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寒いし、気持ち悪いし、嫌な予感しかしない。
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父も、たぶん殺したし、母も、たぶん殺した。弟も殺した。でも、あの子だけがわからない。嫌な予感しかしない。
父は二人いた。一人だけど二人。二人とも殺した。
母は、死にたがっていたから殺した。ちょっと間違えて痛い思いをさせてしまった。ごめんなさい。
弟は最初に殺していた。辛い思いをさせたくなかったから。
目を覚ましたら教室。夕方の、暖かい記憶。何もしたくなかった。誰かが声をかけてきて、嫌だった。うるさい。黙れ。
家に帰った。もう私は、部屋を出なかった。もうここから出ない。どこにも行かない。
そんな願望も、あまりにも長い時間が消し去った。
もうそこがどこなのかなんてまったくわからなかった。
あるのは、臭さと、寒さと、何かが近づいてくる感覚。
歩きたいように歩いていたら、おなかも空いて、疲れて、どうでもよくなって、最後の景色は白。白だった。
私の記憶はそれでおしまい。
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記録書について
・朝記された内容は未来の記録である。
・夜記された内容は過去の記録である。
・未来、過去、どちらかの記録が記された場合、もう片方は記されない。
・記録書は再生する。
・記述されたページを消した場合、その記録は消える。
・記された時間が、どの時間でもない場合、その世界の記録ではない。
・記録書に直接記した内容は、保存され、その世界が構築される。
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私は二人いる。
ルールだ。ルールを作らなくては。