もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 ※時期としてはちひろの攻略が終わってすぐくらいからの話になります。
  なお、その時には結も既に攻略完了している事を述べておきます。




小阪ちひろの野望
前編


 私は女子高生である。名前は小阪ちひろ。

 ……何となく文学少女っぽく始めてみたけどここまでしか分からないや。まあいいか。

 

 桂木の奴に何かこう、見返してやるんだ! って宣言したわけだけどさ。どうしようかな。

 歩美みたいに陸上……はまず無理だね。一応元陸上部だけど、今からやり直して歩美に勝てる気がしない。

 そもそも2年のこの時期に何かの部活に参加するのもなぁ……『頑張る』事はできても中途半端な所で終わっちゃいそうだ。

 なら部活に入らず、例えばかのんちゃんみたいにアイドル活動しろってのも無理があるよね。アイドルなんて成りたくて成れるものでもあるまいし。

 う~ん、でも音楽関係ってのは面白いかも。

 個人か、身内数人でやるならバンドかな? 少し調べてみようか。

 

 

 

 

 いくつかの不安要素、楽器の代金とか、メンバーが集まるのかとかはあるけど概ね問題なさそうだ。

 うちの学園に吹奏楽部や声楽部はあっても軽音部は無いみたいだから活動が被って埋没しちゃう事も無さそうだし。

 じゃ、まずはメンバー集めからだね。4~5人くらいがベストだろう。

 最初に声をかけるのは……

 

 

「おっすエリー! バンドやろうぜ!」

「え? ばんどですか? ばんどってなんですか?」

「おい、そっからか……いいかエリー、バンドってのはな……」

 

 少々不安のある人選だけど、ノリの良いエリーならまず断らないだろうし、ちゃんと教えれば楽器くらいは弾けるはずだ。

 …‥弾ける…………はず。

 …………不安だからベースでもやってもらおう。ベースならギターより弦の数が少ないからマシなはず。

 

「やりましょうちひろさん! 私、けいおんってヤツを極めてきたかったんです!!」

「おーその意気だ! やるぞ!」

 

 チョロいぜ。

 というわけでメンバー1名確保。現在2名だ。

 

 

 

 さて、次はどうしよっかな~。

 二つ返事で引き受けてくれそうな連中に何人か心当たりはあるけど、片っ端から声をかけるわけにもいかんしな。

 ……こういう時は、必要な役割から考えてみよう。

 私がボーカル&ギターで、エリーはベース。

 となると残りは……キーボード、ドラム。あとギターもう一本ってとこかな?

 

 キーボードに必要な能力って何だろう?

 50鍵以上あるから6本の弦を操るギターより8倍くらい難しい……なんて事は全くないだろうけど、この辺には安定感が欲しいかな。

 何でも落ち着いてソツなくこなせるような人は……

 

「……京~、バンドやらん?」

「えっ、私が? どうして私に?」

「何か京なら上手くやってくれそうかな~って」

「う~ん、まあいいけど……私、陸上部の活動と塾もあるからあんまり時間取れないかもよ?」

「ん~、ま、いいよ。そんじゃあ宜しく頼むね」

 

 陸上部も大会前とかじゃなければあんまり忙しくないし、塾も毎日行ってるわけじゃ無かったはずだ。

 そのくらいなら十分やっていけるはず。

 

 

 

 んで、ドラムか……

 アレって結構力が強くないとダメらしいんだよね。

 でも問題ない。私には文字通りの意味で力強い親友が居るからね!

 

「歩美~、ドラムやら……」

「キャー!」

 

どごぉぉん……

 

 走ってきた歩美に声をかけようとしたら、歩美が壁に激突した。

 そう言えば、そうだった。舞島の非誘導陸上ミサイルとも呼ばれる歩美にはエンストという概念はあってもブレーキという概念が無い。

 廊下の走りすぎで毎日のように壁にぶつかり、ならばと陸上用のスパイクを上履きに取り付けたら衝突こそしなかったものの廊下を穴だらけにして怒られる。歩美はそういう奴だ。

 コレにドラムなんて任せたら、曲が一瞬で終わるっ!!

