんが道を間違えただけなんだろうな。きっと。

 

「つ、着きました! ここです!」

「桂馬様!!」

 

 結さんが部屋へと駆け込む。そこに居たのは桂馬くんと結さんの母親だった。

 

「お、お前は! 一体何故ここに!?」

「……失礼します」

 

 結さんは母親を無視して桂馬くんへと歩み寄る。

 

「桂馬様、ご無事でしたか? 助けに参りましたよ」

「ははっ、大暴れしたみたいだね。

 ……ありがとう」

 

 感動の対面だ。そう言えば私もしばらく会話してなかったっけ。

 誘拐計画を完遂するならのんびり話し込まずにさっさと逃げた方が良いんだけど、その必要は無い気がする。

 むしろ必要なのは……

 

「このダニ男が! 結を放しなさい!!」

「嫌です! もうあなたの指図には従いません!!」

 

 必要なのは……心のスキマの原因の象徴とも言える母親との対話だろう。

 いや、対話って言うより撃破かな?

 

「もっと早く言うべきだったのに、そうすれば私も桂馬様も苦しまずに済んだはずなのに。

 でも、もう迷いません。怯えません。逃げません。

 お母様こそ、結から離れてください。

 私の人生は私のものです! 他の誰でもない、私が決めます!!」

 

 結さんが一方的にそう言い切った時、変化は訪れた。

 結さんと桂馬くん、2人の雰囲気が切り替わる。

 そして、結さんの身体からドロドロとした駆け魂が現れた。

 

「よしっ、戻った!!」

「エルシィさん! 邪魔が入らない場所まで駆け魂を誘導! 私たちも一緒に!!」

「了解です!!」

 

 エルシィさんが駆け魂の動きを誘導して、私たちを屋根の上まで運ぶ。

 梯子でも持ってこないと来れない場所だ。ここなら、多分歌いきれるだろう。

 

「結界、展開完了! 姫様お願いします!!」

「うん!!」

 

 これで、おしまいだ。

 いつものように駆け魂を消滅させて、私の攻略は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、昼休みの学校の屋上にて。

 

「いや~、今回は大変でしたね~」

「全くだね。まさか桂馬くんと結さんが入れ替わっちゃうなんてね」

「経験してみると意外と大したこと無かったけどな。不調だったのも主に駆け魂のせいだし」

「さ、流石は桂馬くん。何というか……格が違うね」

「そりゃそうだ。何て言ったって僕は落とし神だからな!」

「さっすが神様! カッコいいです!!」

「うーん、でもある意味入れ替わったのが身体、って言うか人格だけで済んで助かったかもね。

 身体に合わせて人格の性別も変わってたら収拾が付かなかったよ」

「それは……困るな」

「そ~ですね~。もっと魂度(レベル)の高い駆け魂だったら有り得たかもしれませんね~」

 

「「……ん? レベル?」」

 

「え? はい。あの駆け魂は魂度2くらいでしたが、3や4だったらもしかしたらそうなってたかもって……」

「いや、そこじゃない。そもそもレベルという概念が説明されてないんだが?」

「意味は何となく分かるけど、アレでレベル2なの? もっととんでもない現象が起こるの!?」

「え? ああ、ご安心下さい。魂度3以上の駆け魂なんてそうそう居ませんから。分類としてあるだけで」

「……この分だと何か他にも言い忘れてる事がありそうだな」

「山ほどありそうだね……」

「そ、そんな! 信じて下さいよ!!」

「「信じてるよ。悪い意味で」」

「ヒドいですよ2人とも!!」

「だってねぇ、攻略の手法からして説明不足だよね? キスまでしなくてもちゃんと心のスキマは埋まったし」

「心のスキマを埋める上で恋愛が()()良いって言ってたから他の手法があるのは薄々分かってはいたが……」

「それはそうですけど……一番良い方法なんだから良いじゃないですか!」

「……確かにそうなんだよねぇ……理想の方法だとは思うんだけど……」

「そうだな。これからも基本的には恋愛による攻略になるか」

「そうだね。これからも宜しくね」

「ああ、こちらこそ」






以上で結編終了です。
本章のコンセプトは『中川かのん主導の駆け魂攻略』でした。いかがでしたでしょうか?
執筆開始当初からいつかはやってみたいと思っていたコンセプトだったのですが、まさかここまで早く来るとは思ってもいませんでしたよ。大体トランプのせいです(笑)

では、久しぶりの例の企画です。暇つぶしにどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=140329&uid=39849


さて、次回の投稿はいつになるかなぁ……一応少しは書き始めてはいます。
なお、今回もトランプが呪われてました。メタ視点で舞島学園はある意味呪われてますが、うちのトランプはマジで呪われてる気がしてきました。一体何なんでしょうね……

それでは、また次回お会いしましょう!

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