ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺は拠点へと帰ってくると、さっそくせいすいを作るためのシャナク魔法台を手に入れたことをムツヘタに教えに行った。
「ムツヘタ、せいすいの作り方が分かったぞ」
「おお!ついにこの死の大地を復活させられるのじゃな!?」
俺がそう言うと、ムツヘタは急いで家の中から飛び出してきた。
ついにこの地を復活させられることが分かって、とても嬉しいのだろう。
出てきた後、ムツヘタはすぐに作り方について俺に聞いてくる。
「それで、どうやってせいすいを作り出すのじゃ?」
「このシャナク魔法台の力できれいな水を加工すれば、せいすいになるんだ」
俺はそう説明して、ポーチからシャナク魔法台を取り出して、設置する。
これを使うのは初めてだけど、いつも通りビルダーの魔法を発動させればよいだろう。
そして、せいすいの作り方を教えるとムツヘタはさっそく作ってくれと言ってきた。
「よくやったのじゃ、雄也!さっそく作って、大地の呪いを解いてみてくれ」
「ああ、俺も早く死の大地を復活させたいからな」
俺はポーチからきれいな水を取りだし、シャナク魔法台の前でビルダーの力を使う。すると、1個のきれいな水から5個の光り輝く水が出来上がった。
見た目は、浄化の霊薬や聖なるしずくに似ているな。
「これでせいすいを作れたみたいだな。さっそく使ってみるか」
「どの程度の効果かは分からぬが、これならうまくいくはずじゃ」
ムツヘタもせいすいを見て、これなら大地を蘇らせられそうだと言う。
俺は拠点のすぐ近くにある灰色の土の上に立って、せいすいを振り撒いた。すると、せいすいは光を放って、半径5メートルくらいの範囲の呪いを消し去る。
呪いが解けると、拠点の中と同じように地面が草原になっていた。
「おお、これがせいすいの力か···!ついにこの死の大地を復活させられたのじゃな!」
ムツヘタは、灰色の世界に緑が戻ったことにとても感動していた。
せいすい1つでは少しの範囲しか呪いは解けないが、たくさん作って行けばいずれはラダトーム全域を復活させることも可能だろう。
これで、この地の復興に一歩近づくことが出来たな。
ピリンたちも、せいすいの放った光に気づいてこっちに走ってきていた。
「すごいすごい!灰色だったはずの場所が、草原に戻ってるね」
「ついに竜王の呪いも解けるようになったのか···さすがは雄也だぜ!」
「これなら、アレフガルド全域の復活も夢ではないな!」
3人も、緑が戻った大地を見てとても喜んでいる。
その時、俺の耳に不思議な女の人の声が聞こえてきた。
「ゆうしゃさま···ゆうしゃさま···」
その声は、拠点の中央に置かれている石像から聞こえてきていた。
誰かが勇者のことを呼んでいるようだけど、その勇者と言うのはこの世界を闇に陥れた元凶である裏切りの勇者のことなのだろうか?
「今何か聞こえなかったか?まさかワシも、幻聴が聞こえる年齢に···」
「不思議な声が聞こえたけど、誰の声なの?」
「今、女の声が聞こえなかったか?」
「変な声が聞こえたけど、魔物の声ではなさそうだな」
どうやらみんなも聞こえているようなので、幽霊の仕業ではなさそうだな。でも、ヘイザンの言う通り魔物の声でもなさそうだ。
俺はみんなに、石像から声が聞こえたことを伝えた。
「みんなも聞こえたのか。多分その声は、そこにある石像から聞こえたはずだぞ」
「石像じゃと!?もしかすると···あの石像は本物の姫が封じられているのかもしれん!」
あの石像はローラ姫にそっくりな石像じゃなくて、石になった本人だったと言うことか?
