凪は悩んでいた。
神通から好意を抱かれていると長門は言う。それも普通の好意ではなく、恋愛感情を含んだ好意なのだと。
神通自身の口から打ち明けられてはいないが、その時に備えて答えを用意しておかなければならない。
神通のことを思い返す。彼女とはここに着任して以来の付き合いだが、その距離が縮まったのはやはりあの日以降だろう。
泊地棲姫との戦いのあと、宴会で自分の気持ちを吐露した日だ。あの日、彼女は凪の本心を知った。見舞いの席では、彼女は凪に膝をついて誓いを立てた。艦娘と提督は部下と上司の関係だが、それはまるで騎士が主に忠誠を誓う一幕のようだった。
そう、あの日は恐らくただの主従の関係を改めて認識するだけのものだっただろう。
それでも二人の距離がより縮まったのは確実だ。関係は違えど、その心の距離は確かに近くなっていたのだから。
実際、神通がまるで秘書艦のように日常においても凪を支え、世話をするようになっている。そうでなくても戦いとなれば水雷の長としての目覚ましい活躍を見せ、頼もしさを示していた。それは部下である水雷組らの指導においても変わらない。
呉鎮守府がこの1年でこれだけの戦果を挙げられたのは、凪や長門だけでなく神通の功績があってのものといえる。
そんな彼女の好意を自分は受け止められるのか。
凪は、難しく考え続けている。
何せ誰かと付き合ったことすらない人生を歩んできたのだ。元より女性と話すことすら苦手としていた。こういうシチュエーションを考えたことすらない。
もっと単純に考えれば楽だったろうが、そうすることが出来ないでいた。
人間と艦娘、もとい人ではない存在との恋愛という構図が、凪を難しく考えさせていた。
素直に好きか嫌いか、と考えることが出来ないのだ。
それでいえば嫌いなはずはない。むしろ好きな部類に入る。
見た目も改二によって更に美人になり、無意識にそれを褒めてしまうほどに好印象。こんな美人と付き合えるとなれば誇りに思えるだろう、というくらいには思っている。逆に自分が付き合ってもいいのか? と感じるくらいには美人である。
なら付き合えばいいだろう、と第三者は思うだろうが、でもな……となってしまうのだった。
そうして唸り続け、作業にも手が付けられない。
そんな凪の思考を止めるのはパソコンに入った通信だった。
「健勝かしら? 海藤」
「ぼちぼちですね。おはようございます、美空大将殿。本日はどのような?」
「前々から調整していた新しいシステムが完成したから、配布を開始するわ。受け取りなさい」
そう言って一つのデータが送られる。結構容量が大きいファイルだ。
そこには「ケッコンカッコカリ」という名前が付けられている。
「……ケッコン?」
「ええ。海藤は知っているでしょう? 艦娘の練度には限界があるということを」
「はい。数字でいえばレベル99でしたか。そこが最高練度となっているのでしたね」
「しかし艦娘の力を調べてみれば、改二とはまた別にその奥に更なる力が眠っていることがわかっていた。私はそれを何とか引き出せないものかと考え、色々と試行錯誤を重ねたわ。その結果、ようやく一つの手段を確立させた。それがこれ、『ケッコンカッコカリ』よ」
「ケッコンって……やっぱりあの結婚ですかね?」
「そうね。この名前を付けるに至ったきっかけは私ではないのだけど、システム的にこういう形で落ち着いたわ。では、説明するわよ」
結婚か、と凪は苦笑を浮かべる。その前段階のことで今まさに悩んでいるのに、よもやその上のものがいきなり放り込まれるなど誰が想像するだろう。しかし新たなシステムとなれば説明を聞き逃すわけにはいかない。こほんと空咳一つして気持ちを落ち着かせ、拝聴することにする。
美空大将によるとこのシステムは限界レベルを引き上げるものになっている。
それを可能とするのが艦娘との縁の力、それからもたらされる絆という繋がり。主である提督と、部下として付き従う艦娘との間に結ばれた縁による絆の力によって、艦娘の力を更に増幅させるという。
このシステム上、艦娘をただの兵器としかみなしていない者にとって、限界レベルを引き上げることは不可能となっている。
