ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

88 / 225
Episode87 始まりにして、終わりの地

俺はラダトームの拠点の防衛戦に勝った日の夜、またしても裏切りの勇者の記憶の夢を見た。

勇者の夢を見るのはこれで7回目で、どうして人類を、世界を裏切ったのかは分かってきている。奴と対決するのは、いつになるのだろうか。

そんなことを考えていると、夢の中で勇者は魔物を従える王である竜王の部屋に入っていった。

竜王は勇者のことに気づいて、話しかけてくる。

 

「わしは待っておった。そなたのような若者が現れることを」

 

ドラクエ1ではここで竜王と問いにいいえと答えて、竜王を倒せばゲームクリアになる。

だが、この荒廃したアレフガルドでは、勇者は「はい」の返事をしたはずだ。俺は、その時の記憶を夢として見ているようだな。

竜王と勇者の様子をしばらく見ていると、竜王は例の問いかけを始めた。

 

「もし、わしの味方になれば世界の半分をお前にやろう。どうじゃ?わしの味方になるか?」

 

さすがに勇者も、本当に世界の半分を貰えるとは思っていないだろう。

だが、竜王の味方になれば自分に責務を押し付けた人間たちから解放されると考えたようだな。

勇者はしばらく考え込んだのち、

 

「はい」

 

と返事をした。

すると、竜王は勇者が持っているロトのつるぎを差し出すように言う。

 

「よろしい!では、わしらの友情の証として、その剣を貰うぞ」

 

勇者はロトのつるぎを渡すことも少しためらっていたが、結局竜王を倒すと言う選択肢を選ばず、渡すことにしたようだ。

そこで、竜王はうまく勇者を騙せたと思い、笑みを浮かべる。

 

「ほほう、すでにこの剣を手にしていたか。だが、それはどうでもいいことじゃ。わしからの贈り物を受けとるがよい!そなたに世界の半分、闇の世界を与えよう」

 

その後、世界の半分、闇の世界を貰えると言われた勇者がどうなったかは分からなかった。

それは、竜王や勇者本人に会って確かめるしかなさそうだな。

そこで俺の意識は途切れて、気がつくと拠点にある家のわらベッドの上にいた。

 

ラダトームに来て2日目、俺が起きていた時はみんなももう起きていた。

昨日の戦いで受けた傷も、寝る前にきずぐすりを塗ったのできれいに直っていた。

今日は昨日手に入れた、青色の旅のとびらの先の探索に行きたいな。

 

「さっそく旅のとびらを設置して、探索に出掛けるか」

 

俺が旅のとびらを設置すると、とびらの中心から強い光が放たれ、驚いたローラ姫とムツヘタが駆け付けてきた。

 

「おお、雄也様!旅のとびらを手に入れていたのですね」

 

「ああ、これから探索に向かうつもりだ」

 

ローラ姫は長い間石になっていたのに、旅のとびらのことを知っているんだな。

俺が探索のためにとびらに入ろうとすると、2人はかつての王都ラダトームがあった場所に行ってほしいと頼んできた。

 

「雄也よ、お主にはこの旅のとびらを使って、かつての王都ラダトームの城の跡地を目指して貰いたい」

 

「そこで希望のはたを探して、城の跡地に立てれば、光が溢れて精霊ルビスの加護を受けられるはずです」

 

ローラ姫が言うには、希望のはたはラダトームの城の近くにあるのか。

それと、希望のはたを立てるのは今俺たちがいる拠点じゃなくて、ラダトームの城の跡地なのか。

ここはあくまで、仮の拠点といったところなんだな。

 

「分かった。ラダトームの城のところに行って、希望のはたを見つけてくるぜ」

 

水場にあったアレフガルド歴程には、ラダトームの城は闇と呪いの中心になっていると書いてあったけど、恐れる訳にはいかないな。

ラダトームを復興させるために、何としても希望のはたを見つける必要がある。

「お願いします、雄也様。私はここで、精霊ルビスにあなたのご無事をお祈りしています」

 

俺がローラ姫に見送られ、青の旅のとびらに入ろうとすると、ムツヘタがシャナク魔法台を持っていくといいと言った。

 

「待て、せいすいを作るために、シャナク魔法台を持っていったほうがよいじゃろう」

 

