ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode68 雪国のガライヤ

俺はマイラの5回目の防衛戦に勝った後の夜、またしてもあの裏切り勇者の記憶の夢を見た。

これで6回もこんな夢を見たけど、どれも勇者が裏切った理由を示しているものだったから、今回もそうなのだろう。

夢の中で勇者は、立ちはだかる巨大なドラゴンを討伐し、捕まっているローラ姫を助け出していた。勇者に助けられ、ローラ姫は感謝の言葉を言う。

 

「ああ!助け出してくださる方が本当にいたなんて!まだ信じられませんわ!」

 

だが、姫を助け出せたと言うのに勇者は嬉しそうではなかった。

人との関わりを嫌い始めた勇者は、自分の意思ではなく、国王の命令で姫の救出に来たのかもしれないな。この勇者なら、夕べはお楽しみは間違いなくしていないだろう。

そして、姫は勇者にこれまでの人々と同じようなことを言った。

 

「さすがはルビスに選ばれたお方···世界を救う使命を持ったお方です」

 

ただでさえそう言われて人々に怒っている勇者に、姫までもがそう言うとはな。

いや、王族だからこそ精霊ルビスを強く信仰しているところもあるだろう。

続けて、さらに姫は勇者の気持ちを分かっていない発言をする。

 

「あなたなら、必ず竜王を倒せるでしょう。すべては精霊の導きのままに···!」

 

全ては精霊の導きのままにと言われて、勇者の精神はもう極限まで追い詰められているようだった。

勇者は、姫に聞こえないように小声で言った。

「くそがっ···!姫までオレの気持ちを分かってくれないのか!?オレに味方はいねえのかよ!」

 

誰も味方をしてくれない、誰も気持ちを分かってくれない。

そんな中で、竜王にルビスから与えられた責務を放棄できる選択肢を与えられたら、はいとうなずいてしまうのもあり得るかもしれない。

勇者が絶望の表情を浮かべているにも関わらず、ローラ姫は続けた。

 

「さあ、勇者様。私をお城まで連れてってくれますね?」

 

このまま姫を竜王に引き渡すことも可能だが、勇者にはまだ僅かに自分の責務を果たすべきだという気持ちが残っていたのか、城に連れていくと返事をした。

まあ、ドラクエ1ではいいえを押すと無限ループになった気もするけど。

「うれしゅうございます······ぽっ」

 

そして、姫は勇者の気持ちが分からないまま、共に洞窟から出て城へ向かって行った。

そこで俺の目の前は真っ暗になり、気がつくと目を覚ましていた。

 

マイラに来て9日目、今日はトロルが落とした赤色の旅のとびらの先を探索する日だ。今度はどこにつながっているのだろうか。

 

「新しい旅のとびらの先に兵器の手がかりでもあればいいんだけどな」

 

俺はそんなことを考えながら寝室から出て、まずは作業部屋に向かった。昨日の戦いで銃弾を使いきってしまったので、探索に行く前に補充しておかないと厳しい戦いになる。

俺は作業部屋に入ると、マシンメーカーの前に立ってはがねの弾丸を作り始める。

 

「今日も100個くらい作っておけばいいな」

 

一度に20個も作れるので、はがねインゴットが足りなくなる心配はない。なので俺は、はがねインゴットを5個使って100発の銃弾を作った。

銃弾を作り終えると、調理部屋に行って朝食を食べ、旅のとびらのところへ向かう。

その途中、希望のはたのところに見知らぬ男が立っているのが見えた。

 

「誰なんだ?見たことない奴だな」

 

その男は俺と同じくらいの年齢のようで、この町に筋肉だらけの荒くれが大勢いることに驚いていた。

 

「遠くに見える光のはしらを目指して海を越え、山を越え、ようやくたどりついたと思ったらどこもかしこも筋肉だらけ!ああ!僕は地獄に迷いこんだのだろうか···!」

確かに俺も、最初に荒くれのガロンが来た時は、この地方はどうなっているんだ?って思ったな。

こんな荒くれ者のアジトに入り込んでしまったら、誰でも驚いてしまうだろう。

俺がその男に話しかけようとしていると、先に彼が俺に気づいて話しかけてきた。

 

