デリート・オア・ライフ   作:サカズキ

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デート・ミューティング

現在僕は〈ラタトスク〉と呼ばれる組織に属する人達に、精霊についての説明を受けていた。

それには五河士道も同席しているが、彼はてんやわんやの今の状態を理解できてない様子。

 

「で、次に行くけど」

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

さっさと説明を進める琴里と言う少女に、士道は声をあげる。

話を止められた琴里は、女王の様な上から目線のような口調で説明していることを感謝しろだの、足の裏をなめてもいいなど、こっちの時は相変わらずな話し方だ。

そのとなりの神無月さんも、足をなめていいと言う言葉に反応したら肘鉄を食らわされた。

 

(ここの連中は相変わらずなやつらだ)

 

何となくの懐かしさと哀愁を感じてしまい、あわてて首を振る。

 

「それで、琴里司令?でいいのか」

 

「もしくは琴里様でもいいわよ?」

 

「遠慮します。でだ、ここにまだ僕がいるのは、その精霊をどうにかしろと言う事か?」

 

「そうね。あんた………一也がやってくれるのなら良いけど、あんたには」

 

「殺ってもいいのか?それなら遠慮なくやれるが……」

 

「ニュアンスが違う気がするんだけど、まぁいいわ。どっかの鶏頭よりよっぽど賢いし」

 

そう言った琴里は士道の方を一瞥しながら鼻で笑った。

 

「なんだよ!てかお前本当に琴里なのか?」

 

「そうよ。妹の顔も忘れるなんて、やっぱり士道は鶏頭ね?」

 

「何なんだよ。ここはどこだよ、この人たちは?それに一也だっけ?も何者なんだ」

 

「少しは落ち着いて、一応俺より年上でしょう?」

 

「は?お前、年は?」

 

「16才だけど?」

 

さっきもあったようなポカンと口を開けて、絶句する士道を見て僕は大笑いして、それを士道が恥ずかしそうに顔を赤くして笑うなと怒ってきた。

 

「はいはい。コントやってないで話を聞く。お猿な士道にも分かりやすいように、ゆっくり細かく説明してあげる」

 

そう言って琴里が大きなスクリーンに写った、先程の精霊と機械の鎧を着た人間たち。

それを指して一つずつ解説していく。僕はすでに前の生でいやと言うほど見てきた、AST正式名称『アンチ・スピリット・チーム』の略称で陸自に帰属する組織らしく、実践で戦うものを魔導師(ウィザード)と呼ぶ。彼女たちとは何度となく戦った。殺すような事はしていないがそれでも何回かは行動不能にしたのを覚えてる。そうでもしないと、あの時は士道が精霊と話なんかできなかったから。

 

「見れば見るほどやっぱり、あのボディースーツはないだろ。MS娘……いや、どちらかと言えばISか?ふむ」

 

「何言ってんだよ!それに精霊って………」

 

「精霊はこの世ならざるモノ。精霊がこっちの世界に来ることで起こる空間震。それでどれだけ被害が出てるか………」

 

「な、なんだよ……それ」

 

「これでもわからないの?」

 

「つまりだ。空間震とは精霊がこっちに来る時の言わば衝撃、余波だ。」

 

「なーー」

 

士道はそれを聞き眉間にシワを寄せて渋い顔をした。

当然だ理不尽な天災が一転、その原因が先程出会った少女だと言われたのだ。

 

「まぁ被害の規模は数メートルや、それこそあのユーラシア大陸のやつみたいな、化け物じみたやつまである」

 

「そうね。今回の規模がもっと大きかったら、あなたたち死んでたかもよ?」

 

それもそうだ。かく言えば僕も間違えれば死んでいたかもしれない。

かの少女の空間震が前と同じとはいい得ないのだから。

 

「だいたいあなたたち何で警報発令中に外に出てたの?馬鹿なの?死ぬの?それとも死にたいの?」

 

「死ぬのは勘弁願いたい。まだやりたいことあるし」

 

