なんとか書き終わった……
とりあえず投稿します。
愛佳襲撃事件の翌日。
龍二は新たな戦力を迎え入れる為に工廠へ訪れていた。
できれば、自分の能力が効かない普通な艦娘であってくれと祈りながら……。
「では、ドック解放しますよ~」
「お願いします」
相変わらず大量の煙をまき散らしながら、建造ドックが開いてゆく。
今回渡したレシピはどちらも空母。
前回の出撃で航空攻撃の重要性を認識した龍二は、今後に備えて予め建造しておくことにしたのだ。
まず現れたのは、灰桜色の髪を後ろで束ね、紅白の弓道着に身を包んだ小柄な少女。
額には紅白の鉢巻が巻かれ、祥鳳と同じように艦載機発艦用の弓を持っている。
少女はゆっくりと目を開けると、年相応の可愛らしい笑顔で自己紹介を始めた。
「祥鳳型軽空母、瑞鳳です。よろしくお願いします!」
「うん、よろしくね。祥鳳型ってことは2番艦なのかな?うちには既に祥鳳が居るし……」
「祥鳳いるの!?やったぁ~♪」
よっぽど嬉しかったのだろう、姉の祥鳳がいると分かり、元気な笑顔ではしゃぎだす瑞鳳。
そしてふと我に返ると、恥ずかしそうに頬を染めて照れている。
(今のところ普通っぽいけど……。とりあえず握手でもしてみるか)
「実は、うちの鎮守府にはまだ君と祥鳳しか空母がいないんだ。だから頼りにしてるよ」
「は、はいっ!姉の祥鳳共々頑張りますっ!」
いつものように優しい微笑みで握手をする龍二。
瑞鳳も顔が真っ赤だが、先ほどの大はしゃぎで照れたのか、それともやはり惚れられたのか判断がつかない。
(まぁそのうち分かるかな……)
そんな事を考えながら握手をしていると、もう片方のドックからも人影が現れた。
非常に小柄な体躯をしており、きらきらと輝くような銀髪を腰まで伸ばしている。
頭には帽子をかぶっており、脇に銀色の「Ⅲ」を模したワッペンが取り付けられている。
服装や装備を見る限り、残念ながら空母ではなく駆逐艦だったようだ。
「暁型駆逐艦の2番艦、響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」
「よろしくね、響。不死鳥か……かっこいいじゃないか」
「軍艦だった時は、一応戦後まで生き残ったから……」
「そうか、立派な武勲艦だったんだな。駆け出しの鎮守府だからまだ姉妹が揃ってないのが申し訳ないけど……」
「大丈夫、気長に待つさ。よろしくね、司令官」
「ああ、よろしく。歓迎するよ」
「……хорошо(ハラショー)」
「ん?何か言ったかい?」
「いや、なんでもないよ司令官」
そう言いつつ、帽子を深く被り顔を隠す響。
ああ、この子もか……。
こんな小さな子にまでと少し落胆するが、そもそも艦娘にとって年齢などあって無いようなものである。
実際、瑞鳳と響を2人並べて大人な精神思考をしてそうなのは?と問えば、響に軍配が上がりそうな気がする。
瑞鳳に言ったら怒られそうなので、口には出さないが。
(両方空母じゃなかったのは残念だけど、とりあえず軽空母は1人来てくれたし、遠征要員が増えるからローテーションも楽になるかな)
2人の顔を眺めつつ、そんな事を考える龍二。
軽空母の搭載数の少なさについては、開発した装備で補ってやればいい。
頑張りすぎてまた大淀に怒られるのは御免だが。
「ふむ、着々とハーレムが出来上がってきてますな」
「やめてくださいよ……。昨日もいろいろ大変だったんですから」
「独身の提督ならきっと、喉から手が出るほど欲しい能力なはずなんですけどね」
「他人にあげられるならあげたいですよ……」
工廠長に茶化され、がっくりと肩を落とす龍二。
瑞鳳と響は、そんな龍二の様子を見てぽかんとしている。
「あ、そういえば……昨日の出撃でまた艦の記憶が見つかったんですが」
「ふむ、今までのよりちょっと大きい気がしますね……とりあえず誕生させてみますか?」
「お願いします」
いつもより一回り大きな艦の記憶をセットし、工廠長が機械を始動させる。
そして1分も経たないうちに中から艦娘が現れた。
ラベンダー色の髪を快活そうに後ろで括り、軽巡洋艦よりも一回り大きな艤装を装備している。
そしてなぜかカメラを首から下げている……何でカメラ?
