もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

285 / 343
17 遠まわしな告白

 歩美だけでなくちひろに京も居るのを見た時は驚いたが、通常の下校イベントとの違いはそれだけだ。

 落とし神として、この程度のイベントは乗りきってやる!

 まず、歩美の気を引けるような話題を……世間話か、スポーツ関係か……

 

「ところで桂木、好きな人って居る~?」

「「っっ!?」」

 

 おいちひろテメェ!! なんてデリケートな質問をぶつけてくるんだ!!

 そういうのはもっと順序立ててだなぁ……

 

「あ、私も気になる~」

 

 何故か京まで乗ってきやがった。こいつらのキャラを考えると恋バナで盛り上がるのは割と自然な流れ……なのか?

 まあいい。ちひろだけならともかく、京まで乗ってくるとなると流れに逆らうのは大幅なロスとなる。話題の内容次第ではロス覚悟で全力で回避するべきだが、これならまぁ問題ない。ちひろが作った流れというのも気に食わんが、乗ってやるとしよう。

 まずは軽く……

 

「フッ、勿論居るに決まっているだろう!」

「っっっ!?」

「えっ、ホントに居るの!?」

「…………」

 

 僕の台詞に対する反応は綺麗に別れた。

 ビクついているのが歩美、問い返したのが京、そして妙な顔で黙り込んでるのがちひろだ。

 ちひろが少々不穏だが問題は無い。軽いジャブだからな。

 

「で、誰なの?」

「フッフッフッ、どうしても知りたいと言うならば教えてやろうじゃないか」

「いや、そこまでは言ってないけど……」

「……僕の最愛の恋人。その名も

「あ、桂木。PFP出して『この子だ!』とか言うのはナシね」

「……おい小阪。僕の行動を先読みするんじゃない」

 

 何故かちひろに先を読まれた。偉大なるよっきゅんの姿を見せつけてやろうと思ったのに。

 まぁ、よっきゅんの外見だけはヒドいからな。かのんですら見抜けなかったよっきゅんの本質をこいつら如きが見抜けるとも思えない。出さずに済んで正解だったかもな。

 

「な~んだ。ゲームの話か」

「寺田、僕は確かに『ゲームの中の恋人』の話をしたが……現実(リアル)に該当者が居ないとも言っていないぞ」

「えっ、居るの!?」

「その問いの答えはYESだ」

「えっ、本当に居るの!? 相手は誰なの!?」

 

 歩美がこの場に居る以上、『好きな人は居るのか』という問いに対して『居ない』と答えるか『歩美』と答えるかの2択と、あとは誤魔化してうやむやにするくらいしか選択肢は無い。

 長期の攻略を見据えるなら別にどう転んでも問題ないが……スピード攻略を考えるなら『歩美だと答える』の1択しか無い。

 ただ、公開告白なんてしたら色々と面倒な事になる。変な噂が流れて某ギャルゲーみたいに爆弾が爆発したりとかな。

 よって、歩美にだけ伝わるように告白するのがベスト。しかし、かのん相手ならまだしも歩美にだけ伝わるようにするのは無理がある。

 だから……こんな風にしてみようか。

 

「……よし。ではこうしようか。

 僕はYESかNOで答えられる質問に正確に答えよう。

 但し、質問できる回数を制限させてもらう。僕の気分次第でな!」

「またミョーな事考えるね。

 でも面白そう。よし、やるぞ!」

 

 ここで決定的な事を言わないように絞り込む。昼の一件もあって本人にはすぐに分かるだろう。

 

「じゃあ質問1!

 ……その彼女は本当に存在していますか? あなたの妄想の産物ではありませんか?」

「バカにしてんのか。本当に居るって言ってるだろうが」

「あっはっはっ、ジョーダンだよ。

 それじゃあ……私の知ってる人?」

「YES」

 

 『好きな人は歩美である』という仮定で回答するから当然YESだ。

 

「って事はそこそこ絞られてくるね」

「迷い無く答えてたって事は、『ちひろがその人を知っている』事もすぐに分かったって事だね。

 意外と近くに居そう。

 ……質問2。同じクラス?」

「YES。

 たった2つで大分絞られたな。次で最後にしろ」

「え~、もうちょいいいじゃん!」

「既に25人まで絞り込まれてるんだから十分だろうが」

「ん~……ちょっと相談させて」

「ああ。いくらでもするといい」

 

 僕以外の3人が集まって相談を始めた。

 最後の質問で誰かに『好きな人は歩美か』とか言われたら計算が狂うが……この状況なら歩美をピンポイントで狙う質問ができるのは歩美本人だけだろうし、この連中の前で堂々と質問するような性格でもない。

 3人で相談して最後の質問をするのであればせいぜい……

 

「よし、決まったよ!

 『その人は軽音部に所属している?』

 ……どう?」

 

 やはり、その辺が来るか。

 クラスの連中で僕と関わりがあるのは軽音部の連中くらいだもんな。

 最後の回答だ。ゆっくりと、答えるとしよう。

 

「…………YESだな」

「よっし、当たった! ……で、誰なんだろう」

 

 軽音部の女子となると5人。他クラスの結と、名目上は僕の妹であるエルシィを除けば3人。

 少々絞り込みすぎたか? まぁ、1人に絞られてないなら大丈夫だろう。

 

「う~ん、って事はやっぱりかのんちゃんか」

「いや、京よ。あさみんの可能性も十分有り得るぞ」

「あ~そっか。そっちも結構有り得そう」

「…………アレ?」

「どうかした、桂木?」

「あ、いや、何でもない」

 

 麻美とかのんの事をすっかり忘れていた。

 そう言えばあいつらも軽音部だったな。一応。

 まぁ、歩美以外に誤解される分には攻略になんら影響を与える事は無いだろう。むしろ好都合かな。






 原作にあった例の噂が無いと比較的平穏にイベントをこなせます。
 ただ、波乱があった方が良イベントになる事も結構多いのでどちらの方が良かったかは微妙。安定を取るなら平穏が優勢なのかなぁ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。