デリート・オア・ライフ   作:サカズキ

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……………………こんにちは。またはこんばんは。サカズキです。

アニメも狂三様が登場しました。ただアニメではなんと言うか、クオリティが低かったような。
そして声は脳内でなぜかTOXのミュゼに変換される。

でも、気を取り直して書きました
本編どうぞ


エンカウント・ナイトメア

街の帳もおり始める時間。ある路地裏に血生臭い光景が広がる。陽の入る大通り側には機械を取り付けた少女。路地の奥には息のしていない、少女『だった』ものがただの肉塊になって転がっている。

 

「はぁはぁはぁ。…………まったく手間をかけさせてくれやがります」

 

彼女は精霊を『殺した』少女。そして、たった今も『また』殺したところだ。

 

「さて、さっさと連絡して帰りますか」

 

耳に手を触れて、どこかへ連絡して二、三言話すとその場を後にする。少女が路地から去ったのを見計らって、死体となった少女の隣に同じ顔をした『彼女』が表れる。

 

「あらあら。上品ではありませんわね」

 

今しがた殺されたはずの彼女は幽霊などではなく『精霊』と呼ばれる存在。名前を時崎狂三と名乗っている。

 

「さて、一年近く待ちましたもの。一也さんは美味しくなっているでしょうか?」

 

彼女はその赤い目を光らせながら、死に絶える自分に目もくれずに夜を迎えた街へと消えていく。まるで影のように、スッと溶け込んで。

 

「あじぃぃぃぃ」

 

一也の隣の席の井崎が梅雨も過ぎ、真夏となった太陽の陽射しを怨めしそうに愚痴る。

 

「それ、去年も言ってなかったか?」

 

一也は読んでいた小説から目をはなし、井崎に視線を移す。

 

「暑いもんは暑いだろがぁ。…………ん?お!」

 

井崎がいきなり元気になったので、なんだと思い一也は同じ方を向くとそこには、外から帰ってきた女子のグループ。彼女たちは夏服で、この時間はまさに暑さがMAX。汗をかくのは仕方の無いことだから、当然制服は汗で透ける。

 

「おい。止めとけ。セクハラで訴えられるぞ」

 

「違う。前を向いたら、たまたま!たまたま目に入っただけで、大急ぎで脳内フォルダに保存したことなんてないからな!!」

 

それはほとんど自白ではないかと思ったが、それは女子たちも聞いていたようで、ヒソヒソと「井崎君サイテー」「猛獣よ。近づいたら食べられるわ」「マジサイテー。逆に挽き肉にされてライオンとかサメの餌にでもなれば?」とか言われている。

 

「ちょっと待て!最後のは流石に聞こえてるよ!?なんですか餌って!」

 

上記のように、一也のクラスはいつものように井崎の暴走で落ちが着くと言う日常だ。

 

 

今、一也と井崎は放課後の寄り道をしている。何て事のない、いつも通りCDショップに寄っているだけだ。

 

「こっちか、これか。どちらを買うか」

 

井崎は二枚のCDを手に取り、どちらを購入するか決めかねている。一也はそんな井崎の隣で気になったCDを見ている。

 

「なぁ、一也。来週返すから、千円貸してくれ!」

 

「金の貸し借りはしたくないんだけど」

 

「なら、こっちかこっちをお前が買ってくれよ」

 

目の前に突き出されたCDを見て一也はため息を吐く。

 

「両方僕の趣味じゃない。第一にそれは、井崎にしか得がない」

 

なんとか拝み倒そうとする井崎をいなし、結局どちらを買うかを一也が決める形で収まった。

購入後の二人は店を出て、帰路に付いた。その途中で、五河家に世話になっている一也はいつもより早く井崎と別れた。

 

「…………………」

 

あと少しで五河家だと言うところ。一也は背中に妙な視線を感じた。数歩進んで止めることなく後ろを振り向き見る。だがそこには今しがた自分の通った道があるだけ。首をかしげて前を向き直す。

 

「ふふ。ご機嫌よう。一也さん?」

 

いつの間にか一也の進行方向に、見たことのある。だが決して会いたくない相手がいる。

 

「…………時崎狂三」

 

