ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺はきれいな水のある場所に向かって、灰色の大地を歩いて行く。
俺はまわりを眺めながら進んでいったが、やはり枯れ木や骨などしか見つけられなかった。だが、かろうじて緑の葉を残しているふとい枝も落ちていた。
「ふとい枝はここでは貴重だし、集めておくか」
ふとい枝だけではひのきのぼうくらいしか作れないが、一応拾っておいたほうがいいだろう。
俺はふとい枝を拾ってポーチに入れた後、他にも生きている植物がないか探したが、見つけることは出来なかった。
そして、拠点を出発して10分くらい経って、ムツヘタが言っていた水場へとたどり着くことが出来た。
そこには、リムルダールで俺が作ったことのある浄化のふんすいが置かれていた。
「浄化のふんすいか···だからきれいな水があったんだな」
この荒廃した世界では水も汚染されていそうだが、浄化のふんすいのおかげで汚染を免れたようだ。
きれいな水のおかげか、その水場にもたくさんの白い花が咲いていた。
「でも、何でこんな場所に浄化のふんすいが置いてあるんだろうな?」
俺は白い花を拾いながら、そんなことを考えていた。
ここに浄化のふんすいが置いてあると言うことは、誰かがいたということになる。
この水場には分厚い本が置かれているので、それを読めば何か分かるかもしれないな。
「とりあえず、この本を読んでみるしかなさそうだな」
俺がその本を手に取ると、表紙には見慣れたタイトルが書かれていた。
「これは、アレフガルド歴程って書かれてるな。ガンダルがラダトームに来たときに書いたのか」
アレフガルド歴程の著者である冒険家ガンダルが浄化のふんすいを設置したのかは分からないが、役に立つ情報が書かれているかもしれないな。
俺はアレフガルド歴程の表紙を開いて読み始めた。
おお!わが故郷メルキドを出発してどのくらいの年月が流れたのであろう。私はついに、かつての王都ラダトームがあった大陸へと行き着いた。しかし、この地の有り様はどうであろう。まだラダトーム城は遥か遠くだと言うのに、ここにも死や絶望の匂いがあふれている。やはり、竜王の城によほど近いラダトーム城が呪いの中心と言うのは本当のようだ。ただ、こんな地にあってきれいな水が飲める浄化のふんすいがあったのは嬉しい誤算だった。
嬉しい誤算って書いてるってことは、ガンダルが浄化のふんすいを置いた訳ではないみたいだな。
それと、ラダトーム城が呪いの中心になっていると言うことは、今俺たちがいるここより酷い状況になっているのか。この後行くことになるのだろうが、復興させられるか不安になってくるぜ。
俺はそんなことを思いながらページをめくり、続きを読んで行った。
浄化のふんすいの近くでバケツを使えば、きれいな水が手に入るのだ。なんでも、かつてこの地を復活させようとしたとある研究家が設置した物らしい。その研究家はこの地の北で、せいすいなる物の研究をしていたと言う。もしもこの死の大地を復活させたいと言う物がいれば、行ってみるといいだろう。
メルキドの冒険家 ガンダル
ここに浄化のふんすいを置いたのは死の大地を復活させようとしていた研究者なのか。俺たちやムツヘタ以外にも、ラダトームを復興させようとしていた人がいたんだな。
これで、せいすいと言う物を作ればこの地を復活させられる可能性があることは分かったな。
でも、せいすいと言う名前や、浄化のふんすいがあるのを考えると、作るのには間違いなくきれいな水が要りそうだ。ムツヘタに聞けば、この地でもバケツを作る方法が分かるかもしれないな。
「死の大地を復活させられることは分かったし、一回拠点に戻るか」
俺はせいすいのことを教えるためや、バケツの作り方を聞くために拠点へと戻っていった。
拠点に戻ると、ムツヘタは正方形の家の中に入って休んでいた。長い距離を歩いたので疲れているのだろう。
でも、なるべく早く大地を復活させたほうが良さそうなので、俺は家の中に入ってムツヘタに話しかけた。
「ムツヘタ、死の大地を復活させる方法が分かったぞ」
「おお、それは本当なのか!?やはりあの本に書かれていたのじゃな」
俺が話し始めると、ムツヘタはすぐに立ち上がって聞いてくる。
ずっとこんな場所にいたのだから、早くこの地を復活させる方法を知りたいのだろう。
「ああ、あの本に書いてあったんだけど、せいすいと言う物が必要らしい」
「せいすいじゃと!?それはどうやって作るのじゃ?」
今の段階ではきれいな水が必要だと言うこと以外は分からないな。
俺は水を手に入れるためのバケツについて聞いてみる。
「せいすいを作るためにはきれいな水が必要なんだけど、水を汲むのバケツの作り方は分かるか?」
