死体の視界   作:叶芽

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 寒いし、気持ち悪いし、嫌な予感しかしない。 

 

 

 

 

 

◆ 

 

 

 

 

 父も、たぶん殺したし、母も、たぶん殺した。弟も殺した。でも、あの子だけがわからない。嫌な予感しかしない。

 父は二人いた。一人だけど二人。二人とも殺した。

 母は、死にたがっていたから殺した。ちょっと間違えて痛い思いをさせてしまった。ごめんなさい。

 弟は最初に殺していた。辛い思いをさせたくなかったから。

 

 目を覚ましたら教室。夕方の、暖かい記憶。何もしたくなかった。誰かが声をかけてきて、嫌だった。うるさい。黙れ。

 

 家に帰った。もう私は、部屋を出なかった。もうここから出ない。どこにも行かない。

 

 そんな願望も、あまりにも長い時間が消し去った。

 もうそこがどこなのかなんてまったくわからなかった。

 あるのは、臭さと、寒さと、何かが近づいてくる感覚。

 

 歩きたいように歩いていたら、おなかも空いて、疲れて、どうでもよくなって、最後の景色は白。白だった。

 

 

 

 私の記憶はそれでおしまい。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記録書について

 

 

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◆ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は二人いる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルールだ。ルールを作らなくては。 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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