二人のセッター   作:鬼城

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やっと、書けました。
今回もバレー要素なしです。はい、すみません。




EP4 思わぬ来客

ーーなんて、酷い有様なのだろうか。

 

自分の顔を見てはニカッと笑ってみる。その笑顔すら汚れて見えて…私は、合わせる顔がないと思ってしまったのかもしれない。

二回目だ。これで、二回目。だからこそ…飛ちゃんには頼れないと、そう無意識に感じてしまっていた。

 

だからーーごめんなさい。

 

そう、謝ったら…飛ちゃんは許してくれるだろうか?

 

◆◇◆◇◇

 

「…及川さん、ちょっと話が……」

「いやだ。あっかんべーっだ!!」

 

子供かっ!

 

「お願いです。聞いてください」

「…いやだ、いやだ、いーやーだー!」

 

耳に手を当てて「聞こえませーん」という風にシャットアウトする及川さんにめげず声を掛け続ける俺。その光景に部室ではシーンとした空気が漂っていた。

 

「……お願いします」

「…はぁ、、だが断る!!」

 

うざっ!!

 

「おい!クソ川!!一年をイジメんじゃねー!!!」

「…いてっ。ちょ、岩ちゃん!?溝内蹴るの止めてくれない!?」

「テメーが悪いんだろうが」

 

重いっきり溝内を蹴られた及川さんは手で溝内の方を押さえながらうずくまる。だが、すぐになにごともなかったかのように立ち上がりため息を一つ。おいコラ、ため息をつきたいのはコッチだ。

 

「はぁ……分かったよ。飛雄ちょっと来な」

「あ、ありがとうございます!!」

 

部室から出て行く及川さんの背中を追いながら外に出る。すでに外では陽が落ちかけていて辺りは暗い。そんな中をしばらく歩いていると及川さんの足が止まった。

 

「で…なんの用?」

「約二週間経ちました……」

「なにが」

「雛に避けられ続けて…です」

「ふぅん……忙しいだけかもよ?」

「いえ、こういうこと…前にもあったんで……」

 

小学5年の時だっただろうか…

小学5年になると子供はさらにもの心がついてある一種の感情を理解する。ソレがあの場合『嫉妬』というものだった。まだ、小学生なのでやることは高校生とかから見たらきっと笑ってしまうようなものだったけども。その時の雛は『人形』のようで、嫌われないように…尚且つ目立たないように…と人の顔色を伺い、あることにしか返答しない。まるで、それ自体が……普通であるかのように。

 

「前にも…あった?」

「はい」

「あぁ…だからか」

「何がですか?」

「いーや!なんでも〜」

 

だからウザい。

 

「まぁ、いいです。…それで、及川さんはなにか知っているんじゃないですか?」

「飛雄ちゃんを避けている理由を?それは…知らないよ。というより知ってても言わない」

「なっ!?」

「え?だって……飛雄ちゃんに言いたくないから雛ちゃんも言ってないわけで、それなら俺が言うのはおかしいでしょ」

 

ちっ…正論を言っているだけにイラつく。……あいつが…雛が俺を頼るわけねーだろ! それに、及川さんは絶対に理由を知っている。…どうすればいい。どうすれば……

 

「はぁ…飛雄ちゃんに一つ教えといてあげるよ」

 

色々と考えている時、不意にそんな言葉が発せられた。及川さんの目を見てみるとその目は笑っていないが、顔は笑っている。それは、よく試合前に見せる顔のソレと似ていた。

 

「なんですか?」

「彼女が飛雄ちゃんを避けるぐらい何かに悩んでいるなら…それは飛雄ちゃんのせいなんじゃない?」

「はぁ?なんでそうなるんですか?」

「ただのカン、さ」

「………それ、楽しいですか」

「うん!飛雄ちゃんの反応を見るのは楽しいよ♪」

「及川さんってドMとドSどっちなんだ?」

 

そんな俺の呟きに今度は明らさまにはぶてたような雰囲気を出す及川さん。そして一言。

 

「ひどい!!」

 

そう言って喚いた後に、及川さんはブツブツと文句をいいながら去っていく。その姿を最後まで見つめ続け、背中が見えなくなってから俺も校門の方へ歩き出した。

ーー絶対に明日雛に聞く!!