すると、ムツヘタは骨を使ってバケツを作ることが出来ると教えてくれた。
「それなら、ふとい枝や骨を集めて、ホネ組みバケツを作っていくとよいじゃろう」
骨なら周りにいくらでもあるし、それなら作れそうだな。俺はさっそく、ホネ組みバケツの作り方を調べる。
ホネ組みバケツ···ふとい枝2個、巨大なツノ1個 きりかぶ作業台
巨大なツノと言うのは、ここに来る前に見た先端が尖っている大きな骨のことだろう。理由は分からないが、普通の骨じゃなくて、ツノ型の骨を使うのか。
でも、この拠点の近くにも結構あるので、すぐに集めて来れそうだな。
「素材もすぐに集まりそうだし、バケツを作ってきれいな水を汲んだら、せいすいの作り方を調べてくるぜ」
「おお、頼んだのじゃぞ!」
俺はムツヘタにバケツの作り方を教えてもらった後、さっそく素材を集めに行った。水場に向かう途中にふとい枝を手に入れられたし、あとは巨大なツノを集めればいいな。
拠点から見える場所にあった物に近づいて、俺はひのきのぼうで回収しようとする。遠くから見たら分からなかったが、巨大なツノは2メートル以上の高さがあった。
「これが巨大なツノか···思っていたより大きいんだな」
どんな生物の骨だったのかは分からないが、何回か叩いて地面から取り外し、ポーチにしまう。
その後、ホネ組みバケツへと加工するために俺は拠点へと戻って行った。
そして、拠点のすみに置いてあるきりかぶ作業台を使い、ふとい枝と巨大なツノに魔法をかけていく。
すると、その2つの素材があわさって、バケツの形へと変化して行った。
「これでホネ組みバケツを作れたな。後はきれいな水を手にいれたら研究所を探しに行ってみるか」
ホネ組みバケツが完成すると、次はそれを使ってきれいな水を汲むため、さっきの水場へと向かう。今日は同じ場所に何回も行き来することが多いな。
でも、まだ足は疲れていないので俺は早足で歩いていき、8分くらいで水場に着くことが出来た。
そこで俺はホネ組みバケツを取りだし、浄化のふんすいの近くの水を汲み上げた。1つでは足りないかもしれないので、俺はきれいな水を5回手に入れてから、水場を去った。
「きれいな水も手に入ったし、せいすいの研究所に行ってくるか」
水場の北に研究所があると書かれていたので、多分俺たちがラダトームに来て最初にいた、岩山の近くだろう。かなり遠いが、俺は北に向かって歩き始める。
30分ほどたって、北にある岩山のところまで歩いていった。だが、岩山の下を探していても、せいすいの研究所らしき物は見つからない。
「もしかして、この岩山の上にあるのかもしれないな」
魔物に見つからないようにするために、岩山の上に作られている可能性もあるな。岩山の上は、キメラなどの魔物しかおらず、地上より数が少ない。
俺は研究所を探すために、岩山の上へと登って行った。これまでに何度も岩山に登っているので、今回も楽に登ることが出来た。
「ここが岩山の上か。見回しても研究所みたい物はないけど、詳しく探したほうがよさそうだな」
ラダトームの岩山はキメラも生息しておらず、立ったまま探索できそうだな。俺はせいすいの研究所を探すために、岩山の上を進んでいった。
そして、1時間くらい探し続けていると、目の前に倒れている男が見えてきた。
「おい、大丈夫なのか?」
仲間になってくれるかもしれないと思い、俺はその人に話しかけたが、残念なことに彼は既に死んでいるようだった。
ここは食料も何もないので、行き倒れてしまったのだろう。
「もう死んでいたのか···仲間になってくれると思っていたけど、残念だな。でも、地面に何か書いてあるぞ」
よく見ると、その人の倒れているところに文字が書かれていたのだ。次にここに来た人へ伝えるためみたいたな。
「この土は壊せる。きっと、ここに秘密が。って書いてあるな。壊せる土とはどれのことなんだ?」
この近くに、白い岩のブロックではなく土ブロックで出来ている場所があると言うことなのだろうか。せいすいの研究所と関係があるかは分からないけど、探してみたほうがよさそうだな。
そこで、男の死体がある場所から周りを見渡してみると、東の方向に灰色の土ブロックで出来ている場所を見つけることが出来た。
「ここを壊せば何かが見つかるはずだな」
俺はひのきのぼうで灰色の土ブロックを叩きつけて、壊していく。すると、土ブロックの裏に隠されている洞窟があったのだ。
「こんなところに洞窟が隠されていたのか。もしかしたらここが、せいすいの研究所なのかもしれないな」
その洞窟は多くのカベかけ松明があり、人がいた痕跡が残っている。水場の北にあると言う情報から考えて、ここがせいすいの研究所で間違いなさそうだ。
だが、入り口の階段を降りた先に強力な魔物である1体のかげのきしがいるのが見えた。今は研究家も生きてはいないだろうし、ここも魔物に占領されてしまったのか。
