呉鎮守府より   作:流星彗

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窮地を変えるもの

 響くのは衝撃音。立ち上る(ひかり)とともに、水柱が立ち上った。

 次いで響くは爆発音。それらは赤の力を纏った白猫艦載機による攻撃ではなかった。その白猫艦載機らが次々と攻撃され、撃墜していく音だった。

 何が起きているのか?

 それは、攻撃を受ける覚悟を決めていた武蔵だけではなく、これから試し斬りをするべく構えていた深海吹雪自身もそうだった。何故自分は攻撃を受けて体勢を崩してしまっているのか。

 それによって解き放たれるはずだった刀の一撃、纏われた力が行き場を失い、一部は霧散し、一部はあらぬ方へと飛んでしまう。何事かと深海吹雪を庇うはずだった深海山城も振り返り、しかし暴れる赤の力の一部が飛来し、その体を焼いていく。

 熱い、痛いと思わず手を振り払ってしまうが、それだけ彼女も困惑していた。何故とどめの一撃が止められているのだろうかと。そうして困惑している深海山城を巻き込むように、最期の抵抗をしようとしていた武蔵は、そのまま砲撃を敢行。放たれた一撃は、深海山城と深海吹雪を捉え、吹き飛ばす。

 

「ふぅ……いったい、何が起きている……?」

 

 攻撃を受けず、こちらの攻撃を通したことに小さく安堵の息をついた武蔵だが、混乱はしている。襲い来るはずだった白猫艦載機は撃墜され、深海吹雪の体勢を崩させた攻撃がどこからかやってきたことに間違いはない。

 でも、一体誰がそのようなことをしたのだろう?

 見上げれば、光を纏う艦戦が次々と白猫艦載機を撃墜させているのが分かった。あれだけの動き、練度、そしてあの淡い光を纏うもの。どう考えてもパラオ泊地のものではない。

 吹き飛ばされた深海吹雪も、何とか受け身を取って起き上がり、攻撃を吟味する。奇襲の一撃は足元にきた。ということは自分は雷撃を受けたことになる。だがどこから雷撃を仕掛けてきたというのか。

 雷撃をしてくるであろう存在は自分の前にいた。側面から攻撃を受けたのだから、それらは除外される。味方からの誤射? それもありえない。そのようなヘマをするような状況ではなかったはずだ。

 

(まさか、潜水艦? 一体誰が、どこから……!?)

 

 候補に挙がったのは海中から忍び寄るスナイパー、潜水艦という存在。今回の戦いにおいて深海南方艦隊は、それらを連れてはこなかった。迅速な作戦遂行を考えており、また拠点攻撃をする予定だったため、潜水艦は必要ないだろうと考えていたためだ。

 だが、それによって自軍の潜水艦の反応を考えなくて済む。深海吹雪はソナーを用いて走査する。すると、潜水艦らしき存在が素早く離れていくのを感知した。どうやら潜水艦の艦娘の一人、伊19のようで、方向からして北東であり、それは今、白猫艦載機を撃墜させている艦載機らが飛来した可能性がある方角と一致している。

 北東には何があるのか、その答えはすぐに届いた。

 

「吹雪、敵襲ダ。艦娘ノ援軍ガ襲撃を仕掛ケテキタ」

「何ですって? どこにそのような存在が」

 

 と、驚きの表情を浮かべる深海吹雪へと、艦載機の一部が急降下してきた。察知した深海吹雪と深海山城が回避するも、放たれた魚雷によって逃げ先を誘導され、そこに合わせて艦爆による爆弾投下が命中する。

 その艦載機の動きは、明らかにパラオの空母の放つ艦載機のそれとは違う。洗練され、なおかつ幾多の戦いを経てきた猛者ならではのものだった。今までの余裕が崩れ、深海吹雪の表情に苦々しさが浮かび上がる。

 戦場の空気が、一気に変化しつつあった。

 

 

「援軍? 一体誰が……?」

 