「おや?あなたは筋肉の人たちより、まともそうですね!」

 

この人は、荒くれはまともではない人って思っているのか?まあ、筋肉の話でうるさいから、俺もそう思わなくはない。

 

「ここは、どこなのです?あなたは、いったい···」

 

「俺は影山雄也。いつもは雄也って呼んでくれ。ここはマイラの町で、ここを拠点に魔物と戦っている」

俺のことについて聞かれたので、いつも通りの自己紹介をした。この自己紹介も、この世界に来てからもう20回近くしている。

それと、ここのことを知らないようなので、マイラの町であることを伝えた。

 

「へえ、ここはあの温泉があったと言われるマイラの町だったのですね!」

 

マイラの町は知ってても、来たことがないようだな。もしかしたら、別の地方から来た人なのかもしれない。

 

「それで、あんたはどこから来たんだ?」

 

「僕は、氷に覆われたガライヤ地方から来ました。名前はコルトと言います」

 

名前は聞いていなかったけど、コルトというのか。

でも、ガライヤ地方と言うのはドラクエ1で言うガライの町があった場所のはずだ。俺たちにはまだ行けないけど、そっちは氷の大地と化していたのか。かなり離れた場所から来て、かなり大変だっただろうな。

 

「結構遠くから来たんだな」

 

「はい。疲れていますし、僕もここに住ませてください!」

 

ガライヤ出身の人なら、ガライの町に住めばいいと思うが、まだ復興を始めていないので、コルトもここに住ませたほうがいいな。

町の外で放っておくのは危険だからな。

 

「ああ、もちろん構わないぞ。よろしくな、コルト」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

俺はコルトとあいさつをして、旅のとびらに向かっていった。すると、コルトは再び俺を呼び止めてきた。

 

「すいません。雄也さんに、さっそく頼みたいことがあるんです」

 

「どうしたんだ?俺は出かける予定なんだけど」

 

旅のとびらの先でしてこれることだといいな。まだ朝なので、俺はコルトの頼みを聞くことにした。

 

「実は、僕がいたガライヤ地方に僕の恋人のシェネリという子がいて、一緒にこの光を目指していたんですが、どこかではぐれてしまって···」

 

こ、恋人だと!?コルトは俺と同じくらいの年齢に見えるのに、リア充だったのか!?

俺のいた高校でも恋人がいる友達はいたけど、本当にうらやましい話だぜ。

それはともかく、寒い場所で一人というのは危険な状態だ。

 

「かなり大変なことだな。助けにいかないとまずいぞ!」

 

「それで、僕も助けにいってほしいとお願いしたいのですが···」

 

恋人が危険だと言うのに、何を悩んでいるんだ?俺だったらすぐにでも助けに行くのに。

 

「何を悩むことがあるんだ?」

 

「こんなオス臭い野獣たちが住む筋肉地獄に連れてくるべきか悩んでしまって···」

 

オス臭いだの、野獣だの、筋肉地獄だの、こいつは荒くれに大して酷く言い過ぎじゃないか?

変な奴らではあるけど、頼れる仲間なんだぞ。

それに、こんなことで助けに行くか悩むと言うのもおかしいと俺は思う。

 

「あのな、そんなことと人の命、どっちが大切か分からないのか?普通に考えたら分かるだろ?」

 

そう言うと、悩んでいたコルトも納得してくれた。

 

「わ、分かってますよ。では、お願いします雄也さん!雪のガライヤからシェネリを連れてきてください!」

 

「ああ、もちろんだ」

 

