駄文ですがなにも思わず読んでくれると嬉しいです!
小学一年生の時、兄に連れられてみた景色。
隣には幼馴染である影山 飛雄こと飛ちゃんがいて、私たちは二人してその光景に感嘆を漏らした。
会場中に広がる歓声、コートの端から端まで高速で進むボール。そして、それを自由自在に操る選手たち。その光景に魅入っていると側にいた兄が私たち二人の頭をクシャクシャと撫でながら言った。
「どうだ?これが…兄ちゃんがやっているスポーツだ」
「すぽーつ?」
「そうスポーツ。バレーって言うんだ」
「ばれーぇ?」
飛ちゃんと一緒に頭にハテナを浮かべながら兄を見つめる。それに兄はコートの方を指差しながら説明し始めた。
「みろ、さっきボールを受け止めたのがリベロっていうんだ。そして、そのボールを上にあげるのがセッター。最後にそのセッターがあげたボールを相手コートに叩きつける、それがアタッカーだ」
「……?わかんないけど…なんかすごいね!そう飛ちゃんも思うでしょ?」
「うん!端から端までギュンってボールが行くの!気づいたらボールが違う場所にあって!!」
「そうか。お前らもバレーの凄さが分かったか。兄ちゃんはなアタッカーをやってるんだ。いつか、お前らにカッコイイ姿を見せてやるからな!」
「「うん!!」」
これが、私と飛ちゃんが始めてバレーと出会った日。
そしてーー、バレーに興味をもった小学一年の夏だった。
◆◇◆◇◇
「飛ちゃん!!ボール打って!!」
「あのなぁ
「知ってる知ってる。さぁ、はやく!!」
「雛てめぇ、人の話を聞きやがれ!!」
飛ちゃんの話を軽くスルーしてトスを上げ始める。それに、飛ちゃんは怒るが仕方ないといった感じで高く上がったボールを目掛けて走り始めた。流石、飛ちゃん!君はやってくれると信じてたよっ!!
バンーー。
体育館中に音が響く。
ボールは反対側のコートのエンドラインへ吸い込まれるように決まった。それを見終えた後、飛ちゃんの方へ走り寄りイェーイとハイタッチ……してくれなかった。むぅ……恥ずかしがり屋なんだから!
「なんでしてくれないのさ!」
「する必要がねーだろ」
「むぅ…だから飛ちゃんに友達が出来ないんだよ!」
「雛てめぇ、もうボール打ってやらねーからな!」
「べ、別に飛ちゃんが打ってくれなくてもおにぃちゃんが打ってくれるもんねー」
「ずりぃぞ!」
今、高3の兄はあの有名な白鳥沢でなんとエースをやっているらしい。一度、試合に行ったことがあったがいつもの優しい兄とは違うと錯覚してしまうほど兄の雰囲気は違っていた。その姿に身震いし、同時に憧れた。と、言っても私はアタッカーではなくセッターをやっているのだ!それは飛ちゃんも同じで日々、交代で打ったりトスを上げたりと練習している。
「ほら、今度は雛が打てよ」
「分かってるよ!本当に飛ちゃんはうるさいなぁ」
「なんとでも言えよ。俺は一切傷つかないからな!」
「キメ顔で言われてもカッコ悪いよ」
「ひーなー?」
「あ、ほらはやくはやく!」
危ない危ない。久しぶりに飛ちゃんに怒られるところだった。今度から上手く弄らなきゃ!などと考えているとすでにトスがあげられている。飛ちゃんのトスは普通より速いため運動センスが試される。
「あっ!」
ボール目掛けて飛んだはいいものの、ボールの方が速いためスイングが間に合いそうにない。そうなればトスは反対側のコートに行くこともなく横の壁に当たって攻撃は失敗となる。…しかし、ここで失敗したら飛ちゃんになんと言われるか知れたものではない。となれば……左手で打つしかないっしょ!
ボールが掌に当たる感覚を感じながら思いっきりスイングするとそのボールは反対のコートへ入る。ふぅ、危なかった。やっぱり、飛ちゃんのトスは速いなぁ。これが男子は普通なのかな?
「スマン!少し速かった」
「飛ちゃんさぁ……なんかうざい」
「あぁ?!」
ブツブツと文句を言ってくる飛ちゃんを無視しながら、少し赤くなった左手を見つめる。そして、グッと力を込めて飛ちゃんの顔を見上げた。
「明日からまた頑張ろーね!飛ちゃん!!」
「あぁ!二人して北川第一のセッターをしよう!!」
「飛ちゃんはなれるか分からないけどねぇ?」
「あぁん?!絶対になるに決まってんだろ」
どこからそんな自信が来るのかは知らないが中学校は小学校とは違い本格的に部活ができる。その中でセッターとして活躍するのが私たち二人の今の目標だから絶対に達成しようと飛ちゃんは頑張ってるんだろーなぁ。あの
「飛ちゃんは根は優しいのにねぇ」
「俺はいつでも優しいだろーが!」
「え?勝手に人のプリン食べてたくせに何言ってんの?」
「それは今、かんけーねぇ!!」
ほんと、飛ちゃんは面白い。きっと将来はいいドMになれるよっ!
