ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode5 おおきづちの里

防衛戦の日の夜、俺は不思議な夢を見た。夢の中に出てきた兵士は、俺ではない誰かと話していた。

 

「え?何ですって?王様の話を忘れた?」

 

夢の中の誰かは、王様に何らかの命令をされたが、その内容を忘れてしまったようだ。

 

「仕方ないですね。私からもう一度言います。その昔、伝説の勇者ロトは神から光の玉をさずかり、この世界を覆っていた魔物たちを封じ込めたと伝えられています」

 

ロトが伝説として語りつがれていると言うことは、ゾーマが倒されてからかなり時間がたっているようだ。次の兵士の発言で、誰が話していたのかが分かった。

 

「しかし、どこからか現れた悪の化身、竜王がその玉を闇に閉ざしてしまったのです。このままでは、世界は再び闇に覆われ、滅びてしまうでしょう。竜王を倒し、光の玉を取り戻す。それがあなたの使命なのです!」

 

竜王の討伐を命じられているということは兵士と話しているのは間違いなくゲームでいうドラクエ1の主人公、勇者になるはずだったのに裏切った戦士だ。

夢の続きを見ていると、兵士が戦士に希望をたくしていると話をする。

 

「国中の人々があなたに希望を託しています。どうか竜王を倒しこの世界を救って下さい。」

 

こんなに期待されているのならば、竜王を倒して世界を救ったほうが絶対良かったのに、どうして裏切ったのだろう。

そこで夢は終わり、俺の意識は現実に戻される。

 

「何だったんだ、あの夢は?」

 

過去の誰かの記憶を夢に見るなんて初めてだ。これもビルダーの力なのだろうか。

目覚めると朝になっていた。今日は旅のとびらの先を探索する日だ。俺は準備をしに工房に向かった。夜寝るときに武器を持っていると邪魔になるので、寝るときは武器は工房にしまっている。

 

「まだ町の人口は3人のままか」

 

ゲームであれば竜王軍バトル、すなわち防衛戦に勝つと、ロッシという口の悪い青年がやってくる。しかし、昨日も今日も、ロッシは現れていない。ロッシはゲームにしかいないのか、死んだのか、まだ来ていないのかのどれかだろう。口の悪い奴だったとしても、町の役に立ってくれれば俺は構わない。

 

「まあ、ロッシは役にたつか分からないけどな」

 

体験版ではロッシは少し出てくるだけで、どんな性格なのかは分からない。ロッシのことも気になるが、とりあえず俺は工房に入った。

 

「雄也よ、起きてきたか。今日はいよいよ旅のとびらの先を探索するのだな?」

 

「ああ、新しい素材をてに入れられるかもしれないしな」

 

「そこでだ雄也、お主に頼みたいことがある」

 

頼みたいこと?いったい何だろう。探索ついでにしておくか。

 

「頼みたいことって?」

 

「昨日、旅のとびらは求めている物がある場所に繋がるという話はしただろ?」

 

そういえば、そんな話をしていたな。

 

「その性質を使って、お主にはビルダーの証とも言える武器、おおきづちの作り方を調べてきてほしいのだ」

 

ゲームでもそんな依頼があったけど、旅のとびらに入ると続きは製品版でとか言われて、結局作れないんだよな。

 

「メルキド録によると、おおきづちを使うとこれまで固くて壊せなかった木や岩も壊せるという。」

 

確かに木や岩を素材に出来るようになったら作ることのできる物も一気に増えるだろう。メルキド録には、そこまで細かく武器の性能が書かれているのか。俺も読みたいけど、失われた古代の文字で書かれてるから無理なんだよな。

 

「おおきづちの作り方は、その名のとおり、魔物のおおきづちが知っているはずだ。おおきづちの作り方を探って、我輩たちにも教えてほしいのだ」

 

「でも、何で急にそんなことを頼んで来たんだ?」

 

「我輩は町作りに協力すると言ったものの、たいした素材をとることも出来てないだろう?だから強い武器でたくさんの素材が取れるようになれば、町作りに貢献できると思ってな」

 