「せいすいの記録が残っていればいいんだけどな」
俺はせいすいの記録が残っていることを祈り、かげのきしに見つからないように入り口にある階段を降りていく。
階段を降りるとすぐに、かげのきしの視界に入らないように近くにあった灰色の土ブロックに隠れた。
「魔物がいるにしろ、数は少ないから見つからずに進めそうだな」
がいこつ系の最上位種であるかげのきしとひのきのぼうで戦っても勝てるとは思えないので、今回は潜入で行くべきだろう。
しばらくして、近くにいたかげのきしが去っていったので、俺は体勢を低くして足音を立てないようにしながら、洞窟の奥へと進んで行く。
途中の通路には、メルキドのピラミッドやリムルダールのクイズの報酬で手に入れたことのある、火をふく石像が置かれていた。
「ラダトームにも火をふく石像があったのか。強力な兵器だけど、ひのきのぼうでは回収できないな」
火をふく石像を使えば、拠点の防衛戦がかなり楽になるのだが、おおかなづちなどがないと手に入れることは出来ない。それに、今の段階で壊せたとしても、音でかげのきしに見つかる可能性があるから無理そうだな。
仕方ないので、俺は火をふく石像を手に入れるのを諦め、さらに洞窟の奥へと進んで行った。
「この洞窟はどこまで続いているんだろうな」
洞窟はかなり長く、かげのきしに見つからないようにゆっくり歩いているので、最深部に着くにはまだ時間がかかりそうだな。
10分くらい魔物に警戒しながら洞窟の奥を目指していると、二手に別れている場所もあった。
「ここから二手に分かれているのか。どっちに行けばいいんだ?」
左側を見ると、行き止まりになっている場所に宝箱が置いてあり、その前に2体のかげのきしがたち塞がっていた。
その宝箱にせいすいの作り方が書かれた紙が入っているのかもしれないが、研究所らしい場所ではないので、恐らくは違うだろう。
「左はすぐに行き止まりだけど、右の方はまだ奥に続いているな」
右の方はかげのきしは1体もいないが、さらに洞窟の奥まで続いているようだった。
なので俺は、こっちにせいすいの手がかりがあると信じて、右の通路を進んでいく。すると、はがねの大とびらの前にドラゴンが寝ていると言う場所にたどり着いた。
「このドラゴンの後ろにあるとびらの先に、せいすいの研究所があるんだろうな」
ドラゴンは強力で巨大な魔物だが、聖なる草の保管庫にいたキースドラゴンと同じで寝ているので、起こさずに行けば安全だろう。
俺はほふく前進でドラゴンの横を進んでいき、決して音をたてないようにはがねの大とびらの前に移動する。
そして、同じように音をたてずに扉を開き、せいすいの研究所と思われる部屋に入った。
「ここが最深部か。青色の作業台とメモが置いてあるな」
メモに手がかりが書かれているかもしれないので、俺はまずそれを読み始めた。その紙には、せいすいだと思われる物の絵も書いてあった。
研究を始めて幾年月。どうやらもう潮時のようだ。結局私には物を作る力はなく、せいすいを作ることは出来なかった。しかし、ルビスによって遣わさせると言う伝説のビルダーならば、きっと···!
ビルダーよ···もしここにたどり着いたなら、このシャナク魔法台を持ち帰り役立ててくれ。ああ、もうおしまいだ。とびらの先からドラゴンの鳴き声が聞こえる。ああ、大地の精霊ルビスよ···どうかこの世界に祝福を···!
この人が亡くなった後に魔物に占拠された訳じゃなくて、せいすいの研究をしていたところを見つけられてしまったと言う訳か。
それで、ドラゴンに殺されたか、この部屋から出られなくて餓死したかで、せいすいを完成させる前に研究者は死んだみたいだな。
「ここに書いてあるように、ビルダーの俺がこの人の研究を完成させてやらないとな」
恐らくは、目の前に置いているのがシャナク魔法台で、これを使えばせいすいを作れるのだろう。俺はさっそく、せいすいの作り方を調べてみる。
せいすい···きれいな水1個 シャナク魔法台
きれいな水とシャナク魔法台だけで作れるのか。多分、きれいな水を魔法の力でせいすいに変化させているのだろうな。
「試しに1つ作ってみたいけど、なるべく早くここから出ないとまずいな」
俺はこの場でせいすいを作ろうと思ったが、長い時間この部屋にいると外にいるドラゴンが起きる可能性もある。
そのため、俺は音を立てないように気を付けながらシャナク魔法台を回収してから、とびらを開けて部屋の外に出た。
部屋から出た後は、さっきと同じようにドラゴンやかげのきしに見つからないようにしながら、20分くらいで洞窟の外に戻ってくる。
「これでせいすいが作れるようになったし、拠点に戻るか」
そして、今はキメラのつばさがないので、歩いて拠点へと帰って行った。