ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
ラダトームに来て3日目の朝、俺が起きた後城の中を歩いていると、ケッパーのような兵士の格好をした男が希望のはたのところに立っていた。
かつてのラダトームの兵士はもういないはずだが、どういうことだろう?
兵士の男は玉座の間に向かって歩いているローラ姫を見て、とても驚いている。
「もしや、あれは姫様!?ここには眩しい光が溢れているし、どうなっているんだ?」
この人も希望のはたの光のことを不思議に思っているようだな。
ローラ姫のことを知っていると言うことは、やはり現代の人ではないようだ。
誰なのか聞くために、俺はその人に近づいて話しかけた。
「なあ、あんた誰なんだ?兵士の格好をしてるけど」
すると、兵士の男も俺に気づいて話しかけてくる。
「そっちこそ一体誰だ?ずいぶんと緊張感のない顔をしているが···」
顔のことで何か言われたのはロロンドやノリンに出会った時以来だな。
確かに昨日の疲れがまだ完全に取れてはいないし、そう見えても仕方がないのかもしれないけど。
俺は先に自分の名前を名乗ることにして、いつもの自己紹介をする。
「俺は影山雄也、いつもは雄也って呼んでくれ。伝説のビルダーって奴だ」
「ビルダー?それは一体何なんだ?」
ビルダーと言う言葉を聞いた瞬間、男は首をかしげる。
彼は昔の人みたいだから、ビルダーのことも知らないのだろうな。
「ルビスから遣わされた、失われた物を作る力を持つ人のことだ」
「私は竜王の呪いで石になっていたから、最近のことは分からないが、つまりビルダーと言うのは、大工のような存在なのだな?」
やっぱりこの男は最近まで石になっていたのか。せいすいで死の大地を蘇らせて行くと同時に、石化の呪いが解除されたのだろう。
それと、ビルダーのことを大工のような存在だと言っているけど、元々ビルダーは建築士って意味のはずだからあながち間違ってもいない。
「ちょっと違うけど、似たような物だと思うぞ」
「やはりそうだったか!安心したぞ、お主のような奴が竜王を倒すと言わなくてな!」
いや、大工と似たような物と言ったからって、どうしてそう言う話になるんだ?
俺は戦闘が専門ではないけど、みんなのために竜王も裏切り勇者も倒すつもりだ。
「いや、これまで復興させてきた町のみんなのためにも、俺が竜王を倒すつもりだぞ」
「だとしても、竜王はお主が思っているより危険だから、やめておいたほうがいいぞ」
危険なことくらい百も承知だが、この兵士は分かってくれそうにないな。
勇者に向かっては竜王を倒してきてくれと言うのに、変わった奴だ。
「それと、私はかつてのラダトームの兵士、ラスタンだ。よろしく頼むぞ!」
少し腹が立つ奴だけど、ラダトームを再建していくには協力するしかないだろう。
彼は兵士だから、防衛戦の時も一緒に戦ってくれるだろうからな。
「ラスタンって言うのか。よろしくな」
俺とあいさつをした後、ラスタンは再建している途中のラダトームの城の中を見回りに行った。
俺はその後、今日はどの部屋を再建しようか考えていた。すると、少し前に起きてきたムツヘタに話しかけられた。
「雄也よ、少し話があるのじゃが、いいかの?」
「ああ、まだ何をするか決めてなかったしな」
ムツヘタにもローラ姫のように、作りたい部屋があるのだろうか。
これから何をするか悩んでいたところなので、俺はムツヘタの話を聞くことにする。
「精霊ルビスのお告げなのじゃが、ワシの予言者としての役割は、そなたを正しき道に進ませることのようじゃ」
ルビスがムツヘタにそんなことを言っていたとは知らなかったぜ。
ラダトームでは城の再建以外にもしなければいけないことがあるらしいし、それを教えるってことなんだろうな。
そのことに関して、俺に手伝ってほしいことがあるのだろうか?
