もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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エルシィさん誕生日おめでとうです。
本作のエルシィさんは今日もきっと元気です。




70 休息

 というわけで、旧地獄の封印はサクッと片付けた。

 え? 描写が雑? 別にいいだろ。RPGやアクションじゃあるまいし、戦闘なんて添え物程度で十分なんだよ。

 まぁそんな感じで、僕達は軽音部の部室に帰還していた。

 

「ひとまずは解決した。今後もまた何かトラブルに巻き込まれそうな気はするが、しばらくは大丈夫だろう。

 気兼ねなく舞校祭を楽しむといい」

「しばらく……ですか。

 女神というのはもしや疫病神なのでは……」

「ハッハッハッ、どうだろうなー」

 

 トランプの引きとかおみくじの結果とかの単純な運の話をするのであれば逆に増えていそうな気もするが、災いの種(悪い悪魔)を引き寄せるという意味では紛れもなく疫病神だな。

 メルクリウスが永遠に僕の中に居座り続けるとは思えない。何らかの方法で出ていく日が来るだろうが……しばらくは変な連中に絡まれつづけるだろう。

 僕はゲームしてれば満足だったはずなんだがな。どうしてこうなったのやら。

 

「……舞校祭が終わったらゲームしよう」

「いつもやっているではありませんか」

「フン、こんなのやった内に入らん!

 僕はやるぞ。6面同時攻略の更に上の攻略を!!」

「そ、そうですか。頑張ってください」

 

 メルクリウスのおかげで身体の能力も強化されたし、一時的に思考速度を上げるような術も教わった。

 今ならやれる……24面、いや、更にその上の攻略すらも!

 フハハハハハハハ!!

 

「桂馬くん。終わった後の事を考えるのはいいけど、まだ舞校祭……と言うより質問ゲームは終わってないよ」

「……ああ、そうだったな。僕が行った後はどうしてたんだ? 進めてたのか?」

「うん。歩美さん3周目で桂馬くんが戻ってくるまで保留中だったよ。

 ね、歩美さん」

「そう言えばそうだった……気がする。あの後すぐに飛び出したからあんまり覚えてないけど」

 

 僕が女神たちを呼んだ時、マルスは真っ先にかけつけていたな。

 真っ先に飛び出していたんだろうな。

 

「じゃあ、質問。

 桂木は、私の事をどう思ってる?」

「……ふむ」

 

 好きではない事が前提として、その上で僕がどう思っているか。

 歩美、歩美か……

 

「普段は温厚だが、怒らせると極めて凶暴。その足技は打ち所が悪ければ普通に病院送りになる」

「ちょっと?」

「根っこの部分はかなり単純な性格をしており、勉強も苦手な脳筋タイプだ」

「蹴られたいの? 蹴られたいのよね!? そうならさっさと言いなさい!」

「……だが、最近蹴られた事は無かったな。

 単純なように見えて、しっかりと考えるべき場面ではちゃんと頭を働かせている。

 友達の問題、例えばちひろが絡むような事であれば何度も蹴られてたんじゃないかと思うが、自分に関する問題であればしっかりと自制できている。というかそもそもそこまで怒らない。

 結論としては、『良くも悪くも単純、純粋で、友達思いの良いヤツ』って所か」

「えっ、そ、そう……?」

 

 僕からの評価を受けた歩美は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 真っ正面から褒められるとは思ってなかったのだろうか? それとも、分かってても照れているのだろうか。

 

「桂木ったら、そこまで言うなら歩美と付き合えばいいのに」

「それとこれとは話が別だ。次行くぞ。麻美かアポロ」

『では、妾の事はどう思っておるのじゃ?』

「露骨に歩美の質問をパクってきたな。

 と言うか、お前に対する評価は少し前にも言った気がするんだが?」

『……そう言えばそうじゃったな。

 うぅむ……仕方あるまい。ひとまず訊ねたい事はもう無いのじゃ』

「じゃあ次は……結だったな」

「私も特には……ああ、一つありました。

 あなたは美生の事はどう思っていますか?」

「ちょっ、結!?」

「美生、どうせ質問する気だったでしょう? ならば早い方が良いではありませんか」

「いやまあそうだけど……分かったわ。桂木、お願い」

「いいだろう。美生か……」

 

 この評価、全員分やることになりそうだな。

 と言っても、あと美生と天理くらいか。

 

「……あれ? そういえば天理どこ行った?」

 

 部屋を見回してみるが、いつの間にか消えていた。

 戻ってきた時は居たはずだが……

 そんな僕の質問にはかのんが答えてくれた。

 

「ああ、天理さんだったら1人になりたいって言ってたから屋上をオススメしておいたよ」

「……そうか」

 

 今は1人でも大丈夫だろうか? まぁ大丈夫か。

 さて、気を取り直して美生の評価だ。

 

「そうだな、大人になったな」

「……どういう意味かしら? 皮肉? 私に対する当てつけ?」

「ん? ああ、別にお前の身長が低い事に関する皮肉ではない」

「どう考えてもおちょくってるでしょうが!!」

「まあ聞け。僕が言っているのは外見ではなく中身に対してだ。

 最初に会った時は、我侭な子供だった。

 だが今では、事実を受け入れられる強さを得ている。

 事実を受け入れて、その上で自分に何ができるのか、何をすべきなのか考えて実行する力を持っている。

 だから、『大人になった』と言わせてもらった。外見はともかくな」

「最後のは余計よ!

 ……でも、褒められて悪い気はしないわね。ありがと」

 

 

 

 

 

 その後、細々とした質問に答えてから質問ゲームは終了した。

 

「うわっ、もうこんな時間!? 模擬店の方行かないと!」

「あっ、ホントだ。結局あんまり練習できてない……」

「模擬店か。そう言えばうちのクラスって何やるんだ?」

「桂木……もうちょいクラスに興味持ってくれ。

 うちのクラスの企画はオープンカフェだよ。お茶とかコーヒーとか出す感じの」

「へぇ、面白そう。私も参加したいけど……」

「かのんちゃんが参加したら売り上げアップは間違い無いけど……う~ん……」

「……接客じゃなくて調理場の方なら……?」

「本格的な料理店じゃないから調理場専属にしなきゃならんほど忙しくは無いし、存在がバレた時点で大変な事になりそう」

「……大人しくお客さんとして参加するよ。変装して」

「……そだな。すまんね、かのんちゃん」

「ううん、大丈夫。見てるだけでもきっと楽しいから」

「……中川さん。少々お話があります。残っていただけますか?」

「え? うん。いいよ。

 あれ? そう言えば結さんのクラスは何やってるの?」

「たこ焼き屋だったはずです。多数決で決まりました。

 私も多少はお手伝いをしますが、まだ担当の時間ではないので」

「そうなんだ。後で行ってみよ」

 

 そんな感じで、かのんと結を残して部室を後にした。


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