もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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今回は前回予告した通り日常回Aになります。
ではいってみましょ~。


落とし神の敗北
ゲーム選択


 私たちが通う舞島学園では、と言うより世間一般の大抵の高校では夏休み前にある祭りが行われる。

 その祭りにはよっぽどの事情が無い限りは全ての生徒が参加し、それぞれの日頃の努力の競い合う。

 この祭りの為に夜を徹して準備を行う生徒も居るほどだ。

 その祭りの名は『プロフェッサーフェスティバル』

 

 

 

 

 

 

 ……別名、『期末テスト』だ。

 

 

 

 

 

 さて、この祭りに対する対応は人それぞれだ。

 全く普段通りに過ごす人も居れば、必死になって勉強をする人も居る。

 で、私はどうかというと……

 

「桂馬くん! ここ教えて!!」

 

 ……凄く、必死です。

 エルシィさんのおかげで結構登校できてるから去年よりは余裕かな~なんて考えてたけど、よく考えたら去年は今ほど人気が出てなかったから仕事量が全然違った。

 一応、桂馬くんからは『1科目だけ教えてもらう』って言質は取ってあるけど、1科目だけ勉強しても焼け石に水だった。

 仕方がないからもう一度桂馬くんと交渉して、『1科目』ではなく『1時間』に変更してもらい、いくつかの科目の分からない部分だけをピンポイントで訊く事にさせてもらった。

 

「……ここをこう、これで解ける」

「ありがと!」

 

 これで何とかなる! って思ってたけど、実際にやってみたらこの方法は普通に1科目教えてもらう時と比べて凄く効率悪い。

 だって、貴重な1時間を簡単な問題に使ってしまうわけにはいかないから、可能な限り自力で解く必要がある。

 そして結局重要な問題にも使えず、凄く悩み抜いた挙句に桂馬くんに泣きついて一瞬で解いてもらう。という感じになっていた。

 ……少し、心が折れそうです。

 こんな事を続けていたら時間も足りないし心も折れるので何か別の方法を考える必要がある。

 桂馬くんにつきっきりで2科目……いや、3科目くらい見てもらえれば後は自力で何とかなると思う。

 しかし、真っ正面から泣きついてもすげなく断られるのは目に見えている。

 何か、桂馬くんを納得させられる方法は……

 ……そうだ、アレなら行けるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けーまくーん!」

 

 おかしいな、中川に呼びかけられただけなのに悪寒が走ったぞ?

 最近のこういう嫌な予感はよく当たる。僕は警戒しながら声のした方へと振り返った。

 

「……今度はどんな問題だ?」

「お願いします! やっぱり時間で区切るのはダメでした! 3科目ほどをみっちりと教えてください!!」

「断る」

 

 そんな理不尽な要求はバッサリと切り捨てる。

 しかし、そんな僕の対応をしっかりと予測していたらしい目の前の少女は即座に条件を追加してきた。

 

「もちろんタダでとは言わないよ。

 教えてくれたら私は代わりにあるゲームの攻略法を教えてあげる」

「あるゲーム? 何だそれは」

「落とし神様と謳われた桂馬くんでも絶対に私に勝てないゲームだよ」

「ほぅ? 大きく出たな。いいだろう。本当に僕が勝てないゲームなら、その条件で教師役を引き受けてやる」

「よし! じゃあ早速出かけようか」

「ん? ここじゃできないのか?」

「うん。専用の設備が必要なゲームだからね」

 

 専用の設備? ゲーセンか何かか?

 その程度のもので遅れを取る気は更々ないんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ、ここだよ!」

 

 中川が指し示したのはどこか見覚えのある建物だった。

 ここは……結を攻略してた時に来た場所だ。

 そう、その建物とは……

 

「カラオケ、だと?」

「うん。これの採点ゲームも立派なゲームだよね?」

「……そうだな。まあゲームだと言えるだろう」

「よし、それじゃあ始めよう!」

 

 確かに、僕は以前このゲームで惨敗を喫した。

 だがそれは僕と結の身体が入れ替わっていた時の話だ。

 この前のようには行かない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ば、バカな! この僕がっ、負けただと!?」

「あのさ、どうしてそんなに自信満々だったの……?」

 

 中川は普通に90点台を出したのに対して僕は20点ほどだった。

 結だった時は40点台は出せていたので更に下がっている事になる。

 

「くそっ、こんなはずは無い! もう一度だ!!」

「良いけど……結果は変わらないと思うよ?」

 

 

 

 

 

 

 結果、23点

 

「も、もう一回だ! もう一回!」

「桂馬くん? いい加減、現実を見よう?」

「いや、きっと何かの間違いだ! 行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ……19点

 

「……なあ中川」

「……何かな、桂馬くん?」

「……ひょっとして、僕は歌が下手なのか……?」

「今更!?」







 というわけで落とし神様がカラオケで敗北する回でした。まあ当然の結果ですね。
 原作では絵がヘタだとエルシィに指摘されてそこそこ驚いていたようなので『美術系が下手』という自覚は本人には無かっただろうと推測しています。
 カラオケの採点ゲームって下手に歌ったらどのくらいなんでしょうかね?
 実地調査しようかとも思ったんですが、流石に面倒だったので断念しました。


 何とか神様と吉野姉妹の誕生日に間に合いました。
 しっかし、その誕生日によりにもよって神様が負けるストーリーを投稿するという。
 ちなみに、今日で本作は1周年を迎えます。今後とも宜しくお願いします。

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