緋弾のoutlaw   作:サバ缶みそ味

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 少しばかり押し込みすぎとご都合主義なところが…
 あと色々と違う所もあったりと、申し訳ないです


14話 O Toi La Vie  ②

「よーし、じゃあ最初から改めて整理するぞ」

 

 ノブツナは熱いコーヒーを啜りながらドリアン追跡の為、情報を1から整理してまとめようとした。始めようとした矢先にジークが手を挙げる。

 

「ノブツナ!おうどんたべたい」

「よし、殴られたいようだな」

 

 ひとまずやる気があるのかとツッコミを入れたいのでジークに一発げんこつを入れた。

 

「…じゃあ気を取り直して(ry」

 

 ジークは懲りないようで再び手を挙げた。これ以上話を遮らないでほしいと睨みをきかすが動揺せずにジークはドヤ顔で語りだした。

 

「ところでノブツナ、レキに衣類を渡したんだが…どう思う?」

 

 にやにやしているジークが指をさす方向にノブツナは視線を向ける。学校の制服が乾くまでの間、ジークが渡したのは体操服。体育座りをしてドラグノフを抱えているレキはキョトンとして首をかしげた。それを見たノブツナはにんまりとする。

 

「すごく…かわいいです」

「だろぉ?本当はブルマーにしたかったんだが、そこはベタにはせずぴっちりスパッツタイプを穿いてもらった!」

「ジーク、でかした!ちょっと保存用に一枚撮っておこう…」

 

 ノブツナとジークはどこぞのエロオヤジのようなゲスな笑顔をしながら写真を撮ろうとした。そんな二人にげんこつが下された。のたうちまわる二人を見て、げんこつをいれた本部は呆れたように溜息をついた。

 

「まったく…人の道場で何をしているんだお前たちは。というかなんでここで集まったんだ」

 

 ノブツナ達が集まった場所はノブツナの師匠である本部以蔵の道場。頭をさすりながら答える。

 

「師匠が道場なら安全って言ってたし、それに地味そうですからうってつけかなーって」

「確かにそう言ったが相手はそうはいかんぞ…って地味とはなんだ‼」

 

 そこから暫く道場内でノブツナと本部の武装鬼ごっこが始まった。

 

__

 

「うぃーっす!鳰ちゃんがお土産のメロンパンを持ってきたッスよー。ってなんでノブちゃん縛られてんです?」

 

 鳰が袋に入ったメロンパンを沢山持って道場に入ると道場のど真ん中でグルグルに縛られていたノブツナがいた。レキはじっとノブツナを見つめ、ジークは腹を抱えて爆笑しており、状況が掴めないので鳰はきょとんとしていた。ノブツナは芋虫のように動きながら鳰に助けを求めた。

 

「そんなことより助けて‼」

「はいはい、仕方ないッスねー。そんなことより進展はありました?」

「レキのコスプレは超絶カワイイ」

「うん、進展は期待できないようっすね…」

 

 ドヤ顔で答えるノブツナに鳰はそんな気がしたと呆れながら縄を解いてあげた。

 

「まだ整理ができていない。ぶっちゃけってと武偵校内のセキュリティをどうにかしろと愚痴ってるだけだが…そっちの仕事はどうだ?」

 

「ノブちゃんの報告通り部屋に盗聴器が仕掛けられていたとアリアに報告すると、アリアは『もし白雪が誘拐されたと仮定してそれが可能な時期と場所。攫った後逃げるのにうってつけの場所を探してくれ』って。遠山を囮にしてデュランダルをおびき寄せるみたいッスよー」

 

 ノブツナはそれを聞いて低く唸る様に考え込んだ。アリアはただ癇癪を起してむやみやたらに銃を引き抜いて撃ちまくるだけではないと感心した。後は彼女の直感と行動に遠山がどう合わせていくべきか、それさえ合えば馬が合うだろう。そして鳰はニシシと笑いながら付け加えて報告した。

 

「それからアリアも武偵寮襲撃事件の事を聞いて『協力してもらってるからあんたの一件も手伝ってあげなくないわよ』ってさ」

「けっ…他人事のように言いやがって」

 

 ノブツナは渋る様にそっぽを向いた。そっちはただ誘拐犯から白雪を守りながら捕まえるのにこちとら脱獄した殺す気満々の元死刑囚ことドリアンを追っている。しかも今度は何をやらかすのかわからない。

 

