ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode58 炎の魔導師

俺たちは、ギエラを救出した後、1時間くらい歩いて、町に戻った。かなり時間が経ったが、まだ夕方にもなっていなかった。

 

「ありがとう、アンタのおかげでやっとアジトに帰ってこれたわ!」

 

ギエラは、アジトであるマイラの町に帰ってくることが出来て、とても喜んでいる。ベイパーと同じで、ギエラも長い間帰ってこれなかったからな、その気持ちも分かる。

 

「俺だけじゃなくて、ベイパーのおかげだ」

 

「分かってるわ。二人とも、本当にありがとう」

 

俺とベイパーが救出に行っていなければ、ギエラは魔物に殺されるか、そのまま衰弱していくかで死んでいたかもしれない。ギエラは頼れそうな人だし、助けられて良かったぜ。

あと、帰ってきてすぐに、お風呂に入りたいと言った。

 

「帰ってきたところだし、さっそく温泉に入りたいわね···でも、温泉は魔物に壊されたし」

 

いや、温泉はとっくに直ってるぞ。ギエラは捕まっていて、町を復興していることを知らないようだ。

 

「温泉なら俺が直した。いつでも入っていいぞ」

 

「えっ、本当?」

 

俺の話を聞き、ギエラは温泉がある部屋を確認しに行く。そして、温泉が修理されているのを見て、驚いていた。

 

「スゴい、こんなに素敵に修理されてるのね···ガロンやベイパーの力じゃ、ああは行かない」

 

マイラでは、物作りの力を取り戻しているらしいけど、やっぱり完全ではないんだな。

完全に力を取り戻すには、マイラの空の闇を晴らすしかないのだろう。

 

「俺はビルダーだからな。それくらいは出来る」

 

「やっぱりそうなのね!どう考えても、アンタは本物のビルダーだわ!」

 

ギエラはビルダーのことを知っているどころか、すぐに俺のことだと信じてくれた。筋肉だのボディビルダーだの言っている二人とは大違いだ。

さらに、ギエラは俺のこれまでの活躍のことも知っていた。

 

「メルキドの再興や、リムルダールの浄化は、ビルダーがそのきっかけを作った···そして、ビルダーによって失っていた物を作る力を取り戻して行った」

 

完全に復興することや、リムルダールの全域を浄化することは、気の遠くなるような時間がかかるだろうし、可能なのかも分からないけど、人々が物を作る力を取り戻したことは確かだ。

だから今、ピリンやゆきのへやヘイザンは、俺と一緒に物を作っている。

 

「あんたの言う通り、俺たちでメルキドとリムルダールの空の闇を晴らした」

 

「良かった。ボディ的なビルダーしかいないこのアジトに、本物のビルダーが来てくれるなんて!」

 

確かに、この地方で出会った人は筋肉だらけの荒くれものしかいない。その荒くれたちも、それ以外の人々には出会わなかったのか。

ビルダーが来たことによって、マイラの復興が進むと、ギエラは嬉しそうに言った。

 

「これできっと、アネゴを助け出せる!そして、マイラを支配する魔物の親玉も倒せるわね!」

 

「ああ、一緒に頑張ろうな、ギエラ」

 

ギエラが加わって、この町の戦力はさらに上がる。強い魔物が攻めてきても、対処しやすくなるだろう。

それにしても、ビルダーのことを知っていたり、オカマ口調だったりしたから、アネゴ=ギエラかと一瞬思ったけど、違うのか。

アネゴ救出には、まだ時間がかかるみたいだな。だが、ギエラはアネゴに関する重要な情報を持っていた。

 

「実は、アタシね···連れ去られたアネゴがどこにいるか、一つ心当たりがあるの···」

 

アネゴの居場所を知っているだと!?それが分かれば、助けに行けるぞ。

それで、俺とギエラの会話を聞いているだけだったベイパーも、アネゴのことになると、気になって聞いてきた。しかも、他のところにいたガロンも、アネゴの居場所という言葉を聞き、走って駆けつけてきた。

「ギエラ、本当なのか!?だったら、どこにいると言うんだ?」

 

「ギエラ、帰ってきたのか!それで、アネゴはどこにいるってんだ?」

 

アネゴの居場所は、俺も気になる。俺とガロンとベイパーは、アネゴの居場所を強く尋ねた。

しかし、ギエラは教えてくれず、温泉に行こうとした。

 

