まぁ、仮に秒単位を揃えて投稿したとしても記録に残らないんですけどね。
僕の名前は
好きなものは、女子だ。
これまでに9999人もの女子を攻略している。
現在のターゲットは『羽鳥ゆう』。高校生、緑の長髪、若干ツンデレ。
それ以上の情報は……攻略中に探っていくさ。
『あんた、誰?』
最初はこんな連れない態度を取るが、そんなのはすぐに無くなる。
『バッカじゃないの? ベーだ』
徐々に、そして確実にイベントをこなしていく。
『どうしてここ、分かったの?』
君の行動なんて全てお見通しさ。
『わ、私……あなたの事が好き!』
攻略、完了だ。
これで10000人目のヒロイン攻略達成。
自らの力に背筋が寒くなるようだ。
「ゲームは楽しいかい? 桂木くん?」
ん? 何だ? 人がせっかくエンディングの余韻に浸っていたというのに。
僕は手元のPFPから目線を外して声のした方向を向く。
「担任さまの授業より楽しいものがあるのかい? あ゛ぁ?」
ああ、そう言えば授業中だったか。どうでも良い事だが。
「すいません、話があるならセーブポイントまで待ってくださ
バシィィィン!!
「どうして殴るんだ。授業中にゲームやっていても誰の迷惑にもならないだろう」
改めて自己紹介だ。
僕の名前は桂木桂馬。
好きなものは女子。
但し、二次元に限る!!
3D女なんて、理不尽で不条理な存在だ!
あいつらは完璧で無駄の無い2D女子を少しは見習うべきだ!!
例えば……
『ねぇ、かのんちゃんが今日学校に来てるって?』
『ああ! そうらしいぜ!!』
『サインとか貰えるかな!!』
『バーカ、お前なんかが相手にされっかよ』
『なにおう!?』
うちの学校には
リアルアイドルはゲームアイドルには絶対に敵わない。
アイドルとは夢の体現であるべきだというのに、奴等はどうしても劣化する。
年を取るし煙草吸ったり不祥事を起こしたり、しまいには聞きたくもないような暴露話を始めたりする!!
所詮それが奴等の限界だ!!
……しかしうるさいな。登校してくるだけで騒がしくなるなんてやはりリアルアイドルはダメだな。
仕方ない。屋上にでも行くか。あそこなら静かにゲームできるだろう。
うちの学園の屋上は一応告白スポットになってるらしい。
滅多に人が寄り付かないからある意味当然とも言えるな。
まったく、
まあそれはさておき、ここなら静かにゲームできる。
「ララ ララ ラララ~ラ~ラ~ラ~♪」
私は中川かのん。アイドルをやってます。
人気は……そこそこあります。
普段はお仕事が忙しくて学校もあまり来れないんだけど、今日は久しぶりに余裕ができて登校する事ができました。
出席日数、足りるかなぁ……一応考慮はされてるんだけど、成績も維持しないと親に怒られちゃうし。
アイドルは大変だ! あははっ。
人と話すのは好きだけど、ずっと囲まれてるのは息が詰まる。
屋上は人は殆ど寄り付かないから少し休憩しよう。
「あれ? 人が居る」
屋上には先客が居た。
携帯ゲーム機、確かPFPだっけ? で遊んでるみたいだ。
こんな場所に居る事に少しだけ親近感を感じて、ちょっと話しかけてみる事にした。
「こんにちはっ! この場所を知ってるなんて、キミ、ツウだねっ!」
すると、目の前の男子生徒は少しだけ目線を上げて……
「誰だお前」
…………え?
「僕は忙しい。話しかけるな」
そう言って、再び目線を落としてゲームを始めてしまった……
あ、あれ? おかしいな。
私はアイドルで、でも同じ学校の人に顔も知られてなくて……アレ?
……あ、そうだ! きっと緊張してつい嘘を言っちゃったんだね! そうだよね!
……そう、ダヨネ?
だけど、目の前の男子生徒は何事も無かったかのように平然とゲームをしている。
そ、そっか。本当に知らないんだね。アハハハハ……
そう思った瞬間、私は反射的に懐からスタンガンを取り出して思いっきり押し付けていた。
スバヂィィッ!
「あばばばばばば!!」
※黒焦げになりますが、安全なスタンガンを使用しています。
「どうして知らないの!? 私はアイドル、アイドルなのに!!」
「な、ななななな何だ!? 一体何だ!!」
同じ学校の人にも知られてない。もしかして、私はアイドルじゃなかったの?
そんなはずは無い。でも、だけど……
考えれば考えるほど不安になってくる。そうだ、全部このヒトのせいだ!
懐からスタンガンをもう一つ取り出す。コレで、タオす!
「不安にさせないで、フアンにサセナイデ……」
「ま、ままま待て! せめてセーブを、セーブをさせてくれぇぇぇ!!」
私が2つのスタンガンを振りかぶった、丁度その時だった。
[プルルルル プルルルル]
[メールだよっ メールだよっ]
私の携帯からメールの着信音が、男子生徒のPFPからもメールの着信音(?)が鳴り響いた。
目の前の不安をタオす事と仕事絡みかもしれないメールを確認しようとするアイドルとしてのプライドが一瞬だけ拮抗したけど、私はメールを確認する事にした。アイドルのお仕事は大事だもんね♪
「えっと……」
貴女の歌を聴かせたい相手が居ます。
彼ら、彼女らの為に、貴女の歌を歌っていただけないでしょうか?
歌ってくださるなら、返信ボタンを押してください。
P.S.無理なら絶対に返信しないように
ドクロウ・スカール
お仕事のメール? 知らないアドレスだけど……
でも、私の歌を必要としてくれてる人が居るんだ! よし、歌おう!!
……この時、もう少しよく考えていれば、私のこれからの運命は変わっていたのかもしれない。
でも、後悔はしていない。これから起こる一連の事件のおかげで、私は大切な人と一緒に居る事ができたのだから。
私が返信ボタンを押した途端、急に空が暗くなってゴロゴロ鳴り出した。
にわか雨? と疑問に思う間もなくすぐ近くに雷が落ちた。
「きゃっ!」「おわっ!」
いや、雷じゃなかった。妙な格好をした女の子だ。
何を言ってるか分からないと思うけど自分でも分からない。
「ご契約、ありがとうございます! 神様! 姫様!
さぁ、参りましょう! 駆け魂狩りへ!!」
これは、神のみぞ知る別のセカイ。