「それで、俺に何をしてほしいんだ?」
「そなたには、かつてこのラダトームにあった、占いの間を作ってもらいたい。占いの間があれば、そなたがビルダーとして進むべき道をより正確に示すことが出来るであろう」
占いの間なんて部屋、ゲームではラダトームの城にあった覚えがないけど、どの部屋のことなのだろうか。
ルビスの言っていた竜王を倒す準備とやらも進めて行きたいし、作っておくべきだな。
「もちろん作るけど、どこに作ればいいんだ?」
俺が作る場所を聞くと、ムツヘタはドラクエ1ではMPを回復させてくれる老人のいる部屋があった場所を指差した。
「それなら、そのあたりがよい。そこなら、かつてのラダトームに近い気がするぞ」
あの部屋が占いの間だったとは知らなかったぜ。場所を言った後、ムツヘタは占いの間の設計図が書かれた紙を渡してくる。
「占いの間の設計図はワシが作っておいたぞ。どうじゃ、作れそうか?」
玉座の間に比べてかなり小さいが、また2種類の城のカベが必要と書いてあった。
中にはシャナク魔法台と収納箱、壁しょく台2つが置かれている。
すぐに用意できる物ばかりなので、今すぐ作ることが出来そうだな。
「ああ、今持っている物が多いし、すぐに作ってくるぜ」
城のカベ・地が20個、城のカベが18個必要と書いてあり、それと収納箱を作ればすぐに占いの間を完成させられる。
俺はムツヘタから設計図を受け取った後、神鉄炉と金床があるところへ向かった。
「素材は揃ってるから、すぐに作れるはずだな」
石材は昨日たくさん集めたし、鉄のインゴットもまだまだ残っている。
俺はビルダーの力を発動させて、それらを加工して占いの間に必要な壁を作り出す。
そして、城のカベ・地と城のカベがそれぞれ20個ずつできると、隣にある石の作業台で収納箱も作る。収納箱を作ったら、ムツヘタの言っていた場所へ行く。
「これで必要な物は揃ったし、すぐにブロックを積み上げて占いの間を作るか」
俺は設計図を見ながら1段目に城のカベ・地を、2段目に城のカベを置いていく。今回は玉座の間と違って2メートルの壁なので、すぐに完成させられた。
完成した後は、部屋の中にシャナク魔法台と収納箱を置き、壁には2つのカベしょく台をかける。
そして、最後に部屋の入り口にとびらを設置して、設計図通りの占いの間を作り上げることができた。
占いの間ができると、さっそく俺はそのことをムツヘタに教えに行った。
「ムツヘタ、占いの間が完成したぞ!」
「少ししか経っておらぬと言うのに、もう出来たと言うのか!?さすがは伝説のビルダーじゃな」
ムツヘタは、俺がすぐに占いの間を完成させたことにとても驚いていた。必要な物が揃っていたからでもあるけど、やはりビルダーの魔法の力のおかげだろう。
こんなにすごい力が使えるし、竜王と裏切り勇者を倒した後もずっとこの世界で暮らしたいぜ。
俺がそんなことを考えていると、ムツヘタはさっそく中に入っていた。
「おお、この部屋でならビルダーのそなたが進むべき道を正しく示していくことができようぞ!」
これでルビスのお告げ通り、竜王を倒す準備を進めて行けると言うことだな。
全ての準備が整ったら、たとえ俺の役割でなくとも竜王を倒してやるぜ。
ムツヘタは部屋の中を見た後、一度外に出てきて竜王のいる島へ行く方法について話を始めた。
「ところで雄也よ。竜王を倒すために竜王の住む魔の島に行くには、虹のしずくと言う特別な道具を作り出さねばならぬのだ」
確かドラクエ1でも、虹のしずくがないと竜王の島に行けなかったんだよな。
今はまだ作れないだろうけど、早く作れるようになりたいな。
「その虹のしずくは、どうやって作るんだ?」
「虹のしずくの原料は、このラダトームの最も深い闇の中に封印されているのじゃが、どこにその場所があるのかは分かっておらぬ」
ラダトームの最も深い闇か···もしかしたらその場所に闇の元凶である裏切り勇者がいるのかもしれないな。
ムツヘタは、その場所に入るにはさいごのかぎと言う特別な鍵が必要だとも言った。
「じゃからワシはその場所と、入口にある闇のとびらを開けるためのさいごのかぎの製法を調べてみるつもりじゃ」
「分かった。頼んだぞ、ムツヘタ」
ムツヘタも時間がかかりそうだから、今はラダトーム城の再建を進めていくしかなさそうだな。
ムツヘタは俺との話を終えると、再び占いの間の中に入っていった。
ムツヘタと別れた後、俺が少し休んでいると、城の中を一通り見終えたラスタンが話しかけてきた。
ラスタンもかつてのラダトームの兵士として、再建したい部屋があるのだろうか?