「ふふふ。あの時と同じ様な反応ですわね?」

 

あの時とは、始めて二人が合ったときのことを言っているんだろう。

 

「似すぎだろ。それに楽しんでないか?」

 

訝しげに問いかける一也に対して、狂三の態度は嬉々として笑っている。

 

「な、なんだよ」

 

「いえ。ただ……………これから美味しいものを頂けるとしたら、それはとても嬉しいことではありません?」

 

狂三の言葉を聞いた瞬間、棒立ちしていた一也はすぐに構える。

 

(これは少しまずいな。今日までインカムは修理だし。琴里達に連絡が取れないな)

 

アドバイスやサポートのない状況で、近接戦闘しかできない一也は正直にいって狂三の的だ。その上、精霊の性質上一也とは相性が悪い。

 

「さぁて。前回の通りにはいきませんわよ?」

 

狂三の性格なら前は分身で様子見で、倒せれば儲け。今回は本体で確実に殺しに来るだろう。なら、一也の目の前の時崎狂三は本気も本気。天使も惜しみ無く使ってくる。

 

(逃げるか?いや、逃げても分身を飛ばされれば意味がない。いっそのこと戦うか?あわよくば精霊の力を封じ込められる)

 

「きひひひ。考えてること当てましょうか?逃げるか、戦うか。戦えばあわよくば私を倒せると…………そんなところでしょうか?そんなこと絶ェェェェェェェ対できませんわ!」

 

狂三の雄叫びのような声と共に、彼女の背後に大きな時計が現れる。それは彼女の天使。

 

(ッ!?)

 

「さぁ、お出でなさい『刻々帝』(ザフキェェェェェェル)!!」

 

短針と長針がそれぞれ銃へと変わり、そのまま彼女の手に収まる。狂三は長銃の方を一也に向けて口を開く。

 

狂宴(パーティー)の始まりですわ」

 

 

天宮町上空・フラクシナス艦内

 

この場には本来似つかわしくない赤い髪の少女が軍服のようなものを羽織って椅子に座り、イラつきを隠さずに口に含んでいるキャンディを噛み砕く。

 

「チッ!まさか空間震を起こさずに現界してるなんて」

 

この艦の司令官である少女、五河琴里が飴のなくなった棒の部分を噛んだまま愚痴る。

 

「こちらの失態です。まさか天使が出るまで気が付かなかったとは」

 

琴里の後ろに控える副司令の神無月恭平が、汗をかきながら言う。彼らの目線には大きなモニターがあり、それには対峙する『精霊』時崎狂三と九十九一也が映し出されている。

 

「どうしますか司令?」

 

「どうするもこうするも、なんとか避けなきゃいけないでしょ」

 

口に含んでいた飴の棒を取り出して、後方へ投げ捨てる。それを神無月が拾っているが、それはおいといて。この状況を打破できるのは当人である一也のみである。その事を分からないフラクシナス司令官ではない。

 

「何とかして被害を出さずに二人を引き離すわよ。総員すぐさまプランの発案!」

 

 

 

天宮町・五河家付近

 

夏になり陽の出ている時間が増えたといえ、しばらくもじっとしていれば時が経ち辺りは暗くなる。そんな場所で狂三と一也が向かい合っている。

 

「……………………」

 

「ふふふ…………」

 

最初に天使を現したら時から、一歩も動けない一也。それに対してすでに《一の弾》を入れた銃口を一也に向け、優雅に笑っている狂三。

 

(なぜ仕掛けてこない?殺す気がないのか?いや、そんなことはないだろ。なら、なにか理由が…………)

 

一筋の汗が顔を伝い、アスファルトに落ちる。暑いなか、緊張状態が続けば汗もいやと言うほど掻く。

 

(力を使えば一瞬は先手を取れる。けど次の一手は必ず向こうにとられる)

 

実際に起こったわけではないが、十中八九でそうなるだろう。例えるなら、チェックメイトされると分かってて、駒を動かすようなものだ。

 

「……………面白くありませんわね。抵抗していただかないと、せっかく来た意味がありませんわ」

 