「そうだ!それに俺はこれが」

 

そう言ってポケットから取り出したのは携帯電話を、操作してGPSで誰かの位置情報を表示させる。

 

「ん?ああ、それ」

 

どうやら琴里の物らしいが、彼女は懐から携帯電話を取り出して士道に見せた。

士道は自分のそれと琴里のものを交互に見て、少し混乱しているらしい。

それを見て琴里は溜め息をついた。

 

「なんで警報発令中に外にいたのかと思ったら、それが原因だったのね。私をどれだけ馬鹿かと思っているのかしらこの阿呆兄は」

 

「そこまで言うなよ。なぁ?」

 

「あ、あぁ。それにここに携帯があるならこれは」

 

琴里が口を開こうとしたが僕の方が先に言を発した。

 

「簡単だろ?答えはここがファミレスの前だから」

 

「え、えぇそうね。ついでだから見せておきましょうか。フィルター切って」

 

琴里がそう言うと、回りの壁が消え去り外の風景が見えるようになり薄暗かった艦橋が一気に明るくなった。しかも外は青空が広がり空を飛んでいるようだった。

 

「おー!圧巻だな」

 

「なんでお前は素直に楽しめるんだ?」

 

「士道。すでに巻き込まれたのだから、その状況を受け入れて楽しむのがベストだろ?いつまでも現実逃避は出来ない」

 

「それは………そうだけど」

 

「ふーん。そっちの彼は士道とは違って随分と余裕ね。そんなあなたはこの空中艦・〈フラクシナス〉をどお見るのかしら?」

 

「いい船じゃないか?設備も最新と言っていいし、何より乗ってる人達が面白いな」

 

そう言って冗談半分に笑って言うと、同じように琴里も少し声を高くして言った。

 

「そうでしょう?まぁ変人が多いけど、優秀なのは間違いないわ」

 

「確かにそこの神無月さんはあっち側の人ですか?」

 

「えぇ。毎回面倒くさいけれど、優秀な副司令よ」

 

「お、おい。なに二人だけで話してるんだよ!」

 

「ん?あぁご免なさい。すっかり忘れてたわ」

 

士道はそれを聞いて悔しそうな、悲しそうな顔をして落ち込んでるがそんなことはお構いなしに、琴里はリヤなんとかやインビジブル、アヴなんとかと小声で言ったあと、スクリーンの説明に戻った。説明の途中で精霊の対処法の所で士道が声を上げた。

 

「処理………?」

 

「ようはさっきみたいなこと。殺すんだよ、武力をもって」

 

「なッ?!」

 

士道はそれを聞くとなんとも言いがたい、苦虫を咬んだような顔をした。

それを見て僕はすぐに、それとは対する言葉を告げる。

 

「一番早いのは確かに殺すことだ。けど……」

 

「けど?」

 

「他の方法もあるにはある。そうだろ琴里?」

 

「えぇ、一也の言うとおりで、他の方法もあるわ」

 

「なんだよそれは!早く言えよ」

 

「まぁそうだよな。自分で言ってなんだけど、やっぱり殺すのは………な」

 

そんな事を言っていると。

 

「………そんなに殺しなくないの?あれは化け物。理不尽な天災と変わらない。世界にとっての毒なのよ?それでも?」

 

琴里の神妙な顔つきでの質問に一瞬たじろぐが、士道は僕の方を見て意を決して二人で頷いた。

 

「そう………なら、ちょっと予定が違うけど、私達〈フラクシナス〉の総力をもってあなた達ををサポートするわ」

 

「は?え、ちょっと」

 

「聞こえなかったの?士道の耳はただの飾り?マギーじゃあるまいし。いい士道?精霊の対処法は二つ。一つはさっきの通り、武力を持ってこれの殲滅。もうひとつは」

 

琴里は言葉をそこで一旦きって、軽く息を吸い士道にとって少し分かりにくい事を言った。

 

