ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
マイラに来て6日目の朝、俺は昨日聞けなかった、ギエラの頼み事を聞きに行った。こっちもベイパーの頼みと同じで、筋肉に関係していることなのだろうか。
ギエラは調理部屋で朝食を食べていて、俺も一緒にサボテンフルーツを食べながら、ギエラの頼みたいことについて聞いた。
「ギエラ、昨日俺に頼みたいことがあるって言ってたよな」
「ええ、アネゴ救出作戦も近いじゃない?そこでね、アタシちょっと考えたのよ」
アネゴ救出に関係していると言うことは、やはり筋肉をさらにつけたいとか言う話か?でも、ギエラはガロンやベイパーに比べたらそんなことを言わないんだよな。
「みんなの士気を高めつつ、心を落ち着けられる場所があったらいいなと思って」
こっちはベイパーが十分と言っていた士気を上げたいと思っていたのか。確かにそんな部屋があったらいいが、アネゴを早く救出しないといけないのに、作っている時間があるのかと思う。
だが、ギエラの言う通り戦いの前に心を落ち着けることも大切だ。何も考えずに突っ込んで行っても、勝つことはできないからな。なので、とりあえず聞くことにした。
「どんな感じの場所を作ればいいんだ?」
「新しく作らなくても、もうこのアジトにあるじゃない。気分を盛り上げつつ、高ぶる感情を抑える。こんなことをできる施設は一つしかないでしょう?」
ギエラが言う心を落ち着けられる場所はもうこの町にあるのか。気分を盛り上げることも出来ると言われたら、確かに一つしかないな。
「温泉のことだろ?」
温泉に入れば、みんなと話ができて気分が盛り上がるし、体にいい成分が入った湯につかって、心も体もリラックスすることができる。
ギエラは救出に行く前に、みんなで温泉に入りたいのだろうか。それなら、あまり時間も使わないな。
「そうよ!温泉よ!温泉に何か置いて、今よりもっとグレードアップしてほしいのよ!」
ギエラは温泉が好きだし、やっぱり温泉のことだったか。だが、みんなで入るだけで十分な気がするのに、何でわざわざグレードアップしたいんだ?
「別にグレードアップしなくても、みんなで温泉に入れば盛り上がれると思うぞ?」
「それは分かってるわよ。でも、これからアタシたちはアネゴ救出という大変なことをしないといけない。だから、より士気が上がる何かを温泉に飾ったほうがいいと思うのよ!」
みんながさらに盛り上がれるものがないと、アネゴ救出に向かえるほどの士気にはならないと言いたいのか。まあ、分からない話でもないな。何を飾ればいいかは分からないが。
「何を飾ればいいんだ?」
「剣の飾り物や、武器が描かれた壁掛けがあるといいわ」
それなら、メルキドで作り方を調べた剣のカベかけや、武器屋のカベかけ、防具屋のカベかけがあったな。
「それなら、いくつか作れるのがあるぞ」
「なら、雄也。温泉の中に素敵な飾りを置いて、アタシたちのマイラ温泉を今よりもっとグレードアップしてちょうだい!」
俺はギエラと別れて、飾りを作るために作業部屋に向かった。だが、作業部屋ではまだゆきのへとヘイザンが神鉄炉を作っている。
「先に調理部屋で染料を作ってくるか」
ずっと待っているのも暇なので、俺は武器屋と防具屋のカベかけを作るのに必要な染料を作りに、調理部屋に入っていった。
この世界では染料は、何故か料理用たき火で作るんだよな。加熱しないと作れないのは分かるが、それにしても料理を作るためのたき火で染料を作るのはどうかと思う。
俺はそんなことを気にしながらも、この前集めたあおい油とあかい油を使って、染料を作った。
「これで染料は出来たから、後は待つだけか」
俺は染料を作り終わった後、調理部屋から出ようとして気づいた。
鉄のインゴットとレンガがあるので、料理用たき火をレンガ料理台に強化できるはずだ。
「今気づいたけど、もうレンガ料理台に強化できるんだよな」
神鉄炉が出来たら、レンガ料理台も作るか。作らないといけないものが多いな。俺は料理用たき火を叩いて壊し、ポーチに入れておいた。
