ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺はシェネリと別れた後、しばらく町の中で休んでいた。
アメルダがどうして人を殺したのかは気になるけど、思い出したくないことなのかもしれないから、聞くのはやめておいたほうがいいな。
今はまず、ようがんまじんとひょうがまじんに対抗する兵器を作ることが先だ。
この後何をしようかと考えていると、作業部屋から出てきたガロンに話しかけられた。
「なあ、雄也。シェネリから聞いた。お前、死んじまったラライの姿が見えるんだってな」
そのことをガロンが知っていると言うことは、やっぱりシェネリはアメルダのことをガロンたちに聞いていたんだな。
そのことを言いにくるということは、ラライに何か伝えてほしいことでもあるのだろうか。
「ああ、俺はビルダーの力で幽霊が見えるようになったんだ。だけど、それがどうしたんだ?」
「実は、アネゴはラライの研究記録の解読に行き詰まっていてな。本人に直接聞いてきて欲しいんだ」
確かに研究記録を手に入れてから時間がたっているのに、アメルダはまだ解読を続けている。それならガロンの言う通り、本人に聞いたほうが早いな。
しかし、ラライはアメルダは人殺しだから手伝うなと言っていた。普通に聞いても、教えてはくれないだろう。
でも、ガロンもシェネリから聞いていたのか、そのことは分かっているようだった。
「アイツが素直に話すはずがねえけど、一つ考えがあるんだ」
「考えって、どうするんだ?」
ラライはアメルダのことを全く信用していないみたいなので、説得は難しいだろう。
だが、他の方法も俺には思い付かないな。
「ラライが先祖から代々受け継いできた銀の竪琴ってモンがあるらしいんだが、魔物に奪われて壊されちまってな」
銀の竪琴と言うのはドラクエ1のガライの墓にある、吟遊詩人ガライが持っていた竪琴のことだな。
先祖と言うことは、ラライはガライの子孫なのか。名前が似ているけど、ゆきのふとゆきのへのように受け継がれていく名前なのだろうか。
とりあえず壊されていると言うのなら、直せばいいと言うことだな。
「その銀の竪琴を直してほしいのか?」
「ああ、ラライの大切な竪琴を直せば、さすがに教えてくれるだろう」
でも、その銀の竪琴がどこにあるかが問題だな。魔物に奪われたと言うことは、ここにはないだろう。
場所が分からないと探しに行けないが、ガロンは知っているようだった。
「銀の竪琴はガライの町から岩山を越えた所の氷原にある、小さな氷山に埋まっているはずだ。見つけたら、これを使って修理してくれ」
場所を教えてくれると同時に、ガロンは竪琴の弦を渡してきた。これだけで銀の竪琴を修理出来るか分からないが、ビルダーの力がなんとかしてくれるだろう。
小さな氷山と言うのも、どんな物か分からないが、現地に行けば見つかるだろう。
「分かった。壊れた竪琴を探しに行ってくるぜ」
「雄也、少し待ってくれ」
俺がガロンと別れて緑の旅のとびらに向かおうとすると、まだ言いたいことがあったらしくガロンは呼び止めてきた。
「どうかしたんだ?」
「伝え忘れていたが、竪琴を直したらアネゴからの送り物として奴に渡してくれ!」
普通にガロンや俺が直したと言えばいいと思うのに、どうしてアメルダからの送り物だと言うんだ?
それに、ラライはアメルダのことを人殺しだと言っているから、そんな嘘をついて渡せば、逆に教えてもらえなくなるかもしれない。
「何でそんなことをするんだ?普通に渡せばいいだろ」
「ちょっとした小細工さ。そうすれば、ラライの野郎は喜ぶはずだ」
どうしてラライが喜ぶことになるんだ?人殺しからの送り物と言われても、許しを請っているようにしか見えないと思うが。
まあ、それで許してもらえれば教えてもらえるだろうけど、許すかは分からないな。
でも、アメルダとラライの間には俺が知らない何かがあるのかもしれないから、ガロンの言うことを信じておくか。
「分かった。あの二人に関しては、アンタのほうが詳しいだろうからな」
俺はそこでガロンと話を終えて、旅のとびらに向かった。銀の竪琴を直すには別の素材がいる可能性もあるので、出発する前に調べた。
銀の竪琴···壊れた銀の竪琴1個、おもいでの弦1個、銀3個 マシンメーカー
銀が必要みたいだな。壊れた銀の竪琴がある氷原にはまだ行ったことがないので、その近くを探してみるか。
どうして竪琴をマシンメーカーで直すのかは気になるが、修理は出来そうだな。
「さっそく銀と壊れた竪琴を探しに行くか」
必要な素材が分かると、俺は緑の旅のとびらに入っていった。すると一瞬でマイラの町からガライの町の近くに移動する。
「この左側の岩山を越えたところに氷原があるのか」
岩山は旅のとびらから左の方向にあるので、俺はそこへ歩いていった。この前より雪が積もっていたが、数分でたどり着くことが出来た。
「結構高い岩山だけど、俺なら簡単に越えられそうだな」
