デリート・オア・ライフ   作:サカズキ

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サブタイトルの名前が最近浮かばない。


知識の泉が枯れかけか

では、本編どぞ


イン・スクール

一也の脳内は現在、驚愕の二文字が支配していた。なぜかと言えば、目の前にはそれはそれは飛び切りの美少女がいるのだから。名前は………

 

時崎狂三(ときさきくるみ)と申します。どうかお見知りおきを」

 

前日に襲ってきたはずの狂三がまさかの登場。事情を知るものなら、驚きの声を上げるところだが一也はなんとか踏みとどまった。

 

「では時崎さん。皆に一言」

 

「……………九十九一也さん。私は貴方が欲しいです」

 

狂三の一言で、クラス男子全員の殺意がこもった視線が一也に突き刺さる。

 

「ふふふ。よろしければ、放課後校内を案内してくださらない?」

 

狂三がいつの間にか一也の目の前まで来ていて、そんなことを口走るのだから殺意と言うより、凶器その物と化す視線。しかしこの状況で断れば親友の井崎にまで闇討ちされかねない。そう思った一也は敢えて狂三の誘いに乗った。

 

「………分かった。放課後な。終わったらここで待ってろよ?」

 

「えぇ、よろしくお願いしますわ」

 

その日の授業は前の席の生徒はともかく、一也より後方、あるいは横にいる男子生徒から視線を浴び続け、休み時間には詰め寄られ尋問のような事をされた。

 

 

放課後の来禅高校。授業が終わってからしばらくたった校内は、人もおらず。いたとしても部活をしているので邪魔されることは無いだろう。

 

「で?何でお前がいるんだ?《ナイトメア》」

 

「あまりその名前は好きではありませんの。一也さんには気軽に、「狂三」と呼んで欲しいですわ」

 

教室に二人きりの状況。狂三が仕掛けてくるなら、絶好の好機。しかしその様子はなく、ただ単にお話ししているだけ、と言う感じがする。

 

『一也。今は下手なことしないで、受け入れられる範囲で相手の要求を呑むのよ』

 

先ほど隙を見て耳につけたインカムから、琴里の声がする。

 

「……………分かった。じゃあ狂三は何でここにいるんだ?」

 

一也の問いを聞いて、何が面白いのか微笑する狂三。

 

「朝にも言ったではありませんか。貴方が欲しいです、と」

 

「それは力が、か?それとも」

 

言い終わる前に狂三が口を開いた。

 

「ふふふ……ご想像にお任せしますわ」

 

そういった彼女は歩き始め、一也の横を通りすぎて廊下に出る。

 

「さぁ一也さん。校内を案内してください」

 

一也も廊下に出て、狂三を連れ添って廊下を進む。

 

 

フラクシナス艦内

 

「何のつもりなのかしら」

 

琴里の問いはこの場にいる全員が思っていることだ。事実、昨日の今日で接触してきたのだ。何かあると思うのが普通だろう。

 

「何にせよ、こっちから下手に手を出して、倍返しだぁ!なんて嫌だしね」

 

琴里はそう言うと手元にあったからホルダーから、チュッパチャプスをひとつ取り出し、包みのビニールを外して口にくわえる。

 

「総員取り敢えず今まで通りに。だけど臨機応変に」

 

了解の声と共に全員がそれぞれのモニターに視線を向ける。琴里は、じっと狂三の姿が映ったモニターを見ながらため息を着く。

 

(なんたって、こんなことするのよあの精霊は)

 

「司令、選択肢です」

 

琴里の横に控える神無月が、モニターに映し出された選択肢を見て言う。

 

「分かってるわよ。総員選択!五秒以内」

 

ちなみに選択肢は

 

1.狂三はいまどんな下着を着けてるんだ??

 

2.どこにいきたい?

 

3.なぜ僕を欲しがる?

 

だ。

 

 

「集計出ました」

 

それぞれの選択肢が、色分けされた円グラフで出てくる。多いのは二番のどこにいきたい?で、次に三番、なぜ僕を欲しがる?。そして一票だけの狂三はいまどんな下着を着けてるんだ?

 

「二番を選んだ理由は?」

 

琴里の問いかけにクルーが答える。

 

「一番はドン引きされるだろうし、三番は煙に巻かれそうですし、無難に二番でしょう」

 

「そうね。ちなみに3に入れたのは?」

 

その声に反応したのは、神無月だった。いや、当たり前と言えばそうだろうが。

 

「い・ち・お・う!理由を聞きましょうか?」

 

それを聞いて神無月はキラキラした目で語りだした。

 

「黒スト越しの下着は言うなれば、人類の理想郷!それを見ずにして何が世界を救うですか!」

 

暑く語る神無月を尻目に、琴里は指をならす。するとブリッジに屈強な男が二人現れて、神無月を羽交い締めにし、連れていった。

 

「あぁ、司令!慈悲を!お慈悲をぉぉぉぉ!」

 

 

神無月のいなくなったブリッジに平和が訪れる。琴里は選択肢を見ながら、肩肘をついて呟く。

 

「なんなのよ。狂三はいまどんな下着を着けてるんだ?、なんて」

 

次の瞬間、モニターの一也が同じことを言い出した。

 

『なぁ、狂三はいまどんな下着を着けてるんだ?』

 

それを聞いて琴里は驚き、目を見開いた。あわてて自分の肘の下を見てみると、なんと通信の設定がonになっていたのである。

 

「だぁぁ!違う、今のは指示じゃない!」

 

言ってもすでに時遅く、一也は狂三に聞いてしまったのだから。

 

 

「なぁ、狂三はいまどんな下着を着けてるんだ?」

 