「確かドリアンは二等兵として戦後の東京に来ていたんだっけな…かつて日本兵やアメリカ兵達のたまり場や集会所だった場所を洗い浚い探そう。鳰、頼めるか?」

「はーい!ドリアンがアジトにしていた場所や戦後、アメリカ兵たちがたまり場にしていた地下や廃屋とかはピックアップしとくッスよ」

 

 鳰はメロンパンを頬張りながら笑顔で手を振った。次にノブツナはジークに視線を向ける。

 

「ジーク、レキに弾薬の提供とドラグノフのオーバーホールができるように用意をしてくれ。それから明日からお前も連れて行く」

「キタコレ‼ついにオレの出番だな!」

 

 やっと出番が来たとジークは大はしゃぎをしてウォーミングアップをし始めた。まだ早いとノブツナはツッコミを入れた。これで大丈夫なのかと軽くため息をついた。ドリアンが言っていた『イベント』とやらはどういうことなのかさっぱり検討もつかない。

 

「‥‥」

 

 ノブツナは怪訝そうな面持ちで頭を掻いた。今でもドリアンに言われたことが頭から離れない。今は言われたことと昔の自分を思い出すのはやめようと頭を横に振った。

 

「鳰、甘くないメロンパンとかねえのか?」

「何言ってるんッスか。甘くないメロンパンとかもうメロンパンじゃないっすよ」

 

___

 

「‥‥」

 

 レキは無言のままビルの屋上から辺りを一望していた。風が体を突き抜けるように吹き、髪やスカートが靡く。風向きや風の強さを測定し、屋上のから見える景色を構いもせず、何も考えていないように無言でドラグノフのスコープを覗いた。

 

「おっつー!レキレキ、ご苦労さんッス!これ餞別ですよー」

 

 レキの下へ鳰がコンビニの袋を携えながらにこやかにやってきた。鳰は笑顔で袋からカロリーメイトを取り出すがレキはこちらに振り向くことなく無言でスコープを覗いたまま動かなかった。

 

 レキがスコープで覗いている先にはノブツナとジークが廃屋へと入っていくところが見えた。鳰がピックアップしておいた戦後アメリカ兵がたまり場にしていた場所の一つであり、レキは狙撃かつその近辺の見張りをしていた。

 

「アタリが出たらいいッスねー」

 

 レキの隣で鳰は他人事かのように能天気にコンビニで買ったメロンパンを食べながら眺めていた。実のところこれで3件目になる。ノブツナとジークのツーマンで突撃し、レキが後方支援、鳰がレキの護衛とナビをする組み合わせで行っているが手応えは無く、何か手掛りになるものでもいいから見つかってくれとノブツナは少しやつれ気味に愚痴をこぼしていた。

 

「ノブちゃんは焦り過ぎッス。もう少し状況を楽しめばいいのに」

 

 考えすぎだと鳰はケラケラと笑った。その横でレキは終始無言で微動だにしていなかったが、ゆっくりと口を開いた。

 

「鳰さん…少し聞いてもいいですか?」

「おおっ!?あ、あのレキレキがうちに質問ッスか!?何でも聞いてくださいな!好きな相手を堕とすテク?それともうちのスリーサイズっすか?」

 

 突然レキが尋ねてきたことに鳰は嬉しそうに驚き、ハイテンションかつオーバーリアクションで身構えた。そんな鳰とは正反対でレキは冷静に、静かに尋ねた。

 

「…ノブツナさんの過去をご存知ですか?」

 

 その言葉を聞いた鳰は無邪気さが無くなり真剣な眼差しで軽く笑った。

 

「へー…意外っすね。あのレキレキがそんな事を聞くなんて。何故です?」

「ノブツナさんは多くの人間を殺めたと言われました。それは本当なんですか?」

 

 鳰の方に視線は相変わらず向けておらず、ずっとスコープを覗いたままレキは聞いてきた。鳰もレキの方に視線を向かず、屋上の景色を一望した。

 

「…レキレキは気になったんですね。率直に言いましょう。答えはYesッス」

 

 鳰の答えにレキは初めてスコープから離れて鳰の方に視線を向けた。レキは驚く表情はなく、ただ物静かに鳰を見つめていた。

 

「確かにうちはノブちゃんの過去を本人から教えてもらったッス。そうじゃなきゃうちは組んでませんしね…ただ、よっぽど面白くない話になりますよ?いいっすか?」

 

 鳰はちらりと視線を向けた。レキは無言で静かに頷く。

 

「レキレキは聞いたことありますか?『武器の子供達(ウェポンズチルドレン)』を」

「‥‥数年前、メディアにあげられ問題になった中東やアフリカにいる子供の兵士達のことですね?」

 