狂三はこの状態が続きすぎた事に退屈したのか、銃口を下げて、そのままドレスのような霊装の裾をひらりと翻し、一也に背を向けた。

 

「まぁでもいいですわ。どうせまたお会いするのですもの。その時をどうかお楽しみに……………」

 

そういった彼女は夜の闇へと文字通りに消えていった。始めからそこにいなかったように。

 

「な、なんだったんだ?いったい」

 

構えを解いていままで狂三のいた空間を見つめていたが、ハッと辺りがすでに暗くなっているのに気が付いて慌てて足を五河家へと動かし始めた。

 

 

五河家の食事のあと、一也は琴里に話があると廊下に呼び出された。十香が心配そうにしていたが、問題ないと言って士道とゲームをしているように言ったので、今はドアの向こうで十香が楽しそうに叫んでいる。

 

「で?用って言うのは、あいつのことか?」

 

琴里は黒のリボンを着けている。つまり今は司令官モードと言うことで、口調はきついものになっている。

 

「えぇ。あんた、あいつの事知ってるようだけど?」

 

廊下に背を預けて腕を組んでいる琴里が、視線だけを一也に向ける。

 

「あぁ。一年前くらいか。一回襲われてる」

 

一也の言葉を聞いてため息を着く。今度はそのままの姿勢で首も動かして一也を見る。

 

「あんたバカなの?死にたいの?死ぬの?そう言う大事なことは言いなさいよね」

 

琴里は毒づくが、まだ大事なことを忘れているようだ。

 

「ったく…………あれ?何でその時は気が付かなかったのかしら?」

 

「それはあいつの力だろ。俺はあいつの影のなかに引きずり込まれたんだから」

 

目を見開く琴里。だがすぐにいつものように澄ました顔をして、一也に聞いた。

 

「影って?それはどういうものなの?」

 

「文字通りに影だ。時崎狂三………いや《ナイトメア》の。あれに引きずり込まれたら、あとはずっとあいつのターンだ。生き残れるのは気まぐれであいつに吐き出されるか、それかあいつ以上に強いか」

 

言葉を聞いた琴里は指を顎にあて、考えている。

 

「あなたはどうなの?引きずり込まれたら抵抗できるの?」

 

「大丈夫だ。問題ない…………と言いたいけど、僕とあいつの天使は相性が悪い。第一に天使ほどの力は逆転させられたとして、限度は一時間だ。逆に言えば、一時間で打開しないとこっちがやられる」

 

そうと呟くとまた何かを考えているようだが、正直言って一也は琴里の思うような、狂三の力を封印することも、それ以前に説得も不可能だと思っている。

 

(あいつはあいつで、自分の信じてるように行動しているのだから…………)

 

その時リビングの扉が開き、中から十香が出てきた。

 

「カズヤも琴里もまだ話しているのか?はやく一緒にゲームをするぞ!」

 

真剣な空気に突如として飛来したその声に、一也は吹き出しそうになるがなんとか耐えて、わかったと言ってリビングに入ろうとする。足を踏み入れる瞬間に琴里の方を見て、一也は小さい声でいった。

 

「僕は利他主義ではないけど、利己主義のつもりもない。ただ…………ぬるま湯と言われようと、今の幸せの中に居たいんだ」

 

それを聞いて琴里は首をかしげる。いきなり言われたことに、理解ができない。

 

「それはどう言うこと?」

 

「………………壊したくないんだ、今を」

 

一也はそう呟いて今度こそリビングに入る。その時十香や士道に話しかける声も姿もいつもの一也で。




あとがきですが、小説にたいして書くことがない(笑)
いい意味でも、悪い意味でも。

強いて言うなら、評価をつけてくださる方。特に低評価の方は出来ればここが悪かった等の感想を頂けたらいいてす。

そしてこれまた原作と言うだけですが、凛祢ユートピアの公式サイトに声優さんのメッセージボイスがありまして、それを聞いていると期待が膨らみます。

追記
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それと、投稿時に書き忘れましたが、『デリート・オア・ライフ』の18禁編(ピンクな方面)を書こうか迷っています。もしよろしければ、yes or notをお聞かせください。一票もない場合はお蔵入りにします。

それでは、また次回

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