もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

212 / 343
 神様の誕生日記念に今日は2話投稿してみます。
 いつもの時間にも投稿するのでお楽しみに。




09 純真の女神の威光

「というわけで、上手く行けば明日にでも駆け魂は出てくるよ」

「早すぎだろ。エルシィが帰ってくるのって確か5日後だよな?」

 

 僕が湿布を買ってきたらかのんが居なくなっており、美生からは

 『いい、絶対に結を連れてくるんじゃないわよ。絶対だからね!!』

 等とフリなのかよく分からないセリフを吐かれた。

 なお、湿布はしっかりと受け取ってもらえた。

 ついでに、上げ底靴は転びやすいぞと言ってみたら

 『余計なお世話よ!! この私が庶民に見下ろされながら歩けるわけが無いでしょう!!』

 と言われた。

 明日までに捻挫治ってると良いんだがな。

 

 そんな感じで色々あった後、我が家でかのんと合流し、事の顛末を聞いて今に至る。

 

「うん、どうしようか。私単独での駆け魂撃破なんて多分絶対無理だよ?」

「僕も同意見だ。しかし、ズルズルと引き伸ばすのもなぁ」

 

 美生と結に『エルシィが今居ないんで数日待ってくれ』なんて言えるわけが無いからな。

 となると……

 

「……少々気は進まんが、あいつを頼るとしようか」

「あいつ?」

「ああ、あいつだ」

 

 

 

 

 と言う訳で、僕達は隣の家までやってきた。

 玄関のインターホンを鳴らすと足音が聞こえてくる。

 

「どなたですか……って、桂馬君!?」

 

 扉が開くと同時にその家の住人、鮎川天理が出迎えてくれた。

 

「邪魔するぞ。とりあえずお前の部屋で良いか」

「えっ、あ、あの、ええええっっ!?」

「お邪魔します」

「……あ、西原さんも一緒なんだね」

 

 ん? 何かしょんぼりしてる気がするが……気のせいだな。

 

「待ちなさい! どういうつもりですか桂木さん!!」

「どういう……? 何の事だ?」

「あなたという人は、天理の部屋に上がり込む時に従妹とはいえ他の女性を連れてくるなんて!!

 恥を知りなさい!!」

「恥と言われてもな、むしろ部屋に男女2人っきりになる方が恥じゃないのか?」

「確かにそうですが、将来を誓い合った婚約者同士なら問題ないでしょう」

『ディアナぁ!!!』

「天理ももっとしっかりしなさい!! しっかりしないと桂木さんを誰かに取られてしまいますよ!!」

『そ、そんな事言ったって!!』

「あーもう話が進まん!!

 僕はディアナに駆け魂討伐の協力を頼みに来た。

 西原は駆け魂を追い詰めるのに必要だから一緒に来た。

 以上だ! 何か文句があるか!!」

 

 今回の目的は3行どころか1行にまとめられる。

 駆け魂討伐にはエルシィの結界とかのんの歌が必要だが。そのエルシィは今は居ない。

 だから、『悪魔に強いディアナが居れば代わりに駆け魂を消滅させられるのではないか?』という試みだ。

 

「駆け魂? 詳しく教えてください」

「僕が駆け魂攻略をしているのは以前教えたよな。

 今回ももう少しで終わりそうなんだが……駆け魂を出した後に止めを刺す奴が今不在でな。

 女神なら駆け魂を消滅させるくらいできるんじゃないかと思ったんだが……どうだ?」

「消滅……ですか。

 確かに、多少力も戻っているので不可能ではないかもしれませんね」

「消滅まではいかずとも弱らせて動けなくするだけでも問題ない。

 もうしばらくしたらエルシィも帰ってくるからな」

「……分かりました。そういう事でしたら協力させて頂きます。

 しかし、条件があります」

「そう来たか。何だ?」

「今度の週末、天理と一緒に遊園地に行ってください」

「遊園地だと?」

「はい。鳴沢市にあるデゼニーシーという場所です。天理と2人っきりで過ごして下さい」

『ディ、ディアナ!? そ、そそそそれってまさか、デデデデートっ!?』

 

