みんな死んでしまった。これからどうしよう。
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「唐突ですが、私がここから『記録書』に記す内容には悪意が込められており、非常に危険です。注意してください」
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「私の両親は間違いなく私に死んでほしいと思っていました。今も思っているでしょう。間違いありません。でも殺そうとはしてこないのです。ただ祈っているだけです。神様に対して祈っているだけなのです。どうかあの子を殺してください。神様に対して祈っています。殺してください。死なせてやってください。事故死でも、殺人でも、自殺でも、何でも構いません。早く。どうか早く。
私はある日、近所で交通事故があったのを知りました。ガードレールの傍で花を飾っていた人が居たので、訊きました。その事故で亡くなった人は一人。私と同い年だそうです。それから、私はその近くを通る際には必ずその人を想うようにしました。その人のことは決して忘れないようにしよう。遺族の方や、その人の友人がその人を忘れる日があったとしても、私は一日たりともその人のことを忘れない。絶対に忘れない。そう決心しました。
それから、私の知る人が一人一人と、死んでいったり、消えたりしていきました。あの人がしてくれたのです。間違いありません。あの人は私の神様なのです。唯一の神様。私だけの。だから殺して、殺して、殺してって毎日、私は祈り続けました。もっと、もっと、もっとって。そしたら死ぬ。もっと死ぬ。死んでくれるし消えてくれる。でも、お父さん、お母さん。お父さんとお母さんは、死なないでね。 」
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何時間くらい寝ていただろうか。時計は、ベッドのすぐ近くにあった。3時、くらいかな。たぶん。日の光の入らない部屋なものだから、午前なのか午後なのかわからない。ただ、寒むくも暑くもないし、ベッドでの寝心地は悪くなかった。眠くはなかったけど、布団にくるまっていると気持ちいい。もうしばらくだけ、目を閉じていよう。おやすみなさい。