ここもそうだけど、本当にアレフガルドは岩山が多いな。
岩山はもう10回以上は登ったことがあるので、今回もすぐに登って行くことができた。
岩山の頂上まで着くと、反対側を見渡してみる。すると、赤のとびらの先の雪原のような面積の広大な氷原が広がっていた。
「あれが氷原か。ガロンの言ってた小さな氷山もあるな」
よく見ると、その氷原には高さが5メートルくらいのとても小さな氷山が10個くらいあった。あの氷山のどれかに、壊れた銀の竪琴が眠っているのだろう。
「あと、降りてすぐのところには池もあるのか」
それと、崖の真下にはハートフルーツやさとうきびのような植物も生えている池もある。食料も必要になってくるし、それらの植物も集めておいたほうがいいな。
俺は池や氷原に向かうため、岩山の反対側に降りていった。すると、その途中に洞窟のようなものを見つけた。
「こんなところに洞窟があるのか。竪琴の修理に必要な銀があるかもしれないな」
洞窟にはさまざまな金属が眠っていることが多いので、銀が埋まっている可能性もあるな。それ以外にも役立つ金属があるかもしれないので、俺は中に入って行った。
そして、洞窟の奥に進んで行くと金や銀、ミスリルと言った珍しい金属がたくさんあった。
「やっぱり銀があったか。まほうインゴットももっと必要になるだろうし、ミスリルも集めておくか」
最強の兵器を作るのにまほうインゴットが必要になる可能性が高いので、俺は銀と一緒にミスリルも集めた。
金はマイラでは使い道がないが、きれいなので一応手に入れておく。
「これで金属も集まったし、銀の竪琴を探しに行くか」
俺は金属を集め終えるとポーチにしまい、洞窟から出た。
洞窟から出た後は池でハートフルーツなどを集めて、氷原へと向かって行く。氷原までは池から歩いて10分くらいでたどり着くことができた。
小さな氷山は10個くらいなので、すぐに壊れた銀の竪琴が見つかりそうだな。
しかし、探し始めようとしていると、雪原にもいた巨大なモンスターを見つけた。
「ここにもギカンテスがいるのか···見つかったら危険だな」
大砲などがなければギカンテスを倒すのは不可能だろう。俺はギカンテスに見つからないよう距離をとって、小さな氷山を調べ始めた。
小さな氷山は壊すと中が空洞になっており、物を隠すには最適な場所だ。俺はいくつも氷山を壊していき、宝箱が入っている氷山を見つけることができた。
その宝箱の横には立て札が立ててあり、魔物が書いたと思われる文字が書いてあった。
「人間の竪琴、持ち出し禁止って書いてあるな。多分ここに、ラライの竪琴が入ってるんだろうな」
俺はその宝箱を開けて、中を見てみる。すると、弦が切れてボロボロになっている銀色の竪琴が入っていた。
「これが銀の竪琴か。さっそく持ち帰って修理しないとな」
銀の竪琴を修理するにはマシンメーカーを使わないといけないので、町に戻らないといけないな。
まだキメラのつばさもたくたん持っているので、俺はそれを使って町に戻って行った。
町に戻って来ると、俺はマシンメーカーのある研究室に入っていった。素材は揃っているし、これで銀の竪琴が修理できるはずだ。
俺はマシンメーカーの前に立ち、壊れた銀の竪琴、おもいでの弦、銀にビルダーの魔法をかける。
すると、その3つの素材が合わさり、銀色に輝く美しい竪琴が出来上がった。
「これが銀の竪琴か。早くラライに届けに行かないとな」
だが、ラライは塔で俺と話した後消えてしまったな。昇天はしてないだろうけど、居場所に心当たりがない。
「ラライの居場所は分からないけど、ガロンなら心当たりがあるかもしれないな」
銀の竪琴のことを教えてくれたガロンなら、ラライがいそうな場所も分かるかもしれない。
俺は作業部屋に入り、ガロンにラライの居場所について聞いた。
「なあ、ガロン。ラライの幽霊がいそうな場所は知らないか?」
俺がそう聞くと、ガロンは心当たりがあるようだった。
「オレは幽霊なんて見えねえから分からないけど、あいつの墓の近くにいるんじゃねえか?」
ラライの墓なんてあったのか。この地方の人々は俺が来る前から物を作る能力があったらしいし、墓も作ることが出来たみたいだな。
「そのラライの墓って、どこにあるんだ?」
「壊れた銀の竪琴がある氷原をずっと進んで行った所にあるぜ。結構遠いと思うけど、最強の兵器のためだからな、必ず銀の竪琴を届けてくれよ」
ラライの墓も緑のとびらの先にあるみたいだな。
氷原を越えるということはガロンのガロンの言う通りかなり遠そうだけど、今日の夜になる前にはたどり着くことができるだろう。
「分かった。銀の竪琴はもう修理したから、ラライに届けてくるぜ」
「おう、頼んだぜ!」
俺は作業部屋からすぐに出て、再び緑の旅のとびらに入った。1時間は間違いなくかかるだろうから、なるべく急いで行かないとな。
俺は旅のとびらを抜けると、岩山を越えて、その先に広がる氷原に向かった。
