「まず、現状の目標とそれを達成する為の手段を整理しよう。
目標は勿論、エルシィを救う事だ」
「そんなの言われるまでもないわよ」
「……そうだな」
エルシィの命は首輪を通して僕とかのんの命と繋がっている。
……なんて動機を持ち出す必要は無いか。
「で、その手段だが……ハクアで無理だったって事は新悪魔なら大体無理だな?」
「そうね……そっち方面に特化してる人は居るけど、向き不向きくらいでどうにかなる代物じゃなさそうだわ。
専門家をダース単位で呼べば何とかなる可能性はあるけど……」
「論外だな」
「でしょうね」
そんな堂々と動いたら知られちゃいけないような連中に確実にバレるだろう。
というわけで却下だ。
「旧地獄に対抗するなら、やはり女神が一番期待できるだろう」
「そうは言っても、先ほどのものを見たでしょう? 私たちでは無理です」
「じゃ、2人だけじゃなくて5人、エルシィ込みで6人全員集めたらどうだ?」
「それは……姉妹全員そろえば何でもできるでしょうけど……」
「一体どうやって探そうと言うのじゃ」
「……安心しろ、勝算はどんな時だってある。
無ければ……作り出すだけだ」
こんな所で迷って立ち止まってるヒマなんて無い。
助けなきゃならないなら助ける。それだけだ。
「桂木さんには何か考えがあるようですね。
私はしばらく身を隠します。どうしても私の力が必要になったら呼んでください」
「ああ。そうさせてもらおう」
「妾も一度帰らせてもらおう。ここに居てもできる事は何もないようじゃしな」
「そうだな……
あ、そうだ。帰るまでに1つ。エルシィはあとどれくらい無事でいられる?」
「そうじゃな……最大でおよそ1週間といった所じゃな」
「……分かった。それじゃ、気をつけて帰れ」
「で、桂木。一体何をする気なの?」
「今後の方針としては、僕の攻略対象たちの再調査だ。
女神持ちの女子は記憶操作を受けても記憶が復元される事が麻美とアポロの件で判明している。
攻略の記憶の有無を探れば白黒ハッキリする」
「でも、そう都合良くお前が攻略した女子の中に女神が居るの?」
「居るさ。ほぼ間違い無くな。
何故なら、女神は僕の近くに集められているからだ」
「はぁ? どういう意味よ」
「エルシィが僕の協力者になった時から、いや、これは10年も前から仕組まれている。
お前のとこの室長がわざわざ協力者をもう1人用意してまで僕とエルシィを組ませた理由、まさか気付いてないとか言わないだろうな?」
「えっ? えっと……エルシィが女神だからって事?」
「まあそういう事だ。そして、そんな策謀を巡らせるような奴が女神を野放しにしておくわけがない。
エルシィだけでなく、幼馴染みの天理、同じクラスの麻美、見事に僕の身近な人物に女神が集まっている。
だったら、残り3人も僕が既に出会っている人物に違い無い!」
「ドクロウ室長は一体何者って事になってるのよ……」
そんなの僕の方が訊きたいくらいだ。ホント何者なんだアイツは。
そう言えば、リミュエルの極秘任務も女神が関係しているのか? 後で生物部の部室に寄ってみるか。
「そういうわけで、僕と関わりがあり、地獄にも関わっているような人間、すなわち僕の攻略対象が調査対象となる」
「……ひとまず納得しておくわ。それで、何人居るの?」
「駆け魂攻略を……行っていない奴も居るが、関係者をカウントすると天理と麻美を除いても14名だな」
「どんだけ攻略してんのよ!?」
「エルシィが何か見つけたはぐれ魂とやらも入れれば15になる」
「……妙な所で運を発揮してるわね。攻略無しで勾留できるなんて」
「正確には討伐な」
「ああ。そうだったわね」
「人数が多いんで絞り込む為の案は用意してあるが……動くのは明日からだな」
檜の攻略から休憩無しでここまで来ているからもうすっかり夜になっている。
攻略対象者は基本的には高校生だ。今から突撃訪問するわけにもいかん。
「だから、今日はもう明日に備えて寝る……と言いたいが、まだやる事が残ってる。
ハクア、ボイスチェンジャーみたいなのを作るのって出来るか? 2コほど」
「できるけど……何する気?」
「勿論、襲撃者の尋問だ」
襲撃者はビン詰めにして隣の部屋に転がしてある。
最大限の情報を搾り取らせてもらうぞ。