 事の発覚はとある中東のアメリカ兵の駐屯地に武装勢力が侵入してテロを起こしたことによる。このテロは深夜に勃発したが一夜で鎮静させることができた。侵入した武装勢力10名の遺体を回収したが、全て10代にも満たない幼い子供達だったのだ。

 

 そんなニュースに衝撃を受けた兵士達やメディア、戦場カメラマン達が足を踏み入れ深く探っていくと中東のみならずアフリカ、内戦や内紛が起きている地域などの各地に同じような子供の兵士達が戦場に出て戦い、テロを起こす武装勢力の一員にもなっていたのであった。

 

「メディアや政府はそれを問題視して無くそうとして取り組んでいったけども、結局メディアも取り上げなくなり年を重ねるにつれて消えていった…と、まあ『武器の子供達(ウェポンズチルドレン)』とはそんな5歳~18歳代ぐらいの子供の兵士達っす」

「それとノブツナさんとどう関係が…?」

 

 『武器の子供達(ウェポンズチルドレン)』については聞いたが、ノブツナの過去とどう関わっているのかレキは気になっていた。鳰は頷いて話を続けた。

 

「ここからがノブちゃんが教えてくれた事っすよ。11年前まだノブちゃんが6歳の頃、4人家族でベトナムに海外旅行に行き家族とベトナム観光を堪能しいざ帰ろうかっていう最終日の夜の事、ノブちゃんファミリーはそこで運悪く強盗殺人に遭うッス。父は鉈で頭を割られて無残に殺され母と姉はレイプされて殺され、いざ自分が殺される番になったと思いきや、こいつは金になると言われてノブちゃんは拉致され人身売買されて奴隷として中東へ連れていかれたッス」

 

 気軽にノブツナの過去のことをさらっという鳰の話にレキは無表情に見えるが驚いたように目を見張っていた。

 

「中東へと渡ったノブちゃんはそこである武装勢力へと買われるッス。連れていかれた場所は薄暗く、血なまぐさく、不衛生で汚くて臭い場所だった。そこにはノブちゃんと年齢が変わらない子供達や自分よりも年上の子供達がいて、爆弾の製造や銃器に刀剣の扱い方、そして人の殺し方を教えられていたと」

「つまり…武器の子供達(ウェポンズチルドレン)の養成所ですね」

 

「その通り。ノブちゃんはそこで爆弾の製造や銃器や刀剣の扱い方と人の殺し方を学ばされ、戦場へ、テロを行う場所へと駆り出された」

「ノブツナさんは怖くなかったのですか‥‥?」

 

 レキの問いに鳰は首を横に振った。

 

 

「『泣いたら殺される』と言ってたッスよ。泣きわめたり、恐怖を抱いて怖がる子は使いもにならないというわけでその場で殺されるか、犯されて殺されるか、犬の餌にされるか。それに常日頃戦場に出るわ、地雷原の荒野を駆けて近くで走しっていた子が地雷を踏んで肉塊になったり、戦場で隣にいた子がスナイパーに頭を吹っ飛ばされてアートになるわ、暗殺を失敗して捕まって拷問されないように必死に逃げたり、いつ自分が自爆テロを起こす番にされるか…恐怖を捨ててただ無情に引き金を引いて戦ったと」

 

 レキは静かに頷いた。彼女の瞳には驚きの色が見える。彼がそんな過去を持っていたなんて知らなかった。

 

「ですが…そのノブツナさんがどうして日本に戻れて、武偵に?」

「転機はノブちゃんが5年後、11歳の頃っス。ノブちゃんは他の子供の兵士達と他の武装勢力に雇われてアジトで武器の準備をしていた時の事、突然外が騒がしくなったとノブちゃんは気になっていると…そこへ『奴』が現れたんっすよ」

「奴…?」

 

 レキが首を傾げると、鳰はゲスな笑みを見せて答えた。

 

 

「『地上最強』と呼ばれた男…範馬勇次郎ッス」

 

 範馬勇次郎。『地上最強の生物』と恐れられ、警察や武偵、更には自衛隊等、国の司法も兵力でさえ恐れられている化け物。なぜそんな怪物がそんなところに現れていたのか、鳰は話を続ける。

 

「『運動しているところに目障りなのがいたから壊そう』っていう理由でその武装勢力を潰しにかかったんだですって。言葉通り、勇次郎に壊滅され、大の大人達は抵抗して殺され、残りはノブちゃんを含めた子供達だけ。子供達は初めてみる怪物に蜘蛛の子を散らす様に逃げ、目の前でばったり出会ってしまって立ち尽してしまったノブちゃんだけに。そんな怪物にノブちゃんは‥‥勇次郎の手に噛みついた」

