こんなはずじゃなかったんだ
美九を一番のハーレムにする気は無かったんだ!
気がついたらこう、かぁーとなって。
悪気はなかったんだ!
こんな………はずじゃ………
◇
いま、僕の目の前には開けた景色が広がっている。
青い空に白い雲、白いプライベートビーチ。それに続く青く広い海。
そして、波打ち際で戯れる可憐なる乙女の誘宵美九。
「かぁくんはやくはやくぅ~」
彼女は、あの日選んだ(勢いでだが)あの水着を着ていて、彼女が動く度に彼女の豊かな胸が、上下左右に揺れて、悩ましいことこの上無い。
そんな状況で、俺は同じようなことを叫んだ。
「なんなんだよぉぉーーいったい!!」
事の次第は数日前に遡る事になる。
◇
その日に僕は誘宵月乃の新譜を買いに出ていた。
こんなに早く出るとは思わず、ライブのチケットを買えば所持金がほぼ全額なくなるような状況を、その夜に何を思ったのか僕は美九に話してしまった。
もちろん優しい彼女の事、またチケットを用意するなど言いかねなかったのだが、この間の事が思いの外効いたらしく、そんなことは言って来なかった。
だがその代わりに八月の約束の日の前にある握手会に来てくれと言われたが、その握手会は抽選で選ばれた人のみが行ける特別なもので、僕も当然応募したが当選せず、行けない予定だが、彼女の口添えで行けるようにすると。
「いやいや!ダメだって。前にもいっただろ」
そう言うと彼女が。
「お願いしますぅ。今回だけ、私の我が儘を聞いてください」
と珍しく深々と頭を下げる勢いで、お願いしてきた。
こんなことは滅多に無いことだが、それでもこんな不正は良くないと突っ返した。
それでも彼女は頭を下げお願いと言い続け、根負けした僕はその我が儘を聞き入れることにした。
それで握手会に行ったわけなんですけど。
あの事件からまだ数ヶ月しか経ってないのに、彼女の人気は以前を越えるものとなった。
そんな彼女の握手会に来る人はほぼ定員数一杯だ。しかし、それを踏まえても。
(すごい熱気だな。おい)
通常の握手会にも無いような、空気に包まれている。
以前も男性のファンが九割越えで、今もそれは変わらないが、全体の人数も増えているので一割の人数も当然増えているので、色々なファンがいるのは当然だが、なぜだか会場には不穏な雰囲気をまとった輩もいる。
(この感じはどこかで……)
どこかで感じたことのある感覚に似ている。これは……そう前に生きていた時に飽きるほど感じてた、殺気に似ている。
だからと言って、危険なものでは無いかもしれないし、決めつけられはしないが。
「それでは今から誘宵月乃さんの特別握手会を始めまーす」
会場のスタッフの号令で始まった握手会。
なぜ人数を制限して開催されたのか?その理由は。
「いきますよー。ハイ、チーズ!」
一枚のみの撮影権つき握手会なのだ。
ファンはこれを目当てに来ている。憧れのアイドルとツーショットで撮れるのだから、テンションが上がるのは分かるが、これ程までとは思わなかった。
そうしてる間にあと一人で俺の番が来たが、先程から前の人の様子がおかしい。
他の人がテンションマックスと言うのに、ここ人は始まる前から黒のフードをかぶり、ものすごく静かだ。始めは美九と撮影する事に、緊張でもしているのかと思っていたその時の。
「お前が……お前がいたからぁぁぁ!」
「え?きゃ!!」
「!!危ない!」
いきなり男が手を入れていたポケットの中から、ナイフ(おそらく果物ナイフ)を取り出して、美九に降り下ろしたのだ。僕は咄嗟に、彼女を庇うようにして立ち目をつむった。
たが、ナイフは刺さることなく《距離が足らずに、床に突き刺さった》。
呆然としていたスタッフが我にかえり、男からナイフを取り上げて、そのまま取り押さえた。
しばらくして警察が来て、男を殺人未遂で連行していき、僕は一応病院にと言われたが、大丈夫だと言って、そのまま美九の控え室に行った。(正しくは彼女に連れていかれた)。
「美九いった………」
部屋に入り、扉を閉めると彼女が僕の胸に抱きついてきた。
「美九?………!」
彼女の肩に触れようとすると、その肩は微かに震えていた。
それはそうだ、彼女はまだ16才の少女だ。目の前で刃物が自分に向かって振り下ろされそうだったのだ、怖くないわけがない。僕はそんな彼女の頭をそっと優しく撫でるようにする。
「大丈夫。大丈夫だから」
「うぅ……ぐすっ……怖かったぁ」
彼女が泣き止むまでしばらく、僕は彼女の頭をなで続けた。
ほどなくして、僕たちはソファに座り泣き止んだ彼女がほろりほろりと話し出した。
最近、誘宵月乃宛に殺す、許さないなどと新聞などの切りぬきで作られた脅迫文が届いていたこと。そのなかに今日の握手会を滅茶苦茶にしてやると言うものがあった。