 

「ゴメンちひろ! どうしたの?」

「ドラ……じゃなくて、バンド、やってみない?」

「え? バンド? 別にいいけど、何でバンド?」

「いやぁ……バンドである意味はあんまり無いんだけどさ。何かこう、全力でやってみたいなって」

「……そっか。そういう事なら協力するよ。何をすれば良いの?」

「その辺はまた後で連絡するよ。ありがとね」

 

 ……とりあえず、歩美はギターでもやってもらおうか。

 これでひとまず4人揃った。

 ドラムが居ないけど……何とかなるっしょ!

 

 

 

 

 

  ……数日後……

 

「ではこれより、2B PENCILSの第一回目の会議を始めたい」

「わ~ぱちぱち~」

「いや、あの、どういうノリ……?」

 

 厳かに宣言してみたけど、乗ってくれたのはエリーだけだった。

 

「……はい、じゃあ今日話したい内容だけど、『パート分け』についてだよ」

 

 私の中では大体決まってるけど、無理強いするわけにはいかないからね。

 意見を聞いて、調整できそうであれば調整する。

 

「パートって言うとアレですよね! ギター弾いたりドラム叩いたり、ギター弾いたりキーボード弾いたり、ギター弾く奴ですよね!」

「エリー、ギターが3回も出てきてたよ……」

「無理とは言わんけど、苦しい事になりそうだね。

 ま、エリーの言う事は大体合ってる。うちら4人でギター2、ベース、キーボードをやっていこうと思う」

 

 ベースをギターだと勘違いしてたなら、大体合ってる。

 

「ん? ドラムは?」

「京……この中にドラムの適任者っておるか? 適度な腕力とリズム感がある奴」

「……居ないね。ゴメン、続けて」

「……ま、そういうわけだからドラムはひとまずは無しでやってみようかなと。

 希望者が居るならやってみてもいいけど」

 

 誰からもドラム希望の声は上がらなかったので話を進める。

 

「んじゃあ、これはあくまで私からの提案で本決定じゃないけど……

 エリーがベース、京がキーボード、歩美がギター。

 こんな感じで良い?」

「ちひろはどうするの?」

「私? もっちろんボーカル&ギターだよ!」

 

 桂木を見返してやる為にも、主役だけは譲れないね!

 

「なるほどね……ま、いいんじゃない?」

「やっぱりそういう役なのね……確かに歌を歌えって言われたら困るから文句は無いけど」

「えっ、京って歌歌えないの!? ええええっっ!?」

「何故そこまで驚く。歌えないわけじゃないけど人並みだよ」

 

 そんな感じで、パート分けはあっさりと決まろうとしていた。

 しかし、そこに待ったの声がかかる。

 

「ちょっと待ってください!! ちひろさんばかりズルいです! 私も歌いたいです!!」

 

 まさかの、エリーからの反発だ。

 エリーの性格を考えればそこまで意外でもなかったかもしれんが。

 

「エリー、あんた歌なんて歌えるの?」

「勿論です! 見ていて……じゃなかった。聴いてください!!」

 

 するとエリーは突然歌い出した。

 

 

 

 

 ……確かに、エリーは歌が上手かった。

 うちのクラスの某アイドルとまではいかずとも、その替え玉くらいにはなれそうなくらいだ。

 だけど……ねぇ……

 

「……却下で」

「どうしてですか!?」

「だって……それってかのんちゃんの歌じゃん!!」

 

 エリーが歌ってみせた曲はすべてかのんちゃんの歌だった。

 流石にそれを歌うのは……ねぇ……

 

「何かパクリっぽくて嫌だ」

「えええええっ!?」

「私もちひろに賛成かな……全然知らないアイドルの歌ならともかく、一応クラスメイトの歌だからね」

「別の歌は歌えないの?」

「うぅぅ……えっと……この歌しか自信無いです」

「よし、んじゃあ私がボーカルって事で!」

「し、仕方ないですね。ま、まあ譲ってあげなくもないですよ!」

 

 ふぅ、良かった良かった。ここで別の歌で勝負とかなってたら負けても全然おかしくなかったからね。

 私もそこまで歌が上手いわけじゃないから。

 

 

 こんな感じで、私たちの活動は始まった。







京さんのキャラはちゃんと書けてるでしょうか? 原作でもそこまで出番が無いキャラなので少々不安です。

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