 

 あの勇次郎に噛みついたと聞いてレキは呆気にとられた。どうしてそんな事をしたのか、自殺に近い行為に違いない。

 

「今までため込んでいた恐怖と怒りが爆発して咄嗟に出てしまったと言ってたッスよ。指を食い千切るぐらいに、歯が折れるかもしれないぐらいに噛みついたけども無論、勇次郎には無駄だった。案の定、ノブちゃんは勇次郎に思い切りビンタされてノックアウト…自分は死んだかと思いきやノブちゃんは目を覚ますと勇次郎に担がれて空港に連れてかれていたッス。なぜ自分が殺されずにいるのか分からなかったところ、勇次郎は『ガキの癖にいっちょ前に持っていた殺意とその眼が気に入った。教育してやる』とか言って日本へ。徳川財閥のコネで新しい戸籍と名前を与えられ、ノブちゃんは本部以蔵の道場へ預けられあれやこれやと教えられたそうっすよ。そして徳川光成の希望と『今の自分の力で何ができるのか』、答えを見つけるためにノブちゃんは武偵に入ったッス」

 

 これがノブツナの過去…鳰はそう語り終えると大きく息をつき、珍しそうにレキを見つめた。

 

「ほんと珍しいっす…あのレキレキが人の事を気にするなんて。明日は雪が降りそうッスね」

「『風』がノブツナさんの過去を知りたいと言ってきたので…」

「『風』ねぇ…そっちも大変そうっすね」

 

 レキが言う『風』について鳰はそれ以上何も言わず、ビルの景色の方へと視線を変えた。レキも死線を変えてスコープを覗く。

 

「‥‥でもこれで納得しました。私は『銃弾』でノブツナさんは『銃』。だからノブツナさんは私を必要としているのだと」

「うーん…それはちょいと違うと思うッスよ」

 

 鳰は苦笑いをして首を横に振った。否定されたレキは何が違うのかと再び鳰の方へと顔を向けて不思議そうに首を傾げた。

 

「ノブちゃんなら『じゃあ誰が引き金を引くんだ』と笑って言うッスよ。ノブちゃんはそんなややこしい事を抱えず、ただ単純にレキを『大事な人』だと思ってレキの力を必要だとしてますよ」

「人…ですか。私は一発の銃弾。人の心とは無関係です」

 

 銃弾は人の感情も心も持たない。そう言い張るレキに鳰は笑ってレキの額に軽くデコピンをした。

 

「もう鈍いっすねー…うちの経験上、自分を『モノ』だとか『心や感情が無い』とかいう人間はいないっすよ。誰も心や感情をちゃんと持っていて、それをただ隠して偽って着飾っているだけ」

「そう…なんでしょうか…?」

「その通りッス。レキレキは素直になるべきっすよ」

 

 そう言い終わると鳰は再びコンビニの袋からメロンパンを取り出して美味しそうに食べ始めた。

 

___

 

 

「ヘックショォォンッ‼」

 

 誰かが噂をしているのか、埃っぽい部屋にいるからか、ノブツナは大きくくしゃみをした。鳰がピックアップしたこの廃屋ももぬけの殻のようでハズレのようだ。警戒を解いたノブツナはため息をついて頭を搔く。

 

「ここもハズレか…これまた見つからないな」

「またか‼もう疲れた!」

 

 未だに戦闘がないとジークは駄々をこき始める。駄々をこねたいのはこっちだとノブツナは項垂れた。このままだとまた何も成果を得られない。ジークがプンスカしながら後ろの壁を叩こうと手を押すと、押戸のように開いた。

 

「マジか、隠し部屋か。ジーク、でかした!」

「HAHAHA‼どうだ、そこを予測して駄々をこねたんだぞ!」

 

 ドヤ顔で自慢するジークを無視して隠し部屋へと入る。隠し部屋も埃まみれだったが、明らかに埃が被っていない机と最近使ったと思われるランプ、半田鏝や空き瓶、炸薬が抜かれた大量の銃弾や砲弾が置かれていた。そして机の下にはキャンディーの包み紙が2つ捨てられていた。

 

「…手掛りは見つかった」

 

 昨日まで、若しくはついさっきまで、ドリアンはここに潜んでいた。そしてここで何をしていたのか見当がついた。

 

「IED‥‥即席爆弾を作ってたのか」




 IED、即席爆破装置はこんな感じかなーと…よくフィクションや映画である隠し部屋か暗い所で爆弾の製造。そんなシーンも好きです

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