一也の質問は、もしこの場に他の女子生徒がいれば軽蔑の目で見られること間違いなしだろう。

 

「下着……ですの?」

 

訊き返されると、一也はさらに自分の言った言葉の意味を理解した。

 

(僕、死んだな)

 

悟るような目をしていると、インカムから琴里の声が聞こえる。

 

『だぁぁ!違う、今のは指示じゃない!誤魔化しなさい!全力で誤魔化すのよ!』

 

「ですよね~」

 

『本当はどこにいきたい?って聞くのよ』

 

「了解」

 

本当の選択肢を訊き、今度こそと狂三に聞き直そうと向き直る。

 

「今のは………」

 

一也は狂三を見て硬直した。狂三がスカートの裾を持ち、玩具でも与えられたような子供の目をしている。

 

「あらあら。一也さんは意外に大胆ですのね?いいですわ。見たいのであれば」

 

狂三はそのまま辺りを見回し、廊下の死角になる掃除用具入れの影へと隠れる。

 

「え、えっと………狂三さん?」

 

訳がわからずに困惑する一也を尻目に、狂三はなぜか頬を桜色に染める。

 

「いくら私でも恥ずかしいですから、少しだけですわよ?」

 

そう言うと、ゆっくりと裾を摘まんだ両手をあげていく、一也はその光景に不甲斐なくもゴクリと唾を飲む。

 

(あと数センチ………)

 

下着が一瞬見えた瞬間。一也の背筋に、今までに何度か感じたことのある悪寒が走る。

 

「ストップ!ウェイト!フリーズ!」

 

慌てて狂三の腕をつかみ、スカートを下におろさせる。

 

「あら?一也さんは全て見えるより、チラリズムがお好きなんですの?」

 

(こいつだけ殺すのは駄目だろうか)

 

何となく狂三の腕を掴む手に力を込めた。

 

「きゃっ!…………ふふふ、一也さんはそう言う趣味をお持ちなんですか?」

 

言われて冷静に自分の姿を見ると、廊下の影で女の子を壁に押し付け、あまつさえスカートを無理矢理捲りあげる痴漢紛いな状況だ。

 

「……………悪かった。痛くなかったか?」

 

「あらあら。やはり一也さんはお優しい方ですのね」

 

手を離すと狂三は手首を片手でさする。一也はそれを見つつも、背中を向ける。

 

「さて、次いくぞ」

 

ゆっくりと足を動かして廊下を進む。

 

『まぁ色々あったけど、話を進めるわ。………一也を狙ってるのは確実なのになにもしてこないのは………』

 

琴里が考えているとモニターに選択肢が表示される。

 

1、狂三の頬に手を添えつつ「狂三の目って綺麗だな」と言う

 

2、肩に手を置き「今度デートしないか?」と言う

 

3、抱き寄せて「狂三のすべてが知りたい」と言う

 

「な、なに…………これ?と、取り敢えず総員、選択!」

 

琴里は出てきた選択肢に、思わず口に含んでいた飴を落としてしまう。そう言った後直ぐに集計が出る。

 

「二番ね。まぁ次に繋げるなら無難だけど。行動の方がね……………」

 

苦虫を噛んだような顔をして指示を出すか迷っていると、後ろから声が聞こえる。

 

「まさかの選択肢ですね」

 

「あら。無事だったのね神無月?」

 

ボロボロになった神無月が、いつの間にか琴里の後ろに戻ってきていた。

 

「えぇ。それで彼らは?」

 

「あれよ。もしもの時の備えよ。他意は無いわ」

 

「そうですか!ははは」

 

「そうよ」

 

神無月は笑うのをやめると、急にキリッとした顔になる。

 

「ところで、この選択肢の他にもありますよ?」

 

琴里は目を細めるが、一応神無月に内容を聞いた。

 

「はい。まず一也君が四つん這いになります」

 

「は?」

 

「そこから精霊に鞭を持たせ、一也くんのお尻をその鞭で叩きます」

 

「あんたね~」

 

琴里が怒っているのに気がつかず、神無月は拳を強く握り力説する。

 

「そうすることで、二人の関係性を深めることに………」

 

全てを訊き終わる前に琴里は指を鳴らし、例にならって巨漢が入ってきて神無月をどこかへ連れていった。

 

「まったく。一也、狂三の肩に手を置いてデートに誘いなさい」

 

 

「手を肩にって…………」

 

後ろを着いてくる狂三をチラッと見る。あまり表情は変わらないが、あんなことのあとならやりにくい。

 

『大丈夫よ。AIが出したんだから大丈夫だって…………多分』

 

「多分って。…………はぁ~わかったよ」

 

歩くのをやめて、狂三の方へ向き直る。

 

「あら?どうしましたの?」

 

意を決して狂三の両肩に手を置く。

 

「あら?あらあら?」

 

「…………狂三。次の休みにデートしよう」

 

言ったところで、狂三が了承する確証はない。いや、むしろあり得ない。一也はそう考えていたが、帰ってきた言葉は予想とは違い。

 

「えぇ!いいですわね。一也さんとデート。とっても楽しみですわ!」

 

まさかの好印象だったので、一也は少し困惑した。

 

(神よ。いるならこの地獄を抜け出させてくれ)

 

一也の頭のなかには、最近会ってないハイライトが消えた目をしている、彼女が微笑んでいた。それのせいか、これからやる事がとてつもなく重く感じた。




前回書いたアンケートですが、yes票優勢です。
これは書かないといけない雰囲気が…………
いや、書いてやりますとも!(上手くはないかもしれませんが)

期待は小でお願いしますorz
それでは、また次回

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