ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode7 槌を持つ魔物

ロッシとケッパーが町に来たり、おおきづちの里を探検したりして忙しかった日の翌日、俺は工房にケッパーから呼び出された。

 

「雄也。おはよう。実は僕から君に教えたいものがあるんだ。強力な武器を作るために必要なものさ」

 

武器を作るために必要なもの?珍しい素材でも持っているのだろうか?

 

「それって、なんだ?」

 

「強力な武器を作るためには、金属を加工する必要があるだろ?そのための炉と金床と言うものがあるんだけど、物を作る力を失った僕にはそれを作ることが出来なかったんだ」

 

言われてみると、確かに金属を加工するには炉が必要だな。金属は硬いから、一度溶かして加工する必要がある。

 

「君になら、作れるんじゃないかと思ってね、どうかな?」

 

「多分作れるぞ。どんな形のものなのか教えてくれ」

 

必要な素材を調べるためのビルダーの魔法は、作りたいものの形状が分かっていないと使えないからな。

ケッパーの話によると、炉と金床は石材を加工して作られ、内部で石炭を燃やして熱を発生させる仕組みのようだ。その話で、大体の形も思い浮かんできた。

 

「作れそうだな。俺が素材を取って来るからケッパーはみんなと一緒に家に置く家具とかを作っていてくれ」

 

「分かった。僕も物を作れるようになりたいし、ロロンドたちと一緒に作業するよ。」

 

ロロンドたちはまだ起きていないが、ケッパーは作業部屋で収納箱の中の様子を見ていた。俺も一旦作業部屋に入り、ポーチにたくさん入っているじょうぶな草やふとい枝を収納箱に入れた。俺は出かける前に、炉と金床の作り方を魔法で調べた。

 

「えっと、炉と金床の作り方は?」

 

いつも通り念じると、頭の中に必要な素材が思い浮かんでくる。炉と金床は、石材8個、銅3つ、石材3つで作れるようだ。やっぱりケッパーの言う通り、かなりの数の石材が必要だった。旅のとびらの先にある、大きな岩が石で、崖に埋まっている鉱石が銅と石炭だろう。俺はそれらの素材を取りに、旅のとびらに入った。

 

「まずは石材だな。ここらの石を壊せばいいはずだ。」

 

俺はおおきづちを使い、高さ1メートル以上もある大きな石をたたきつけた。数回たたきつけると割れ、二つの石材らしきものに変わった。

 

「これが石材だな。一度に2つ落とすから、あと3つ大きな石を壊せばいいな」

 

俺は回りにもいくつかあった大きな石を壊し、石材を8つ手に入れた。石材からは、炉以外にも、様々な物に使えそうだ。

石材が揃ったので、俺は崖に銅と石炭を取りに行く。ケッパー救出の時に崖を降りたことがあるので、そんなに苦労せずに崖を降りて行った。

 

「お、鉱脈がたくさんあるぞ」

 

この前見た茶色と黒色の鉱石。これが銅と石炭だろう。俺はおおきづちで銅と石炭を採掘した。全員分の武器を作るため、かなりの数を手に入れた。銅も石炭も、かなりの数が手に入った。ドラクエの世界なら、どうのつるぎあたりが作れそうだ。

 

「どうのつるぎは作れるか?」

 

俺は魔法でどうのつるぎの素材を調べた。すると、聞いたことのない素材名である銅のインゴット一個と分かった。

 

「銅のインゴット?名前からして、銅を加工して作れそうだな。こいつも調べよう」

 

俺は次は銅のインゴットの作り方を調べた。俺の予想通り、銅のインゴットは銅を加工して作るもので、銅3個、それと石炭1個と出てきた。石炭は炉が完成した後も必要なようだ。石炭も集めておいて良かった。

素材が集まったので、俺は町に戻り作業部屋で炉と金床を作り始めた。工房では、まだロロンドたちは起きていなかったが、ケッパーが一人でふとい枝を加工し、棍棒を作っていた。教えなくても、この町の光の中にいれば、少しずつ物を作る力は戻ってくるようだ。

 

「ケッパー、お前が言ってた炉と金床ってものを作りたいから、作業台を使わせてくれ」

 

「雄也、素材を集めるのが早いね。さっそく作って見てくれ」

 

ケッパーが作業を中断して、俺はポーチから素材を取り出して石の作業台に置き、炉と金床が出来るよう魔法を掛けた。たくさんの石材、銅、石炭が集まり、炉の形に変化した。

 

「出来たぞ、ケッパー。これでいいか?」

 

俺は作った炉をケッパーに見せた。ケッパーもうまく出来てると見ていた。

 

「すごいよ君。魔法の力でなんでも作れるんだね」

 

