エンカウント・プリンセス
◇
あらかじめ予測された未来なんてつまらないと思わないか?
僕はつまらない。
けれど今、目の前に広がる光景は。
あの日
あの瞬間
僕の人生を変えてしまった
『災悪』の日と同じ。
そして、その渦中にいる少女に同じように問う。
「君はーーーー誰だ?」
「…………名、か。ーーそんなものは、ない」
違うと、変わると思った世界は
また再び、同じ途を辿り始めた。
あの時よりも、『最悪の日』に向かって。
◇
騒がしく鳴る目覚ましの音で目をさます。
今の季節は春。そして、誘われるは二度寝の誘惑。
これぞまさに、春眠暁を覚えずのこと今まさに睡魔と格闘中の少年・九十九一也、ついこの間十六になったばかりの高校生。この日は初登校の日なのだが、なかなか起きない。
眠り姫ではあるまいし、そろそろ起きなければ朝食を摂る余裕が無くなるが。
「うぅ~起きたくない。起きたくないでこざるよ~」
眠いのだからしょうがないが、起きなければ高校初日から遅刻と言う不名誉なことになる。
起きなければ、起きなければと思いながら布団から出れない。
その時、机の上で充電中の携帯電話が、聞き慣れた着信音でメールが来たことを知らせる。
「あぁ~メール見ないと。見ないと殺される……」
のろのろと布団を退けて、ベッドから下りて机へと向かい携帯を手に取る。
メールの送り主は案の定と言うか、当然彼女で。
「やっぱり美九からか」
誘宵美九。
誘宵月乃と言う芸名でアイドルとしてデビュー。
そのあとは、自分勝手な男に振り回されて一時期はアイドルを辞めるのではと言われたが、そのあと色々あった誤解や、間違いが正されて今や大人気の彼女だが。
僕はそんな彼女と一線を越えた関係にある。
「っとこれでいいか」
メールの返信を終えて、時間を見るとまだ朝食を摂ることは出来る。
今日は簡単にトーストを焼いて、目玉焼きのサニーサイドアップに、付け合わせのサラダとコーヒーと言うものにした。もう少し早く起きていたら、手の込んだものも作れたのだが、自分の責任なので仕方がない。
食べ終えてからは歯を磨きながら、同時進行でぴっかぴかの真新しい制服を着て学校に向かう。
僕の通う学校は、中学と同じ目的で創られた
「よう、おはよう一也!」
「あぁ 、おはよう井崎」
入学式の日に同じクラスだと泣いて喜んできた井崎だ。
そう言えばこいつは、ここに合格したときも大声で泣いてたっけ?最近泣いてばかりで忙しいやつだが、こいつは親があれなだけに不合格ならどうなっていたかと、合格した時に本人が鼻水声で語っていたな。
「これから楽しい高校生活だぁ!思いっきり楽しむぞー!」
「井崎。楽しむのはいいし、僕もそうなのは否定しないが、高校には留年があるんだぞ?」
「……………言うなよ、せっかくテンションあげたのに」
「あ、悪い。てっきりそれを承知でかと………でもほらあれだよ!合格したんだし、なんとかなるさ」
「知ってるだろ、俺が数日で過去問どれだけやったか。一教科千問だぞ!千問!あの日々は地獄だった」
井崎が頬杖を突きながら遠い目をし出したが、こうなったらしばらく放置した方がいい。
その内に担任教師が来て、ホームルームを始めたが席に座った時も井崎はぼぉーとしていた。
ちなみに席は名前順で、一列挟んで僕の右斜め前にいる。
それからの三時間後に始業式を終えた生徒たちは、思い思いに帰り支度をして教室を出ていく。
僕も帰ろうかと席を立つと、井崎が鞄を持って話しかけてきた。
「なぁなぁ。これからお前ん家行って………」
「却下だ。飯ならおごらん」
「良いじゃないかよ~それくらい」
「親にバイト許されたんだろ?なら稼いでもっとうまいもん食えよ」
「お前の飯の方が旨いんだよ。だからな今日だけ。このとーり」
両手を会わせて、拝むように頭を下げて頼んでくる井崎に、僕は仕方なく了承する。
「分かった。はぁ~まったく。その代わり、バイト代入ったらそっちが奢れよな?」
「へへっ!やーり」
とその時。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ━━━━━━
「……またか。いや、当然か」
この何回聞いても不快な音は、空間震の発生を知らせるサイレンの音。
しかし、僕はこの日のこの瞬間に鳴ることはわかっていたが、忘れていた。そしてこの日になにが起きるのかも。放って置いても問題は無い。あいつが何とかしてくれる。俺は今まで通りに井崎や美九と楽しくやっていければ。