メルキド録の解読も行っているし、ロロンドは十分に役立っていると思うが。本人にとっては、まだ足りないらしい。

 

「作り方が分かったら教えるぞ。でも、魔物からどうやって情報を聞き出すんだ?脅迫して吐かせるのか?」

 

メタルギアのスネークのように喉にナイフをあてれば教えてくれるかもしれないが、ナイフのような鋭い武器は持っていない。棍棒では喉は切れないので、脅しには使えないだろう。

 

「いや。実はおおきづちというのは人間に友好的な魔物でな。普通に話すことも出来るだろう。」

 

そうなのか?他のドラクエシリーズではおおきづちは普通に敵だった気がするが。というか人間に友好的な魔物がいること自体、初めて知った。

 

「じゃあ作り方を教えて貰えるかもしれないな。そろそろ行くか」

 

出発前に、ロロンドには食料集めを頼んでおくことにした。

 

「ロロンドは俺がおおきづちの作り方を調べている間、ピリンと一緒に食料を集めておいてくれ。今は食料も足りてるけど、これから町の住民が増えたらすぐに無くなる。その前に補充しておきたいんだ。」

 

「任せておけ。そっちも頑張るのだぞ」

 

お互いに頼みごとをし、俺はいよいよ旅のとびらに入った。旅のとびらに入ると、一瞬目の前が真っ白になったが、すぐに土ブロックでできた荒れ地のような場所についた。

 

「ここが旅のとびらの先か」

 

移動した地点にも旅のとびらがあり、そこから町に帰れるようだ。俺は探索を始める前にまずまわりを見回した。すると、ここは崖や高低差が多い険しい山岳地帯であることが分かった。今いる場所の標高も町より高い。

 

「険しい場所だな。調べるのが難しそうだ」

 

大変そうな場所だが、俺は探索を始めた。そこで初めて見た魔物は、おおきづちではなくスライムの色ちがい、スライムベスだった。生息している魔物も町の近くとは異なるようだ。

 

「スライムが青い油を落としたってことは、こいつも油を落とすかもしれないな。」

 

俺はスライムベスに近づき棍棒で殴る。スライムより耐久力は高いが、攻撃スピードはほぼ同じで動きも単純なので、数回殴ってあっさりと倒すことができた。所詮はスライムの色違いだな。スライムベスを倒した所を見るとやはり油が落ちていた。あっちが青い油だから、こっちは赤い油だろう。ゲームと違って勝手に名前が出るわけではないので正式名称は不明だが、おそらくは赤い油だろう。オレンジの油って何か変だしな。俺は赤い油を集めながら、先へと進んでいった。途中、少し気になる建物があった。

 

「なんだあれ?誰か住んでいるのか?」

 

家のようだが、入り口に扉がない。そして、建物の前には看板が書いてあった。その看板を読んでみると、おおきづちの里 案内所と書かれていた。

 

「ここにおおきづちがいるのか。案内所って書いてあるし入ってみるか」

 

俺は案内所の中へ入った。中にはおおきづちが一匹いて、俺が入って来たことでとても驚いていた。

 

「お、お前は人間じゃないか。さも当然って顔で入ってくるとは向こう見ずというか大胆というか···」

 

「案内所って書いてあったから入って来たんだけどな。聞きたいことがあって」

 

「ま、まあいいさ。おれは昔から人間が嫌いじゃない。聞きたいことって何だ?」

 

最初話を聞く気がないのかと思ったが、ちゃんと聞いてくれるようだ。

 

「おおきづちの作り方を教えて欲しいんだけど、知ってるか?」

 

するとおおきづちは俺はまじめに聞いているのに変なことを言い出した。

 

「お、お前はなんてえっちな質問をするやつなんだ!?」

 

俺はただおおきづちの作り方を聞きにきただけなのに、何でえっちなんて言われるんだ?そこまで考えたところで気づいた。どうやらこいつは俺が武器のおおきづちの作り方ではなく、魔物のおおきづちの作り方を聞いたのだと誤解してしまったようだ。

 

「そうじゃなくて、俺が聞いているのは武器のおおきづちの作り方だ」

 