確かに、ラダトームの城の近くも間違いなく死の大地になっているだろうから、現地でせいすいを作れたほうがいいな。

俺はシャナク魔法台をひのきのぼうで叩いて回収し、今度こそ旅のとびらに入る。

 

「これで準備は完了だし、ラダトームの城へ出発するぜ」

 

旅のとびらに入ると俺の視界は真っ白になり、新たなる地へと移動した。

 

俺が移動した先は、拠点の近くと同じように辺り一面が灰色の世界になっている場所だった。

そして、かなり遠くの方には、崩れ落ちたラダトーム城と思われる大きな廃墟が見える。

 

「あれがラダトーム城か。希望のはたがどこにあるかまだ分からないし、とりあえずは城を目指さないとな」

 

俺がラダトーム城の廃墟を目指そうとしていると、昨日ラダトームに着いた時よりもはっきりした、ルビスの声が聞こえた。

 

「雄也よ。ついに運命の地、ラダトームに着いたのですね。その地では私の力も限られていますが、姫の祈りで今はあなたの姿がよく見えます」

 

ローラ姫の祈りにそんな力があったとは知らなかったぜ。

兎に角、姫の祈りのおかげで普通に会話ができるようになったから、改めて俺にラダトームのことを教えに来たみたいだな。

 

「そこはラダトームと呼ばれていた地。あなたが最後に救うべき場所です」

 

最後に救うべき地か···そう言えば、俺たちはメルキド、リムルダール、マイラ、ガライヤと裏切り勇者の旅路を逆行する順番で世界を復興させてきているんだよな。

それでついに、勇者の旅が始まった場所にまでたどり着いたと言う訳か。

俺がそう思っていると、ルビスはラダトームの説明を始める。

 

「かつては輝きに満ち、人と物で溢れる王都がありましたが、とある戦士の裏切りで、荒れ果てた死の大地に変わり果てています」

ラダトームがここまで荒廃していたのは、竜王だけじゃなくて、裏切り勇者の影響もあったからなのか。

どちらと先に戦うことになるかは分からないが、やはり両方倒さなければアレフガルドに未来はないみたいだな。

でも、今は兎に角希望のはたを見つけて、ラダトームを再建しなければいけない。

 

「さあ、今はまっすぐ進み、ラダトームの城を目指しなさい。そして、希望のはたを見つけて、台座に突き刺すのです。すべては精霊の導きのままに」

 

ラダトームについての話を終えると、ルビスはいつものセリフを言って去っていった。

希望のはたの手がかりが見つかるかもしれないから、ルビスに言われた通りラダトームの城跡を目指すべきだな。

俺は旅のとびらのある場所から城が見える方角へと歩き始めた。

 

ラダトームは闇の中心になっているのだから、強力な魔物だらけだと思い俺は警戒しながら進んでいく。

だが、生息していたのはスライムやスライムベス、ブラウニーと言った弱い魔物が多かった。

 

「こんな場所でも、結構弱いモンスターがいるんだな」

 

でも、強力な魔物であるかげのきしもいたので、俺は魔物たちを避けながらラダトームの城へ歩いて行った。

途中、使える素材がないか調べてもみたが、やはりほとんどの植物が枯れ果てていて、鉱石なども見つけることは出来なかった。

 

「新しい素材も特にないみたいだな」

俺はその後も探索をしながら城へと向かっていく。

そして、旅のとびらを出て20分くらい歩き続けて、遠くに見えたラダトームの城にたどり着いた。

 

「ここがラダトームの跡地か、かなり荒れ果てているな」

 

ラダトーム城の中に入ってみると、そこら中に人の骨が落ちていたり、枯れ果てた植物が生えていた。

地面がそんな状態なので、城の中を調べることが難しかった。まずは骨と枯れ草を片付けないと、復興させる時も邪魔になるだろう。

 

「せいすいで浄化してから、ひのきのぼうで刈り取るか」

 

骨や枯れた植物はそのままでも片付けることは出来るが、せいすいを使えば役に立つ素材に変化させられるはずだ。

俺はポーチからシャナク魔法台を取り出して城のすぐそばに設置する。

その後、今持っているきれいな水全てにビルダーの魔法をかけた。

新しいせいすいを20個作ることができ、これなら城全体の呪いを解くことも出来そうだった。

 