二人の繋がりを形として証明するのが特殊な指輪であり、またそれに伴う書類である。そこに二人の名前と血判を押し、二人の間には確かな縁の力が存在することを証明する。これを以ってして指輪を通じ、艦娘の奥底に眠っていたものが解放されるのだとか。
「…………ますますオカルトじみてますね。よくこんなシステムを確立させましたね」
「とある神社の力を借りたものでね。海神のものと、縁結びのものと……まあ、色々と伝手を回ったのよ。オカルトと科学の融合はもう艦娘自体がそのようなものだし。今更というものでしょう」
神社? と首を傾げるが、海神を祀る神社というと大湊の宮下がそうだったか、と思い出した。そういったところに協力を求めることで確立させたシステム。
それが、ケッコンカッコカリだという。
「……カッコカリというのは?」
「結びつきの強さを証明して力を解放させているけれど、あくまでもシステムによるもの。結ばれてはいるけれど本当の結婚ではないわ。だからカッコカリ。既婚者であっても未婚者でも大丈夫。人間の伴侶をこれから見つけても問題ないわよ。そしてシステムでの結びつきだから、艦娘と何人ケッコンしても問題なし。強い絆で結ばれている練度最高の艦娘と、どんどんケッコンカッコカリしていっていいわよ」
「つまり、重婚オーケーと」
「いうなればジュウコンカッコカリね。その分、艦娘につける指輪を多く必要とするけれど」
「私の指輪も増えるんですかね?」
「提督には指輪は必要ないわよ。指輪は艦娘の中にある秘めた力を解放させるものだから。提督が付ける必要はないの。形だけでも欲しいというなら、ただの指輪を送るけれど?」
システムでの結婚。だが、そのシステムを確立させるには、提督と艦娘の間に確かな絆を必要とする。故に両者の感情は必要不可欠。少し矛盾しているが、これは艦娘がさらに強くなるために必要なもの。
より上を目指すのであればこのシステムを利用するしかない。必要ないならば現時点での最高練度に留めるだけでも問題はない。選ぶのは提督だ、ということかと凪は考える。
だが名前が名前なのでどうしても結婚がちらついてしまう。しかも神通の気持ちを知ってしまったのだ。意識せざるを得ない。
だが考えようによっては、このシステムによって神通の気持ちに答えを出すことが出来るだろう。いや、神通のことだ。これはあくまでも更に上に行くための結婚なのだ、とどこかで遠慮したように考えてしまいかねない。
しかしこのシステムを成功させると、両者の間に確かな絆があることを証明することになる。
とはいえケッコンカッコカリをするには練度が最高の状態でなければならない。今の神通はそれに届いていない。長門も同様だ。つまり呉鎮守府がこのケッコンカッコカリを実施するのはまだ先ということになる。
だが、神通のことで悩んでいた凪に一つの解決策が示されたのは間違いない。そう考えていた凪に何かを感じたのか、美空大将が首を傾げて「何か悩み事でも?」と問いかける。
「いえ、特には……」
「そういう風には見えないわね。ケッコンカッコカリをする相手についてかしら? それともまた別の何かか。よければ話を聞くわよ?」
少し逡巡したが、凪は美空大将に神通のことを打ち明けた。静かに話を聞いていた美空大将だったが、凪が悩んでいる様子を見るとやれやれとこれ見よがしにため息をついた。
灰皿に置いていた煙管を手にすると、何度か紫煙を吐き出し、「実につまらないことで悩んでいるのね? 青臭いわ、海藤」と呆れたように言う。
「こういう男と女の問題はね、結局は愛しているのか否かで答えが出るものよ。艦娘だろうと人外だろうと同じ事。最終的にはそれが答えを出すものよ」
「そんな単純でいいんですか?」
「いいのよ。しかも今回は艦娘なのでしょう? なら立場をとっぱらって考えればいいじゃないの。海藤、貴様は神通の事を愛しているのか否か。それで答えを出せばいい。どうなのかしら?」
「そりゃあ、嫌ってはいないですよ。むしろ好きですけども……」
「好意はあるのね。ならばそれが愛情に至っているのか否かで結論を出しなさい。それにケッコンカッコカリがある。愛しているならばその気持ちを添えて施しなさい。神通の好意を受け入れられないならば施さなくて結構。それで、しまいよ」
ね? 簡単でしょう?
