もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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欠落者達の理想論
プロローグ


 体育祭も無事に終わった。でも、お祭り期間はまだまだ続く。

 次の行事はプロフェッ……面倒だから普通に言おう。中間テストだ。

 その次が舞校祭こと文化祭だ。自由に見て回る時間があるかは分からないけど、それでも楽しみだ。

 

 今日が体育祭明けの月曜で、来週月曜からテストが1週間あって、テスト終了から1週間後の週末に舞校祭。

 3週間後が実に楽しみだ。

 

 え? テストは大丈夫なのかって? よゆーよゆー。

 だって、毎週……ではないけど2週に1回くらいのペースで桂馬くんと勉強会やってるからね。

 今度こそオール満点を……取れたらいいな。

 あ、そうそう。あれから桂馬くんもカラオケ上達したんだよ。平均20点くらいだったのが……60点くらいにはなったよ。私の平均は90台後半だけどさ。この分野で私が負ける日は永遠に来ないんだろうなぁ……

 

 そんな感じで、今現在私はエルシィさんの姿で学校で余裕そうに過ごしている。エルシィさんはテスト勉強の息抜きにアイドルしたいとか何とか。息抜きになるのかは疑問だけど、どうせエルシィさんが勉強した所で成績の向上にはあんまり繋がらないし、1回やらせれば満足しそうなので入れ替わっておいた。

 

「エリーは余裕そうだな~」

「ふっふっふっ……私、気付いてしまったんですよ」

「お、何だ? 新しい勉強法か何かか?」

「それはですね……勉強しても大体の科目で赤点なのは変わらないから別に勉強なんてしなくても良いんじゃないかって事です!!」

「……そ、そっかぁ……そっち方向に悟りを開いてしまったのか……」

 

 エルシィさんだから仕方ないね。事実として勉強してないわけだし。

 そもそもエルシィさんは一応駆け魂隊に就職しているはずだからそういう意味では学校に通う必要も勉強する必要も無い。あくまで私たちの連携の強化の為に通ってるだけなんだよね。

 ……今はどっか行ってるけど、そういう理由だったはずだ。

 

「あ~あ……前回の期末みたいに今回も桂木に教えてもらえれば楽なんだけどなぁ……」

「神にーさまを無償で2度も動かすのは不可能でしょうねぇ……むしろ前回が奇跡です」

「うん。一応頼んでみたら同じような事を言われたよ。前回は事情が事情だったからねぇ……」

 

 頼んではいたんだね。流石はちひろさんだ。

 

「コツコツやってくしか無いかぁ。エリーもちょっとは勉強しろよ~」

「は~い!」

 

 ……ちょっとは自習もしておこうかな。

 

 

 

 

  ……昼休み……

 

「かみさま~! お昼食べに行きましょ~!」

「ん? そうか。外パンで良いのか?」

「はいっ! 行きましょ~!」

 

 普段は私がお弁当を作ってエルシィさんに持たせているけど、私が登校する時はオムそばパンだ。

 あの焼きそばと卵とソースのハーモニーは基礎にして極致であり……え? 薀蓄は要らない?

 ……と、とにかく美味しいからね。毎日食べるとなると流石に飽きそうだけど……私が学校に来る日は限られるのでそんな心配は無い。

 

 

 外パンに行く道中の廊下、大きな掲示板が目に入った。

 いつもは学校からの連絡事項が書かれた地味なプリントが張られているだけだけど、舞校祭の少し前のこの時期だと違うようだ。

 各部活の個性溢れる掲示物が張られている。クラス企画のものも張られているみたいだね。

 あ、茶道部の展示もある。抹茶とお菓子、1杯100円だって。麻美さんもやるのかな?

 

「おいどうした、何を見て……ああ、これか」

「うん。色んな展示があるんだね。去年は回れなかったから今年こそ回れると良いんだけど……」

「適宜エルシィと交代すればどうとでもなるだろう。

 と言うか……お前舞校祭でも何かやるんだな」

「えっ? 確かにコンサートやるけど……何で知ってるの?」

「……それは素で訊いているのか?

 お前のポスターが堂々と張ってあるんだが……」

「えっ? あっ……」

 

 掲示板の一番目立つ所に私のポスターがあった。

 自分の顔なんて普段から見慣れてるからすっかり見落としてたよ。

 

「……あっ、ほら、これ何か凄そうだよ。囲碁部VS将棋部だって!」

「そんな露骨に話題を逸らさんでもな。

 いや待て、全く別のゲームでどうやって勝敗を付ける気なんだ?」

「さ、さぁ……そもそも囲碁のルールも知らないし。白黒の石を使う卓上ゲームって事くらいなら知ってるけど」

「将棋が駒を動かして戦争に勝つSRPGなのに対して囲碁は互いの陣地を主張しあって点数を稼ぐシミュレーションゲームだ。マス目を使う事とターン制である事くらいしか共通点が無い」

「……一筋縄じゃ行かない事はとりあえず理解できたよ」

「そういう事だ。それじゃあそろそろ……ん?」

 

 外パンへと向かおうとした桂馬くんが動きを止めた。

 その視線の先を辿って足元に目を向けると、さっきまで無かったはずのダンボール箱が置いてあった。







 将棋や囲碁をテレビゲーム風に言うとどうなるか、将棋はサラッと書けましたが囲碁はそこそこ悩みました。
 異論はあるかもしれませんが、致命的に間違ってなければ大丈夫かな~と。

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