時崎狂三 黒髪でオッドアイをもち、その左片眼は文字盤が映り込んでいる、ゴスロリ衣装の『精霊』
識別名《ナイトメア》
そんな彼女は、人から寿命と言う時を食らい、力に変えている。 性質のみなら最悪の『精霊』
そんな彼女が俺に接触した理由はただひとつ。
「さぁ貴方を頂きますわ」
《俺》を食らうため。
◇
「それにしても、………貴方が私の名前を知っているなんて。なぜでしょう?」
「…………分かってて言ってるか?」
「さぁどうでしょう。でも知る必要はありませんわ。だってあな たはここで死ぬのだから。さぁお出でなさい
その声と共に、彼女の後ろから巨大な時計の文字盤が現れた。
これが『精霊』が殺せない大きな要因『天使』である。
『天使』の性質、形状、能力は『精霊』により違うが、共通点が ひとつある。
それは、どの『天使』も人知を遥かに越えていると言うこと。
「おいおい!町中でそんなもの?!」
「ご安心を。ここはあなたのいる世界ではありません」
そう言うと同時に世界が黒く染まっていき、やがてその世界は 真っ黒になり、僕と狂三しかいなくなった。
「ちっ。やられた、ここは」
「ええ、ここは私の影のなか。あなたに自由はありませんわ」
「たくっ。黙ってたら可愛いのに」
「ふふふ……褒め言葉として頂きますわ。さぁておしゃべりはおしまいですわ」
彼女は『刻々帝』の針を手に取ると、それぞれ短針は短銃に、長針は長銃となり彼女の手に収まる。
「おいおい。アウェイで『天使』相手に戦えって無茶だろ」
「当然ですわ。こうでもしないと、貴方を食べることはできませんもの。さぁ行きますわ。
そう叫ぶと文字盤の一の数字が短銃に吸い込まれて、狂三はそれを自分に向け撃った。 確かあれは撃ち込んだ対象を高速移動可能にする力………だったか?
だいぶあいつの力を見てなくて、そのせいか色の無い六以外がなんなのか忘れたが、少なくとも、一一の弾と一二の弾はここでは絶対使わない。
とは言え、状況は不利な事に変わりはなく、何とかしてここからでなければ。 そのためには彼女を止めるか、あるいは殺すしかない。
「なぁ、止めないか?君じゃ俺を殺せない」
「殺せないかどうかぁ、試してみます?」
彼女はそれと同時に駆け出すが、正直見えない。
あくまで僕は、人間なので動体視力は並みしかない。
そのうえ、もともと身体能力の高い『精霊』の動きを捉えられるわけがないのだが。
僕は寸でのところで彼女の《攻撃をかわす》と彼女は後ろに跳んで距離をとった。
「……やはり奇妙ですわねその力。殺すには惜しいくらい」
「なら殺さないでくれ。お前がやりたいことはここまで時間を………そう言えばお前、『いつの狂三』だ?」
「あら?バレてました?」
「当たり前だ。ここが影のなかだと分かった時にな。あれ、ばらしたんじゃなくて、ばらすしかなかったんだろ?僕を騙すには 『時間』が足りなかった。違うか」
「ご明察………と言いたいですが、ではこの『天使』はどう説明を?」
「それだけの時間を費やした。だから影まで手が回らなかったってところか?それに本物なら影だけでも十分僕の事を相手にできる。一の弾の能力もオリジナルより若干遅い」
「…………はぁ~『認識』されてしまったら、もう私に勝ち目はありませんわね。どうぞお好きに」
「そんなこと言ってると、僕じゃなくて『狂三』に殺されるぞ?」
「そうですわね。でも私のやることに私は口出しできませんし」
「でも僕はあまり君を殺したくないんだが」
「大丈夫ですわ。もう時間です。……………あぁそうですわ、忘れないで下さいね私たちは、貴方を諦めてはいませんから」
「俺だってお前の事を忘れるな?俺はお前も救うからな」
「きひひ……
それを最後に、彼女は消え、そのまま影からも解放されて、いつの間にか歩いていた道に戻っていた。
彼女はまた現れる。それがすぐになのか、まだ先なのかは分からないが、少なくともあいつと会う頃にはまた会うだろう。
◇
一也達がが対峙していた場所から、離れた位置にある家の屋根から時崎狂三の本体が、それを観察していて、自分が役目を果たせなかったのを、肩をすくめて見ていた。
「あらあら、どうやら失敗したようですわね。やはり彼相手には時間が足りないようですわね。ここはやはり、私自身がお相手しなければ。それにはまず、もっとたくさんの時間が必要ですわ」
そう言うと彼女は、赤を基調とした黒いフリルの付いたドレスのような『霊装』を翻し、その場から文字通りに消えた。
◇
狂三が襲って来たその日の夜。
僕はなぜ、僕の存在を知ったのか考えていた。可能性は二つある。
一つは僕が力を使った瞬間を、彼女が目撃して見つけた。
もう一つは、あまり考えてたくないが、〈ファントム〉と呼ばれる正体不明の『精霊』かもどうかも不明な存在に見つかり、狂三に僕の存在を教えた可能性。
前者ならまだ、やり過ごせばいいが、後者はまずい。何を仕掛けられるか、たまったものではない。
そんなことを考えているとき、携帯が鳴った。
着信音が美九の曲であるためすぐに誰だか分かる。
今日あった時に、すぐに自分だと分かるように変えてほしいと、 懇願にも近い眼差しで訴えかけられたので、仕方なく変えたのだが、その際に、アドレス帳の名前がそのままなのがバレて、そっちも変えられてしまい、今ディスプレイに映る名前は。
「みくみくは無いだろ。みくみくは……」
見た瞬間に、『バカップルかよ?!』と思わず口走りそうになったが、美九がキラキラした眼で携帯を渡してきたので、それはもう男として受け入れるしかない。また泣かれたら困る。 そんなことを思い出しつつ、メールを開くと、今日に限ってやたらと絵文字が多く、よくハートの絵文字が目につく。内容は普通の、また会いたいや楽しかったなどと言うのに、それが絵文字のせいですごい恥ずかしいものになっている。
(………どうしろと?)