調理部屋から外に出て、俺は1時間くらい待っていた。そして、ついに神鉄炉が完成したようで、ゆきのへとヘイザンが作業部屋から出てきた。
「雄也、神鉄炉が完成したぜ!今日も朝早くから作業を始めて、やっと終わった」
「さっそく見に来てくれ」
二人に言われて、俺は作業部屋の中に入る。部屋の奥のほうの、炉と金床があった場所には、黒く輝く神鉄炉と金床が置かれていた。
しかも、その輝きは俺がメルキドで作ったものとは違い、なんと言うか、職人の魂が感じられた。
「すごいな、この神鉄炉。俺が作ったのと全然違う」
俺がその神鉄炉に見とれていると、後ろからゆきのへに話しかけられた。
「ワシとヘイザンが一日かけて作ったものだ。これを使って、どんな魔物にも対抗できる武器を作ってくれよ」
「ああ、もちろんだ」
二人が頑張って作ってくれた神鉄炉だ。大事に扱って、役に立てるようにしないとな。
俺はさっそくその神鉄炉を使い、まずは持っている鉄を全て鉄のインゴットに加工した。はがねインゴットを作るのにも、鉄のインゴットがいるからな。
「先に、レンガ料理台と壁掛けを作るか」
そして、俺はまず鉄のインゴットを使うアイテムを作り始めた。
武器屋と防具屋のカベかけと、剣のカベかけ。それからレンガ料理台を作った。
「これでギエラの言ってた温泉のグレードアップができるな。今すぐ置いてくるか」
鋼の武器をいくつも作るのは時間がかかるので、先に温泉に飾りを置いてくることにした。途中、調理部屋に入ってレンガ料理台を置いた後、温泉へと向かう。
温泉の部屋に入ると、ギエラが温泉につかっていて、俺が来たのを見て話しかけた。
「もしかして、温泉に飾る飾りを作ってきたの?」
「ああ、これから中に置くから、待っていてくれ」
俺は飾りが出来たとギエラに伝え、温泉の左の壁に武器屋のカベかけ、右の壁に防具屋のカベかけ、奥の壁に剣のカベかけを設置した。
3つの壁掛けを設置し終えると、ギエラはとても喜んでいた。
「ありがとう、雄也!温泉を素敵に飾りたててくれたのね!」
ギエラのいる位置から見ると、3つの壁掛けが一度に見渡せた。俺は特に何も思わないが、荒くれ者にとっては士気が上がるのだろう。
「温泉はマイラの象徴でもあるの。温泉を立派にしておけば、アネゴも喜ぶはずよ!」
温泉はマイラの象徴か···マイラは温泉で発展した町だからな。アネゴも温泉が好きらしいし、喜ぶかもしれない。
「···アネゴはよく言ってたわ」
俺が温泉のことを考えていると、ギエラは何かを思い出すように言った。
「何を言っていたんだ?」
「武器の発明に行き詰まったら、温泉に入るとリラックスして、気分転換できるって」
そう言えば、アネゴは武器の発明もしていたって聞いていたな。救出した後は、一緒に強力な武器を作っていけたらいいな。
だけど、何でアネゴは武器の発明を始めるようになったんだ?荒くれ者のリーダーがそんなことをするとは、あまり思えない。
「アネゴは、何で武器の発明をしているんだ?」
「アネゴは昔、発明家の助手のようなことをしていたの。その発明家が残した、手がかりをヒントに、魔物を倒す武器や兵器の開発を進めてたってわけ」
アネゴは発明家の助手をしていたことがあったのか。その発明家本人に会えれば、武器の開発も進むだろうけど、残したって言い方からしてその発明家はもう死んでるんだろうな。その人がいたら心強いのに、残念だ。
「それで、強い兵器は作れたのか?」
「いいえ、物を作る力があるとは言え、アタシたちはそこまでのことは出来ないわ。でもアタシは、アネゴが魔物にさらわれた理由も、そこにあるんじゃないかって考えてるわ···」
いくら武器の知識があったとしても、物を作る力が失われたこの世界では意味がない。でも、魔物は物を作る力を失っていないから、アネゴから情報を聞きだそうとしていると考えられるな。
こうなると、早く助け出さないと魔物に情報が知れ渡ってしまう可能性がある。魔物がアネゴに対して拷問をしていることも考えられるからな。
「それなら、アネゴを急いで助けないと、魔物がさらに強力になるな」
「ええ。でも、アタシたちの準備は終わったわ。今日のうちに、アネゴ救出に行けそうね」