確かに、あんなにそっくりなのだからあり得ない話ではないな。
「石像にせいすいを使えば元に戻るとはずじゃ!」
俺たちは石像の前まで走っていき、目の前でせいすいを振り撒く。
すると、さっきのようにせいすいは光を放って、大地を浄化していく。それと同時に目の前の石像も変化して、ラダトームの王女であるローラ姫になった。
「おお!石化の魔法が解けたのですね!誰なのですか、私の眠りを覚ましたのは?」
呪いを解かれたローラ姫は、体を動かせるようになって、とても驚いている。
まさか本当に、石像が本物のローラ姫だったとはな。
そして、姫は俺たちに気づいて、すぐに話しかけてくる。
「あなたが魔法を解いてくれたのですね···。あなたからは、とても不思議な力を感じます。いったい誰なのですか?」
ローラ姫は俺のことを聞いてきたので、いつもの自己紹介を始める。この自己紹介をするのも、これで何度目だろうな。
「俺は影山雄也。精霊ルビスから遣わされた、伝説のビルダーだ」
「ビルダー···?私は竜王がこの世界の空の光を奪ったことに絶望して自分を石に変えてずっと眠っていたので、最近のことはよく分からないのです」
世界が滅亡してから100年以上たっているはずだから、ずっと石像になっていたローラ姫がビルダーのことを知らないのは無理ないな。
ビルダーの伝説が作られたのは、世界が闇に包まれてからしばらく後のはずだ。
「ビルダーと言うのは、失われた物を作る力を持つ存在だ。この世界を復活させるためにいろいろな地域を巡っているんだ」
「おお!では、あなたの力があればこの闇に包まれたアレフガルドに光を取り戻すこともできるはずなのですね!」
ビルダーのことについて教えると、ローラ姫はこの世界に光を取り戻せるととても嬉しそうな顔をする。
俺は元から闇の元凶である竜王と裏切り勇者を倒すつもりだし、そうすれば世界の闇は晴れるだろう。
「ああ、俺もこの世界を必ず復活させるつもりだ」
俺がそう返事をすると、姫はさらに嬉しい顔になる。
その様子を見ていると、後ろにいた4人も姫に向かって自己紹介を始めた。
「石像が生きていたことに驚いて申し遅れていたのじゃが、ワシは予言者ムツヘタ」
「わたしはピリン。雄也と一緒に楽しい世界を作ってるんだ」
「ワシはゆきのへ、伝説の鍛冶屋の子孫だ」
「ワタシはヘイザン。ゆきのへの親方の弟子だ」
「雄也様にはお仲間もいたのですね!これならもっと心強いです」
姫を蘇らせることが出来たし、ラダトームの復興、アレフガルド全域の復活にもまた一歩近づくことが出来たな。
だが、そう思っていた矢先に、町の南の方から魔物の足音が聞こえてきていた。
「なんじゃ、このただならぬ気配は!?」
ムツヘタも魔物に気づいたようで、俺と同時に拠点の南の方角を向く。
すると、この拠点に向かってかげのきしが3体向かって来ていた。かげのきしの内の一体は他の2体より大きく、隊長のようだった。
「どうやら、姫の復活を竜王や他の悪しき者に気付かれてしまったようじゃ!」
姫の石化を解いてからまだ5分も経っていないと言うのに、もう気付かれてしまったのか!?