「ああ、炉だけじゃなくて、今からみんなの分のどうのつるぎを作るぞ。まずは銅のインゴットを作って···」

 

俺は今作った炉と金床を工房の中に置き、作業を始めた。俺はまず銅3つと石炭一個から銅のインゴットを作った。銅のインゴット1個だけができるのだと思っていたが、5つも同時に出来た。

 

「次にこの銅のインゴットを加工するんだな」

 

今戦えそうな人、俺、ロロンド、ロッシ、ケッパーの4人分を作った。みんなが金属製の武器を使えば、魔法が攻めてきても戦いが楽になるだろう。

 

「ケッパー、早速炉を使ってどうのつるぎが出来た。強そうか?」

 

「もちろんだよ。ありがたく使わせてもらうよ」

 

ケッパーはどうのつるぎが気に入ったようだ。俺はしばらくして起きてきたロロンドとロッシにも、どうのつるぎを渡した。

 

「ケッパーにはもう渡したんだが、みんなの分の新しい武器を作ってきた。」

 

「これは銅でできているのか、ひのきのぼうよりも断然つよそうだな!」

 

「オレは遠慮しておくぜ、こんなものがあったら···」

 

ロロンドは俺の作った武器を受け取ってくれたが、ロッシは断った。武器を見て、ロッシは何かを怯えていたようだが、何故かは分からない。

 

炉と金床を作ってから3日の間、とくに何も起こらず、ロロンドのメルキド録の解読にも進展は無かった。俺たちはその間金属や石材を集めていた。そのおかげで、作業部屋の収納箱ももういっぱいになって来た。

メルキドに来て8日目、今日も朝起きて、工房に向かった。ロロンドは町を散歩しており、ピリンは何かを作っていた。

 

「おはよう、ピリン。何を作ってるんだ?」

 

「あ、雄也。わたしは調理部屋でみんなでゆっくり食べるためのテーブルとイスを作ってたんだ。みんなと仲良くできる時間も多ければ、協力も深まるでしょ?」

 

「確かにな。俺も手伝うよ」

 

俺は石のテーブルと石のイスの作り方を調べ、石材2個で石のテーブル、石材1個と毛皮1個で石のイスを作った。

 

「ありがとう雄也!できたイスとテーブルを調理部屋に置いてこよう。」

 

俺はピリンと一緒に調理部屋にイスとテーブルを配置した。全員が入れるよう、テーブルを2個、イスを5個置いた。ピリンのおかげで、この町の仲も深まること間違いないだろう。まあ、俺はロッシに対してあまりいい感情を持っていないのだが、一緒に食事をすれば仲良くなれるだろう。

俺が調理部屋でそんなことを思っていると、外にいるロロンドが大声で叫んだ。

 

「おい、みんな大変だぞ!また我輩たちの町に魔物が攻めてきた!」

 

なにっ?魔物だと!?俺が調理部屋から外に出ると、町の西から七体の魔物が攻めて来ていた。キメラが2体、おおきづちの色違いであるブラウニーが4体、隊長と思われる大きなブラウニーが一体だった。ブラウニーの攻撃を喰らえば、弱い土ブロックなどは壊されそうだ。

 

「ロロンド、雄也、魔物が攻めてきたって本当?」

 

ピリンは俺のあとに調理部屋から出てきた。

 

「ああ。今から俺たちが戦うから、ピリンは隠れるんだ!」

 

俺はピリンを部屋に隠れさせ、ロロンドやケッパーと共に戦いの準備をする。今回はブラウニーがいるので、早めに迎え撃とう。

 

「みんな!今回の魔物は家を破壊しそうなやつがいる。町に近づけさせないようにしよう」

 

「ああ!今回も町を守り抜くぞ」

 

「僕もメルキドの衛兵の子孫として、この町のために戦おう!」

 

俺たち三人は、どうのつるぎを持って魔物の群れに向かっていった。そして、やはりロッシは戦おうともせず、寝室に隠れていた。

 

「お、人間ども自分から来たか。おれたちブラウニーはおおきづちの奴らとは違って、人間が大嫌いなんだ!全部壊してやる!」

 

俺たちの姿を確認して、前衛のブラウニーが殴りかかってきた。ブラウニーは手に持っている大きなハンマーのせいで余り早く動くことは出来ないので、がいこつよりも遅かった。俺はハンマーでの一撃をかわし、銅のつるぎで切りつける。

ロロンドとケッパーもブラウニーの動きをよみ切り、手下のブラウニーを倒していく。全員、ブラウニーの攻撃はかわせていた。

 

「武器が強くなってきて、今回は楽そうだな」

 