俺も同じように返すべきか、はたまた今まで通りの方がいいのか、五分くらい悩んでいるとさらに美九からもう一通。これまた絵文字を大量に使いもう寝てしまった?とか、返事欲しいですとか、とりあえず当たり障りのない文面で返す。そしてこんなメールは今日だけと思っていたが。
だがこの日から美九のメールがやたらと多く、さらに可愛らしくなってしまい返す度に悩むようになってしまった。
◇
それから数週間がたち、期末も無事に終了して、現在一学期の終業式の真っ最中。
明日からは待望の夏休みに突入することになるのだが……予定なら、今まで何とかして貯めてきたお金で、美九のイベントに顔を出そうと思ったが、まさかの美九本人から、イベントには来ないで欲しいとメールで言われた。
それを見た時、嫌われたかと思ったが、メールを最後まで読むと、その代わりに八月の中旬は予定を開けておいて欲しいとあり、予定がだいぶ崩れてしまい、それまでどうするか悩んでいる状態。
(どうするかな。あいつらに会ってもいいけど、そうすると僕の存在が、あの組織に認知されることになる。………てか暑い~~)
終業式のために講堂に集まったほぼすべての生徒が、早く終われ~と校長の長話を呪っているだろう。僕自身がその一人なのだから。
風を通すために開け放った、窓から覗く青い空と白い入道雲。それを傍目に見ながら、これからどうするか、終業式の間ずっと考えていた。
「あづい~~何で夏は暑いんだぁ~」
教室に戻ると、井崎が下敷きをどこからともなく取り出して、自分を扇ぎだした。
「て言うか!エアコン壊れるとかマジで冗談きつい」
「大声出すなよ。僕だって暑いの我慢してるんだ」
「いやいや。一也、お前そんな涼しい顔してよく言えるな?」
「その涼しい顔の使い方、少し違うぞ。よく見ろ僕も汗かいてるだろ?」
「よく見たらな。うぅ~あぢ~~」
まったく井崎のやつ、これからますます暑くなるのに、これくらいでへばってどうする。 そう考えていると、ポケットの携帯が震えて、メールの着信を知らせる。どうせスパムメールだろうと、さっと見るだけにしようとしたが、送り主が美九だったので一応確認すると。
『かぁくんへ。こっちは終業式終わりました~。そっちはどうですか?暑いなか校長の長話は辛いですよね~。それで明日から夏休みですが私は仕事があります(涙)。ですが、明日はオフなので買い物に付き合ってくれませんか?あ、ちゃんと変装しますよ。あなたのみくみくより』
(美九のやつ。なに考えて………)
断ろうと思ったが、これでもしも断ったら今度はどんなことになるんだろ?
いやな予感しかしないが、だからと言って、危険を犯すわけにはいかず。
仕方ないので隣の溶けかけている、井崎に判断を委ねる事にした。
「なぁ井崎。友達に買い物に付き合えって言われたらどうする」
「はぁ?なんだそれ。嫌だよこんな暑いのに」
「………女の子だったら」
「喜んで行かせていただきます!」
びし!と敬礼するようにして、即答する井崎。
「てかいきなりなんだよ?ま、まさかお前やっぱり彼女が?!」
「違うってば!」
これを一学期の間何回繰り返したか。
そのせいか、女子のなかには僕をホモ扱いする人もいるらしい。
しかもカップリングが井崎とらしい。
(無いよさすがに)
本題に戻すと、買い物に付き合うと言うことになるな。
やはりいい予感はしないが、断る理由も無いのだから、別にいいだろうと納得して美九に買い物に付き合うと返信しておく。しばらくしてメールが帰って来たが、その中身は皆まで言わない。
まぁ時には良いかなと、思ったりはした。
これがまさかあんな悲劇になろうとは思わなかった。
ヤバイ
このままだと第一婦人がみくみくになってしまう。
ハーレムで序列ができてしまう。
このままいけば、十香が第二か……
みくみく救うために、過去に戻したのは若さ故の間違いか。
まぁとりあえずこのまま進んで行きます。
書き手が小説の性能を生かさなければ
それでは、また次回。