全く何なんだどいつもこいつも。
妹を名乗って家に住もうとしたり、何かよく分からんが一晩泊めてほしいとかほざくし。
しかもどっちもうちの親が許可したらしい。
やっぱり
とりあえず、エルシィには『妹としての
妹が妹足るには3つの最低条件がある。
まず、
次に、
そして最後、
これぞ、妹が妹である為のBMWだ!!
そういうわけでどの条件も満たしていない妹未満の奴を受け入れる気は無い!!
……と言ったはずなんだが……
「神様♪ お夕食をお作りしました!」
何を勘違いしたのか、『妹未満』から『殺人シェフ』にジョブチェンジしやがった。
逃げようとしても羽衣で拘束されたし!
「私、お料理は得意なんですよ!」
と、自称する悪魔が出してきた皿にはグロテスクな魚(?)やら貝(?)やらとパスタっぽいものが乗っている。
いや、乗ってるって言うかのたうち回ってる。妙な悲鳴も聞こえるし。
「三途の川のお魚を使ってるんですよ。こっちに来る前に沢山釣っておいたんです!」
「え、エルシィさん……これはどうかと思うよ?」
「大丈夫です! こっちの魚の2倍はおいしいですから!」
「見た目が五万倍悪いわっ! おごっ!!」
羽衣で無理やり口を開けられ、そのまま皿の中身を押し込まれる。
こんな所で死んでたまるか!!
「おごごごごごごご!!
……おご?」
あれ? 意外と美味いぞ?
「どうですか? 神様!」
「……何というか……思ったより美味いな」
「でしょう?」
「ええええ!? 桂馬くん大丈夫!?」
「ここで心配するくらいならその前に止めてほしかったんだが?」
「あぅぅ、ごめん」
「……まあいい。どうせ止めても聞かなかったんだろう?」
「そ、そうだけど……ゴメン」
「……ハァ。それじゃ、僕は部屋に戻るから……」
「か、神様! 何か気づきませんか?」
「? 何か?」
「あ~えっと、ホラ、周りを見てください!」
「周り? ……ん?」
部屋が凄く綺麗になってる。
普段あんまり部屋の中を注意深く見る事ない僕でも断言できるくらいには綺麗になっている。
「お気づきになられましたか? 私がお掃除しておきました!」
「掃除ってレベルなのかこれ? 新築みたいにピカピカだぞ?」
「ふっふ~ん、このくらいトーゼンです!
何せ私、地獄では掃除係を300年やってましたから!」
「「300年!?」」
「はい、この箒さんとも298年の付き合いなんですよ」
見た目は高校生でも通じるくらいなのにな。
悪魔の成長や寿命は一体どうなってるんだ?
「え、エルシィさんって今いくつなの?」
「それは乙女の秘密です♪」
最低でも300歳、と。
いや、生まれてすぐから働けるとも思えないからもっと上の年齢か?
まあ、どうでもいいんだが。
「なにしろ300年かけて鍛えた匠の技ですからね!
例えば神様がこぼしたこの食べかす、この魔法の箒さんなら最小パワーで一撫でです!」
そう言うとエルシィは魔法の箒とやらについてるネジを回す。出力調節ダイヤルだろうか?
って言うか、僕がこぼしたって言うよりお前がこぼしたような……まあどっちでも良いんだが。
「行きますよ~」
エルシィが箒で床を撫でる。すると……
ズドォォォオン
家の壁が、消し飛んだ。
いや、壁だけじゃない。壁の向こうの民家まで消し飛んでる。
「……おい」
「あ、パワー最大になってた」
「298年の付き合いのある箒じゃなかったのかよ!? どうやったら操作をミスるんだ!!
このポンコツ悪魔! これをどうしてくれうぐおっ!?」
食べかすどころか民家すら一掃したバグ魔に詰め寄ろうとしたら下腹部に強烈な痛みが襲ってきた。
誰かに殴られたとかそういう事ではなく、もっと単純な……
「け、桂馬くん!? どうしたの!?」
「うぐっ、と、トイレ!」
「え? あ、い、行ってらっしゃい」
全力でトイレに駆け込んで用を足す。
「だー、チクショウ! さっきのパスタのせいだ! どっちから先に怒りゃあ良いんだ!!!」
ドアの外ですいませんすいませんと頭を下げるエルシィの声が聞こえるが、謝るだけで済む問題じゃない。
これからこいつと一緒に暮らす? 冗談じゃない! 命がいくつあっても足りない!!
……何とか、追い出さなければ……