そう言わんばかりの眼差しでの答えだった。
そして貴様は色々と考えすぎる、と呟いて煙管を咥える。こうまではっきり、ばっさりと切り捨てられれば爽快だ。今まで悩んでいたのは何だったのか、と思えるくらいのもの。
「それにうじうじと悩む男は見てられないわ。それでは気持ちも冷めてしまいかねない。だからこそさっさと結論を出しなさい」
「…………」
「ま、愛してなかろうと限界突破をするだけなら、貴様達でも問題なくケッコンカッコカリは出来そうではあるけれどね」
「……いや、それを言ってしまえば色々とまずいのでは?」
「所詮カッコカリよ。愛はなくとも深い忠誠心や信頼感があれば成立するわ。これはあくまでも両者の想いがあって初めて成立するもの。貴様が曖昧な感情はあっても、信頼感や好意はあるのでしょう? ならば問題なく成立する。限界突破可能な艦娘がいれば、どんどんジュウコンカッコカリをしても問題はない。当然神通にはその旨を伝えねばいけないけれどね?」
愛憎劇なんてされれば目も当てられない、と冗談めかして手を広げる。
凪もこれには「最悪だ……」と心の中で思うしかない。これは擬似的な一夫多妻だ。一夫一妻の日本においてはあまり歓迎されないものである。
しかも君の気持ちは受け入れられないけれど、一応妻とするよ。同時に他にも妻を娶っておくね。という形なのだ。言葉にしてみるとよりこの最悪なイメージが浮かびやすい。
「私はあくまでも更に力を得る方法を提示しているだけに過ぎない。判断はそれぞれの提督に委ねられる。一夫多妻をするも良し、一人に定めるも良し、ケッコンしないも良し。あくまでもシステムと捉えるのか、感情を含めて考えるのか。それは貴様らの心に任せられるわ。……そんな風に言ってしまえる私のことはどうとでも思うといい。所詮私は提督というよりも職人気質なものでね。出来上がったものをどう使うかは使う者の心次第よ」
「やはりあなたにとって艦娘は兵器ですか?」
「そうね。でも心があることは認めている。あれらは私達の手で作られた兵器だが、私なりにもあれらに対して愛情はある。道具は使う人次第と人は言うけれど、正にその通り。道具が幸福であるかどうかもまた、使う人次第。そして作った側としては、道具も兵器も幸福であってほしいと願うのもまた当然でしょう?」
故に、と紫煙を吐きながら美空は微笑を浮かべる。
「貴様の神通にもまたしっかりと答えを出しなさい。私にとって艦娘は兵器であると同時に我が子も同然。子の恋愛沙汰となれば、どちらかといえば愛ゆえに崩壊した結末よりも、良き結末を迎えてほしいと願うのも当然のこと。曖昧なもので終わらせることは許さないわよ、海藤?」
艦娘達は兵器であると認めつつ、その上で自分の子供のようにも思っているときたか、と凪は瞑目する。確かに世の中には自分が作った道具や作物、そして育てたペットなどに対して自分の子供のような感情を抱く人がいる。
美空大将は艦娘を兵器と口にしているが、その内には我が子と捉える心があったのだ。黎明期より艦娘というものを構想し、次々と生み出してきた美空大将。それでいて彼女達を更に改装する技術や装備を作り上げ、今回は新たなシステムも構築した。
大将まで上り詰めてもなお、第三課で作業もする根っからの物づくりの職人のような人物。ならばそのような感情を抱いても不思議ではなかった。
ならば彼女の想いもまた裏切ることなど出来ない。神通が打ち明け来た際には――
「――承知しました。しっかりと答えを出させていただきます」
「よろしい。……さて、海藤。今回は他にも要件があってね。時期が時期だから察していると思うが、本年度のアカデミー卒業式は無事終えているわけだけれども」
「ええ、確かにそんな時期ですね」