ここは竜王の城に近い場所だから、魔物もこちらの行動にすぐ気づくみたいだな。
「姫はようやく芽生えたこの地の希望。何としても、守りぬかねばならぬ!」
「ああ、何とか戦って倒さないとな。みんな、魔物が来たぞ!」
俺は姫と話していて魔物に気づいて着ないみんなに、魔物が来たことを伝える。すると、ピリンとヘイザンとローラ姫は家の中に隠れて行き、ゆきのへはひのきのぼうを持って駆けつけて来た。
「やっぱりここでも魔物の襲撃はあるみたいだな。雄也、いつものように倒していくぞ!」
「結構強力な魔物だけど、俺たちなら勝てるはずだな」
かげのきしは強力な魔物だが、これまで数多くの魔物を倒してきた俺たちなら勝てるはずだ。
そして、俺たちが話している間にかげのきしは拠点のすぐ近くまで迫ってきていた。
「必ず、この拠点を守り抜くのじゃぞ!」
ムツヘタは戦えないようなので、俺とゆきのへの二人で戦うしかなさそうだな。
俺たちはひのきのぼうを構えて、かげのきしの群れを迎え撃つ。ラダトームの拠点の防衛戦が始まった。
俺たちがひのきのぼうを使って殴りかかっていくと、まずは手前にいた2体のかげのきしが剣を使って斬りかかってくる。
「人間どもめ、竜王様に逆らわせはせぬぞ!」
「この地に希望はいらぬものだ!」
なので、俺が左にいるかげのきしと、ゆきのへが右にいるかげのきしと戦うことになった。二人同時に殴ればかげのきしも簡単に倒せそうだが、そう上手くはいかないようだ。
でも1対1の状況だから勝てないことはないはずだな。
「ここであんたたちを倒して、ラダトームを復興させてやるぜ」
俺は、剣を降り下ろしてきたかげのきしを避けて、横からひのきのぼうで殴り付ける。ひのきのぼうは最弱の武器ではあるが、かげのきしは少し怯み、ダメージを与えることは出来ているようだ。
そこで俺は、もう一撃殴り付けようとすぐにひのきのぼうを振り回す。だが、かげのきしは俺が思っていたより早く立ち直り、攻撃をしている俺を斬り裂こうとしていた。
「オレたちはこの死の大地に住む魔物だ。人間ごときに倒されはしない!」
俺はすぐに攻撃を中断して、かげのきしの剣を受け止めようとする。ひのきのぼうで攻撃を受け止めるのはキツそうだが、避けている時間はない。
そして、俺の持っているひのきのぼうに向かって、強力な一撃が放たれた。
「くっ、やっぱりかげのきしは強いぜ!」
なんとか受け止めることは出来たが、俺の右腕はかなり強く痛み、ひのきのぼうも傷ついていた。
「ビルダーめ、いくらお前でも竜王様に逆らうことは許されぬのだ!」
しかし、休んでいる暇もなくかげのきしは次の攻撃を放とうとしてくる。
今度は避ける時間があったので、俺は後ろにジャンプして、奴の剣をかわした。
「力も強いし、結構素早いな。回転斬りを使えば倒せるかもしれないけど」
俺はかげのきしが攻撃をした直後に回転斬りを使おうと思ったが、すぐに次の攻撃を始めてしまうため、なかなか使うことがなかった。
何とかして攻撃を止めないと、かげのきしを倒すことは無理そうだな。
「もう一回こいつの攻撃を受け止めて、弾き返すしかないか」
ひのきのぼうが壊れる可能性もあり、自分の腕も激しく痛むかもしれないが、かげのきしの攻撃を受け止めた後、思いきり攻撃を弾き返せば、回転斬りを放てるようになりそうだな。
まあ、ひのきのぼうが壊れてしまえば使えなくなるが、そこは賭けるしかない。
「今度こそ終わりだ、ビルダーの野郎め!」
「いや、終わりなのはそっちのほうだぞ!」
そして、俺のひのきのぼうとかげのきしの剣がぶつかり合い、大きな音が鳴る。俺の腕にも衝撃が走ったが、全力で押し返し、かげのきしの体勢を大きく崩すことが出来た。
かげのきしが動けなくなったのを見て、俺は腕に力をためて、解き放った。
「回転斬り!」
至近距離で回転斬りが直撃したかげのきしは体が砕け散って地面に転がる。
でも、まだ再生する可能性があるので俺は奴の頭蓋骨をひのきのぼうで叩き割った。
「強かったけど、まずは1体倒せたな」
かげのきしが青い光を放って消えていったのを見て、俺は今度は隊長のかげのきしに向かっていく。