旅のとびらでは違う地方であるガライヤに行けるかは分からないけど、早く助けにいかないといけない。

俺はコルトと別れると、ガライヤに行けるようにと祈りながら、赤の旅のとびらに入った。

旅のとびらに入ると目の前が真っ白になり、一瞬で新たなる場所へと移動した。

気づくと、俺は雪が降り積もる寒い場所にいた。マイラと違って、杉の木がたくさん生えている。

「結構寒いな。本当にガライヤに来れたみたいだ」

 

そこは、コルトから聞いたガライヤの特徴と同じだった。メルキドの旅のとびらでもドムドーラに行けたし、マイラの旅のとびらでガライヤに行けるのもおかしくないのかもしれない。

そう考えると、まだアレフガルドで行っていない地域···王都があったラダトームにも行けるのかもな。今度手に入ったら試してみるか。

 

「とりあえず、シェネリを探して助け出すか」

 

俺は旅のとびらの凄さに驚いていたが、今は兎に角コルトの恋人、シェネリを救出しないといけない。

俺はシェネリを探すため、雪原を歩き始めた。

雪原には、俺が初めて見るモンスターが多く生息している。

「メタルハンターとイエティか···それに、もう少し進んだ所にはホークマンがいるな」

 

俺が今いる旅のとびらの近くは山の上のような場所で、機械のモンスター、メタルハンターと雪男のモンスター、イエティがいる。

山を降りた所には、紫色の翼や剣を持つ魔物、ホークマンが生息している。

どれも戦ったら危険そうなので、俺は杉の木や雪に隠れながら、山を降りて雪原の奥へ進んでいく。

途中、ドラキーやその色違い、ドラキーマの姿も見えた。

 

「ドラキーマもいるのか。あまり強くはなさそうだけど、今は戦ってる時間はない」

 

幸い、隠れられる物が多かったのでそれを利用して敵を避けていった。

山から降りて20分くらい歩いて行くと、木がたくさん生えていた場所を抜け、一面の銀世界とも言える広大な雪原が広がっていた。

 

「きれいな景色だけど、もともとはこんな場所じゃなかったんだよな」

 

雪国の景色はきれいではあるが、元々ガライヤもこんな場所じゃなかったはずだ。これもマイラがようがんまじんの影響で火山地帯になってしまったように、ガライヤも何らかの魔物の影響で氷雪地帯になったのだろう。

 

「どんな魔物が原因でガライヤはこんな場所になったんだ?」

 

雪や氷の技を使う魔物はたくさんいるけど、どの魔物が親玉なのかは分からない。

ただ、ようがんまじんだけでなくそいつにも対抗していかないといけないだろうな。

俺がガライヤの魔物の親玉について考えていると、この近くで誰かが戦っているような音が聞こえた。

 

「ん?この近くに誰かいるのか?」

 

その音がした方向に駆けつけて行ってみると、そこではおおかなづちを持つ少女と、メタルハンターの上位種、キラーマシン3体が戦っていた。あの少女が、コルトの言ってたシェネリだろうか。

キラーマシンは剣や弓、レーザーと言った様々な攻撃手段を持っていて、かなり危険な魔物だ。少女は苦戦していて、いくつか傷を負っていた。

 

「助けないとまずいな···」

 

すぐに助けに行きたいが、正面から戦ったら俺でも苦戦するし、サブマシンガンで奴の核のような場所を狙撃する能力もない。

俺はキラーマシンが少女に集中している間に背後から斬りつけることにした。機械と言えども、背後から全力の攻撃を受ければ大きなダメージを負うだろう。

俺は3体いるキラーマシンのうち、左にいる奴の背後に回り、はがねのつるぎを構えて忍びよる。

そして、攻撃が届く位置までたどりつくと、キラーマシンに目がけて思いきりはがねのつるぎを降り下ろした。

すると、キラーマシンは大きなダメージを負って動きが止まる。それを見て少女は、俺に驚いていた。

 

「あ、あなたは?」

 

「その話は後だ。コルトに言われて、あんたを助けに来た」

 

