ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺がマイラに来て14日目、アメルダの研究記録も途中で、まだようがんまじんと戦いに行くことは出来なかった。
今日は、昨日行った緑の旅のとびらの先の探索を続けるか。あの豪雪地帯はガライの町以外にもいろいろありそうだ。
「新しい素材か、研究の新しい手がかりが手に入るといいな」
俺は朝食を食べた後、さっそく緑の旅のとびらに向かった。すると、その途中でシェネリが俺を呼び止めてきた。
「雄也さん、今日も忙しいと思いますけど、少しいいですか?」
「別にいいけど、何かあったのか?」
俺はこれから緑の旅のとびらに入るつもりだったし、探索のついでに頼み事を解決すればいいので、別に困ることはなかった。
出掛けようとしたら相談を受けたことも、これまで何度もある。
「私、最近悩みがあるんです···。私の話、聞いてくれますか?」
「もちろん聞くぞ。何か困っていることでもあるのか?」
素材が欲しいとかではなく、悩み事の相談をしてほしいのか。
女の人の悩みを俺が解決できるかは分からないけど、一応聞いておくべきだな。
俺が相談していいと返事をすると、シェネリは少し怖いことを言い出した。
「簡単には信じられないと思いますが、夜になるとどこからか歌声が聞こえて眠れないんです」
歌声なんて俺には聞こえてこないのに、どう言うことなんだ?それに、夜はみんな眠っているし、歌っている人なんて誰もいない。
本当に聞こえたとすれば、魔物や幽霊の仕業だろうか。
「幻聴とかじゃなくて、本当に聞こえたのか?」
「それは分かりませんけど、すごくきれいで、悲しげな歌なんです」
きれいな歌であれば、逆に眠れると思うんだけどな。
寝る前にゆっくりとした音楽をかけて、眠りやすくする方法も存在している。
「そんな歌なら、逆に寝やすいんじゃないか?」
「それが、あまりに悲しすぎる歌で、聞いていると涙があふれてきちゃうんです」
そんなに悲しい歌を演奏しているのは誰なんだろうな。そして、何故俺たちには聞こえないかも気になる。
何か心当たりでもあれば、調べることができるだろうけど。
「その歌が聞こえるようになった原因に、手がかりはあるか?」
「心当たりと言えば、この鍵ですね」
俺が聞くと、シェネリはポケットから銀色の鍵を取り出した。どこの鍵か分からないから、そのままシェネリが持っていればいいと言った鍵だ。
この鍵と歌声が何か関係しているのだろうか。
「最近気づいたんですけど、この鍵は歌声と反応して光り輝くんです」
歌声と反応すると言うことは、この鍵で行ける場所に歌声を発生させている何かがいるのだろう。
でも、その場所がどこにあるのかは分からないな。
「間違いなくその鍵と歌声は関係あるだろうけど、どこを開ける鍵なのか分かるか?」
「多分ですけど、ガライヤの氷の湖の近くにある塔の鍵だと思います。いつもあの方角から、歌声が聞こえて来るんです」
そう言えば、アメルダの頼みで氷を集めに行った時、遠くに塔のような物が見えていたな。
あの時は大して気にならなかったけど、塔の中に歌を歌っている奴がいるんだな。
「じゃあ、その場所に行ってくる。その鍵を貸してくれるか?」
「はい!私の宝物ですけど、このまま歌声が続けば睡眠不足になってしまいます」
シェネリは俺に銀色の鍵を渡してくれた。俺も歌声については気になるし、調べに行ってこよう。
俺はさっそく赤の旅のとびらに入った。今日は本当は緑のとびらの先を探索する予定だったが、あの塔は赤のとびらの先にある。
旅のとびらを抜けると、何度も行ったことのある雪原地帯へとたどり着く。この雪原は、日本の冬くらいの気温ではあるが、ガライの町がある豪雪地帯に比べれば寒くはない。
「結構遠いけど、シェネリの言っていた塔を目指すか」
俺は旅のとびらから、歌声の聞こえる塔を目指して歩き始める。
まず、杉の木がたくさん生えている森を抜けて、その先にある広大な雪原を歩いていく。
ここらにいる魔物は戦いなれているが、戦うと時間がかかるので避けながら進んで行った。
そして、町から出て1時間以上経って、凍り付いた湖までたどり着いた。2回も来たことがあるが、遠くて大変だな。
「ブリザードが邪魔だから、迂回して塔を目指すか」
氷の湖を歩いて行ったほうが早いが、大量のブリザードが生息していて厄介だ。隠れる場所もないので、戦うことになってしまうだろう。