「ども!重巡洋艦の青葉ですっ!一言お願いしまーす!」
「うおっ、なんだなんだ!?」
「あ、いい顔!いただきますぅ!」
出てきていきなり写真を撮られ、何が何やらテンパってしまう。
ずいぶんキャラの濃い子が来たなぁとも思いつつ、初の重巡洋艦に少しだけ心が躍る龍二。
「あーびっくりした、いきなり写真を撮られるとは……」
「ども!恐縮です!」
「全く恐縮してない気もするけど……まあいいや。君は重巡洋艦なんだね?」
「はい!重巡洋艦としては小柄な部類に入りますが、司令官の為に頑張りますよっ!」
「そうなのか。だとしても重要な戦力に変わりはないし、頼りにしてるよ、青葉」
「はいっ!よろしくお願いします司令官っ」
そのまま握手をしていると、またもパシャリと一枚撮られてしまった。
「……これは永久保存版ですっ」という声が聞こえたが、気のせいという事にならないだろうか……。
まぁなんにせよ、戦艦も1人しかいない我が鎮守府にとって貴重な戦力である事に変わりはない。
本人もキャラは濃いが悪い子ではなさそうだし、何とかなるだろう。
「3人とも、とりあえず執務室へ行こうか。今日の秘書艦に案内をお願いしてあるから」
そう告げると、3人を引き連れて執務室へ向かう。
去り際に工廠長が「ハーレム要員1人追加しました~」と言っていたが、戻ってもまたからかわれそうなので聞かなかったことにする。
どうにかして茶化された反撃をしたいが、下手なことをしてボイコットでもされたらたまったものではないので即諦める。
そんな悔しさを噛みしめつつ、執務室へ向かう龍二だった。
◇
「ただいま~」
「おかえり、司令官。そっちの3人が新人さん?」
「そうそう。早速鎮守府内の案内を頼むよ」
「ほーい」
退屈していたのか、コーヒーの入ったカップを手にぐでーっとしていた本日の秘書艦、敷波。
お願いしてた仕事は全部終わっている所を見るに、根は真面目な子ではあるのだ。
あのぐでーっぷりを大淀辺りに見られたら、お説教もありうるかもしれんが……。
「んじゃ、行ってくるね~」
「あいよ」
お互いに軽く自己紹介を済ませた後、敷波は3人を引き連れて執務室を出て行った。
そして誰もいなくなったことを確認すると、龍二は机上にうなだれて頭を抱え始める。
「はぁ……。やっぱりこうなっちまうのかぁ……」
ここで言うやっぱりとは、もちろん龍二に惚れる云々の話である。
唯一の希望であった瑞鳳も、執務室までの道すがらの会話で、他の2人と同じような反応をしていた。
つまりはそういうわけである。
「でも、仲間を増やさないと今後やっていけないし。でも増えれば増えるほど悩みのタネが……」
そう言いつつ目を向けるは、今朝方大本営から届いた新たな指令書。
『南1号作戦』と記されたその紙には、『南西諸島の防衛ラインへ侵攻しようとしている深海棲艦を撃滅せよ』と記載されている。
そしてその下にはこう記されていた。
『敵主力艦隊に軽母ヌ級、及び空母ヲ級の存在を確認』と。
「ついに敵さんも空母出してきたか……昨日のうちに建造依頼しておいて正解だったな」
そう呟きつつも、龍二の表情から不安そうな影は消えない。
軽母ヌ級はいいとして、問題は空母ヲ級である。
別途軽母がいるということは、ヲ級は正規空母で間違いないだろう。
その場合、こちらの軽空母2隻でどこまで対応できるか……。
「とりあえず、装備の開発と錬度の向上は集中的にやらないとな」
新たに空母レシピで建造もしたいところだが、先日の出撃と今回の建造で備蓄資材がだいぶ無くなってしまった。
これ以上建造にまわすと鎮守府が機能しなくなるので、やはり今の軽空母2隻で頑張るしかない。
それに、最悪制空権を取れなくても、ある程度敵の航空攻撃の威力をそぐことはできるだろう。
それを考えると、祥鳳と瑞鳳に対空戦をしてもらっている間に、榛名や青葉にも頑張ってもらわねばなるまい。
「いろいろやる事があって……提督業も中々大変だなぁ」
そんな他人事のように呟きつつ、頭の中に思い浮かべるのは昨日の愛佳である。
去り際に呟いていた「またすぐ会えるから」とはどういう意味なのか。
彼女自身、龍二に責が及ぶことを避けるために早々に帰宅した事を考えると、またすぐに鎮守府へ来ることはないだろう。
かといって、新米提督の配偶者でもないただの恋人の出入りを認めるほど、大本営も甘くは無い筈だ。
「ますますもって分からん……」
いくら考えても納得のできる答えに辿り着けないので、とりあえず今後のスケジュールを組むことにする。
本人の与り知らぬ所で、着々と包囲網が出来上がりつつあることに気付かないまま……。
◇
とある所にある、とある店内。
そこには、必死にカタログを捲る愛佳の姿があった。
「うーん、なかなかいいのが無いなぁ……」
かれこれ30分ほど熱心にカタログを見る愛佳に、店員もそっと苦笑い。
なお今彼女が来ている店は、同系列の店で3件目である。
「待っててね龍二。きっといいの見つけるから」
そう呟くとカタログを閉じ、店員に挨拶して店を出る。
小さめの旅行鞄を引きずりながら、次なる店へと歩みを進めていく。
自宅からほど遠い、この長崎の地を……。
残念、正規空母は出ませんでしたorz
そして早々に揃う祥鳳型……なんでやねん。
話の展開が1-3の時と展開が似ているような気がしたこともあり、次回からは何話か続けて閑話的なのを投稿します。
たまには脇道に逸れて、艦娘達と龍二のイチャコラ(龍二は必死)も書きたくなるのです。
というか、このSSの趣旨的にはそっちが本命な気も……。
え、恋人?
ちょっとそこでステイしてて下さい。