デリート・オア・ライフ   作:サカズキ

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今回は少々………いやかなりのすれすれ感があります。(いやらしいいみで)

ですので一部の方は不快になるかもしれません。

それでもバッチこーい!!って言う人だけ見てください。

では、本編に


リゾート・オン・トラベル II

同日・旅館の露天風呂

 

「ふぅ。やっぱり温泉は露天風呂だな」

 

美九に仕掛けられた、今回の旅行計画だったが、夏に温泉ってのも良いものだ。

ここは空気が澄んでいて、星も綺麗に見える。

 

「お。あれがデネブで、あれがアルタイル。ってことはベガで夏の大三角。あっちは……」

 

どこで覚えたのかすらすらと夏の正座を見つけては呟く。

 

「で、あれが………ヘラクレス座」

 

ヘラクレス座。神と人の子として産まれ、困難を乗り越え数々の偉業を成し遂げながら、最後は炎に身を投じたヘラクレスが、天へと昇り正座となった。そんな感じだったか?

そんな境遇が、なぜだか自分に重なるとか思ってしまう。

 

「何考えてんだろうな、僕は」

 

そんな事を一人で言っているが、先程からからなぜか他の宿泊客がいない。入ってくる様子もない。そのお陰で独り言を言っても聞かれる心配がない。

 

「かぁくん、そっちにいますぅ?」

 

「あぁ、いるよ」

 

どうやら女湯も誰もいないらしく、柵の向こうからは美九の声しか聞こえない。

第一、あの人気アイドルの誘宵月乃がいれば、騒がしくなることは必然だろうが。

 

「いい湯加減ですねぇ」

 

「そうだな。夏でもいい感じに暖まるな~。ふぅ」

 

「ふふふ、少しおじさん臭いですよ」

 

「い、いいだろ別に」

 

「混浴じゃ無いのが残念ですけど」

 

「な、ななななに言ってんだぁぁ!」

 

「ふふふ、かぁくんの顔が真っ赤なのが分かりますねぇ」

 

(くそ!美九やつからかいやがって)

 

まったく気を使ってくれたのは分かっているが、こんな事を言われたら素直に感謝する気になれないのは、やっぱり僕がひねくれているからか?………やっぱりあとでお礼を言っておくか。

 

「さて、と。美九、俺先に上がるからな?」

 

「えぇ~。もうちょっと一緒に入ってましょうよ~?」

 

「いや、先に上がる!これ以上からかわれたくないし」

 

そう言って俺は、脱衣場へ急いで向かい、部屋に備え付けの浴衣を着て部屋に戻る。

部屋に戻るとちょうど仲居さんが料理を運んでくれていた。

ちょっと遅い気もするが、今回のことはすべて美九に任せているので、どうこう言うつもりはない。全部の料理を運び終えると、ごゆっくりと言って仲居さんが部屋を出ていった。その入れ替わりに、美九が帰ってきた。

 

僕はそれを見てドキッとした。

濡れた髪と、ペタッと肌に張り付いて、いつもとは違い、その髪から滴り伝う雫が彼女のはだけた浴衣の胸元へと伝い落ち、自然と視線は胸元へと誘導される。

そんな事をしていると、昼間の海での事を思い出してしまい、前屈みになってしまう。

あぐらかいて座っている状態なら、テーブルに手でもついてれば不自然ではないが。

 

(見られるとまずいなこれは)

 

これで何度目か分からないが、僕だって健康男児。

水着であんなことを、目の前でされたのを思い出したら。

そのうえ好意的に接してきてる相手に、勘違いをするなと言うのが無理だ。

 

(は!煩悩退散煩悩退散!南無阿弥陀仏……あっこれは違うか?)

 

「ん?うわっ!」

 

「な~に考えているんですかぁ?」

 

彼女はいつの間にかすぐ隣に座り、手をついて身を乗り出して、にやついた美九の顔がすぐそこにあった。僕もちょっと、乗り出せばキスできる距離だ。

 

「美……………九?」

 

「かぁ…………くん」

 

急に美九の目がとろんとした感じになり、そのまま彼女がゆっくりと近付いて来ているようだ。

いや、それとも僕が近付いているのか?