 パラオ泊地の指令室の中で、香月は茫然としたように呟いた。よもやここで誰かが助けに来てくれるとは思ってもみなかった。こちらからの救援要請は妨害によって外へとつながらなかったため、どこにも届いていないはずだ。

 パラオ泊地のピンチを一体誰が察知して駆けつけてくれたのだろうか? そんな疑問を感じていると、ノイズが走り出す。伊良湖が何とかそれを繋ごうとすると、少しずつノイズが収まっていき、「――よう、聞こえているかい、坊ちゃん?」と、聞きたかったような、聞きたくなかったかのような声が聞こえてくる。

 

「まさか、あんたは……」

「そう、ピンチの時に駆け付けてくれる頼もしい男、それが俺だよ。いやぁ、指揮艦の航行性能が上がったのが幸いしたなあ、おい。お前の母ちゃん、美空大将に感謝するんだぜ? おかげさんで迅速に駆けつけることができたんだからよお。以前までのものだったら、絶対間に合わなかったぜ」

 

 モニターには気さくに笑う東地茂樹の顔があった。親指を立ててみせる余裕さもあり、その姿が、今までにないくらいに頼もしく香月は見えた。思わず息を呑み、そして声を震わせ、安堵の息をついてしまう。

 今まで抱いていた緊張感が少しずつほぐれていく感覚もあった。それほどまで、絶望感に包まれていた空気が、ゆっくりと霧散していくのを感じていた。彼という援軍が、どれだけ頼もしく感じるのか、それを香月は知っている。

 これまでの演習によって彼の実力は十分に理解している。トラック艦隊による援軍到着、それはきっと、この状況を大きく変えられることを信じられるものだった。

 でも、一体どうしてだろうかという疑問もある。

 

「どうしてここに? 援軍要請は送れなかった。あんたが、この状況を知る術なんて……」

「おいおいおい、俺を舐めてもらっちゃあ困るなあ。南方の様子がおかしいってのは知ってたからなあ。定期的にソロモン方面、そして一応お前さんの方にも、偵察隊は派遣させてたんだよ」

「……え?」

「南方が動いたってのは先日の一件で理解していた。それに乗じて中部も動くかもしれないってのはあったからなあ。奴らが拠点攻撃をしてくるんなら、危ないのはラバウル、トラック、そしてまだ運営が始まって間もないパラオ。どれかが狙われるだろうってのは何となく予想できた。だから俺は備えていたのさ。そちらに何度も向かってたのも、お前さんに力をつけてもらうってのはもちろんだが、襲撃されないかどうかを確かめるためってのもあった」

 

 果たしてその懸念は的中した。今日もまた演習でもしてやろうかと移動しつつ、偵察隊を各方面へと放っていた。その中の一つの偵察隊がパラオ泊地へと向かう深海棲艦の艦隊を捉え、茂樹のいる指揮艦へと報告。それを受けてすぐさま強化された機関をフルに稼働して駆けつけてきたのだ。

 こうした動きができたのも、茂樹の言う通り、指揮艦の航行性能が上昇した成果である。仲間の危機に対し、迅速に現場へと駆け付けられるようになったことで、こうして間に合ったのだ。大いに喜ばしいことである。

 

「……で、でも、オレなんかを助けるために……」

「はっ、気にするこたぁねえ。確かにお前さんは色々と面倒な坊ちゃんだし、生意気だが、俺にとっては大事な後輩だ。後輩のピンチに駆けつけねえ先輩がどこにいるってんだ? 少なくとも俺は、そんな薄情な振る舞いをするつもりは全くねえぞ。だから、諦めんじゃねえぞ後輩。お前が折れたら、艦娘たちの士気に関わる。顔を上げろ、前を向け。そして檄の一つでも飛ばしてやんな」

 

 その言葉に、香月は知らず、一筋の雫を零した。一度下を向き、呼吸を整え、顔を上げればそこには、強い意志を瞳に宿した顔があった。その変わりように、モニターの向こうの茂樹や、振り返っていた間宮と伊良湖に微笑が浮かぶ。

 