とりあえず今はこのキラーマシンの群れから離脱しなければいけない。俺が攻撃した奴も動きを再開し、まわりのキラーマシンと共に俺に斬りかかって来る。

 

「相手は3体いるし、二刀流を使うか」

 

俺は左手にウォーハンマーを持ち、左側のキラーマシンの攻撃を受け止め、右手のはがねのつるぎで真ん中の大きなキラーマシンの攻撃を受け止める。

 

「私も下がってはいられないです!」

 

俺の受け止めることの出来ない右側のキラーマシンの攻撃は、少女がおおかなづちで防いでくれた。

 

「俺たちなら勝てそうだな」

 

キラーマシンの攻撃は、狂ったあくまのきしやトロルの攻撃よりは威力が低く、俺は両腕に力を入れて、攻撃を弾き返すことができた。

攻撃を弾かれキラーマシンが怯んだところで、俺はさらに力をためて、2体のキラーマシンをなぎはらった。

「回転斬り!」

 

二刀流での回転斬りで、弱っていた左側ほキラーマシンは倒れ、真ん中のキラーマシンも大きな傷を負った。

 

「これで後2体だな」

 

真ん中のキラーマシンは、俺に剣では勝てないと判断したのか、少し距離をとって弓矢を撃ち始める。

矢は3方向に飛んでいき、避けるのはそう簡単ではないが、俺はキラーマシンの動きを見ながら回避して、少しずつ近づいていった。

 

「結構速い矢だけど、かわせないほどじゃないな」

 

だが、俺がキラーマシンのすぐ近くに来ても、キラーマシンは剣で防ごうとはしなかった。剣で防ぐのは諦めたからだなと思い、俺はキラーマシンを斬り裂こうとする。

その時だった、キラーマシンの核のような物が、赤く輝いていた。これは、ビームを発射するところなのか。

どうやらキラーマシンは反撃しないのではなく、ビームのエネルギーを溜めているようだった。

俺には回避する時間もなく、とっさにキラーマシンの核にはがねのつるぎを突き刺した。

すると、ビームを発射する核にはがねのつるぎが刺さったことで発射できなくなり、キラーマシンの中に過剰なエネルギーが溜まっていった。

 

「ビームは防げたけど、このままだと爆発するな」

 

俺はすぐにそこから移動し、爆発に巻き込まれないほどの距離を取った。そして、少したつとキラーマシンは過剰エネルギーによって爆発し、消えていった。

はがねのつるぎは砕けてしまったけど、キラーマシンを倒すことはできたな。少女もおおかなづちで残り1体のキラーマシンを倒すことが出来ていた。

 

「こんな強いモンスターと戦うことになるとは思ってなかったぜ」

 

ガライヤに来て、キラーマシンと戦うことになるとは思っていなかった。

なんとか倒すことができ、少女は感謝の言葉を言う。

 

「すごい!あなたのおかげで助かりました!」

 

少女はかなり傷を負っているが、命に別状はない。町に連れて帰れば治せるだろう。

 

「ああ、コルトに言われて恋人のシェネリを助けに来たんだが、あんたのことか?」

 

「はい、私はシェネリといいます!ですけど、コルトはただの幼馴染みで恋人ではないです」

 

あれ?コルトは恋人のシェネリを助けてほしいと言ってたけど、一方的な片想いだったってことか。

彼女がいない俺は安心したぜ。

 

「そのコルトは今どこにいるんですか?私たち、ガライヤから光差す地を目指して歩いてたんですが、途中ではぐれてしまって···」

 

「コルトは、今は俺たちが住んでるマイラの町にいる。あんたも来るか?」

 

俺がマイラの町に来てくれるかシェネリに聞くと、もちろん行くと言った。

 

「はい!あなたの町まで連れて行ってください」

 

「それなら歓迎するぜ。キメラのつばさで町に行くぞ」

 

シェネリはケガをしていて、雪原を20分も歩くのは大変そうなので、俺たちはキメラのつばさを使って町に戻って行った。


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