「でも、その前に!一度お風呂に入らせて!あふれでる雄汁が身体をつたってもう限界よ!」

 

は!?アネゴのことより温泉のほうが大事なのか?それに、雄汁とか変に聞こえるようなことを言ったり、ギエラは実は変態なのかもしれない。

別に俺も少しは変態なので、気にすることではないが、アネゴより温泉を優先するのはどうかと思う。

しかも、ガロンとベイパーもそれで納得していた。

 

「分かったぜ。まずは、温泉に入ってきな!」

 

「アネゴの居場所については、後で聞くぞ」

 

ガロンとベイパーも、温泉のことを第一に考えているようだ。やっぱり、荒くれの考えにはついていけないな。

俺はギエラが温泉に入っている間に、ガロンと話をした。

 

「さっきは言えなかったが、ギエラを救出してくれてありがとな!」

 

「別に気にすることはない。ビルダーとして当然のことだからな」

 

ガロンは俺に、まだ言っていなかった感謝の言葉を言った。俺とベイパーの力で助けたが、やっぱりガロンも来てくれたらいいのに。

俺はそんなことを思っているが、ガロンはギエラについての話を続ける。

 

「ギエラは、あんな口調だが一番の情報通だ。気になることがあれば、気軽に聞いてみな! 」

 

ギエラが情報通か···あいつだけビルダーのことを知っていたし、納得が行くな。俺はガロンよりも、ギエラとの方が気が合いそうな気がする。

何よりも、ガロンは怖がってついてきてくれなかったからな。

 

「話を変えるけど、何で仲間が危険などに、あんたは助けにいかなかったんだ?」

 

俺が問い詰めると、ガロンはいつもの仮病で言い逃れをしようとした。

 

「何度も言わせんな!オレはこのアジトから出ると鼻血が止まらなくなる奇病なんだ!べべべ、別に怖い訳じゃねえ!勘違いするなよ!」

 

アジトから出たら鼻血が止まらなくなる奇病とか、幼児でももっとまともな仮病を考えそうだな。それに、前はじんましんといっていたのに、鼻血に変わっている。

 

「そんなの嘘に決まっているだろ。正直に言え」

 

「だから怖い訳じゃねえって言ってるだろ!そんな話はどうでもいい、オレから大事な話がある」

 

俺が何を言っても、ガロンは魔物が怖いと認めようとしなかった。しかも、隠すためにいきなり別の話をし始めた。

 

「じゃあ、大事な話って何だ?」

 

「実はな···このマイラを支配する魔物の親玉、ようがんまじんの手下に、フレイムってのがいる」

フレイム···確か、燃える炎のような形をしたモンスターだったな。魔物の情報はありがたいが、そこまで大事な話でもないだろう。

結局は、俺の質問に言い逃れしたかっただけだろう。

しかし、ガロンはフレイムに関する重要なことを言った。

 

「今のオレたちの装備じゃ、そのフレイムすら倒すことができねえんだ···」

 

フレイムは燃える炎だから、実体がないので斬れないということだろう。もし出会っても、戦わずに逃げないといけないな。

 

「じゃあ、フレイムはどうしたら倒せるんだ?」

 

「それは分からねえ。だからよ、オマエにはフレイムを倒せる強力な武器も一緒に開発して欲しいんだ」

フレイムは、一体どうしたら倒せるんだろう。俺にもまったく思い付かない。

 

「今はどうすればいいか分からないけど、何とか考えてみる」

 

俺はそこでガロンと別れ、ギエラの武器を作るために作業部屋に入った。

 

「多分ギエラも、ハンマーを使うだろうな」

 

荒くれが剣を使うイメージはないし、筋肉の力はハンマーのほうがいかしやすいだろうから、ギエラも戦いの時はハンマーを使うはずだ。

なので俺は、銅のインゴット2個を使ってどうのかなづちを作った。

 

「あいつが温泉からあがったら渡しておくか」

 

ギエラには、アネゴの居場所の話を聞くときに渡そう。まだしばらく、温泉につかっているだろうから、待っているか。

そして、作業部屋で待って5分くらい経って、ガロンが中に慌てて入ってきた。

 

「雄也、大変だぜ!また魔物どもが攻めてきやがった!」

 

ガロンの慌て方からして、魔物の襲撃だと思ったけど、やはりそうだったか。

昨日も襲撃があったのに、今日も来たのかよ。

 

「分かった。みんなに知らせるぞ」

 