そうは思っても、足はすでに外に向かおうとしている。校内に流れる非難を促す放送を半分も聞こえていなかったが井崎の声ではっとする。
「なにやってんだ!早く非難シェルターに行くぞ!」
「あ………………あぁ」
そうは言っても、体はまだ他の生徒の非難方向とはちがう方を向いて動こうとしない。
「おい早く」
「……………悪い。《俺》、行かなきゃ」
「お、おい一也!」
井崎の制止する声が聞こえるが、俺はもう走り出していた。
◇
靴を履き替えて、校門を目指していた時、数十メートル先に男子学生が走っていくのが見えた。
僕もそれを追うように走るが、あまりにも凄い勢いなので仕方なく彼と同じくらいの速度で走る。あと少しのところで、上空にあまり会いたくない連中の影があるが、そんなことは関係なく前の彼に追い付かないと。あと数メートルのところで、前方が光に包まれ
そのあとに爆音が起こり、それと同時に衝撃波が来る。
僕は何とか耐えたが、彼は耐えきれずに僕の隣まで転がって来た。
「ってえ…………誰かいるのか?て言うか一体何なんだよ!」
彼は光を間近で見たため、目を擦りながら手探りで身を起こす。
「━━は?━━」
と、彼は目の前の光景を見て、端から聞いても間抜けな声をだした。
まぁ初見の人なら当然だろう。
「な、なんだよ、なんだってんだよ、これは……ッ」
「これはあの少女による、空間震の影響だ」
彼、五河士道の目線が、僕に合わさる。
「お前は、……てか彼女?」
僕はゆっくりと腕を上げて、さっきの衝撃で出来たクレーターの中心。そこにいる少女を指差す。
そこにはゲームなんかで出てくる、玉座のような形をした物があり、その肘掛けに足をかけるようにしている、形容しがたいあえて言うならドレスを着た少女が一人。
「あの子━━なんであんなとこに」
彼の一言は当然だろう。しかし、このタイミングで言葉を発したのはまずい。
少女はゆっくり首を回して、こちらの方を向いた。
「ん………?」
僕たちに気づいたのかが分かってないのか、士道はまだ首をひねっている。
少女はこちらなど様子を気にせずに、ゆっくりと玉座の背もたれから出っ張りを握り、それをゆっくりと引き抜いた。
それはあまり見たくないが、幅の広い刃の、巨大な剣であり
それはとても不思議な光を放っている。
少女はその剣を振りかぶり、それを。
「━━?!伏せろ!」
「なッ?!」
僕は、少女が横薙ぎに振り抜いたと同時に、横っ飛びして無理矢理に士道を伏せさせた。
「あっぶねー」
「━━━━な」
今まで僕たちの頭があった所を、斬撃がまるでゲームの技の様に通り抜けていった。
もう少し思い出すのが遅かったらまた、死んでいたな。
「……は━━」
士道は信じられないと言うように、目を見開き、後方の切られて同じ様な高さになった街を眺めていた。そのあと、後方のビルが崩れる音がする。
「ひ………ッ?!」
「ちっ!容赦無いな」
「なんだよ!おまえ何か知ってんのか?!」
士道は仕方ないとはいえ、かなり混乱している状態だ。
「落ち着け。取り敢えず………?!」
僕は逃げろと言う前に、立ち上がって身構える。
それと同時に、少女が一瞬で目の前に移動した。
「あ━━」
それはきっと、恐怖からではない。
目の前の膝まである黒い髪に、愛らしくそして 凛々しさも兼ね備えた
その貌の中心に、様々な光を放つ不思議な輝きを持つ両眼。
着ているものも不思議な意匠で、布か金属かはたまたそれですらない物で出来ているまるで、そうお姫様が着るようなドレスを印象づける。
その装いに使われている、繋ぎ目やインナーやスカートの部分は非質量の光でできている。
「━━おまえも………か」
「━━、━━」
士道はそんな状況下で彼女に目を奪われているようだ。そんな彼の言葉を代弁させてもらうことにしよう。
「君は━━━━誰だ?」
少女はそんな僕を見ながら口を開いた。
「……名か?」
その声は、静かなこの廃墟と化した町に響く。
「━━そんなものは、ない」
嗚呼、やっぱり因果律を変える程の力は僕には無いのか?
ならここから始まるのは地上最悪の…………
『
問題ないでしょうか?(地の文も含めて)
やっと、やっと原作入れました。
なんかかぁくんのセリフから美九がヤンデr……
……いいよですよね?してもいいですよね?
もうここまでしたら最後まで!
私は、書く!書いて、全てを受け止める!
それでは、また次回