「なんで中止にしなかった!一歩間違えば怪我だけじゃすまないんだぞ?」
「……でも大丈夫だって……分かってました」
「なんでそうやって」
「だって……あなたが………守ってくれるから」
「それで俺をこの握手会に?」
彼女は小さく頷き、そのまま小さい声で話し出す。
本当はマネージャーに今日は中止にしようと、言われたことや、本当はしばらく休んだ方がいいのでは無いかと言われたこと。
「なんで僕に相談しなかった?」
「だって、かぁくんが心配すると思って………」
「はぁ~~。こんな事になったら、本末転倒だろう」
「ごめんなさい……」
「もう謝るな。な?」
彼女はまた小さく頷いて、そのまま黙ってしまった。
僕も話すことが無いので口を閉じたが、そのせいで部屋の中は沈黙してしまった。
するとふわっと良い香りがしたと思うと、僕の肩に美九が頭を預けてきた。
「な、何やって?!見つかったらただじゃ……」
「大丈夫ですぅ。部屋に入る時はノックするのがマナーですよ?」
「いやだからって」
「もう少しだけ……もう少しだけ、このままにしてください」
彼女にしては珍しく、今にも消えそうな声でそう言われて、僕は聞き入れるしかなかった。
もしかしたら彼女は『精霊』じゃなくても、力があるのかもな。
だがそんな事を思っていたのもつかの間で、よく覚えてないがそのあと僕は彼女の同じ様にお願いを聞き入れてしまい、旅行の用意をして、明日の朝六時に誘宵邸に来るように言われて、その場の雰囲気のせいで、何の疑問も感じずにハイと答えていた。
どう言うことか判断がついた時には既に自宅だった。
◇
それで約束した以上、彼女のお願いを無視するわけにもいかずに、後悔の念を心の中で叫びながら、急いで旅支度をして、約束通り六時に誘宵邸へと到着後、そのあとは電車を乗り継いで着いた場所がこの海。泊まる場所まであり、彼女の親の親戚の旅館らしく、格安で泊まれるらしい。
だがここでさらなるアクシデントが発生した。
なんと、旅館側の手違いで、広い部屋で二人一緒に泊まる事になった。なんとか別に出来ないかとお願いしたが、もう全部屋埋まっており無理だとか。
「なんで僕はこんなのばっかり。僕は幻想○しか?」
そんな事を僕と美九しかいない、プライベートビーチで真夏の空の下で呟いている。
海は楽しいし、美九との小旅行も楽しくないわけじゃないが、最初に生きていた時とこうも違う人生で、これからどうなるかがものすごく不安だ。
「かぁくん?どうしたんですぅ」
「へ?い、いやなんでもないなんでもない!」
彼女が隣から顔を覗き込むようにして、聞いてくるが、僕が目にはいったのは美九の顔ではなく、不埒なことに胸だ。彼女の胸がすぐ眼前にあるのだ、男ならある種の特別な性癖を持っていなければ、この胸に釘付けだろう。もちろん九十九一也も健康的な一男児である故、気にならないわけ無いが、ずっと見ているわけにも……
「いいんですよ?かぁくん………ならべつに」
「……………………」
はて?これはからかっているのだろうか?はたまた本気なのだろうか?
見てていいって、ガン見オーケーって事ですか?いやいやまてまて、いくらか仲がいいからって、ただの友達にそんな事を許すか?否!断じて否!つまりこれはそう!
(からかっているのだ!そうと決まれば、穴が開くほど見てやる)
ジィーーーーーーーーー
「かぁくん………やん…………そんなぁ……ぁんっ………熱っぽい目で見られたら私ぃ……わたしぃ……なんだか体が火照って来ちゃいますぅ~」
美九が胸を強調しつつ、身をよじり色っぽい声を出したその瞬間、僕は立ち上がりそのまま海に目掛けて全力で走り出した。
海に入ってもしばらく走り、胸まで浸かるところまで来ると息を整えた。
(はぁはぁはぁ。危ない危ない。危うく理性が飛びかけになった。今も心臓バクバクいってる……)
初日からこれでは、この旅行中にいけないことをしそうでかなり怖いが、自分から近づかなければいいと言い聞かせるがそんな都合よくは行かない人の世である。
この夜に一也の第二の人生で一、二を争うような、危機(?)が訪れる事になる
はい。と言うことでね、えぇーまぁ。
みくみくが正妻っぽいですけど
私の嫁はあくまで、狂三様です。
でもその狂三をデレさせる要因がない。このままなら我ハーレムに入れることが叶わなくなってしまう。
それになんだか、ネタがつきてきましてえぇ。
ちなみに例のネタ募集ですが、いつでも募集してますので。
これ書き負えたときは分かりませんが、もうすぐUAが千越えます。(確か千だった)
ここで緋弾ですが、しばらくは『デート・ア・ライブ』のアニメ化記念で、しばらく連載を止めます。それでこちらに集中しますので、楽しみな方、申し訳ありません。
それでは、また次回