ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode55 帰らない仲間

俺はガロンとの話を終えた後、ピリンたちの作ってくれた作業部屋に入って中を見てみた。さっきは中から見ただけで、中には入っていないからな。

作業部屋の中には、カベかけ松明がかけられていて、作業台も使いやすい場所に置き直されていた。

 

「結構きれいに整っているけど、収納箱を作っていなかったな」

 

その作業部屋には、これまでの町の作業部屋にあったような収納箱がなかった。あれは魔法の収納箱だから、ビルダーの俺じゃないと作れないので仕方ないが。

 

「素材でポーチが一杯になっても困るし、作っておくか。材料のふとい枝もすぐ近くにあるな」

 

俺は町のまわりで3つふとい枝を拾い、それを使って収納箱を作った。

これなら、ポーチが満タンになっても素材をとっておける。

 

「収納箱が出来たし、これで作業部屋が完成だな」

 

ゲームでは作業台、収納箱、灯りがあれば工房と言う部屋レシピになったはずだ。

現実では部屋レシピなんて存在しないが、灯りと収納箱があればかなり便利な作業部屋になる。

俺は収納箱を作った後、他には何か作る必要があるものはないかと考えていた。そんな時、ガロンが作業部屋の中に入り、俺にまた話しかけてきた。

 

「なあ、雄也。一日に何回も言って悪いんだが、また頼みがある」

 

「別にいいけど、何だ?」

 

俺はこれまでにも一日に何度も頼みごとをされたことがあるので、別に気にならず、ガロンの頼みを聞くことにした。

「バリケードもぶっ壊してきてくれたところだし、バリケードの先を調べてきてほしいんだ」

 

バリケードの先を調べるのは、当然だと思うから、いちいち頼まなくてもよくないか?

 

「もちろんそのつもりだ。別に頼まれなくても行ってたぞ」

 

「いや、ただ探索するんじゃなくて、倒れている仲間がいないか見てきてほしいんだ」

 

ガロンが頼みたいのは、仲間の救出だったのか。確かに、バリケードの先に逃げた仲間がいてもおかしくはない。それに、この地方は魔物が強力だし、早く見つけないと危ない。

 

「魔物に捕まっているアネゴを助けるためにも、仲間の協力ってのはものすごく重要だからな。しっかり仲間増やして、魔物との戦いに備えようぜ!」

アネゴを助けるのは大人数で突撃するよりもれ魔物に見つからないようにして、スネークのようにこっそり連れ出すほうがいいと思うのだが。難易度は高いが、そっちのほうが安全だ。

でも、魔物の襲撃も多いらしいし、やっぱり戦力の強化も大事だな。

 

「まあ、仲間は多いほうが魔物の軍団から町を守りやすくなるな。とにかく、あんたの仲間を探してくる」

 

「ああ、頼んだぜ、雄也!バリケードを抜けて、仲間を探し、助けてきてくれ!」

 

俺は人助けのためや、町の戦力を増やすために、ガロンの仲間を探しに出発した。バリケードの先にはいったことがないが、どんな場所なのだろうか。

 

「まずは、さっき行ったバリケードのところまで行かないといけないな」

 

俺は町から出て、バリケードに向かって歩き始めた。バリケードまではまっすぐ行って15分くらいだな。

スライムベスやいっかくうさぎは邪魔だが、そんなにたくさんいるわけでもないので、簡単に避けて進むことができた。

そして、岩山に着くと壊れたバリケードを通りすぎ、反対側に着いた。

 

「ここがバリケードの反対側か。広いところだな」

 

バリケードの反対側は、町の近くとは比べ物にならないほど広大な荒野が広がっていて、一番奥までは何キロメートルもあるだろう。

探索するのはかなり時間がかかりそうな広さだが、それ以外にも問題があった。

「それにしても、この荒野には強いモンスターだらけだな」

 

その荒野に住むモンスターは、弱いものではスライムだった。この地方に来てからは赤いスライムベスしか見ていないので、青いスライムは初めて見るな。

だが、スライム以外の魔物はどれも今の武器では太刀打ちできないような強力な魔物だらけだった。

町の近くにもいるいっかくうさぎだけてはなく、その上位種のアルミラージや、サソリ型のモンスターであるおおさそりやてつのさそりが生息している。

 

「見つかったら大変だな、砂漠の箱を使うか」

 