「な、なんだそっちのほうか。急に子供の作り方を聞かれたかと思ってびっくりしたぜ。」

 

だが、魔物もそうやって増えることを知れて良かったのかもしれないが。

 

「それなら、この先の家に住むおおきづちの長老が知っているはずだぜ。長老の家は屋根にかがり火が置いてあるから、それを目印に探してくれ」

 

「教えてくれてありがとう。じゃあな」

 

情報を聞くことが出来たので、案内所を去ろうとした俺に、おおきづちは何かを渡して来た。

 

「ほらよ、人間これをやる。おれからのお近づきのしるしってやつだ」

 

それは案内所のものと同じ形の何も書いていない看板だった。別に使用することは無さそうだが、せっかくくれたものなので受けとることした。

 

「さて、長老の家は何処だ?かがり火が置いてあるって言ってたけど」

 

案内所を出てからまわりを見ると、100メートルほど離れた場所にかがり火のある大きな家が見えた。その家までは、歩いて一分ちょっとで移動することができた。その途中、案内所や大きな家の壁に張り付いているつたを見つけた。

 

「つたか···結構丈夫だし頑丈なひもが作れるかもな。」

 

ひもを思い付いた所で、収納箱にひもをつけることで持ち運べるようにする持ち運び収納箱も思い付いた。俺はひもと持ち運び収納箱の作り方をビルダーの魔法で確認する。どうやらひもはつた3個、持ち運び収納箱は収納箱とひもを一つずつで作れるようだ。持ち運び収納箱はロロンドたちに渡し、みんなが液体の物や大量の物を回収できるようにしよう。俺はつたを10個くらい集め、ポーチに入れた。

 

「あれ、何か入りにくいな?」

 

魔法のポーチにも容量の限界があるらしく、そろそろいっぱいになるようだ。帰ったら収納箱に入れておこう。

俺は長老の家に入る前にあることを思い付いた。おおきづちの作り方を魔法で調べれば、聞きに行かなくてもいいんじゃないか?

本当に出来るか分からないが俺は試してみた。しかし、おおきづちの作り方は分からなかった。

 

「あれ、素材が浮かばないな。何でだ?」

 

その時、ルビスの声が聞こえてきた。

 

「ビルダーの魔法は、形が分かっている物にしか発動しないのです。あなたはまだおおきづちの形を知らないでしょう」

 

そう言うことか、俺はおおきづちの形状は全く知らない。やはり長老に聞くしかないな。俺は大きな家の中に入った。そこには普通のおおきづちより体の大きなおおきづちが住んでいた。

 

「お主、人の子か···?」

 

大きなおおきづちは俺に話しかけてきた。こいつがおおきづちの長老だろう。

 

「そうだ。あんたがおおきづちの長老なのか?」

 

「いかにもわしがおおきづちの長老だが。人間よ、何か用か?」

 

俺はさっそく長老におおきづちの作り方を聞いた。

 

「おおきづちの作り方を教えてほしい。案内所のおおきづちが長老なら作り方を知ってると言ってたんだ。」

 

「それなら、まずはいきのよいぴちぴちとしたおおきづちをはらばいにして···」

 

何言ってんだこいつ?またおおきづちの子供の作り方と間違えられたのか。俺は思春期の男子なのでそっちにも興味はあるが今は聞く必要はない。

 

「さっきも誤解を受けたんだが、俺が聞きたいのは武器のほうのおおきづちだ」

 

「おぬしが聞きたいのはそっちのほうか。だが、おおきづちは我らが秘宝。作り方はそう簡単には教えられぬな」

 

教えてくれないのか。やっぱり、脅迫して聞き出したほうがいいのか?いや、今は平和的に解決しよう。

 

「何とか教えて貰えないか?」

 

「ならこうしよう。この家の天井に3つ穴があいていてな。それを埋めてくれたらおおきづちの作り方を教えてやろう」

 

交換条件ってことだな。天井を見てみると、確かに穴が空いていた。天井の修理か、そのくらいならお安いご用だ。

 

「任せてくれ、今すぐ天井を直す。」

 

