心が産まれる、魂を創るRPG【テイルズオブクリエイティア】   作:風見 桃李

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第一章
始まりの神話


昔、それは遥か昔、精霊が生まれたばかりの時代に、時の精霊と源の精霊が戦いあった。

 

理由は双方の意思。

時の精霊は時が進むが如くゆっくり人を育めと言った。

源の精霊は細胞が爆発的に出来るが如く…その世界に精霊の力を注ぎ人を育めと言った。

 

どちらも正しかったのだろう、原子の精霊も、自然の力を司る精霊達も何も言えなかった。

 

やがて時の精霊も源の精霊もその戦いで力が尽き果てそうになった。

そこで二つの精霊は妥協点として二つの力を融合させ二人の人間を作り上げた。

 

それは時の精霊寄りの力を持つ人間と無の精霊寄りの人間。

 

どちらかが世界を前進させた時、世界を統一した時、どちらかの精霊が正しかったと証明させるために。

 

 

――――――――――――――――

 

 

音歴0001(ローレライれきマルマルマルイチ)

 

新たな精霊が見付かる度、その精霊に敬意を払い、それに所縁の歴を変える世界 パラケルスス。

そんな世界で500年ぶりに音の精霊 ローレライが見つかって1年が経っていた。

 

ローレライを見付けた精霊学者のアジューカス・エヴェルレッテ博士は今日、ローレライと契約をする。

いつか、近い未来に世界に災厄が起こった時、力を貸すと…

 

「ローレライ、それは私が生きてるというか…私がちゃんと動ける、走り回れる年の間に来るんだな?」

『…そうだ、時の霊域の守護者の君にも』

「エヴェルレッテ家がその霊域の守護者だって言うのは知らない、それに私は血筋に興味がなくてねぇ。…残念だがローレライ、どちらに着くかは私が決める、いいね?…ふむ、だがローレライ、君はどちらに着いても構わない」

 

アジューカスがそういうとローレライと呼ばれた淡い光はそよ風に吹かれるように揺らいだ、アジューカスのことに納得を、理解をしていない。

『何故?』

「君と喋ってわかったことがある、君達精霊は私達より…そう、心がとても発達しているようだ。だからこうなったんだろう、我が子達の教育方針で大喧嘩、今の時代にこうなるとはねぇ…」

 

そう言うとアジューカスは呆れつつ口から笑いが零れる、まさかそんな事態に自分が巻き込まれるとは思いもしなかったからだ。

さらにそれは今ではない、いつか先の少し年を取った自分が巻き込まれる、いつかもわからない不確定なのに起こるのは絶対という確定事項。

そう考えているとローレライはボソッと呟いた、その事にアジューカスは疑問を持つ。

『我が子達の…ならば音色紡ぐ子は我の子よ』

「私が君の子?なんでそうなるんだい?」

『音色紡ぐ子よ、我と同じ音色を紡ぐ者よ。我を召喚出来者なのだ、音色紡ぐ子も我の子であろう』

 

アジューカスはその事に何か嫌なことを思い出したかのように話を終わらせる、ローレライに別の話を切り出す、それは契約の話。

「…そう、かい、つまり召喚出来れば皆我が子…か。さて、ローレライ、契約をちゃんとしようか、 そろそろ仮契約から本契約をして精霊界に帰りたいんじゃないかい?」

『我は…』

「…どちらでもいいって言わせないよう?私に託すんだろう?音の精霊 ローレライの力を。」

『…よかろう、どうか、闇無き世界に』

「闇はいくらでも生まれる。無くなりはしない、けど契約をするんだ、これは誓う。」

 

アジューカスはローレライの前に立ち声を紡ぐ、その声は堂々と、その年にしては威厳を持つ声。

「…我を意味する契約名は音色紡ぐ者なり、人成り立つ名はアジューカス・エヴェルレッテ、ローレライよ!闇を持つ者を魔の者にせん為に我は誓おう!一人でも多くの者を助けると!」

 

 

 

とある部屋に音が響く、その部屋の床には陣が形成されそこから微々たる光が集い舞い踊る。

その時ローレライは一瞬人の形になった、だがそのまま光を発し何処かへと消えた。

しかしそんな呆気ない終わりでもアジューカスには確信があった、契約は成功したと。

 

 

 

時は15年経ち、音歴0016(ローレライれきマルマルイチロク)の現在、テセアラ・シルヴァラント王国の城のとある廊下、それも日が昇る前、そこに二人の男女が歩いていた。

「ハードヴィック隊長首席、私の本日の予定は」

「はい、本日は朝食を取り次第書類に不備がない限りサインを、軍や評議会からの書類が30枚貯まっています。そのあと時間が空き次第、隊長格を集めて現在の各隊の戦力バランスや武器の不具合等、大丈夫かを隊長達に報告してもらうことになっています」

「ん、あぁ、先週俺が提案したやつかぁ」

「おい騎士団長閣下、人がいないからと言って口調の乱れはやめろください」

 

「ふっ、君が一番乱れているガッ!?ふぅヴゥゥッ!足を踏むな…!痛い…!」

 

「あと昼食取り次第姫様とお話を、その後剣術指導です、夕食まで」

「スルーするな…!はぁ、まーったく、何故姫様は剣術を覚えたいんだ?何を見てそんなものに興味を…」

「冒険系の小説、時の王と無の剣士 時の王編だったと思います」

「…無の剣士に憧れ?」

「無の剣士と時の王は敵の親玉です、その二つを退治にしに行く時の剣を操る時の勇者かと」

「ふーん…で?何でお前知ってんだ?やけに詳しいな」

「拾われた当初は姫様と仲良くさせてもらったので、今も仲良いですが」

「そうだったな…って!無断で姫の所に行くな!」

 

足を踏んだ彼女はゼクナス・ハードヴィック隊長首席、王国一の剣の使い手であり美貌の持ち主だと言う。

金の色をした絹のように美しい長い髪、海のように青い瞳、陶器のように傷がないと言われる白い肌に長い手足、身長が高いから取れるバランスでありその上出るところは出てる素晴らしい体型。

それであり王国ーの剣の使い手ならば、皆が良い意味でも悪い意味でも彼女を狙う。

 

そんな彼女の上司であり騎士団のトップの彼はユリエル・ディワインド騎士団長閣下。

王家を含む貴族、騎士団、そして街の皆達の投票により選ばれた騎士団の団長である。

投票と結果に時間は掛かるが二週間掛けて選ばれる実力と人望は確かなものである。

そしてこの国では珍しい白髪のような銀色の髪にルビーのような紅瞳、ちなみにルックスは下町のおばちゃん達にも貴族も公認のルックス。

 

そんな彼は魔術はからっきしだがどの武器も体術も得意気に操り一人で数百の魔物の群れを撃退させる、そんな彼は国民が誇る騎士団長である。

だがそんな団長様なのに何故かこの部下、ゼクナス・ハードヴィックには頭が上がらないようだ。

「姫様との約束です、ハードヴィック♪いつまでも仲良くいたしましょうねぇと。」

「姫様そんな喋り方じゃねぇよ!」

「そろそろ朝食の時間になります、閣下」

「え!?あー…朝食取る前に書類やりたかったのに…」

「いつまでもゆっくり歩きながら喋ってるからです、早く歩けよ」

「ふっ、うっせ!わかってるわ!」

 

そう言いながら彼らは笑っている。

今日もこの王国は平和です、そう、今は。

 

 


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