「そして………対話による方法。私達〈ラタトスク〉は対話によって精霊を殺さずに空間震を静めるために結成された組織」

 

「?それがどうして俺達のサポートに?」

 

「つまりだ。僕達があの子と会話して、空間震を治めれば良いわけだ」

 

「そう言うこと。本来は士道一人でやってもらうはずだったけど、一也も力に加えられそうだし、二人でやってもらうわ」

 

「そ、そうなのか?それで、具体的に何すれば?」

 

その質問に対する琴里の答えは士道を十二分に驚かせた。

 

「それはねーー精霊に恋させるの」

 

「ーーーはい?」

 

「まぁこの方法は士道しかできないけど、一也の場合も同じ様にやるのよ?」

 

「ん?あぁ分かったけど」

 

チラリと士道を見ると、わけがわからないと目をぱちくりさせて、ようやく言葉を発した。

 

「だからなんで、恋させて空間震が治まるんだよ!」

 

「良いからあんたはさっさと精霊とデートして、イチャイチャして、デレさせればいいの!見なさい、一也はすでに受け入れてるわよ?」

 

「なんでお前は簡単に受け入れられるんだよ!」

 

「いや、あの子………名前がないと不便だな。それに名前無いって言ってたし、仮でつけるか?」

 

俺がそう提案すると、以外な事に司令官の琴里が乗ってきた。

 

「良いわねそれ。どうせ、そのうちつけるんだし、今のうちに決めときましょう」

 

そう言って艦内の全員に即座にアンケートを取ったが、皆あまりいい案が出なかった。

と言うよりも、琴里が見た瞬間にそれを出した人を罵倒するものだから、中々進まないでいる。

 

(ふ~しょうがない。そろそろいいか)

 

スッと手を挙げて、提案の意を琴里に示すと顎で言えと示された。

 

「あぁ~十香とかどうだ?」

 

「トオカねぇ。字は?」

 

「数字の十に、香りで十香だ」

 

「意味………なんて無いんでしょうね」

 

「まぁ仮だしな。彼女が気に入ればそのままだけど」

 

「なんか俺の存在が希薄に」

 

士道がそう言うと確かに忘れていた気がするが、琴里はそのまま話を続ける。

 

「じゃこれから精霊改め十香をどちらがデートしてデレさせなさい!」

 

(正直言えば僕は別に、デレさせなくてもいいんだけど)

 

そんなこんなで指示された十香をデレさせる事だが、隣の士道は少しばかり不満そうだ。

いきなりデレさせろと言われても、困るのは確かだ。

僕の場合は士道とは別の理由になるが。

 

(うぅぅ~思い出したら震えてきた。もしばれたらあれ………だよな。修羅場だよ)

 

一抹の………いや九割以上の不安と恐怖が来るが、ここで踏ん張らなければ。

もう死ぬわけにはいかない。その為に二度目の正を受けてここにいるのだから。

 

(そう言えば、琴里とあの白衣の人……村雨令音(むらさめれいね)だっけ。その人には俺の能力ばれてるんだろうなきっと)

 

そう、ここに来て最初にされたことは、不覚にも体を調べられてしまったのだ。

全てとはいかなくても能力のほとんどを、彼女たちは理解しているだろう。

その『全て』には九十九一也本人も知らない事も含まれるが。

それでも当面は変に利用されることもないだろうし、されてもそれこそ本意ではないが能力を使えばいい。それより重要なのは、僕は明日から始まる戦争(デート)を生き残れるのか?そっちの方が心配だ。 け




原作に入ったらやり易いかと思いきや、原作沿いだと動かしにくいですね

その上で士道君いますし、ハーレムがやりにくく今回あれこれ考えて琴里と令音にのみバラして、その上で協力すると言うことでやり易くしました。

これからが本番!十香ちゃんをデートしてデレさせないと!!
かぁくん彼女いるのにリア充め!!作者と言う神が血を見る展開にしてやりますよフフフ……

それでは、また次回

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