ちょっとキンクリしてたり、キャラの性格が少し違ってたり、展開と違う所もあります、どうかご容赦ください。(焼き土下座)
ジャンヌは細かい事は気にせず剣を振るい、ジークはその攻撃をひたすら躱していた。
「どうした?先ほどの勢いがないぞ!」
一行に攻撃をしてこないジークにジャンヌは不敵に笑う。一瞬の隙を見つけ、ジークに向けて突きを放った。しかし、ジークはそれを待っていたと言わんばかりにひらりと躱し、ジャンヌの腕を掴んだ。
「Too easy‼」
ジークは当て身投げをしてジャンヌを地面へと叩きつける。更に追い打ちをかけるかのようにもう一度投げ飛ばす。ジャンヌは受け身を取り、よろめきながらもドヤ顔で構えるジークを睨み付ける。
「くっ…本当にふざけた奴だ…」
「HAHAHA‼オレはいつでも真面目だ!」
「真面目に見えるか‼」
ジャンヌは怒鳴りながらジークへと剣を振るう。魔剣には氷の冷気が帯び、躱すたびに凍てつくほどの冷たさがよぎった。先ほどよりも勢いが増している。いち早く邪魔者を始末するつもりだ。ジャンヌの殺気にジークは不敵ににやりと笑う。
「よかろう!ならばオレも本気の本気でいくぞ!デッドリー…」
ジークは拳を強く握りしめ力を込める。高まった闘気をジャンヌへとぶつけようとした。しかし、それを遮るかのように再び下の階から爆発音とともに大きな揺れが起こる。下の階にはまだキンジと白雪がいる。彼らは無事なのかとアリアは気をそっちの方へ向けた。ジャンヌはその隙を見逃さなかった。
「隙だらけだぞ、アリア‼もらった‼」
魔剣に冷気を帯びさせ振るう。青白い光が辺りを凍りつかせながらアリアへと飛んでいく。とっさの事でアリアはすぐに動くことができずにいた。
「しまっ…!」
「ぬうううんっ‼」
アリアの前にジークが立ち、両手で魔剣から放たれた冷気を防いだ。気合いの掛け声とともに腕を振るって弾く。何とか防ぐことはできたものの、ジークの両手は白い氷がまとわりつき、凍瘡を起こし始めていた。
「あ、あんた大丈夫なの!?」
「ふん、心頭滅却すれば火もまた涼し…って、冷たっ!?いたっ!?」
「それ火じゃないから!?」
使い方を間違っているとツッコミを入れたかったが今はそれどころじゃない。ジークは凍傷で素手ではもう戦うことはできないし、相手は異能者。ただの武偵では相手が厳しい。ジャンヌはこちらが有利になったと確信し不敵に笑った。
「もうその手では戦う事は出来ん。これで勝負あったな」
「なんの!気合いを込めれば治るし、まだ足があるぞー!」
不利な状況になっているのにそれでも勝つ気でいるジークにジャンヌは額に青筋を浮かべて睨み付ける。なんて減らず口の男か。これ以上耳障りになるので一気に片付けようと襲い掛かる。
「デュランダル!これ以上はさせないよ!」
暗い通路からアリアとジークの間を通り過ぎ、白雪がジャンヌに向けて刀を振り下ろした。ジャンヌは魔剣で防ぐが、白雪が強く押してゆき弾いて後ろへと下がった。
「アリア、ジーク君、遅くなってごめんね!後は私に任せて!」
白雪は先程までの弱気だった様子が一変、真剣な表情になり覚悟を決めた様子だった。これまでにない強気の白雪にアリアは驚く。ジャンヌはもう一度魔剣を振るおうとするが、今度は暗い通路から銃声と共に弾丸がこちらに飛んできた。舌打ちして魔剣で銃弾を防ぐ。
「アリア、ジーク!待たせたな」
少し遅れてベレッタM92Fを構えたキンジもやって来た。こちらもこちらで、先程との様子と雰囲気が変わっていた。そんなキンジにジークは納得して頷き、アリアは少し顔を赤くして頬を膨らませる。
「もう…‼キンジ、心配かけさせないでよね!」
「ふ…どうやらお前も本気とやらになったようだな」
キンジの『本気』についてジークは予めノブツナから聞いており、ノブツナ曰く『キンジは色気に弱いが、興奮したり、女関係のヤマとなると人が変わったかのように強くなる』と聞いていた。下の階で
「ジーク、手は大丈夫なのか?」
「何、動かす程度なら問題は無い。それはともかく、お次はどう出るのだ?」
「俺達は白雪の援護だ」
今は白雪がジャンヌと剣を交わして戦っている。青白い冷気帯びた魔剣と赤い炎と熱気を帯びた刀がぶつかり合い激しい音をなり散らしていた。