氷原にはさっきのギガンテス以外にもブリザードやガーゴイル、メタルハンターと言ったモンスターが生息しているので、小さな氷山などに隠れながら進んでいく。
1時間くらい氷原を歩いていると、再びガライの町の近くと同じように雪が積もっている場所へ着いた。
「氷原を越えることは出来たけど、まだラライの墓は見えないな」
その場所を進んで行くと、海の近くまで行った。崖と海に挟まれていて一本道なので、このまま進めばラライの墓があるのだろう。
そして、20分くらい海の近くの道を歩いて、墓石が一つだけ置いてある小さな岬のような場所を見つけた。
近づいて行くと、その墓石の前にラライの幽霊が立っているのが見える。
「おい、ラライ。話があるんだ」
俺はさっそくラライに銀の竪琴を渡すために話しかけた。
すると、俺の声に気づいてラライは振り向いて、近づいて来る。
「おや、また君か···今度は何をしに来たんだい?」
「あんたに銀の竪琴を渡しに来たんだ。大事な物だったんだろ?」
俺はポーチから銀の竪琴を取り出して、ラライに渡す。
魔物に壊された銀の竪琴が直されていて、ラライはとても驚いていた。
「おお!これは僕の家に代々伝わる銀の竪琴!君が、これを直してくれたのか?」
本当は俺が修理したんだけど、ガロンはアメルダからの贈り物ということにしておけと言われたし、アメルダが直したことにするか。
「いや、アメルダがあんたへの贈り物として直してくれたんだ」
俺がそう言うと、ラライはしばらく黙りこんだ後、こう言った。
「それは、嘘だね。アメルダは、物で人を動かそうとはしない女性だからね」
嘘だと気づかれるとしても、こんなに早く気づかれるとは思っていなかったぜ。
さすがはアメルダが助手をしていた発明家だけあるな。俺が知らないアメルダの性格も全て分かっているようだ。
今さら隠し通す必要もなさそうなので、俺は本当のことを言った。
「もう気づかれたか。本当はアメルダの仲間のガロンが、アメルダからの贈り物だと言ってあんたに銀の竪琴を渡そうと考えてたんだ」
「そうだったのか。だけど、ガロンはどうしてそんなことを考えたんだい?」
「アメルダはあんたの研究記録の解読に手間取っていてな、銀の竪琴を渡す代わりに直接教えて貰おうかと思ったんだ。それと、銀の竪琴を直したのは、本当は俺だ」
ラライの研究記録の内容を早く知りたいのなら、本人に聞くのが一番早いからな。
俺が銀の竪琴を直したと言うと、そのことについてラライは聞いてくる。
「本当はアメルダじゃなくて、君が直していたんだね。だけど、ここまで上手く直せるなんて、君は何者なんだい?」
アメルダからの贈り物と言うのが嘘だと気づいた理由には、銀の竪琴が新品のような状態になっていたからもあるだろう。
マイラではみんなわずかに物を作る力を持ってはいるが、完全ではないし、ビルダーの魔法も使えない。
「俺は影山雄也。伝説のビルダーって言う奴だ」
「そうか、君がビルダーなのか···君の力があれば、僕の発明も完成させられるかもしれないね」
ラライも物を作る力がなくて、最強の兵器は完成させられなかったんだな。
でも、作り方さえ分かればビルダーの俺なら作れるかもしれないな。
「だったら、研究記録を俺に教えてくれないか?最強の兵器は、俺が完成させて見せるぜ。それに、アメルダも過去に何があったかは知らないけど、魔物の親玉を倒そうと必死に頑張っているんだ」
俺はラライの代わりに最強の兵器を完成させると言って、研究記録を教えてくれるよう頼んだ。
それに、アメルダが魔物の親玉を倒そうと必死に頑張っていることも知れば、考えも変わるかもしれない。
すると、ラライはしばらく考えて俺に言った。
「分かった。僕が命をかけて進めた研究も、君なら完成させられるかもしれないからね。」
「ああ、必ず完成させるぞ」
自信はあまりないが、ビルダーとして必ず最強の兵器を完成させないといけないな。
そうしなければ、マイラとガライヤの空の闇は晴れないし、ラライのこの世での未練も消えることはないだろう。
「君にブルーブロックというブロックの作り方を教える。これを使って、弱き物を描くんだ」
ラライは、俺にブルーブロックの作り方を教えてくれた。ブルーブロックと言うのは、名前の通り青一色のブロックのようだ。
だが、弱き者については教えてくれなかった。
「そうすれば、君とアメルダが求めている物を得られるはずさ···」
とりあえず、ブルーブロックを使って何かをすれば、最強の兵器の手がかりが掴めると言うことだろう。
何か知ってるかもしれないし、帰ったらガロンやアメルダに聞いてみないとな。
俺はラライと別れて、マイラの町に戻って行った。
アメルダは誰を、何故殺したのかは分からないけど、ラライのこれまでの言い方から考えて、ラライ自身が殺されたのではないかと思えてくる。
だけど、もしそうならどうして殺したんだろうな。俺には全く理由が分からなかった。