おかしな雰囲気が部屋に満たされていく。

 

「…………………っ」

 

「…………………ぁ」

 

 

 

あと、五センチ

 

 

 

 

 

 

 

 

あと、一センチ

もう互いの息づかいがいやと言うほど分かる距離。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう少し…………

 

「お客さま申し訳ありません。一皿忘れてしまいました」

 

その瞬間仲居さんが料理持ってきて、その声で僕は飛ぶように後ろに下がった。

 

(はぁはぁ………危なかった!僕は何をしようと)

 

(惜しかったですぅ。もう少し遅ければ………)

 

互いにはどんなことを思っていたのかは分からないが、少なくとも美九はそのままできればと思っていたようだ。

 

 

それから二人はテーブル一杯に並べられた料理の数々に舌鼓を打った。

 

「ふぅ~くったくった。旨かったな?」

 

「はい~。なかなか美味しかったですぅ」

 

さて、話したいことはたくさんあるが、彼女が話し出すまでは、俺からは聞き出さないようにした。それから数分は、互いに黙っていたが皿が下げられて僕たち以外、誰もいなくなってから彼女が口を開いた。

 

「実は、ですね。昨日の事なんですが……」

 

昨日のことと言えば、美九が殺されかけたあの事件だろう。

 

「実は、あの犯人はあの件でマスコミに追い詰められた、例のプロデューサーだったんです。始めに顔を見たときはよく、分からなかったんですけど。あとから警察の方に事情を聞かされて、私を襲った理由が、あんなことがあったのに、私が芸能界で人気を取り戻して、自分はいままであった地位を失った事を恨んでの事らしいです」

 

彼女は淡々と言うが、よく見れば肩が震えている。あの時の恐怖を思い出したのだろう。

 

「身勝手だろ、そんなの!美九に枕営業させようとして!それで、生意気だからデマを流して美九を追い詰めて!歌えないくらいに、傷つけといて、それで同じ様な立場になったら逆恨み?ふざけんなよ……どれだけ美九が辛かったか…………知らないで」

 

僕もニュースなどで、昨日の件はどういう事かはだいたい把握していたが、震える彼女が必死に言葉を紡いで語る様を見ていると、言い様の無い怒りが込み上げてきて、僕は拳を強く握り、無意識に叫んでいた。彼女はそんな俺に、微笑みながらこう言った。

 

「ありがとう……かぁくん。私のためにそこまで怒ってくれて………」

 

「当たり前だ。俺はお前の事を大切に思ってる。怒るに決まってるだろ?」

 

彼女はそのままありがとう…ありがとう…と泣きながらお礼を言っていた。

ーーーーーそれから、しばらくして涙は止まったが、目は赤くなっていた。それでも彼女は、今度は僕の話を聞いてくれるといった。

 

「いや、まずは美九が……」

 

「いえ。今度は私が話を聞きますぅ」

 

「あ~~。………はぁ~分かった話すよ」

 

こう言うときの彼女は我が強いのだ。

 

「まずは僕もお礼を言っておきたい。ありがとう、今回の旅行は僕のためでもあったんだろ?」

 

「はい。なんだかあの日から元気が無いようでしたので」

 

あの日とは、水着を買った日の事。あれから色々と考えることが増えていったせいで、美九に心配をかけてしまった。自分の事もあったのに。

 

「気を使ってくれたし、自分の事も話してくれたんだ。今度は僕の事も話さないとな」

 

それから語りだす、僕自身が今日まで抱えていたことを。

 

 

あの日からと言うもの、夢に出てくるんだ。人の形をした何かが。

例えるならそう。影だ………それが語りかけて来るんだ。

《ソレデハナラナイ。モットモット貴様ハ痛ミヲ、悲シミヲ、苦シミヲ味ワワナケレバナラナイ。ソウデナクテハ…………レハ………ゲンデキ……ラ》 と最後は聞き取れなくなって、そこで目が覚める。起きた時には汗がびっしょりで気持ちが悪い。本当に悪夢だ。

 

「とまぁこんな感じなんだが………」

 

「なんなんですかそれは!下手なホラーよりよっぽど怖いですよ!」

 

「そ、そんなにか?」

 

彼女はこくこくと素早く頷いた上に、さっきのしゃべり方はいつもの、伸びるような感じじゃなく、かなりの早口だった。それほど怖かったのだろうか。

 