よろいのきしはおおきづちでギリギリ倒せたが、ここの魔物はさらに強いかもしれない。

俺は見つからないように、砂の草切れから作った砂漠の箱を被った。これなら、変な動きをしなければ見つからないだろう。

俺は姿を隠しながら、慎重に荒野の奥のほうに進んでいく。

途中、ドムドーラにもあった砂漠の植物を見つけた。

 

「サボテンか。マイラにもあったんだな」

 

サボテンがあるってことは、地面が土ブロックで出来ていても砂漠に近い環境なのかもしれない。

サボテンには、柱型のものと丸形のものの2種類があり、俺は両方におおきづちを叩きつけた。

 

「ドムドーラでは取ったことはなかったけど、どんな素材になるんだ?」

 

おおきづちを叩きつけられると、丸形のサボテンは果実のような物を落とし、柱型のサボテンはそのままスライスしたような形の素材になった。

「この果物みたいな奴は、食べられそうだな」

 

そう言えば、マイラに来てから食料がほとんどなく、俺たちは何も食べていなかった。腹が減っていたので、俺はサボテンの果実を食べてみた。

 

「結構うまいな、これ」

 

腹が減っていたからかもしれないが、そのサボテンの果実はとても美味しかった。みんなにも食べさせると良さそうなので、俺は丸形のサボテンをおおきづちで叩いて、果実を集めながら進んで行く。

 

「この砂漠にはうまいものがあって良かったな」

 

サボテンの果実には栄養がどのくらいあるかは分からないが、しばらくはこれで食料難をしのぐことになるだろう。

荒野を進み始めて30分くらい経ち、バリケードから1キロメートルくらい離れたところまで進むと、家のようなものが見えてきた。

 

「こんな所に家があるのか。誰かいるのか?」

 

その家は、レンガと土ブロックで組み立てられていて、一部壁が壊れていた。家の近くには、俺が最初の穴蔵で使ったきりかぶ作業台もあり、人が住んでいた痕跡があった。

その中にガロンの仲間がいるかもしれないので、俺はその家の中に入り、声をかけた。

 

「誰かいないのか?」

 

だが、返事はなく、人の姿もなかった。その家には人はいないようだが、一枚のメモのようなものが置かれていた。メルキドにもリムルダールにもあったメモが置いてある家が、マイラにもあったのか。

俺はそのメモの内容を読んだ。そのメモは俺と同じくらい汚い字で書かれていた。

 

魔物たちの攻撃からようやく立ち直り、アジトに帰ろうとしてはみたものの、アジトへの道が魔物に作られたバリケードによって塞がれていて、帰ることが出来ない。ワシ一度この先の鉱山に身を隠し、機会を伺うことにする。

 

内容から考えて、ガロンの仲間が書いたもので違いないな。アジトであるマイラの町に帰ろうとしたが、さっきのバリケードによって帰れなくなった。俺なら崖を登って帰っただろうが、この人は崖登りに慣れていないのだろう。

ともかく、ガロンの仲間がこの先の鉱山にいることは分かったな。鉱山と言うのは、ここからかなり奥に見える山のことだろう。鉱山と言うことは、金属があるのかもしれない。

 

「メルキドの時みたいに、炉が作れるようになるかもな」

 

金属を炉で加工すれば、強力な武器を作って魔物に対抗できる。確か炉を作るには石材も必要なはずなので、俺は荒野にある大きな石を壊しながら、鉱山のほうへ進んでいった。

鉱山の近くまで来ると、途中、とんでもない魔物を見つけた。

巨体で大きな棍棒を持つ魔物であるトロルの色違い、ボストロールがいたのだ。

 

「ボストロールだと!?こんなのガロンの言ってたようがんまじんより強い奴じゃねえか」

 

ボストロールはマイラの魔物の親玉らしいようがんまじんより強力な魔物のはずだ。こんな奴と戦っても勝ち目があるわけないので、砂漠の箱を被って絶対に見つからないようにして、鉱山に向かった。

鉱山は、土より固い茶色のブロックで出来ていて、洞窟があった。

 

「この洞窟にガロンの仲間がいるのかもな」

 

俺はその洞窟に入り、中を調べる。そこには、銅や石炭といった鉱物がたくさん埋まっていた。これがあれば、炉を作れるはずだ。

俺は銅や石炭の鉱脈をおおきづちで砕いていき、集めていった。残念ながら鉄はなかったが、銅でも十分強力な武器を作れる。

 