 デートの誘いだな。紛れもなく。

 愛の力で復活する女神にとって、天理と僕をくっつけたがるのは当然の事だ。

 理に適った交換条件と言えるな。

 

「まあ、良いだろう。

 ただ……お前の望んだ結果になるとは限らんぞ?」

「仲が進展するきっかけができるだけで十分です。

 こうでもしないといつまで経ってもお2人の仲が進まないですからね!!」

『ディアナ! わたしは別に急いで進めようだなんて思ってないからね!!』

「……ほら、私が何とかしなければ」

「……天理、ご愁傷様」

「ぅぅぅ……ご、ごめんね桂馬君、迷惑かけちゃって……」

「戻ったのか。別にこれくらいなら構わん。

 結婚しろとか、婚姻届に判をしろとかじゃないだけマシだ」

『ハッ! その手がありましたか!!』

「おい」

『流石に冗談ですよ。結婚してほしいのはやまやまですが、こんな事で無理矢理結婚させても遺恨が残りますからね』

「……妙な所で常識を弁えてるな、お前」

『どういう意味ですか! まるで私が非常識みたいじゃありませんか!!』

 

 天理が関わると割と非常識になってるんだがな。

 今回は『駆け魂狩りの交換条件』だから弁えてるんだろう。『キスの責任を取れ!』とかじゃないからな。

 

「それじゃ、明日は頼むぞ。じゃあな」

 

 話し合いもまとまったのでとりあえず去ろうとしたのだが……

 

『あっ、天理! 今です! アレを!』

「あっ、そうだ! あの、桂馬君、その……」

「ん? まだ何かあったか?」

「その……け、携帯の番号を教えてくれないかなって……」

「携帯? 悪いが僕は持ってないんだ」

「……えっ?」

『桂木さん!! 天理がせっかく勇気を出して頼み込んだのに、どういう事ですか!!』

「そう言われても持ってないものは持ってない。

 メールアドレスならあるが?」

「あっ、それじゃあ……お願い」

「ああ。携帯貸してくれ」

 

 天理の携帯から僕のアドレスに空メールを送る。

 PFPを使って登録して……完了だ。

 これで明日の連絡が取りやすくなるな。どうせ直接美生のアパート前に案内しなきゃならんからあまり意味は無いが。

 

「ほいっと。これで大丈夫か?」

「う、うん! ありがと……」

「ああ。じゃあな」

 

 こうして僕は今度こそ天理の家を後にした。







 あれ? 今って美生編だよね? いつの間にか天理編っぽくなってる気が……

 神にーさまが攻略以外で『デート』としてデートに行く場面って実は0なんですよね。
 エルシィとのデートも、天理&ハクアとのデートもデートの自覚無かったし。(アレは仕方ないけどさ)
 そもそも、攻略においても神のみではデートシーンが殆ど無かったりします。パッと思いつくのは楠編、女神編(結)くらいでしょうかね。長瀬編もデートと言えるかも。
 だから、デートと自覚してデートに行く、しかも断れない状況の時にどんな反応をするか割と悩みました。断れるなら「何で僕が必要もない攻略をしなきゃならん!」で一蹴できるんですけどね。

 ちなみに本作では攻略において攻略対象とのデートは2回行ってます。かのん編と麻美編ですね。長瀬編は……先生とのデートではないですね。
 攻略以外のデートは描写してないものも含めるとむちゃくちゃ多いです。頻繁にかのんとカラオケ行ってるので。やってることは勉強とカラオケの特訓なのでデートとは言い難いかもしれませんが。


 追記

 原作みなみ編を忘れていると読者様にお叱りを受けてしまいました……
 き、きっとあまりにもデートっぽ過ぎたせいに違いない!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。