「…………でも、怖いのなら、私にメールでも電話でもしてください~」

 

「いや、でも目が覚めるの夜中だし」

 

「それでもですぅ」

 

「は、はい」

 

なんだろう。いつもの口調なのに、飛びっきりの笑顔できっぱりと言われると断れない。

これでは、僕は将来尻にしかれるタイプなんだろうか。

 

「でも、話してすっきりしましたでしょう?」

 

「そうだな。なんか背負ってたものが軽くなった」

 

「ふふふ。ならよかったですぅ」

 

彼女の笑い声はなぜだか、僕の不安を吹き飛ばしてくれた気がした。

話が終わったすぐあとに仲居さんが、布団を敷きに来てくれて、僕たちは敷き終わるとそのまま布団に入って寝ることにした。

 

「おやすみなさい」

 

「あぁおやすみ」

 

そう言って目をつむり、寝ようとしたが、ふとした疑問が浮かんできた。

 

(俺と美九の布団が異様に近いような…………て言うか真横!!)

 

そう僕と美九の布団は、直ぐ隣に敷かれたのだ。

ちょっと横を向けば、美九の寝顔が近くにある状態であって、今日だけでも彼女に何回ドキドキさせられたか。いや、現在進行形でドキドキしています。

 

(ヤバイよこれはヤバイ。間違えたら襲ってしまいかねない。いやいや落ち着けー!そうだ!羊を数えよう。羊が一匹、羊が二匹、羊が……)

 

「かぁくん。起きてますかぁ?」

 

「羊が六匹。羊が七匹」

 

「オーイ。かぁくん?」

 

「羊が…………。なんだよ!」

 

「ふふ。眠れないんですね?私もですぅ」

 

「そうだ眠れない。だからこうやって……」

 

「なら、お話ししましょう?それからこっち向いて下さい」

 

「…………分かった」

 

そう言って、仰向けに寝ていた体を、右横の美九に向かうようにした。

その時に目に飛び込んで来たのは、浴衣がはだけて、そのうえ寝ている状態のせいでヤバイくらいに強調された美九の胸だ。分からないのだが、男の性で布団の中でも少し身を丸めるようにした。

 

(こ、これはまずい。いろんな意味でまずい)

 

「私、本当にかぁくんには感謝しています。歌えるようになったこと、メル友になってくれたこと、それに守ってくれたこと。本当の本当に感謝してますぅ」

 

「あ、あぁ。そうかありがとう」

 

これ以上見てはいけないと、分かっているのに、目線を彼女の胸に注いでしまう。

駄目だ駄目だ!こんな目で彼女を見たら。こんなの……あの下衆なプロデューサーと同じじゃないか。いけないでも、僕ももう………

 

「それで………かぁくん?」

 

「美九…………僕………もう」

 

それから僕は彼女の布団を捲り、彼女に覆い被さってしまったが、彼女は拒絶するどころか。

 

「いいですよ?かぁくんなら」

 

同じような言葉を聞いた気がするが、それよりも僕は彼女が受け入れたことに驚いたが、僕はそのままさっきできなかった事をしようとした。

 

「美九」

 

「かぁく…んっ」

 

僕は彼女が名前を言い終わる前に、その唇を自分の口で塞いだ。

そのまま僕は聞き齧った知識で、彼女の舌に自分の舌を絡めた。

 

「あっ………んっ……くちゅ」

 

「んっ…………ちゅ………はぁはぁ………かぁくぅん」

 

「はぁはぁ……美九、僕は」

 

「うん……いいよ……きて?」

 

そのあとのことはよく《覚えていない》。

気がついたら朝になっていて、隣に裸の美九が寝ていたので驚いたことだけは覚えてる。

それからの旅行期間中は前にもまして美九が甘えてくるような気がする。

覚えていないなど彼女に言ったら、どんな顔をするか分からないし、流石に察しはつくので、ちゃんと責任は取るつもりだ。




正直に言えばセーフだろうけど

アウトになるきもします。

怯え過ぎでしょうか?

あのあとどうなったかは、読者の想像力にお任せします。

もし、これが原因で消されたらご免なさい。

では、それではまた次回<あれば良いのですが

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