「金属があっていい場所なんだけど、地面が割れそうだな」

 

その洞窟はところどころ地面にひびが入っており、そこを踏んでしまうと割れてしまいそうだ。俺はひびの入った地面を避けながら鉱物を集め、洞窟の奥へと進んでいった。

そして、洞窟の一番奥にはガロンと似たような格好をした荒くれの男が一人、倒れていた。

 

「おい、生きてるか!?」

 

俺はその人に近づいて声をかけた。男はかろうじて意識はあるが、とても衰弱しているようだった。

その男は何とか、俺に話しかけてくる。

 

「うぬぬ···誰だ、お主は···」

 

「俺は影山雄也、ビルダーだ。雄也って呼んでくれ。大丈夫なのか?」

 

「ワシは···ベイパー。もう限界だ···喉が乾いて死にそうだ···」

 

喉が乾いて死にそうってことは、脱水症状を起こしているってことか。だが、俺は水を持っていなかった。こんな状態のベイパーを町まで連れていくことも無理だろう。

 

「でも俺、水なんて持ってないぞ」

 

「それなら、近くにサボテンフルーツはないか?もしあれば、ワシに食わせてくれ···」

 

サボテンフルーツ?恐らくは、俺がさっき食べたサボテンから取れる果実のことだろう。それなら大量に集めて、50個くらいは持っている。

 

「それならあるぞ、食ってくれ」

 

俺はポーチからサボテンフルーツを取りだし、ベイパーに渡した。ベイパーはそれを食べると、すぐに元気になって立ち上がった。

 

「ぬほおおー!喉が潤ったぞ!雄也とやら、助かったっ!」

 

あんなに弱っていたのに、こんなに早く回復するのか。ベイパーの体はどうなっているのか疑問に思えてくる。

「魔物との戦いで傷を負ったワシは、傷が治るのを待ち、アジトに帰ろうとしたのだが、アジトは魔物が作ったバリケードで塞がれていてな、帰るに帰れなかったのだ」

 

さっきのメモにも、そんなことが書いてあったな。バリケードを作ったり、マイラの魔物は頭がいい。

俺みたいに、崖を登る奴がいれば別だが、だいたいの人はバリケードが原因で崖を越えることが出来なくなる。

 

「そして、身を潜めたこの鉱山で水と食料が尽き、行き倒れてしまったと言うわけだ」

 

「結構時間がたってたんだな。助けられてよかった」

 

水と食料も持っていたのに、それも尽きてしまった。ベイパーはかなりの時間、アジトに帰ることができなかったんだろうな。でも、バリケードは俺が壊したし、これで帰ることができる。

 

「···して、お主はなぜここにおる?」

 

「俺がバリケードを壊した後、ガロンに言われて助けにきたんだ。あんた、ガロンの仲間だろ?」

 

「お主の言う通り、ガロンの仲間だ。お主はガロンに言われて助けに来てくれたと言うのか!」

 

ベイパーは俺がバリケードを壊したことをとても驚いていた。

 

「···そのような、筋肉のない体でそこまでのことをしたとはとても信じられぬが···」

 

また筋肉の話かよ!?ガロンだけでなく、ベイパーも筋肉のことばかり言うのか?荒くれ者はみんなそうなのかもしれないな。

 

「筋肉の話はやめてくれ。とりあえず、ガロンのところに戻るぞ」

「分かった。詳しい話は、そこで聞くとしよう」

 

俺とベイパーは洞窟から出て、町の方向に歩いていった。今はキメラのつばさがないので、歩いて帰るしかない。町にたどり着いた時、あたりはもう薄暗くなってきていた。

ベイパーは町につくと、ようやく帰ってこれたと喜んだ。

 

「うおおおおーー!やった、やったぞ!ようやく!ようやくアジトに帰ってこれたっ!」

 

ベイパーにとっては久しぶりに戻ってきたのだろうから、そこまで喜ぶのも無理はない。

それと、ベイパーは温泉が修理されていることに気づいた。

 

「おお!それに温泉が復活しておるではないか!これもお主がやってくれたのだな!?」

「ああ、それもガロンに頼まれてな。タオルとたらいも置いてある」

 

ベイパーもガロンと同じで、温泉が好きなのか。この二人は、かなり性格が似ているところがあるな。

 