そう思っていたが、ラスタンは竜王を倒すのに必要な武具の話を始めた。
「なあ、雄也は聞いたことがあるか?竜王に戦いを挑むには、特別な剣と特別な鎧が必要って話だ」
そう言えば城に希望のはたを立てた時のルビスの話で、竜王を倒すための装備を作るのもビルダーの使命だと言っていたな。
別になくても勝てないことはないだろうけど、作っておいたほうが勝ち目は上がるだろう。
でも、どんな武器や防具なのかは知らないな。
「俺も聞いたことがあるけど、どんな武具なんだ?」
「おうじゃのけんとひかりのよろいと言う物らしいんだが、今ではどちらも失われてこの世界には存在しないそうだ···」
おうじゃのけんとひかりのよろいはドラクエ3に出てきた装備で、後のロトのつるぎとロトとよろいだったはずだな。
勇者が裏切ったことによって彼が装備していた伝説の武具も竜王の手に渡ってしまったと言うことか。
「きっとその武具を作ることも、ビルダーとしてのお前の役割なんだろうぜ!」
伝説の装備を作るのはかなり大変そうだけど、俺のビルダーの力があれば何とかなるだろう。
ラスタンは伝説の武具の話の後、自分も再建したい部屋があると言ってきた。
「そう言えば雄也、この城はお前が再建させているようだが、私も作りたい部屋があるのだ」
やっぱりラスタンも再建させたい部屋があったみたいだな。
かつてのラダトームの城にはたくさんの部屋があったけど、どの部屋を作りたいのだろうか。
「あんたはどの部屋を作りたいんだ?」
「私は多くの武器や道具を保管できる部屋を作りたくてな、昔あのあたりにあった宝物庫を再建したいと思ったんだ」
ラスタンはそう言って、城の西にある壊れた部屋を指さす。確かにあの場所には、彼の言う通り宝物庫があったはずだな。
壁はところどころ壊れているが、余っている城のカベを使えば直せそうだ。
でも、設計図がないみたいだから、何が必要なのか聞いておかないといけないな。
「分かったけど、何を置けばいいんだ?」
「大倉庫が一つと、倉庫の中を飾るタペストリが2つ、後は宝箱が3つと収納箱を置けばいいと思うぞ」
宝箱は1つ既に置いてあり、タペストリは3つ持っているし、収納箱もすぐに作れるからいいけど、大倉庫や残り2つの宝箱が必要だから、すぐには完成させられないな。
大倉庫は作ったことがあるけど、宝箱は作ったことがない。俺は魔法で、宝箱の作り方を調べた。
宝箱···鉄のインゴット1個、金1個 鉄の作業台
宝箱は鉄の作業台がないと作れないみたいだな。昨日行った魔物の城には宝箱がいくつかありそうだし、大倉庫を作るための木材を集めながら行ってくるか。
希望のはたが無くなったので、竜王が再びあの城に魔物の軍勢を送り込んでいるということもないはずだ。
「それなら用意出来ると思うぞ。待っていてくれ」
俺はラスタンにそう言って、ラダトームの城を出発した。大倉庫の素材である毛皮や、ツボを作るためのあおい油と土は持っているので、あとは木材だけだ。
俺は枯れ木をせいすいで浄化してブナ原木を手に入れるために、まずは枯れ木の森へ向かう。
城から1キロメートルくらいの場所にあるので、俺は15分くらいでたどり着くことができた。
「枯れ木の森に着いたな。さっそくせいすいで浄化して、原木を集めて行くか」
枯れ木にせいすいを振り撒くと、メルキドにもたくさん生えていたブナの木に変化する。
木材は8つ必要なはずなので、俺はまわりにあるいくつかの枯れ木の呪いを解き、ブナの木に戻していった。
「これでブナ原木が集められるはずだな」
そこで俺はおおきづちを取りだし、ブナの木を叩いて原木にする。木材は大倉庫以外にもさまざまな用途があるので、俺は20個以上ブナ原木を手に入れ、ポーチにしまった。
「原木を集めることが出来たし、次は宝箱を集めに魔物の城に向かうか」