「雛?いい加減にしろよ?」
「あっはい。すみません」
ともあれ、中学校入学式前日終了。
◆◇◆◇◇
「あり、えない」
私のプレーを見た北川第一の女子バレー部、佐藤部長はそう口にした。え? そんなに凄いことした覚えはないんだけど!?
「もう一回、トスを上げてくれない?」
「あ、はい。分かりました」
言われた通りもう一度トスをあげる。上げた先には三年生だと思われるもう一人の先輩がいる。その先輩の身長、そして体格、バネを頭の中で計算。それによって出てきた答えという名の最高到達点へボールを合わせる。
「…これは」
そのボールはジャストタイミングでアタッカーの手に当たる。それを見て部長は目を輝かせながら拍手を送ってきた。
「確か…桐原 雛って言ったよね?桐原は無意識にやってるの?」
「え?なにをですか?」
「最高到達点へボールを合わせることを」
「うーん、そうですね。なんとなく選手を見たらココだっていうのがわかるんです」
そういうことらしかった。先輩が驚いていたのは一目見ただけという選手の最高到達点へボールを合わせることが出来るという技術。まぁ、これに驚いてたら飛ちゃんにはもっと驚くだろうなぁ。なんて考えながら部長の話を聞く。
「桐原、セッターに決定ね」
「はぁ……え?他の…アタックとかは見ないんですか?」
「えぇ、これだけのものを見せられたらね。まぁ、でも他のも見ておいて損はないからやるけどね?」
「はい!……それとあの、最高到達点へボールがいっていることが部長にもわかるんですか?」
「まぁね。だって、あんなにスパイカーが輝いていたから」
「輝いて…ですか」
そんな会話をしていると肩をグルングルン回しながらさっきトスを打ってくれた先輩が近寄ってくる。
「君、凄いね!!」
「ありがとうございます」
「あんなに打ちやすいボール初めてだよ!しかも、初めてあったばかりなのにあんなドンピシャ」
「…失礼ですが、先輩ってさっきの打点で打ったのは初めてなんじゃないですか?」
「んー、まぁね。普段はもっと低いかな」
打つ時驚いていたからまさかとは思っていたけど…この先輩はバネもあるし体格もいいから打点はもっと高い。その方が先輩はもっと実力が出せる。
「よく、合わせられましたね」
「よく言うよ。君が合わせてくれたんでしょ?」
「いえ、そんなことは」
「ここでの謙遜は必要ないぞー?」
「いえ、本当です。先輩の踏切がネットから遠かったので少しネットからボールを離したまでです」
「………今年の一年生は生意気ですなー」
「何故!?」
頭をグリグリしてくる先輩にされるがままになっていると向かい側の方でしている男子バレー部にいる飛ちゃんと目が会う。そして「ダッサ」だそうだ。なんだと、こんやろー!!帰り覚えとけっ
「もう、やめなさい。桐原が困ってるでしょうが」
「はーい。部長こわーい」
「あんたねぇ」
「部長が怒ったー!!」
グリグリしていた手を離して先輩は部長からさっさと退散ー!みたいに逃げていく。まるで、嵐のような人だな。でも、いい先輩だ。頭をぐちゃぐちゃにされたけども
「はぁ……それじゃ、桐原。続けましょうか」
「分かりました」
サーブ、レシーブ、ブロック、アタックをそれぞれし終えると今日はもう帰っても良いということなので失礼することにした。男子は……うん、もう終わりそう。
「失礼します」
「はーい、気をつけて帰ってねー!」
「はい!ありがとうございました!!」
体育館にそして先輩に礼をして校門へ向かう。その途中で飛ちゃんが息を切らしながら走ってきた。
「おい、待てよ」
「えーー」
「どうだった?」
「まぁまぁだよ」
「そうか…こっちは凄い先輩がいた。俺も頑張ろうって思った」
「ふぅん。頑張れ」
「まぁ、こっちのことはいい。お前、最初…認識されたか?」
「…………いや、だからスイッチをオンにしといた」
私の影が薄いのは今に始まったことではない。最初に体育館に入った時、先輩には認識されなかったのも事実。とてつもなく悲しい。というわけでスイッチをオンにした。なんていうの、気づかれるようにオーラみたいなものを纏うみたいな?自分でもよく分かんないけど…
「相変わらずそれ、分かんないな」
「いや、自分でも分かってないからね!?」
「だいたいなんなんだ?スイッチをオンって。お前にはヤル気スイッチでもついてんのか?」
「どちらかというと悟◯が気をまとって戦闘力値が上がるってやつに近いかも」
「その例え上手いな」
「でしょ!!」
そんな馬鹿な会話をしながら中学校初日は幕を引いた。
読んでくださりありがとうございました!!
続けれるように頑張りますのでよろしくお願いします!