俺は作業部屋から出て、外の様子を見る。すると、これまでと同じ町の南から、てつのさそりが4体、よろいのきしが2体いた。

だが、今回はそれだけではなかった。町の西の方から、隊長の大きなまどうしと、そいつに操られているガロンが言っていた魔物、フレイムが4体もいた。

 

「みんな!今日も魔物が来たみたいだ。迎え撃つぞ!」

 

俺のかけ声で、ゆきのへが寝室から、ベイパーが調理部屋から、ギエラが温泉から飛び出してくる。

 

「今日も魔物か···どんだけ頻度が高いんだ?」

 

「せっかくメシを食っていたと言うのに、襲撃か」

 

「もっと温泉につかっていたかったのに、魔物ども、許さないわよ」

 

ギエラも来たので、俺はどうのかなづちを渡した。

 

「ギエラ、これを使ってくれ」

 

「ありがとう、雄也。ありがたく使わせてもらうわよ」

 

ギエラもどうのかなづちが気に入ったようで、今から使ってくれそうだ。

そこに、ガロンが出てきて、フレイムの話を始めた。

 

「オマエたち、今回はちょっと厄介だぞ。燃え盛る炎を魔物、フレイムには攻撃は効かない。そいつを操っているまどうしを倒すんだ!」

 

まどうしを倒せば、フレイムも消えるってことか。だが、まどうしに近づくのはかな難しいだろうな。敵も、ビルダーが来たことを感じとっているようだ。

 

「分かった。今日もこの町を守り抜くぞ」

 

俺のかけ声でみんなが武器を構え、マイラの町の3回目の防衛戦が始まった。

 

よろいのきしたちは南から、まどうしたちは西から来ていて、このままだと挟み撃ちにされそうだった。

分担して戦うほうが良さそうだな。

 

「みんな、二手に別れて戦うぞ。このままだと挟み撃ちにされる」

 

俺が二手に別れることを提案すると、荒くれのベイパーとギエラはまどうしのほうに向かって行った。

 

「ならワシは、危険なフレイムのほうにいくぜ」

 

「アタシもよ。魔物たちに力を見せつけてやりましょう」

 

なら俺とゆきのへは、よろいのきしとてつのさそりを倒さないといけないな。

 

「ゆきのへ、俺たちはよろいのきし共を倒すぞ」

 

「ああ!数は多いが、必ず勝てるはずだ」

 

俺とゆきのへは、この前と同じように2体ずつ相手をすることになった。今回は二刀流で戦うので、かなり楽になるだろう。

「何度来られようと同じだ。叩き潰してやる!」

 

俺は両側から来る攻撃を受け止め、そのまま弾き返す。いくら銅でできた武器だとはいえ、力をこめて叩きつければ、てつのさそりでも倒せるはずだ。

攻撃を弾きかえされ、怯んだてつのさそりたちに、俺は回転斬りを放った。

 

「回転斬り!」

 

武器を二本持っているので、回転斬りの威力も二本分になる。てつのさそりは顔を斬り裂かれて、さらに叩き潰された。

 

「かなり弱らせたはずだけど、まだ倒れないはずだ」

 

俺の予想通り、てつのさそりは大ダメージを負っていたが、体が鉄でできているため、そう簡単には死ななかった。

他のみんなも、まだ一体も敵を倒せてはいない。

ゆきのへはてつのさそりの動きに慣れ、攻撃をかわしながらどうのかなづちで頭や足、尻尾を叩き潰していた。

 

「ワシらの町を壊そうとするなら、容赦なく叩き潰すぜ」

 

ゆきのへはメルキドの時から、町を守り抜こうと頑張っている。顔は怖いが、とても頼れる仲間だ。

マイラに来てもそれは変わらず、今もてつのさそりと戦っている。だが、てつのさそりはボロボロになりながらも、みきのへにハサミで抵抗していた。

ベイパーとギエラは、何とかフレイムを操るまどうしを倒そうとするが、まどうしのメラの魔法やたち塞がるフレイムによって、行く手を阻まれていた。

「フレイムを倒せないのに、どうやってまどうしに近づけばいいのだ?」

 

「アタシたちだけじゃ、フレイムを防ぐので精一杯ね」

 