なので俺は、氷の湖の近くにある森の中を進みながら、塔に近づいていった。15分くらい歩き続けて、ようやく塔の入り口にまでたどり着く。
「やっと塔についたな。さっそく中に入ってみるか」
その塔は高さが30メートルくらいで、ピラミッドと同じブロックで出来ている。
中に入るとカベかけ松明がある明るい部屋があり、2階に上がるはしごがある部屋の入り口には、鍵のかかった赤色の扉があった。
シェネリが持っていた鍵は、ここを開けるための物だろう。
「この塔の上に何がいるんだろうな?」
俺はそんなことを考えながらポーチから鍵を取りだし、赤色の扉にさしこんだ。すると、鍵がはずれて開けられるようになった。
「やっぱりここの鍵だったみたいだな」
鍵が外れたので、俺は扉を開けて塔の2階へと登っていく。
階段ではなくはしごを使わないといけないが、俺は崖にかかっているつたも何度も登ったことがあるので、全く疲れなかった。
2階にたどり着くと、そこは一階と同じような部屋で、何もなかった。だが、この塔は高いのでまだ上があるはずだ。
「3階に続くはしごもあるな」
2階を少し調べていると、やはりまだ上があるようで、3階に繋がるはしごを見つけた。
俺はそれを登っていき、3階へとたどり着く。そこには、たくさんの本や机なとが置いてあり、書斎みたいな場所だった。
その部屋を調べていると、これまで何度も見たことのあるタイトルの本も見つけた。
「アレフガルド歴程か···ここにもあったんだな」
冒険家ガンダルが書いたこの本は、どのようにアレフガルドが衰退していったかが記されている。
メルキド、リムルダール、マイラで1冊ずつ見つけて来たので、これで4冊目だな。
俺はそのアレフガルド歴程を手に取り、読み始めた。
メルキド、リムルダール、マイラを巡り、アレフガルドの北西、ガライヤ地方に行き着いた。長い旅の中でたくさんの山を越え海を渡り、私はひとつ気づいたことがある。それは、このアレフガルドの地形が聞いていた物と少し違っていることだ。どうも、海面が上がり陸だった場所が海の中に沈んでいるらしい。なぜこのような変化が起きたのか分からないが、これも竜王の手によるものだろう。ひょっとすると、人間の往来を断ち、人間たちが協力するのを防ぐためなのかもしれない。
そう言えばドラクエ1のアレフガルドと比べるとやたらと海が多いんだよな。
竜王がそんな力を手にしたのも、勇者が裏切ったからだろう。
竜王と勇者は、どちらのほうがより悪の存在なのか分からないがどちらも倒さなければアレフガルドに未来はないな。
「まだ続きが書かれてるな」
海について書かれている次のページには、ガライの町や、俺がまだ行っていないラダトーム地方のことが書かれていた。
行き着いたガライヤ地方には、吟遊詩人のガライという人物が作った町があったはずだが、今やこの地は冷たい雪と硬い氷に閉ざされ、町自体も失われてしまったようだ。炎とマグマに閉ざされたマイラ、そして雪と氷に閉ざされたガライヤ···。おお!このアレフガルドにはもはや人間の住める地は残されていないのだろうか!メルキドからアレフガルドを東まわりに巡ってどのくらいの年月がたったのだろう。
私はこれから旅の最後に残された地、かつての王都があったラダトームに向かう。伝え聞くところでは、ラダトームは今、死と呪いが支配する死の大地と化しているそうだ。はたしてそんな地に、希望などあるのだろうか。
メルキドの冒険家·ガンダル
マイラとガライヤは今俺たちがいる場所なのでどんな状況かは分かっているが、ラダトームが死の大地と呼ばれるほど荒廃しているとは知らなかったぜ。恐らくは、竜王の城が近くにあるからだろうな。
俺たちが行くことになるのは、マイラとガライヤの空の闇を晴らしてからだろう。
俺はアレフガルド歴程を読み終えると、また塔の中を調べ始めた。
すると、3階の一番奥に羽根のついた帽子を被った男がいた。
「あいつ、マイラの魔物の城にもいたな···」
その男はよく見ると、俺たちが魔物の城に潜入した時にアメルダのことを人殺しだと言っていた幽霊だった。どうしてあいつが、ここにいるのだろうか。
「この前魔物の城でも会ったよな。あんたは誰なんだ?」
俺がそう聞くと、男の幽霊は俺の方を見て話し始める。
「どうしてこんなところにいるんだい?もしかして、僕が生前持っていた鍵を手に入れたのか?」