と心に決めて。

 

◆◇◆◇◇

 

さてさて、これはヤヴァイってやつなんじゃなかろーか。なんて心の中で焦っている自分。飛ちゃんにつれられて来た場所はなんと屋上。よくありがちな展開☆なんて、ふざけとる場合ちゃいます。

 

「なぁ…さっきのはなんだ?」

「いや、アレは……はぁ、飛ちゃんには関係ない」

「そんだな。確かに俺には関係ない。だけど…お前が辛いんなら俺にも関係あるだろ!!」

「…なんで?これは私の問題だよ。それに…飛ちゃんには迷惑かけられない」

 

私の言葉に、さらに飛ちゃんは機嫌を悪くしたのか下を向いて拳に力を入れる。しかし、それでも私は話すことが出来ない。

 

「迷惑なんて…思ったことねーよ。俺らは幼馴染だろーが!!古いダチが困ってんのに…なにもできねーなんて、そっちの方が問題アリアリだろーが!!」

「……それでもっ!!ダメだよ。だって…飛ちゃんは男子だから」

「あぁ?男子だからって、なんか関係あんのかよ」

「飛ちゃんだって……彼女できなかったら困るでしょ!!」

「は?かの、じょ?」

 

うんうん、やっぱり彼女さんは大切だよね。もし、私に飛ちゃんが関わったら嫌われる確率がグンっと上がる。それだけは見ていて辛い。私のせいで飛ちゃんの将来がなくなるなんて…そんなこと考えられない。

 

「はぁぁぁああ?なに言ってやがる!!そんなものいらねーよ!!」

「ダメだよ、飛ちゃん。男の子がそんなこと言ったら」

「うっせ!!…お前が苦しんでるのに一人彼女作って遊べるかっ!!考えろ、ボゲェ!!」

 

肩で息をしながらこちらを睨んでくる飛ちゃん。そんなに、見ないでぇ……なんて言ってる暇はないな。

 

「ちょっと!!あんたらうるさい!!」

「いてっ!」

「よっ…と」

 

危ないぃぃいい!!

突然の声と同時に弾丸の如く飛んできたのは小さな二つの石。一つの石は飛ちゃんの横腹にクリティカルヒット。そしてもう一つの石は私の頬を掠めていった。あのまま、避けなかったら顔面にクリティカルヒット。死ぬところだった。

 

「テメェ!あぶねぇだろ!!ちゃんと、見てから投げろよ!!」

 

そこぉぉ!?

 

「は?避けないあんたが悪いでしょ」

 

つっこめよぉぉ!!

 

二人でバチバチと電撃が見えるほど睨み合っている。一人は怒って。もう一人は冷静に。どちらが怒っているのかは言うまでもない。

 

「あのぉ…貴方は…?」

「……!!(かわい、い!!」

「あの…!!」

「あっ、ごめん。えっと、私は及川 姫華。お前は?」

「私は…桐原 雛だよ。よろしく!姫ちゃん!!」

「あぁ…////」

 

何処か、姫ちゃんの顔が赤い気がするのだが…気のせいだろうか。なんて観察しながら、今もなお威嚇している飛ちゃんの方を見る。

 

「おい!雛!!気をつけろよ。石投げてきたやつだからな。何してくるかわかんねぇぞ!!」

「あぁ!!なんだって?」

 

あっこれ、馬が合わないやつだ。ギャーギャーうるさい飛ちゃんは放っておこう。と心に決めて、姫ちゃんの方を向いた。

 

「あっ、そうだ。さっきまでなにか話してたようだけど……なんかあったのか?」

「…あー、うん。まぁね」

「それって…『及川 徹』を振ったってやつと関係してる?」

「…!? 」

「やっぱりかぁ…名前を聞いて思い出したんだ。それで…イジメられているってな」

「…姫ちゃんは頭の回転が速いんだね」

 

『及川 徹』を振った。という噂とさっきまでの会話。それだけで状況を掴んだ。並以上の状況整理能力。

 

「まぁ、別に自慢する程じゃないけどな」

「そうかなぁ…私としてはすごいと思うけど…」

「そ、そうか?」

「うん!!」

 

照れているのか、顔をソッポに向けながら頬をかく姫ちゃん。とそこで、昼休憩終了のチャイムが鳴った。

 

「あっ…やばい。行くぞ、雛!」

「う、うん。姫ちゃんは?」

「…行こうかな」

「じゃあ、はやくしないとね!!」

「うぇ?…う、うん!」

 

私は姫ちゃんの手をとって、前を走る飛ちゃんの背中を追いかけた。途中で、「廊下を走るなー!!」という声が聞こえたり聞こえなかったり。




次回は、必ず…バレー要素を入れる!!

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