あとは俺が鋼の武器を作ればアネゴの救出に出発できる。俺はギエラとの話を終え、再び作業部屋に入っていった。
そして、神鉄炉でまず大量の鉄のインゴットを作り、それをさらにはがねインゴットに加工する。はがねインゴットは、鉄よりもきれいに輝いていて、とても固そうだった。
「あとはこれで俺のはがねのつるぎとみんなの分のウォーハンマーを作るか」
はがねインゴットができると、それを使ってはがねのつるぎ1個とウォーハンマー4個を作った。はがねインゴットを9個も使ったが、まだ余っているのでアネゴのための武器も作れそうだ。
これで鋼の武器が出来たし、アネゴ救出作戦の準備は全て完了だな。みんなに教えてきて、魔物の城に乗り込むか。
みんなにウォーハンマーを届けようと、作業部屋から出ると、またガロンが慌てて俺のところに走ってきた。
「おい、雄也!大変だぜっ!」
まさか、こんな時に襲撃が来たのか!?もうすぐアネゴの救出に行こうとしていたところなのに。
「もしかして、魔物が来たのか?」
「ああ、城に攻めこもうとしているオレたちを見て、魔物どもが先手を打ってきたみてえなんだ!」
確かに、魔物から見れば城に攻めこまれるわけにはいかない。なんとしても阻止したいのだろう。
町の西のほうから、よろいのきし4体、まどうし4体、そして隊長のあくまのきし1体の、合計9体が町に迫ってきていた。あくまのきしはマイラでは初めて見る魔物だ。魔物たちも本気を出してきたな。
「アネゴを助け出すために、ここは何としてもしのがなきゃならねえ!」
「ああ、分かってる」
ここはひとまず迎え撃ち、それからアネゴの救出に行かないとな。俺はいつものように大声で、みんなを呼んだ。
「みんな、またしても魔物が来たぞ!」
「せっかくアネゴの救出が出来そうだったのに、さっさと倒すぞ」
「アタシも、魔物の城を攻めるためにも、必ず勝たないといけないわ」
今日は、アネゴの救出が近いこともあってみんなもやる気が高かった。それに、俺の作ったウォーハンマーがあるからな。
「みんな、このウォーハンマーを使ってくれ」
俺はゆきのへ、ベイパー、ギエラに一つずつウォーハンマーを渡す。ベイパーとギエラは、ウォーハンマーのことを知らないようで、聞いてきた。
「何だこのハンマーは?おおかなづちとは違うな」
「アタシも、見たことないわ。でも、おおかなづちより強そうね」
「それはワシらが作った神鉄炉で雄也が作った、ウォーハンマーってもんだ。おおかなづちよりずっと強いぜ」
俺が答えようとしたが、先にゆきのへが答えた。おおかなづちより強いと聞いて、二人もウォーハンマーで戦ってくれるようだ。ガロンは今回も戦わないだろうから、もう放っておくことにした。
俺たちが話をしていると、魔物たちは町のすぐそばに迫っていた。俺たちは武器を構え、その魔物の群れへと向かっていく。マイラの町の4回目の防衛戦が始まった。
「今回も魔物どもを斬り裂いてやるか」
俺は右手にはがねのつるぎ、左手にウォーハンマーを持ち、前衛のよろいのきしに斬りかかる。
よろいのきしは受け止めようとしたが、鋼の武器には敵わす、持っていた斧を落として体勢を崩した。
「まさか人間が、鋼鉄の武器を持っているだと!?」
よろいのきしたちは、俺たちが鋼の武器を持っていることは想定外だったようだ。まあ、分かっていたらメルキドの防衛戦のように、もっと大軍を連れてきたはずだな。
何とか反撃しようと、よろいのきしは盾を使い、俺のはがねのつるぎでの攻撃を受け止める。
「それくらいの盾で、受け止められると思うなよ!」
俺の攻撃を防いだ後、よろいのきしは斧を拾うつもりだったが、俺は左手に持ったウォーハンマーで盾を殴り、ひびを入れさせた。
「くっ!なんて威力だ!」
俺のウォーハンマーの衝撃が腕に伝わり、よろいのきしは怯む。
ゆきのへたちも、よろいのきしに有利に戦っていた。
「鋼の武器の力を思い知るんだな!」
「アネゴ救出の邪魔はさせぬぞ!」
「アンタたち、一人残らず叩き潰すわよ!」
3人ともウォーハンマーを力強く振り回し、よろいのきしの体を殴り付けていた。
ベイパーとギエラの筋肉の力で振り回されたウォーハンマーの威力は、俺の攻撃より遥かに高く、鎧を変形させ、斧や盾を砕いていた。