「二人とも、白雪は全力でぶつけて戦ってる。タイミングを間違わないようにいくわよ」
アリアはキンジとジークに援護に出るタイミングを話す。SSR、異能者同士の戦いは長くはならない。全力をぶつけた戦いならどちらかがガス欠を起こす。それまでの間に白雪は後一撃だけ全力でぶつけるだけの力を出す隙を伺っている。彼女がそれを出せるよう、こちらがタイミングを間違ってはならない。ぶつかり合う剣戟も次第に白雪が押されていった。ジャンヌは魔剣に力を込め、魔剣は空色に光り凍てつくほどの冷気を帯び始めた。
「その程度か、星伽の巫女‼このまま銀氷となって散るがいい‼」
「今よっ‼」
アリアは掛け声とともに駆け、それに続いてジークとキンジが続いていく。こちらに近づいてくると気づいたジャンヌは白雪を魔剣で弾き、空色の冷気をアリアに向けて放った。
「ジークっ‼」
「おう!レップーケーン‼」
アリアの合図に答えるようにジークは片手を振り上げ地を走る風の気弾を放った。風の気弾は凍てつく冷気を相殺させる。それに続いてキンジがベレッタM92Fでジャンヌに向けて狙い撃つ。ジャンヌは銃弾を防ぎ、その間にアリアが刀を振り下ろした。
「このっ…舐めた真似を‼」
ジャンヌはひらりと躱し、キンジへと飛び掛り魔剣を振り下ろした。目の前に振り下ろされる魔剣にキンジはベレッタM92Fを前へ投げ、白刃取りで受け止めた。受け止められたことにジャンヌは驚愕する。
「なっ…‼」
「ジャンヌ、もう終わりよ。剣を捨てなさい!」
前へ投げられたベレッタM92Fをアリアが受け取り、ジャンヌの後頭部へ銃口を向けた。これでもうジャンヌは身動きができず、決着がついた。なんとか魔剣を止めたキンジはふっと笑う。
「もういい子にした方がいい。これにて一件落着だよ、お嬢さん?」
「まだだ…武偵法9条、武偵達は人を殺せない。だが私は違う‼」
ジャンヌはこのまま力を込めた。魔剣が氷を帯び始めキンジを凍らせようと迫る。そこへそうはさせまいと白雪が駆けだす。
「星伽候天流、
刀に紅蓮の炎が帯び、ジャンヌの魔剣にむけて強く振り上げた。白雪の炎の刀は魔剣を断ち切り炎の渦が巻き上がる。炎の渦は天井にぶつかり小さな火の粉を降り注いだ。ジャンヌは折られた魔剣を目を丸くして見つめていた。
「そんな…私の聖剣が…」
鋼を断ち切る聖剣はこれまで絶対に折れることは無かった。だが、たった今炎の刀に断ち切られたのだ。斬れぬものは無い魔剣が逆に斬られたのは己の敗北を意味する。ジャンヌはするりと魔剣を落とした。
「デュランダル、逮捕よ!」
アリアは敗北を喫して呆然とするジャンヌに手錠をかけた。これで戦いが終わったと白雪はへたりと座り込む。
「白雪、大丈夫か?」
「キンちゃん…私、怖くなかった?さっき…私…」
力なく、怯えるように見る白雪にキンジは微笑んだ。
「怖いもんか、とても綺麗で強い火だったよ。昔一緒に見た打ち上げ花火みたいにね」
「キンちゃん…っ!」
優しく微笑んでくれたキンジに白雪は目を潤わせ抱き着いた。これで一件落着とキンジもアリアも安堵の笑みをこぼす。
「さてこっちは片付いた。次へ行くとするか」
ジークは肩を回して踵を返した。まだ何かあるのかとキンジとアリアはジークを見つめた。
「次って…デュランダルは逮捕したのよ?他に何があるのよ?」
「ジーク、もしかしてノブツナが言っていたデュランダルに罪を着せようとした奴のことか?」
キンジはノブツナが言っていたことを思い出した。ノブツナの部屋に侵入し、ガソリンで爆破させ、ジャンヌより先に学園内に侵入して爆弾を仕掛けた犯人がまだいる。
「うむ…今は鳰が爆弾を回収し、ノブツナとレキがそっちの方に向かっている。気を緩めるな、まだ終わっておらんぞ」
白雪を攫おうとしたデュランダルは逮捕した。しかし、まだ学園内にはIEDが仕掛けられている。その犯人を捕らえない限りこの一件は終わらない。
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ドリアンは波止場でじっと海を眺めていた。足元には古い小さなテープレコーダーが置かれ、レコーダーからはフランス語で歌う男性歌手の曲が流れており、ドリアンはポケットからキャンディーを取り出し飴玉を口の中に入れて舐めながら鼻歌で歌っていた。