「ああ、町の仲間がその鍵を拾って、それを貰ったんだ」
男は俺がこの塔に入れたことを驚いている。もしシェネリが鍵を拾っていなかったら、俺はここには来れなかったな。
「それで、僕に何の用だい?」
「その鍵をくれたシェネリって女の人が、この塔から歌声が聞こえて眠れないと言って、俺に相談に来たんだ。それで、この塔を調べている」
この塔から歌声が聞こえてきたと言うことは、男が歌を歌っていたのだろう。
それを言うと、男は悪気があった訳ではないと言う。
「すまない···僕の歌で少女の眠りをさまたげてしまうとは思ってもいなかった。これからは、気を付けるようにするよ」
歌を歌うことは悪いことではないが、他の人に迷惑をかけないようにしないとな。彼はこれからは気を付けると言っているのでもう大丈夫だろう。
俺は最初の話題に戻して、男が誰なのかを聞いた。
「話を戻すけど、あんたは誰なんだ?この前はアメルダのことを人殺しって言っていたよな」
「僕はラライ。しがない発明家をしていた男さ。あの人殺しを助けるのはやめたほうがいいと言ったのに、どうして君は助けたんだ?」
ラライと言うのは、アメルダが助手をしていたと言う発明家の名前だったはずだ。どんな人だったのか気になっていたけど、既に会っていたとはな。
誰を殺したのかは分からないが、ラライが嘘を言っているとは思えない。
だが、やはり本当に人殺しだとしても、助けないと言うのはおかしいと思う。
「たとえ人殺しであっても、助けないと言うのは間違っていると思うぞ」
「君はそう思うのか···だけど、あの女の手助けはやめたほうがいい。そうしないと、君もあの女に殺されるかもしれないよ?」
確かに人殺しと協力するのは嫌だとは思うが、協力しなければようがんまじんやひょうがまじんは倒せない。
それに、どうして殺したのかも聞いていないから、本当にアメルダがただの人殺しなのかは分からないな。
「じゃあ、アメルダが人を殺した理由は何なんだ?」
「それは僕にも分からないね。兎に角、迷惑をかけた少女には謝っておいておくれ」
理由を聞いてもラライは教えてくれず、この場を去っていった。本当に知らないのか、知っていて隠しているのかは分からないけど。
これまで協力してきた仲間だし、俺は理由もなくアメルダが人を殺すとは思えない。
そのことは気になるが、とりあえず歌声のことについては解決したので俺は塔を降りて、キメラのつばさを使って帰っていった。
マイラの町に戻って来ると、さっそくシェネリにラライが歌を歌っていたことを教えに行った。
「シェネリ、歌声の秘密を調べて来たぞ。ラライと言う男の幽霊が歌っていたんだ」
「え!?雄也さんって、幽霊が見えるんですか?」
幽霊と話したと言うと、シェネリは驚いた顔をする。
そう言えばシェネリには俺が幽霊を見ることが出来るって話をしていなかったな。
「ああ、ビルダーの力のおかげで、幽霊が見えるんだ」
「ビルダーの力ってすごいですね!それで、ラライさんと言うのは、アメルダさんが助手をしていた発明家なんですか?」
シェネリもラライの話は知っていたのか。シェネリはアメルダと一緒にいることも多いので、聞いたことがあるのだろう。
「ああ、その人のことだ」
「やっぱりそうなんですね!ラライさんって、歌が上手なんですか!」
歌が上手って言っているってことは、夜眠れなくて困っていることもあったけど、そこまで嫌でもなかったのかもな。
ラライの話をしていると、シェネリは急に話題を変えた。
「そう言えば雄也さん。昨日、幼馴染みのコルトから聞いたんですけど、アメルダさんは昔、人を殺したことがあるそうです」
シェネリもその話は聞いていたのか。
どうしてコルトが知っていたかは分からないが、ラライ以外の人も言っているということは、やはり本当なんだろうな。
「俺もラライの幽霊からそんな話を聞いたぜ」
「ラライさんも言っていたんですか!?私はただの噂だと思っていたのですが、嘘だとは思えなくなってきましたね」
アメルダが人殺しであるとラライも言っていたことを聞き、シェネリは不安そうな表情をする。
これでシェネリがアメルダのことを信用しなくなったりしなければいいのだが。
「そのことについては、また聞いてみます。とりあえず、今日は歌声の謎を解決してくれてありがとうございました」
シェネリはそう言った後作業部屋に入って行った。アメルダのことを荒くれたちに聞くためだろうか。