ゆきのへはまだ右側のかげのきしと戦っているが、鍛冶屋の強力な一撃を何度も受けて、もうすぐ倒すことが出来そうなので、自分は隊長を倒すことに集中すればよさそうだ。
隊長のかげのきしに近づくと、奴も俺を殺そうと剣を振り上げてきた。
「よくもオレの部下を倒して、竜王様に反逆しようとしたな!決して生かして返さぬぞ!」
隊長と言っても、さっきのかげのきしより少し強いくらいのはずだ。俺は隊長の横に移動し、肋骨の部分を殴り付ける。
だが、隊長のかげのきしは全く怯まず、ほとんどダメージも受けていないようだった。ゲームで言えば、1ダメージ与えられたかどうかと言ったところだろう。
「こいつ、ほとんど攻撃が効いていないな」
それでも、何度も殴り付ければ倒せるだろう。だが、かげのきしは俺の次の攻撃の前に、素早く剣を振るってきた。
かわすことは出来そうなので、俺はかげのきしの横に動いて攻撃を避けて、もう一度ひのきのぼうを叩きつけた。
しかし、攻撃の直後なので次の攻撃は来ないだろうと思っていたが、隊長のかげのきしは一瞬の隙も与えず2回目の攻撃を放ってきたのだ。
俺はかわすことも受け止めることも出来ず、ひのきのぼうを持っている右腕を斬りつけられる。
「これで分かったかビルダーめ!やはり人間は弱い存在なんだ」
さっきのかげのきしと比べても、こいつはとても強い。鉄や鋼の武器があれば楽に倒せたかもしれないが、今はひのきのぼうしかない。
倒すのは難しそうだが、さすがにかげのきしも3連撃を放つのは無理なようで、俺はそのまま斬り刻まれることはなく、奴から離れることが出来た。
「2連続攻撃の後には少し隙が出来るから、そこで攻撃するしかないな」
攻撃を避けた後は、かげのきしの連続攻撃の後のわずかな隙にひのきのぼうを叩きつけ、次の攻撃をかわすと言うのを繰り返した。
その方法で数十回隊長のかげのきしを殴り付け大分弱らせたが、まだ倒れる気配はなかった。
「まだ倒れないのか、強すぎるな···」
俺は右腕を怪我しているので、いつも通りの力を出すのでやっとの状態だった。体力もかなり消耗しており、奴が倒れるまで動き続けられるかも分からないな。
そんな時、俺に降り下ろされたかげのきしの剣が、横からひのきのぼうで受け止められた。俺はいつも通りかわそうとしていたが、すぐに動きを変えて奴の頭を叩きつける。
「雄也、こっちも終わったぜ。あとはこいつだけだ」
ゆきのへも手下のかげのきしを倒して、隊長のかげのきしと戦いに来たようだ。俺もゆきのへも疲れているが、ここまで来たら勝つしかないな。
「ああ、二人でこいつを叩き潰すぞ!」
「ビルダーの野郎だけでなく、鍛冶屋の野郎もオレの部下を倒したのか!人間どもめ、よくも···!」
かげのきしはさっきと同じように2連続で攻撃を放とうとしてくる。俺はかわそうとしたがゆきのへは腕に力を込めて、思いきり攻撃を弾いた。
さすがはゆきのへだな。俺でも止められない攻撃も弾き返せている。
隊長のかげのきしはすぐに体勢を立て直し、俺たちを斬り裂こうとしていたが、ゆきのへはそれを防ぐために、奴の頭の上にひのきのぼうを砕けるほどの勢いで殴り付ける。
「雄也、そろそろとどめをさすぞ!」
かげのきしはもうすぐ倒れるほどになっていて、俺もとどめをさすためもう一度腕に力を溜める。
右腕はまだ痛んでいるが、いつも以上の威力になるように力を溜めて、かげのきしをなぎはらった。
「これで終わりだ、回転斬り!」
そして、隊長のかげのきしは青い光を放って消えていった。最初の襲撃から強い魔物が来たけど、拠点を守り抜けたようだな。
隊長が倒れたところを見ると、青色の旅のとびらが落ちていた。
「これで勝ったみたいだな。旅のとびらも手に入ったぜ!」
「でも、今日は戦いで疲れているからな、休んでおくぜ」
旅のとびらの先の探索にも行きたいが、ゆきのへの言う通り休んだほうがいいな。
俺たちは旅のとびらを回収してポーチに入れ、拠点の家の中に戻っていく。
その途中、俺にだけのようだが恐ろしい声が聞こえた。
「うおおああーーっ!ヒカリ···ひかり···眩しい光···!光などこの地には要らぬ。世界の半分はオレの···オレのォオー!」