「各員、希望が来た。トラック泊地より、東地先輩が助けに来てくれたようだ。流れはこちらに傾くだろう。だから、耐えてくれ。艦隊が到達するまで耐えれば、勝ちの目が拾える。もちろん、危機的状況になれば、無理せず撤退を。その穴を何とか埋め、奴らをパラオ泊地へと到達させるな。ここが意地の見せ所だ。ここを凌ぎ切り、我らが救世主を熱く迎え入れてやろうじゃねえか!」

 

 香月の通信越しの言葉に、パラオの艦娘たちの心のエンジンにより火が灯る。補給へと戻った赤城も、指令室に向かって香月を何とか奮い立たせようとしていたが、その必要もないだろうと、再び戦場へと足を向ける。

 微笑を浮かべながら「出番、取られちゃったかしら」と、冗談めいたことが頭に浮かぶが、しかし自分よりも余程いい結果になったのは間違いない。航行しつつ補給した艦載機を放ち、戦場へと戻ることにする。トラック艦隊が来るまで耐えればいい、今までなかった目標が定められたことで、心に少しだけ余裕を持てるようになった。それだけでも、自分たちにとって大きな違いがあるのだから。

 それは赤城たちだけではない。実際に戦っている艦娘たちにも、その心の余裕が生まれ始めている。

 

「お待たせしたわ、武蔵。いったん下がる?」

「叢雲か。ああ、そうさせてもらおう。ここからは主力艦隊や援軍に任せよう」

「そうしなさい。お疲れ様。希望は来たみたいだし、何とか持ちこたえてみせる。あなたたちが作った時間、無駄にはしないわ」

 

 一時、パラオ泊地へと戻った一水戦の叢雲が、武蔵の前に出た。他にも阿武隈を除いた顔ぶれが揃い、加えて主力艦隊に属している空母三人以外のメンバーなども、いよいよ前線に出る。それと入れ替わるようにして、水上打撃部隊のメンバーとともに、武蔵が補給と修理のために一時パラオ泊地へと帰島する。

 他の艦娘にはないような武装を手に、叢雲は深海吹雪を見据える。マストを模したかのような長い得物を一度回転させて構えれば、「あなた、吹雪……ですってね?」と問いかけると、深海吹雪も叢雲を見据える。

 

「そういうあなたは……叢雲ですか。何か?」

「いいえ、このような形で対面することになるなんて、戦場(いくさば)とは数奇なものよね。先ほどは途中離脱したからと、押っ取り刀で駆けつけてみればこの状況。少しは落ち着いて砲を交えられそうね。いえ、それとも刃を交えた方がいいかしら、吹雪?」

 

 切っ先を深海吹雪へと向ければ、その言葉とともに噛みしめ、深海吹雪は目を細めた。叢雲のその佇まいからして、明らかに彼女は誘いをかけているのが目に見えてわかる。深海山城も何を言っているのだ、と言わんばかりの表情であり、制空権を奪われた空を少し確認し、いつ艦載機がまた攻撃を仕掛けないかと警戒している。

 

「古鷹や青葉がやられたからと、仇を討とうとでも? それに易々と乗る理由が私にあると思っているのですか? 援軍が来たからと、調子に乗っていますか? 私たちは今までと変わらずあなたたちを全て蹂躙すればいいんですよ。それだけでも、まだ襲撃を仕掛けた甲斐があります」

「そうね。でも、そうすればあなたは、私の誘いを蹴ったことになる。安易な成果を取り、悠々と逃げ帰るんでしょうね。そういうのって、南方提督だったかしら? その肩書に見合う成果なのかしら? 私、これでも吹雪型の5番艦よ。堕ちた存在とはいえ、吹雪型の長姉として、未熟なれど姉妹艦の申し出を蹴る、そのような恥を晒すなんて、情けないとは思わないのかしら? 少なくとも私はそんな屈辱を進んで受けようなんて思わないし、敵方とはいえ、そんな長姉は認めたくはないわね」

「…………」

 