「成績上位者は提督就任の権利を得る。これにより、間もなく運営開始となる新たな泊地などに着任してもらうことになっているわ」
そういえばこの冬にショートランド泊地などが建設されていたか、と思い出した。ということは今年の卒業生らはそこに着任していくことになるのだろう。
「貴様にはその卒業生の一人である私の息子の移送を頼みたい」
「息子……そういえばいらっしゃるという話がありましたね。そうですか、提督になられるのですか。おめでとうございます」
「ありがとう」
だが、美空大将の表情はその息子の提督就任を喜んでいるようには見えない。視線を落とし、渋い表情を浮かべている。どうしたのだろうか、と凪は「……どこか不満でも?」とつい問いかけてしまった。
「……私としては
「その香月さんには問題でも?」
「……あれは恨みや怒りを抱えて上位に食い込んだ。確かに、それらは己を成長させるための燃料としては機能する感情。しかしそれを主として提督としての業務に当たるものではない。そうしていれば、いずれ歪む。それを矯正出来ないようでは、提督になどなるものではないわ」
恨み、怒り……つまり、美空大将の長男である
彼の死によって彼女は変わり、それまで以上に仕事に明け暮れて結果を出し続けてきた。同時に大本営の在り方を変えるためにも動いてきた。
だが変わったのは彼女だけではなかったのだ。次男である香月もまた、兄の死によって強く提督になろうと決意したのだろう。それは兄を殺した深海棲艦を殲滅するために、という強い恨みや怒りの感情からくる動機だ。
復讐のために提督になろうとしている。
美空大将はそんな感情で提督になるものではないと感じているから、いい気分ではないということか、と凪は推察する。
「その事は、香月さんに伝えたのですか?」
「ええ、伝えているわ。しかし、聞く耳は持たないわね。……仕方ないわよね。私もまた星司の一件があったからこそ、大将にまで上り詰めたのだから。それを知っているのだから、香月もまた自分もそう在ろうとしている。例え復讐だったとしても、それによって深海棲艦が減るのならば何も問題ないのだとね」
提督の目的は深海棲艦との戦いに勝利すること。例え復讐であったとしても、それで大きな目的が果たされるのだから許容されるべきだ。それが美空香月の言らしい。
人類の共通の敵なのだから、自分の復讐は許される戦いである。
何より、それで成績上位で卒業したのだ。自分の行動原理は間違っていない、とある意味証明してしまっている。止められる謂れはないのだろう。
「……ま、そんな香月をよろしくしてやってちょうだい。何ならパラオに行く前にトラックに寄ってもいいわよ。ちょっと近い方なのだから、トラックの東地と会わせて、近所付き合いをさせなさい」
「わかりました」
それで今回の通信を終えた。
移送の日程は追って伝えるとのことだったので、指揮艦の整備を近日中にさせることにしよう。
久しぶりに茂樹に会えることになるのだ。それについても少しだけ楽しみになってくる。
そして美空香月か、と凪はその名前を思い返す。
あの美空大将の息子。復讐に囚われているようだが、いったいどのような人物なのだろう。
そして、母親と弟を変えてしまうほどの影響力を持っていた美空星司とはどんな人物だったのだろう。
他人にあまり興味を持たない凪だったが、ちょっとだけ気になってしまう。
従妹である湊も少しだけ彼について話していたが、何でも凪と少し似た人物だったらしい。生きていたらもしかするといい友人になれたのかもしれない。そう考えると、あまり詳しくはないが惜しい人物を亡くしてしまったのかもしれない。
「――――へえ? 確かにそんな時期だったけど、そうか。その日は迎えていたんだね」
報告を耳にした中部提督は目を細める。
その手は常に動いており、視線はずっとモニターに映し出されているものに向けられている。