「我々の物を作る力ではこうはいかん···」

 

今ここに来たところなのに物を作る力?そう言えばルビスがマイラの人は少し物を作る力を取り戻しているって言ってたな。それでも、完全ではないのだろう。

 

「初めて聞く職業だが、お主が伝説のボディビルダーと言うのは、本当のようだな」

 

伝説の、まで来てビルダーと言うのだと思っていたが、伝説のボディービルダーって言ってきた。

 

「ガロンにも言ったけど、ボディは余計だ」

「そんな細かいことは気にせずともよいであろう!ワシが筋肉の付け方を教えてやる。十日もすればお主も腹筋が六つに割れるぞ!」

 

俺はボディがつかないビルダーだと訂正したが、ベイパーは聞かないどころか、筋肉の付け方を教えると言ってきた。俺は筋肉はそこまで大事だとは思わないんだけどな。

 

「別にいい。俺は筋肉には興味がない」

 

俺がそう言うと、ベイパーは少し残念そうな顔をする。

 

「そ、そうか···とりあえず、よろしく頼むぞ、雄也」

 

俺とベイパーがあいさつしていると、温泉に入っていたガロンが出てきて、走ってきた。

 

「うおおおーー!ベイパー!戻ってきてたのか!」

「ガロンも無事で良かった!久しぶりだな!」

 

ガロンとベイパーもお互いに喜んでいた。この二人はかなり仲が良かったみたいだな。

 

「雄也!ベイパーを助けてきてくれてありがとな!」

 

「別に気にするほどのことでもないぞ」

 

俺はガロンからも感謝の言葉を言われる。ベイパーは弱っていたが、助けられて良かった。

ベイパーとの再会を喜んだ後、ガロンは改めて俺を呼んだ。

 

「さっきも言ったけど、ありがとうな。これなら、オレたちの最初の目標であるアネゴ救出も、必ず成功させられるはずだ!」

 

ガロンは、改めて感謝すると同時に、アネゴ救出の話をした。

確かに、このまま仲間を助けていけば、アネゴと言う人の居場所が分かるかもな。

 

「ベイパーなら、アネゴや他の仲間の行方も知っているかもしれねえしな!おお···アネゴ、待っていてください!必ずオレたちが助けに行きます!」

 

ベイパーもアネゴの居場所を知っている可能性があるのか。後で聞いてみたらよさそうだ。それにしても、アネゴという人は、どんな人なんだ?

 

「ずっと気になってたけど、アネゴってどんな人なんだ?」

 

「アネゴはな···オレたちのリーダーであり、憧れであり、心の支えであり、母であり、妹であり、恋人であり、そして何より、オレたちの希望なんだ」

 

一度に七つも言われたな。とりあえず、自分たちをまとめてくれる母のような大切な人ってことだろう。妹って言ってるってことは、ガロンより年下の可能性もあるな。どんな感じの人なのか、俺も会って見たいぜ。

 

「アネゴは魔物に捕まってる。絶対に助け出してやらなきゃならねえ!雄也、オマエの力も貸してくれよな!準備が出来たら、一緒にアネゴを助けに行こうぜ!」

 

「分かってる。もちろん俺も協力するぞ」

 

いつになるかは分からないが、アネゴを救出する時が来たら、ビルダーとして必ず俺も協力するつもりだ。

それと、ガロンはアネゴのこんな情報も話した。

 

「ここだけの話だがな、雄也。アネゴは無類の風呂好きなんだ。ここに帰ってきたらすぐにアネゴは···」

「つまり、覗くつもりなのか?」

 

ガロンはホモ発言をしていたが、普通に女にも興味があるんだな。両性愛者という奴なのだろうか。

 

「ま、まあ、そう言うことだ。別に構わんだろ?」

 

「もちろんだ。だが、絶対に見つかるなよ。もし見つかったら、死ぬぞ」

 

別に俺は誰が誰の風呂を覗こうが構わない。だが、ピリンにしてもヘイザンにしてもアネゴにしても覗かれれば容赦しないだろう。俺は止めないが、そのことだけは伝えた。

 

「わ、分かってるぜ。とにかく、早いとこアネゴを救出しようぜ!」

 

ガロンとの話を終えた時には、もう外は真っ暗になっていた。俺はベイパーの分のわらベッドを作った後、明日に備えて眠りについた。


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