俺は家の屋根に登り、土ブロックを3つ取り出して穴を埋める。そろそろ土ブロックも少なくなってきたので補充しないといけない。穴を埋め終わり、長老のところへ戻ろうとすると屋根に町にあるのと同じタイプの石の作業台があるのを見つけた。作り方を教えて貰ったらここでおおきづちを作ろう。

 

「天井を修理したぞ、これでいいか?」

 

「天井の修理を、いとも簡単にやってのけるとは、お主、もしかして伝説のビルダーか?」

 

そうだ。と言おうとした所でおおきづちの長老は俺の言葉をふさいだ。

 

「いや、なんでもない。わしは聞かなかったことにしよう」

 

他の魔物にビルダーを隠していることがバレたらただじゃすまないからな。俺も言うのは止めた。

 

「人間は昔は強い存在であったが今は力を失い滅びを待つ存在。かたや我々はその数を増やす一方だ。」

 

竜王のせいで、人間は衰退していった。奴は一体何を考えているのだろうか。

 

「確かに人間が増えすぎても困ることは確かじゃ。しかし、このままでは世界の調和というものが···」

 

人間が増えすぎると困るか···味方であるはずのおおきづちがそんなことを言うなんて意外だ。彼らと他の魔物の違いは、人間と魔物のバランスを考えているかいないかの違いということか。まあ、地球で育った俺から見ても人間が増えすぎると困るというのは分かる。地球では人口爆発とやらで人類が増えすぎて環境が破壊されたり食料が無くなったりしている。そう考えると、その意見も分かる。

 

「よし、竜王様には言えぬが、ほんの少しだけお主のことを助けてやろう。約束であった。おおきづちの作り方を教えてやるぞ」

 

おおきづちの長老は自分の意見を言った後、おおきづちの作り方を教えてくれた。太い枝2本を加工し持ち手の部分と攻撃する部分を作り、その2つをくっ付けるらしい。くっつけるなら、ひもが要りそうだな。形なども分かったので、魔法で作る時の素材も調べた。すると、太い枝3本と出た。手動と自動では必要な素材が違うようだ。

 

「ありがとうな、おおきづちの長老」

 

「がんばるんだぞ、人の子よ。」

 

俺はおおきづちの長老と別れた後、屋根の石の作業台でまずおおきづち3つを作った。その次にひもと収納箱を作る。ひもは作ると一度に10個完成した。ピリンとロロンドの分の持ち運び収納箱を作ってもまだ8個ある。

俺はおおきづちと持ち運び収納箱を作り、メルキドの町に戻った。

 

「ロロンド!おおきづちを作ってきたぞ」

 

ロロンドたちは沢山取ってきた食料を調理部屋の収納箱に入れていたが、俺の声を聞くと、すぐさま走ってきた。

 

「そ、それは本当か、早く見せてくれ」

 

「どんなのを作ったの?」

 

俺はピリンとロロンドにおおきづちを渡した。ピリンは戦闘は出来なくても採掘などは出来るだろう。

 

「こ、これがおおきづちか、素晴らしいぞ!これでもっと町を発展させられるぞ!」

 

いつもテンションの高いロロンドだが、今はさらに盛り上がっていた。

 

「あと、二人も沢山の素材を回収できるよう。持ち運べる収納箱を作ってきた」

 

「本当に?見せて見せて!」

 

頼まれてはいないが作ってきた道具、持ち運び収納箱も二人に見せた。

 

「まさかこんなものまで作ってきてくれるとはな!これで我輩ももっと活躍できるぞ。そうだ、今度みんなで旅のとびらの先に素材を取りに行かないか?」

 

ロロンドは喜んで、このさきのことまで提案していた。あと、俺は二人におおきづちの作り方を教えた。自分で作ったほうがよりものを作る力を取り戻せるだろう。俺は長老に教わったことを伝えた。

 

「もしおおきづちが壊れたりしたら、自分でも作ってみてくれ」

 

「ああ、お主に任せっきりなのもいかんからな!」

 

俺たちはおおきづちを手に入れ、少しずつ強くなってきていた。


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