「そうかそうか。アカデミー卒業の時期か。となると? 泊地の建設は順調だし、新たな提督着任のためには、提督を送らなければいけないね」
タン、とコンソールを叩く手が止まる。少し考えるように腕を組み、後ろに控えているヨ級へと肩越しに振り返り、指を立ててやる。
「日本近海から引かせていた戦力を戻して。提督を泊地に着任させるためには海路を使うしかない。となれば、護衛のために呉鎮守府が動くはずだ。恐らく、あの人ならば彼に依頼するだろう。呉鎮守府が動いたその時こそ、戦いの始まりだよ。そのタイミングを見逃すな」
「――――」
御意、という風にヨ級が一礼し、移動していく。だが中部は「――あ、それと」と呼び止める。
「呉鎮守府に潜ませているあの子に可能ならば伝えておくように。そろそろ一時帰還を。こちらから別の者を入れ替えて潜ませるから、とね」
「――――」
中部提督は予感していた。気づかれていないのならば僥倖だが、勘がいいならば何かがおかしいと思われる頃合いだろう、と。スパイとして捕まえられる前に、可能ならば逃げておくべきだと。
スパイは正体を知られないように立ち回り、可能な限り情報収集して伝える役割だ。腕利きならば気づかれるヘマはしないだろうが、生憎と潜ませているのは別に潜入の心得が大いにあるというわけではない。頃合いを見てどうか逃げ切ってほしいと願うばかりである。
さて、と作業に戻る中部提督。
陸上基地の艤装の詰めはもうほとんど済んでいる。レ級の調整は間に合わなかったが、今回はあくまでもデータ収集という名の実験でしかない。そのためレ級が投入出来なくても特に問題はないだろう。
あとは新武装だろうか。
ウェーク島の陸上基地の武装の一つとして、艦載機の一種を作ってみた。
それは見た目でいえば護衛要塞のような球体に歯がついているものだ。だが色合いは黒く、角のような、あるいは見方を変えれば獣の耳のような突起が二つ付いている。
それは彼に時々すり寄っているあの黒猫のようなものに近い。つまり、黒猫の頭部を模したようなものにも見える。
「んー……とりあえず形は出来たか。新たな艦載機モデルとしてはこれが下地でいいかな。これもテスト飛行を経て、データ収集のために運用してもらうとしようか」
ヲ級らが使用している艦載機も長く使ってきたものだ。エリート、フラグシップ、そして改フラグシップとヲ級が変化し、それに合わせて艦載機もグレードアップを図ってきた。
しかし艦娘達もまた改二となり、装備もまた新たなものを追加してきているという報告が挙がっている。
となれば深海側もまた新たな装備を整える時だ。
レ級が何やら飛び魚のような艦載機を持ち出しているが、あれは形状からしてレ級にフィットしているものだ。ヲ級らには積み込めないので却下する。
限定的なものではなく、汎用的なものが必要だ。その一歩として艦載機の開発から始めたのだ。そのプロトタイプがこれだ。
見た目がこうなったのは、いつもすり寄ってきている黒猫を見ていたら、これもいいかもしれないと形成していった結果である。それに今まで使っている艦載機と同じような大きさにしてあるので、搭載問題も解決する。
「実に楽しみだね。その時は近いよ、呉鎮守府。良いテストになるといいね」
微笑を浮かべてそう独り言をつぶやく。
中部提督の準備はほぼ完了している。あとは南方提督による陸上基地のテストデータの用意だ。それと囮として充分な戦力も必要だろう。ソロモン海戦で多くの戦力を失っていたが、果たしてそれを補充できているのだろうか。
足りなければこちらから深海棲艦のデータを送って補充させるのもいいか。
となると彼にもテスト運用をしてもらうのも手だろうか。
そんなことを考えながら中部提督は作業を進めていくのだった。