「なんだこの筋肉野郎どもは!?」
「くそっ、強すぎるぞ!」
みんなもよろいのきしを追い詰めていて、俺も止めをさそうと、怯んだよろいのきしにはがねのつるぎを突き刺そうとした。
だが、よろいのきしの背後には、俺たちの邪魔をする者がいた。
「我らの仲間に手を出すな、人間!メラ!」
4体のまどうしが、俺たちに向かってメラの魔法を放ってきた。俺はかわしきれないと思い、はがねのつるぎで魔法を防ぐ。
ゆきのへたちも、よろいのきしへの攻撃を中断せざるは得なくなった。
「あのまどうしを何とかしないといけないわね」
「ああ、叩き潰すぞ!」
まずはまどうしを倒さないと、他の奴を倒すのは難しそうだ。ギエラとベイパーは、ボロボロになっているよろいのきしから離れ、まどうしのところに向かった。まどうしは防御力は低いので、筋肉の力なら一撃で倒せるかもしれない。
しかし、その二人の前に、隊長のあくまのきしが立ち塞がった。
「人間め、本当に目障りなんだよ!」
あくまのきしは斧を横に一閃させ、ベイパーとギエラをなぎ払おうとする。もちろん二人はウォーハンマーを使って防ぎ、あくまのきしに反撃しようとする。
だが、またしてもまどうしが邪魔をしてきた。
「隊長には触れさせぬぞ!」
さすがの荒くれでも、一度に大量の炎が飛んできたら防げず、避けるしかない。
「どうだ、まどうしの力を思い知ったか!」
そして、まどうしに守られたあくまのきしは二人を叩き斬ろうと、斧を降り下ろす。
それでも、ウォーハンマーで弾き返しながらまどうしのメラを避け、少しずつあくまのきしの斧を破壊していった。
「俺はあのまどうしどもを倒すか」
あのまどうしの邪魔がなければ、二人ならすぐにあくまのきしを倒せるはずだ。俺がまどうしのところに向かおうとすると、瀕死のよろいのきしがどうにか俺を止めようと、たち塞がってくる。
斧も盾も砕かれたよろいのきしは、俺を腕で殴り付けてくる。だが、武器もないのに勝てるはずはない。それに、まどうしたちはあくまのきしを守るのに精一杯で、よろいのきしを守ることは出来なかった。
俺はよろいのきしたちの腕をはがねのつるぎで斬り落としていき、最後に剣を一回転させ、4体のよろいのきしの胴体を真っ二つにした。
「回転斬り!」
よろいのきしを全て倒すと、俺はまどうしたちに斬りかかっていく。すでにゆきのへがまどうしと戦っていて、残り3体になっていた。
「俺たちの邪魔はさせないぞ!」
俺は一番左にいたまどうしに向かって近づいていく。まどうしはそれに気づいて、メラを放ってくるが、遠距離だったので簡単に避けられた。
「うっとうしいビルダーだ。メラ!」
「その距離で当たると思ってるのか?
」
俺はメラをかわした後、ダッシュでまどうしに近づき、剣を降り下ろす。
となりのまどうしはそれに気づき、止めようとするが、ゆきのへに叩き潰された。
「ワシらを倒そうとすると、こうなるんだぜ」
そして、俺の目の前にいたまどうしははがねのつるぎで斬り裂かれ、死んでいった。まどうしは残り一体になり、俺は同じような方法で倒した。
これで、9体いたはずの魔物は、あくまのきし一体だけになっていた。
「何っ!?まどうしが全て倒されただと!?」
あくまのきしは自分を守ってくれるまどうしが全ていなくなり、さらに荒くれの二人に囲まれ、大ピンチになっていた。
「くそっ、こうなったら人間が鋼の武器を持っていることを報告して、援軍を呼ぶか」
追い詰められたあくまのきしは、他の魔物に報告するために逃げ出そうとした。
どうせは鋼の武器を持っていることを知られるが、今知られたらアネゴの救出が難しくなる。
「逃がすかよ!」
俺は走り出したあくまのきしの首に向かって、はがねのつるぎを投げつけた。
「ぐはあああっ!」
少し首からずれたが、はがねのつるぎはあくまのきしの体を貫き、生命力を消し去った。あくまのきしは援軍を呼ぶことは叶わず、倒れた。
「雄也、逃がしてしまうところだったが、ありがとうな」
「これで今度こそ、アネゴの救出に向かえるわね」
みんなはアネゴの救出作戦を始めるため、町の中に戻っていった。俺も、はがねのつるぎを拾ってから、戻った。