「これでせいすいが出来たな。さっそく城の中で使ってみるか」

 

俺はせいすいを使ってラダトームの城の地面にかけられている呪いを解いていった。20個以上せいすいを持っていたので、城を全て浄化してもまだ多く残っている。

呪いが解けた後は、骨や枯れ草は白い花やくすりの葉、じょうぶな草に変化していた。

骨が白い花に変わったのは不思議に思うが、白い花が骨の見た目に変えられたと言うことなのだろうか。

とりあえず、どの植物も使える素材なので、俺はひのきのぼうを使って刈り取って行った。

 

「これで城の地面もきれいになったし、たくさん素材も集まったな」

 

これだけ白い花やくすりの葉があれば怪我をしてもすぐに治療できるだろう。

集め終えると、俺は手に入れた素材を全てポーチにしまった。

 

それから、改めて城の中を調べ始める。

城の中を調べていて、まず最初に目に入ったのはメルキドでも使ったことのある石の作業台と、その近くに置いてあった見慣れた本だった。

 

「石の作業台とアレフガルド歴程か。これでこの本も6冊目になるな」

 

俺はまず、石の作業台の近くに置いてあったアレフガルド歴程を読むことにする。ガンダルは王都ラダトームがあった場所に向かうと書いていたから、その時のことを記したのだろう。

仮拠点の近くの水場にあった物にせいすいの情報が書いてあったから、こっちにも役立つ情報が書かれているかもしれないな。俺は6冊目のアレフガルド歴程を開き、読み始めた。

 

おお!我が故郷メルキドを出発して幾年月、ついに私は、ラダトームの城に行き着いた。しかし、この地は噂に違わぬ死の世界。光も希望もなく、ここには闇と呪いしかない。かつては反映を極めたラダトームの町も、今や荒れ果て見る影もないのだ。聞くところでは、この地のどこかに人々の希望を背負いながら最後の最後に裏切った、闇の元凶が住んでいるらしい。しかし、今の私には、それは関係のないことだ。私にはもう、旅を続ける力は残されていない。私はこの地を旅の終着点にしようと思う。もし、私の旅の記録をはるかメルキドの地からここまで追ってきてくれた者がいたならば、私の辛く悲しい旅は無駄ではなかった。ここに、その感謝の想いを伝えておく。

 

この人も俺たちと同じように、裏切り勇者の旅路を逆行する形でアレフガルドの各地を巡っていたみたいだな。

この本を読んでも、裏切りの勇者がラダトームにいると言うのは間違いないようだ。

感謝の想いを伝えたいとあるが、アレフガルド歴程には役に立つ情報がたくさん書かれていて、俺からも感謝しないといけない。

俺はガンダルへの感謝の気持ちを持ちながら、ページをめくった。そこには、俺が探している希望のはたについて書かれていた。

 

最後に···万が一を考えて記しておこう。もしも、この死の大地に光を取り戻すのなら、魔物に奪われた希望のはたを取り返すことだ。希望のはたは、ここから南にある、魔物たちが建てた新しい城の中にあると言う。魔物は強く、城の内部は入り組んでいる。最大限の準備をして向かうのだ。おお!私の記録を読む後の時代の冒険者よ。ラダトームを再建し、アレフガルドを復活してくれ!

メルキドの冒険家 ガンダル

 

これによると、希望のはたは南にある魔物の城に奪われているみたいだな。

この情報を残してくれたガンダルのためにも、アレフガルドの復興を祈るみんなのためにも、必ず見つけ出さなければならない。

しかし、魔物の城には昨日戦った隊長のかげのきしと同レベルか、それ以上に強力な魔物がいる可能性があるな。

石の作業台があるのでおおきづちは作れるが、それでも勝てるとは思えない。

 

「魔物の城に向かうには、鉄や鋼の装備がいりそうだな」

 

鉄が見つかれば炉や強力な武器も作れるが、この地方ではまだ見たことがない。

でも、ラダトームの城周辺もまだ探索してない場所が多いので、もう少し探したほうが良さそうだな。

 

「おおきづちを作って、鉄を探しに行ってくるか」

 

俺は拠点の近くで拾ったふとい枝3つをビルダーの魔法で加工し、採掘用のおおきづちを作る。

そして、鉄を見つけるためにまだ行ったことのないラダトーム城の西へ向かっていった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。