フレイム4体に対して、ベイパーとギエラの二人だけで戦っている。このままだと、いつまで経ってもまどうしを倒せないな。

今のところ、誰も危険な状態にはなっていないが、早めに助けに行かないといけない。

俺は大きな傷を負い、死にかけているてつのさそりを倒そうとどうのつるぎとどうのかなづちを降り下ろす。

だが、そこによろいのきしが現れ、どうのつるぎでの攻撃を防いだ。

 

「まさかお前が伝説のビルダーだったとはな···我が殺してやろう!」

 

もう俺が伝説のビルダーだと言うことは、魔物にも知れ渡っているのか。だからこそ、フレイムという強力な魔物を送り込んだのだろう。

どうのかなづちで潰されたてつのさそりは倒れたが、もう一体のてつのさそりは体勢を立て直し、俺にハサミを降りおろした。

 

「クソッ、また体勢を立て直されてきまったか」

 

俺はてつのかなづちを振り回し、そのハサミを受け止める。その間に、よろいのきしが受け止められないように俺を攻撃しようとしたが、俺は先に気付き、後ろに飛ぶ。

 

「避けられたか、あれが来るぞ大防御!」

 

だが、避けた後俺が回転斬りを放つことも知っているようで、よろいのきしは大防御の姿勢を取る。大防御は、受けるダメージをほとんど無くす技だ。

いくら強力な回転斬りとはいえ、打ち破れないだろう。でも、てつのさそりは倒せるだろうから、俺は回転斬りを放とうとした。

 

「てつのさそりだけでも倒す!回転斬り!」

 

俺がてつのさそりの至近距離で回転斬りを放とうとして、よろいのきしは立ち塞がって攻撃を防ぐため、大防御を解除する。

だが、大防御を解除した後、てつのさそりを守る前に俺は力を解き放った。

威力はいつもより低いが、瀕死だったてつのさそりは倒れ、よろいのきしも怯んだ。

そして、そのよろいのきしの心臓にどうのつるぎを突き刺した。

 

「ぐはあっ!」

 

これで俺は、てつのさそりを2体、よろいのきしを1体倒した。

ゆきのへも、てつのさそりを2体とも倒し、今はもう片方のよろいのきしと戦っている。

 

「問題はフレイムとまどうしだな。攻撃が効かないんじゃ、どうすればいいんだ?」

 

ベイパーとギエラは、フレイムのせいで未だまどうしに近づくことが出来なかった。俺も正面から近づいても、焼き払われるだけだろう。

 

「まどうしが二人に集中している間に、後ろから襲うか」

 

まどうしはベイパーとギエラに集中しているので、気づかれずに後ろから襲えばよさそうだ。

俺はどうのつるぎを構え、足音を立てないようにまどうしの背後に忍び寄る。そして、どうのつるぎを突き刺そうとしたその瞬間だった。

「失せろ、メラ!」

 

突然まどうしが振り向き、俺に向かってメラの呪文を放つ。俺は至近距離にいたため、避けきることができず腕をやけどした。

 

「お前の気配など、簡単に感じとることができる。愚かな奴だ、ビルダーめ」

 

しかし、ここで負けられない。俺は痛む腕でなんとか剣を持ち、まどうしに斬りかかる。

 

「しつこい奴め、メラ!フレイムどもも、こいつを焼け!」

 

まどうしのメラはいつもなら普通にかわすことができる。だが、2体のフレイムが俺のところに来て、火を吐き出した。

 

「どうやったらまどうしを倒せるんだ?」

 

そう思っていたが、なんと、ベイパーとギエラがフレイムから離れて、こちらに向かってきていた。まどうしは2対2でも大丈夫だろうと思っていたようだが、荒くれたちは、そこまで弱くはない。

 

「よくもやってくれたな。ぶっ潰してやろうぞ!」

 

「アンタにもフレイムにも負けないわよ!」

 

戦力を俺に回してしまったのが失敗だったようだ。まあ、俺に戦力を回さなかったら、俺がまどうしを倒していたが。

まどうしは抵抗しようとメラを放つが、ベイパーはかわして、まどうしに突撃していく。

そして、ベイパーとギエラの同時の一撃で、まどうしは倒れていった。

 

「おお、苦戦したが、倒せたぞ!」

 

「強かったけど、勝ったわね」

 

荒くれ者って、町に隠れている人を除けばとても強い人だ。どうしてかって聞くと、どうせ筋肉の力だとか言うんだろうけど。

魔物の群れを全滅させ、みんなは町の中に戻って行った。まどうしが倒れたところを見ると、青色の旅のとびらが落ちていた。


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