ひのきのぼうだけでがいこつたちに挑んだときに比べると楽なものだ。目の前にいたブラウニーを切り裂いて倒し、少し後ろにいる四体目のブラウニーを攻撃した。すると、その瞬間火の玉が自分に向けて飛んできた。後ろのキメラが俺を狙っているようだった。

 

「キメラはビルダーを倒せ!われわれが他の人間どもをぶっ殺す!」

 

隊長は部下に指示し、町を壊そうとしている。

俺を狙っている2体のキメラは何度もメラを放ってくる。野生のキメラよりもかなり強い。俺は避けながら近づいてキメラを剣で攻撃する。だが、キメラ2体に気をとられて、俺はブラウニーの攻撃を受けた。後ろからの気配を感じたがハンマーで叩きつけられる寸前だったので、回避しきれず、足に攻撃を受けた。

 

「くそっ!いてえな!」

 

俺はブラウニーの体に深く剣を突き刺して倒した。1つの敵しか見ないのは危険なので、倒した後すぐにキメラの方を向いて、メラをかわす。ブラウニーの攻撃を受けて足が痛むが、問題なく動ける。キメラがメラを打った隙に俺は横にまわり、キメラの体を切り裂いた。

 

「お前も吹っ飛ばす!」

 

俺ははもう一体のキメラも銅のつるぎで切り刻む。やっぱり金属製の武器は強い!致命傷になる部位に当てなくても、数回切れば倒れる。

2体のキメラも倒され、今ロロンドやケッパーと交戦している隊長ブラウニーが本気を出してくる。

 

「人間どもめ!よくもわれわれの仲間を殺しやがって!ぼこぼこにしてやる!」

 

隊長ブラウニーは大きなハンマーでロロンドやケッパーをなぎはらった。二人はすぐさまどうのつるぎで受け止めたが、少し後ろに吹き飛ばされた。

 

「我輩はこのくらいでは倒せぬぞ!」

 

俺はロロンドたちが追撃を受けないように、隊長ブラウニーの前に立ちふさがる。

 

「お前がビルダーか、お前だけは逃がす訳にいかん!」

 

俺はブラウニーの攻撃をかわしながら移動し、敵を俺のところへ引き付ける。ロロンドたちも態勢を立て直し、ブラウニーを切りつける。

 

「お前たち、もう立ち上がってこれたのか!このビルダーとやらが作った武器で受け止めたからなのか、本当にビルダーは恐ろしい!」

 

なんとしても俺を殺そうと、隊長ブラウニーは俺たちにハンマーを振り回しまくる。手下のブラウニーやキメラよりも素早い攻撃で俺たちでも攻撃に対応するのに苦戦した。

危ないので一歩さがり、反撃のチャンスを見る。

 

「ビルダーめ、許さんぞ!」

 

俺に攻撃をあてようとしつこくハンマーを振り回す隊長ブラウニー、だが彼も生物であるため、そんなに長時間その行動を続けられる訳ではない。隊長ブラウニーは体のバランスを崩し、転んでしまった。

当然俺たちはそのチャンスを見逃さない。

 

「魔物といえども生物は疲労するものだからな。そんなに乱暴に振り回すから悪いんだ。」

 

俺はどうのつるぎでハンマーを持ち直し、振り上げたブラウニーの腹を深く斬った。振り上げている最中に強い攻撃を喰らい、ブラウニーは大きく怯んだ。

 

「今だね!とどめだ!」

 

ケッパーが怯んだ隊長ブラウニーの背後から、思い切り銅の剣を突き刺した。その剣は内臓に深く刺さり、心臓にも刺さったかもしれない。

 

「ぐぐぐ···人間ども、なんて力だ···」

 

ケッパーの攻撃により、隊長ブラウニーは倒れた。二回目の防衛戦も、メルキドの町の勝利に終わった。今回は魔物たちも俺たちの武器強化に気付けなかったこともあるだろうから、今度はさらに強力な魔物が来るはずだ。

 

「そうだ、この前のがいこつは旅のとびらがてに入ったが、今回の奴等は何を落としたんだ?」

 

ロロンドが言うまで忘れていたが、俺は魔物が落としたものを調べた。手下のブラウニーは毛皮、キメラはいつも通りキメラのはね、隊長ブラウニーは革でできた袋を落とした。

 

「旅のとびらはないのか、必ず落とす訳ではないんだな」

 

まあ、山岳地帯もまだ探索していない場所がたくさんあるから、まだ新しい旅のとびらは必要ないな。俺は隊長が落とした袋をどうするか悩んだが、とりあえず作業部屋に置いた。収納箱もいっぱいだし、少しは収納の足しになるだろう。

俺はブラウニーから受けた傷のこともあり、夕方になってきたのでもう寝ることにした。殴られてちょっと痛んだだけなので、明日には直るだろう。


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