俺はその後、さらに15分歩いて、希望のはたがあった魔物の城へ行った。
俺の思っていた通り、魔物の姿はなく安全に調べられそうだった。
俺は入り口にあるはがねの大とびらを開けて中に入っていく。玉座の間を作るとき、このとびらを持って行っても良かったかもしれないな。
「希望のはたが入っていた奴以外にも宝箱はありそうだし、探していくか」
希望のはたが入っていた宝箱を手に入れても、あと一つ足りない。
俺は他の宝箱を探すために一階の通路を進んでいった。すると、すぐに宝箱を見つけることが出来た。
この前は戦いが大変で気づかなかったけど、通路の近くに宝箱が置いてある。
「ここに宝箱があったのか。何が入っているんだ?」
その宝箱を開けると、中には10個の鉄のインゴットが入っていた。
「鉄のインゴットが10個も入ってるな。これからも必要になると思うし、持っていくか」
鉄のインゴットは在庫が多くあるが、いくつあっても足りないほど重要な物だし、俺は鉄のインゴットをポーチにしまい、宝箱もおおきづちを使って回収した。
これであとは3階にある希望のはたが入っていた宝箱を集めればいいな。
俺は奥の階段から2階へ上がり、そこから狭い廊下を歩いて3階へ続く大きな階段のところへ行く。
3階に上がった後は大広間の奥にある昨日も見た宝箱を回収し、必要な数の宝箱を集めることが出来た。
「宝箱も集まったし、ラダトームの城に帰って宝物庫を作るか」
俺は歩いてラダトームの城へ戻り、すぐに石の作業台を使い始める。
収納箱とツボを作った後、俺は木材8個、毛皮3個、そして今作ったツボ1個にビルダーの魔法をかけて、大倉庫を作り出す。
ポーチの中身もそろそろ一杯になってきたし、これでさらにたくさんの素材を集められるようになったな。
「あとはあの部屋の中に置けば、宝物庫の完成だな」
俺は作った大倉庫と収納箱、手に入れた宝箱を持ち、宝物庫の中に置いていく。タペストリも2つ必要なので、俺はポーチから取り出して壁に設置した。
結構狭い部屋だが、言われた物を全て置くことが出来たぜ。
その後俺は壊れた壁を、城のカベ・地と城のカベを使って修復した。
宝物庫を完成させた俺は、さっそくそのことをラスタンに教える。
「ラスタン!少し時間がかかったけど、宝物庫が完成したぞ」
占いの間を作った時と比べればかなり時間がかかったけど、完成させられてよかったぜ。
俺の話を聞いて、ラスタンはすぐに向かってくる。
「さすがは伝説の名大工だな!こんなにきれいに再建されている!」
褒めてくれるのはありがたいけど、何で伝説のビルダーじゃな名大工って言うんだよ。
確かに似たような物だけど、大工と言われると違和感があるな。
「大工じゃなくてビルダーだけど···まあいいか」
俺はラスタンに一応そう言ったが、これからもビルダーと呼んでくれるかは分からないな。
俺がそう思っていると、ラスタンは違う話を始める。
「それにしても、我ら人間は一体いつまで竜王と戦わねばならぬのだ?」
さっき俺が倒すと言ったのに、まだ危ないからやめておけと言うのか?
俺が竜王を倒せば数百年も続いた戦いを終わらせることが出来るだろう。
「だからさっき、俺が竜王を倒すって言っただろ。どんなに危険でも、それは変わらない」
「いや、いつか竜王を倒す使命を持った若者が現れるはずだ。わざわざビルダーのお前が行く必要はないんだぞ」
ラスタンの話を聞いて思ったけど、この世界の人は勇者に何でも任せすぎなんだよな。
そのせいで勇者が世界を裏切ったかもしれないと言うのが、分かっていないのだろうか。
俺が何度自分が竜王を倒すと言っても分かってくれないだろうから、これ以上言うのはやめて、ラスタンと別れた。
今日は2つも建物を再建して疲れたので、俺は午後は休んで過ごしていた。