もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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04 別行動

 昼になったので昼食を摂る事にする。

 デートといえば女子からのお弁当なんかが定番だが、天理にはそんな物を作る心の余裕は無く、ディアナにそこまで気を利かせる事はできなかったようだ。

 だが、無いなら無いで構わない。デゼニーシーには食事が取れる場所がちゃんと用意されてるからな。

 

「何か食べたい物はあるか?」

「う~ん……桂馬君のオススメは?」

「そうだな……」

 

 ぶっちゃけた話、エルシィの料理かスミレの甘味ラーメンじゃないならどうでもいい。

 どうでもいいが……今回の場合はちょっとした紹介なら一応できるか。

 

「じゃ、あそこのホットドッグなんてどうだ?」

「大丈夫だよ。美味しいの?」

「普通のホットドッグだ。食べながら移動できる点が優秀だな」

「……選ぶ基準、そっち方面なんだね。いいけどさ」

 

 実際に食べた事があるものなら、一応紹介できる。

 前に来た時はかなり詰め込んだスケジュールだったからな。混んでなくて手軽なものを探してたら見つけた代物だ。

 今は全く急いでないからアレにする必要も無いんだが……空いてるみたいだし丁度いいだろう。

 

「じゃ、アレにするか。そうだな……2つくらいで良いか?」

「うん」

「買ってくるからその辺でちょっと待っててくれ」

「あ、ありがとう……あ、お金を……」

「大したものじゃないから気にするな……って言ったら逆に気にしそうだな。

 確か400円くらいだったはずだ。細かいのあるか?」

「えっと……大丈夫。お願いします」

 

 天理から400円を受け取って屋台へと向かう。

 何故か今日も人が全く並んでいなかったので待つ事なく買う事ができた。

 そのおかげかは分からないが、『1人で待たせている女子がチンピラに絡まれる』といったテンプレイベントは発生せずに済んだようだ。

 ……戻った時に、別に列に並ぶわけでもないから2人で行けば良かった事に気付いた。まあいいか。

 

「無事だったようだな」

「え? うん……?」

「さ、冷めない内に食べようか」

「うん」

 

 ゲームなんかでは食事中も会話イベントがあったりするが、現実(リアル)ではバグっているのか食べながら会話する事が不可能だ。会話してる間に勝手に食事が終わっててくれればいいのにな。

 そんなわけで特に会話もなくあっさりと昼食が終わった。

 

「ご馳走様でした。

 あっ、ごみ捨ててこようか?」

「ん? ああ、そのくらいなら僕が……」

「桂馬君はさっき買ってきてくれたんだから私が行くよ」

「……なら、頼もうか」

 

 そもそもゴミ箱もすぐ近く、普通に目の届く範囲にあるので誰が行こうと変わらない。

 目的が『屋台』から『ゴミ箱』に変わっただけでさっきのやりとりと変わらんな。

 

「捨ててきたよ」

「ありがとな。

 さて、この後はどうする? また適当に歩き回るか? それとも少し休憩にするか?」

「休憩か……そうだね。少し休もう」

「分かった。

 あ、そうだ。休憩の前にちょっとトイレ行ってくる」

「えっ? ど、どうぞ……」

「……混んでないといいんだがな。少し待たせるかもしれないから自由にしててくれ」

「? ……ああ、うん。分かった」

 

 伝わったようだな。じゃあのんびり行ってこよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちはまだ2人の尾行を続けていた。

 疲れたらお互いに交代で休憩を取ったり、昼食の時も私は見張りで七香さんが食料調達してきたり……

 ……どこの刑事ドラマの張り込みだろう?

 

 そんな感じで過ごしていたら私たちが丁度2人居た時に動きが見えた。

 

「どないしたんやろ、桂木の奴。鮎川をほっぽってどっか行くみたいやで?」

「デートの相手と別行動するケースは……ああ、そういう事か。多分分かったよ」

「ホンマか!?」

「確証は無いけど……多分お手洗いじゃないかな? 園内に入ってから1回も行ってないはずだし」

「はぁ~、確かに有り得る話やな」

「そしてこれも確証は無いけど、自分が行くって宣言して鮎川さんにもさり気なく促したんじゃないかな」

「……桂木の奴、何でそんな妙な気遣いができるん?」

「落とし神様だからね。

 それより、どっちを追う? 私たちも別れてもいいけど……」

「どうせすぐまた合流するやろうからわざわざ分かれんでもええか。せやな……」

 

 と、七香さんが少し迷った時、携帯が鳴った。

 私のではなく、七香さんの。

 

「ん? うちか。もしもし?

 ……え? あ、ハイ。分かりました。今すぐ行きます」

「どうかしたの?」

「あ~、スマンまろん。師匠が呼んどる。今すぐ帰らなアカン」

「塔藤先生が? それなら仕方ないね。気をつけてね」

「おう。そんじゃ、またな~」

 

 というわけで七香さんが帰ってしまった。私も帰るべきだろうか?

 ……このまま帰るのも癪だし、せっかくだからもうちょっと見ておこうか。







 今更ながら過去に書いたかのん編の曖昧な部分を脳内で補完しながら書き進めているという。
 昼食のシーンになって『あの時はどうしてたんだろう』と考えて、急いでいたから歩きながら食べられる物を……とか考えてたらホットドッグになってました。
 最初は1人1個だったんですが、流石に足りないだろう(特に天理)と判断して数を増やしてみたり。
 ……しかし、デートの食事がホットドッグ2つずつってどうなのだろうか? 攻略だったら特別な理由が無い限りやらなそうです。

 最初は天理が不良に絡まれるイベントを作ろうかと思いましたが、結局桂馬1人では対処不可能なので断念しました。
 仮にやった場合、ディアナさんが対処する事になるかなぁ。
 聖結晶を使う混合体さんとか、アイドルの王様な人とかが乱入する展開も考えてみたけど結局没に。彼らがこんな所に出てきたら物語が明後日の方向にぶっ飛んでいきそうな気がしたので。


 ホットドッグを食べるシーンで少し魔が差して天理に言わせようとした台詞。

「す、凄い! これ、ただのホットドッグじゃない!
 パンとソーセージ、その両方に絶妙な味の調整がされてる!!
 そのままだと自己主張が激しすぎてお互いに長所を潰しあってしまうけど、ケチャップに見える赤いソースとマスタードのようで違う黄色いソースが見事に調和させている!
 ありがとう桂馬君! こんな凄く美味しいものを紹介してくれて!!」
「あ、ああ……そうだな……どういたしまして」


 流石に没にしました。誰だお前って話になるし、この作品は一体どこに向かっているんだという話になるので。


『こっ、これはっ!!
 ただの見た目通りの食べ物ではありませんね。ただのホットドッグではなく
 (中略)
 私が封印されていた300年の間に人間の叡智はここまで進歩していたのですね! 素晴らしいです!!』
「ええかげんにせい」

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