 不敵に笑いながら語る叢雲の言葉に、僅かに深海吹雪のこめかみや頬が揺らぐ。

 理解している。安い挑発だ。それに乗ることによるメリットなどない。

 だが何故だろうか。

 胸が疼くのだ。誇りなど存在しないのに、あのような言葉をそのまま許してはおけないと、自分の中で何かが囁いている。他の誰かならばこのような感情を抱くことはなかっただろう。

 叢雲が、あのような事をのたまうから、このような感情を抱いているのだろうか。

 古鷹、青葉、そして叢雲……これらの顔ぶれと顔を合わせたことも、深海吹雪の中で何かが疼く要因となっている。

 ざわついて、ノイズが走って仕方がない。同時に自分の中から何かが這い上がっているような感触もある。

 

「吹雪、サッサト排除スレバヨイデショウ。コノママ調子ヅカセテハ、姉上ガアナタノ盾トナッタ意味ガナイ!」

「……そうですね。それは理解している。だけど山城、申し訳ありません。理屈ではない、効率でもない。私たちには不必要とされる感情論が訴えかけるのです。これにケリをつけなければ、しこりとなって私の中に残り続け、次の作戦にも影響を及ぼすでしょう。快適な戦闘のため、そのような不穏分子は排除せねばなりません」

 

 そう宣言し、刀を構えて叢雲と向かい合った。その選択に深海山城は表情を歪める。先ほどまでの優位性を崩される援軍に加え、艦隊旗艦である深海吹雪がわかりきった挑発に乗ってしまったことで、流れが完全に変わってしまった。

 深海棲艦が感情論を振りかざすなど、深海山城にとっては受け入れがたいことだ。一騎打ちをする流れになっているようだが、そんなことは自分には関係がない。あのような駆逐艦一人など、戦艦主砲で容易に吹き飛ばせるものだ。魔物へと照準合わせを命令しようとしたとき、それを阻むように伊勢から砲撃が飛んでくる。

 

「おっと、邪魔をされては困るわね。あなたの相手はこっちだよ。あたしたちに付き合ってもらおうかな」

「目障リネ……!」

 

 遠距離からの砲撃に加え、一水戦などの接近戦をこなす艦娘に近づかれ、深海山城の意識は叢雲からそちらへと移らざるを得ない。そうして場が整えられ、叢雲と深海吹雪が一気に距離を詰め合い、お互いの得物の刃が交わる。

 叢雲は長物、深海吹雪は刀という形であり、間合いの広さで叢雲が勝る。加えて叢雲の艤装は手で持つタイプの主砲ではなく、ユニット形式による特殊なものだ。マジックアームのように伸びた先に主砲があるタイプのため、両手で得物を振り回そうとも、主砲を撃てるようになっている。

 つまり、得物で敵の足を止め、主砲で追撃する流れを無理なく組み込める。だが、それは深海吹雪も同じことだ。艦娘の吹雪と違い、両手で刀を振るおうとも、背中から伸びる魔物の腕のような艤装の先に主砲があるため、刀で届かない先へと主砲や対空砲を撃てる。

 得物の間合いでは勝っても、お互いの主砲によって更に間合いが伸びる。隙を見せれば、足を止めれば、すかさず主砲が相手へと放たれる。それをお互い理解した上で、一合、二合と打ち合わされ、すかさず離れて主砲で狙われないように動き回る。

 駆逐艦ならではの高速機動での一騎打ちが繰り広げられることとなった。

 

 

「タリホー! どうやらあそこが敵機動部隊のようですネー! Follow me!」

「お姉様、あれは新たなタイプの空母のようですよ!?」

「Oh、マジデスか。ついこの間空母タイプの姫が出てきたと聞いていますが、もう新しいのが? マジFu〇kingデスね。それで、あれはどんな感じデスかね? 加賀」

「今あそこを飛んでいるのは私の子たちではないわ。隼鷹、どのようなものかしら?」

「あぁ、聞いて驚きなよ。アレは姫級を超えてらぁ。棲姫じゃあ納まらねえ力の波動を感じるねえ。提督、新しいランクってやつが必要になってきたってもんだあ」

 