「O Toi la vie…『おお、我が人生よ』、ですか」
ドリアンはふと後ろを振り向く。そこにはノブツナがゆっくりと歩いてきており、静かに落ち着いて様子で見つめていた。待ちくたびれたと言うでもかのようにドリアンは軽く笑って、飴玉をガリッと嚙み砕いて飲み込む。
「やあ、待っていたよ。答えは…決まったようだね」
ドリアンはノブツナを見て察する。彼からあの時のような殺気と殺意は見えない。寧ろ落ち着いた雰囲気に少し嬉しさが募った。
「これほど嬉しい気持ちはいつ以来だろうか。最後に烈海王と対峙した時以来かな…」
「ドリアンさん…色々と聞きたいことがあります。
ドリアンはイ・ウーすら、デュランダルすら、そして白雪を誘拐することが計画されていたことすら知らないはず。それが知っているかのようにデュランダルより先に学園内に即席爆発装置を仕掛け、デュランダルが白雪を攫った後に爆発させ罪を着せようとしていた。
「それに、貴方にIEDの材料を用意させたのは誰なのか…」
「…残念だが、私はそれを答える気はない。というよりも私は君にそんな質問を期待していない」
「…そうでしたね。これは貴方を捕まえてから聞きますよ。じゃあどうして戦いたいがためにこんな大掛かりな事を?」
かつて元死刑囚だったドリアンは勝つためなら、暗器や人質の誘拐と手段を厭わず手早く姑息に勝ちに執着して戦った。最後は本当に勝ちたい為に真剣に戦っていたが、今再びこの地に戻って来た彼は元死刑囚だった頃や最後に勝ちを望んでいた時のような様子が見られない。ドリアンはポケットから金属のウイスキーボトルを取り出して、酒を飲んだ。
「‥‥長い夢を見ていた。老いぼれた私が突然、子供に戻った夢だ。キャンディーを欲しがり、幸せそうにキャンディーをお腹いっぱい食べる、子供の夢だった。まるでもう一度人生をやり直しているような感覚だったよ」
ドリアンは静かに海を眺めながら、酒を飲み続ける。
「夢から覚めた私は思い返したよ。薄汚れた町角でキャンディーをせがんだ貧しい子供時代。血塗られた戦争へと駆り出された青年時代。人を殺め続け道を外し最悪の死刑囚とされ、勝利の為に戦って無残にも負けたあの頃…私の人生は一体何だったのだろうかと」
敗北を望み続けて戦い続け、自分は一度も勝利をしたことがない敗者だという矛盾で、自分の人生はその実、暗黒に満ちていった。本当は知っていたのだがずっと目を背け続けたこの人生は無意味だったと。
「長く眠っている間に周りは変わって私は年老いた。この先長くはないだろう。だからこそ…一度でいい、一度でもいいから最期は昔の事なんて関係なく人生を楽しみたかった。戦う事しか知らない私にできるとすれば、かつての私になかったただ闘争を楽しむこと、『勝ち』も『負け』も関係なく拘らず単純に戦いを楽しむことにしたんだ」
「…だからこんな事を。でも、本当の貴方の気持ちは押し殺してはいないのでは?」
ノブツナに言われ、ドリアンは少し目を丸くするが、ふっと笑ってライターと煙草を取り出して火をつけて一服する。
「‥‥本当は『勝ちたい』なぁ‥‥戦いを楽しんで、ついでに勝ちたい。こんな老いぼれの我儘に付き合ってくれるかい?」
「ええ。かつて貴方が戦ってきた人達には及ばないけど、俺でよければ」
ドリアンの問いにノブツナは静かに笑って頷いた。そしてノブツナから感じる静かな殺気と闘気にドリアンは片手に火のついたライターを持ったまま、嬉しそうに笑った。
「そうか…ありがとう」
そして先ほどまで飲んでいた酒を一気に吹きかけた。高度のアルコールの酒はライターの火を経て火炎放射器のように勢いよく炎があがりノブツナに襲い掛かった。
ノブツナはひらりと躱して懐に迫り、ドリアンに向けて拳を放つ。ドリアンも拳を振り下ろし、拳同士が衝突した。ドリアンはニッと笑い、しびれる拳にノブツナは痛みながらも笑い返す。
「さあ、楽しむとしよう!」
「…お手柔らかに…!」
O Toi La Vie、曲はとても好きです。聞いてて落ち着きます(コナミ感)