 と、隼鷹から振られた。北東から速度を落とし、ゆっくりと航行する指揮艦の中で、茂樹が腕を組んで唸る。送られてくるデータからして、確かに隼鷹の言う通り、空母棲姫のそれより上回るものだった。

 艤装のアップデートか、あるいはあの人型が有する力の上限を拡張したのか。それについては茂樹には推し量ることはできないが、それでも純粋な強化が施されたものと考えられる。

 南方提督はあれを開発したから動き出したのだろうか。それとも、中部提督がミッドウェー海戦の後、あの短期間で開発できるだけのノウハウが蓄積されたのか。どのような形であのような新型を生み出したのか気になるが、棲姫を上回るランクを呼称するとするならば、

 

「……暫定的ではあるが、船幽霊の意味合いを持つ『水鬼』をあてがうとしようか。これよりあの新型空母を空母水鬼と呼称する! 各員、目標は空母水鬼率いる機動部隊! 迅速に蹴散らし、あいつらの元へと駆け付けろ!」

「OK! では一発お見舞いしてやりますヨ! 全砲門、Fire!」

 

 金剛の号令に従い、彼女率いる水上打撃部隊の艦娘たちが一斉射する。飛来してくる砲弾の嵐に、空母水鬼は艤装に腰かけたまま、その身なりに合わない動きで回避する。空母棲姫にはない、艤装のスクリューを上手く動かし、加速減速を巧みに変えてやり過ごしている。

 お供の空母棲姫やヲ級改、装甲空母姫は回避しきれずに被弾しているようだが、それらを意に介さずに空母水鬼はじっと金剛たちを見据えた。向かってくるのは川内率いる一水戦や、長良率いる二水戦。金剛率いる水上打撃部隊、加賀率いる主力艦隊、蒼龍率いる機動部隊といったところか。

 援軍たる彼女らを通せば、状況は完全にひっくり返り、パラオ泊地襲撃作戦は失敗に終わる。これは何としてでも防ぎ切らなくてはならないと、空母水鬼は組んだ足の上で、強く手を握り締めた。

 

「威勢ガイイナ、艦娘タチ。進ミタイノカ? ソンナニ」

「ええ、通さないというならば、押し通るまでデース!」

「イイダロウ、ヤッテミルトイイ。トハイエ、ヤラセハシナイヨ。威勢ダケデハドウニモナラナイ、ソウイウノヲ教エテヤロウ」

 

 おもむろに指を立てれば、その先に赤い光が灯りだす。それは空母棲姫も同様だ。前に出した指先に、同じような赤い光が発生する。空母水鬼がゆっくりと弧を描くように、左から右へと動かせば、軌跡に従って赤い光を纏った白猫艦載機が発生する。空母棲姫もまた、前に出した指を勢いよく薙ぐことで、光の軌跡に従ってそちらにも同様の現象が発生した。

 

「進ムトイウナラ、コレラヲ乗リ越エ、私ヲ沈メテミルンダネ!」

 

 空母水鬼の声が響き渡り、歯を打ち鳴らしながら赤い力を纏った白猫艦載機が一斉に金剛たちへと襲い掛からんと、空を往く。対抗すべく加賀たちが艦載機を発艦させ、それぞれの空戦を繰り広げる。

 その下で、嬉々とした表情で往くのは、トラック一水戦の旗艦川内。彼女に追従する二水戦とともに、一番槍とばかりに突撃する。

 

「さあ、行くわよあんたたち! 華々しく敵を撃滅し、トラック艦隊ここに在り! ってところをパラオの後輩たちに見せつけてやろうじゃないの!」

 

 川内の言葉に島風や雪風などが声を上げ、大井や霞がやれやれといったような表情を浮かべるが、しかし戦意がないわけではない。迅速に片をつけ、この戦いを終わらせなければならない。

 水鬼という新たなランクを与えられた敵であろうとも、やることは変わらない。脱落せず、的確に敵を撃滅する。戦場を駆ける水雷戦隊として、この戦いを大いに引っ掻き回してやろうではないかと、彼女たちは表情を引き締め、旗艦川内の後に続いた。

 


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