ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode47 究極の秘薬

俺が聖なる草を手に入れリムルダールの町に戻ってきた時、もう夕方になって、日が沈みそうだった。でも今日はまだ休むことはできない。早くエルに聖なるしずくを飲ませてやらないとな。俺はゲンローワに、聖なる草を手に入れたことを伝えに行った。

 

「ゲンローワ!聖なる草を見つけて来たぞ」

 

そう言って俺はポーチから聖なる草を取りだし、ゲンローワに見せる。

 

「おお!すばらしいぞ雄也!これが聖なる草か」

 

大きな花が咲いているし、聖なる花という名前のほうが良かったと思うのだが、それは気にしないでおくか。

 

「ああ、かなり探したけど、何とか見つかった」

とにかく、これを使えばエルを治せるはずなんだよな。早く作ってやらないと。

 

「それで、聖なるしずくと言うのはどんな見た目をした薬なんだ?」

 

俺はゲンローワに聖なるしずくの詳しい色や見た目を聞いた。ビルダーの魔法を発動させるには、作りたいものの見た目が分からないといけない。

 

「聖なるしずくは水色をしていて、まばゆい輝きを放つ薬じゃ。どうじゃ、作れそうか」

 

ゲンローワから聞いた聖なるしずくの見た目を、俺は頭の中に浮かべ、作り方を調べた。

聖なるしずく···聖なる草5個、液体銀3個、きれいな水1個 いにしえの調合台

え!?聖なる草が5個だと?液体銀やきれいな水はたくさんあるが、聖なる草は保管庫から持ってきた一つしかない。

「ゲンローワ、まずい···」

 

俺が深刻な表情をすると、ゲンローワも不安になって聞いてきた。

 

「雄也よ、これで聖なるしずくが作れると言うのに、どうしたのじゃ?」

 

「いや、作れないんだ。聖なるしずくの作り方をビルダーの力で今調べたんだけど、聖なる草が5つも必要らしい」

 

その事実を知り、ゲンローワも俺と同じような深刻な表情になる。

 

「雄也よ、本当なのか?」

 

「ああ。でも、ゲンローワなら聖なる草1本でも聖なるしずくは作れないのか?」

 

もしかしたら、このことを考えてゲンローワは100%エルを救えると言わなかったのかもしれない。だが、ビルダーの魔法では無理でも、薬師のゲンローワなら作れるかもしれない。

「無理じゃ。必要な材料はビルダーの力で調べるのが最も正確なはずじゃ。一応1本でも作れぬことはないのじゃが、量が少なくなる」

 

作れるけど、エルを治せるほどの量にはならないってことか。一か八かで少ない量で試してみることもできるが、リスクが大きすぎる。もし失敗すれば、エルを救う方法が完全に消えることになる。そんな危険は冒せないな。

 

「クソッ、あと少しだというのによ!」

 

「あと一歩というところなのじゃが、何か方法は無いのか···?」

 

俺もゲンローワも、ここまで来たのに諦めるのは絶対に嫌だった。

こう言う時は、冷静になってゆっくり考えるのがいいな。浄化の霊薬も、そうやって思い付いた。

「ゲンローワ、何か聖なるしずくを作る手段がないか考えてくる」

 

「雄也よ、頼んだぞ」

 

俺は一旦寝室に入り、聖なる草を5個用意する方法を考えた。

 

「聖なる草をどうにかして、増やせればいいんだけどな」

 

植物を増やす方法か···そう言えば農業の記録を手に入れた後、畑で野菜を栽培していたな。その方法が使えるかもしれない。

 

「農業で聖なる草を育ててみるか」

 

俺は聖なる草を種に加工するため、寝室から出て調合室に向かった。

調合室にはゲンローワもいて、何か方法が見つかったか聞いてきた。

 

「雄也よ、聖なる草を増やす方法を思い付いたのか?」

「しばらく考えたんだが、野菜のように聖なる草を種に変えて、育てればいいんじゃないか?」

 

町の中はルビスの加護があるから、1~2日で育つはずだ。それまでエルが耐えきれるかは賭けだが、少ない量を使うよりは高い確率で助かるだろう。

 

「うむ!それならいけそうじゃの!さすがじゃ、さすがじゃぞ、雄也!」

 

どうやらゲンローワも納得したようだ。今思ったが、農業の力って本当にすごいよな。

 

「聖なる草を一度種に戻して、探求者タルバから得た農業の記録を使えば、聖なる草を5個入手できるはずじゃ」

 

「ああ、エルが耐えられるかは分からないけど、これしか方法がない。早速種を作るか」

俺は聖なる草を調合ツボに入れ、農業の魔法をかける。すると、聖なる草が種の形になり、2つに分裂した。普通の野菜は一度に3つ種ができるが、聖なる草は2つしか出来ないようだ。

 

「おお、聖なる草の種が出来たようじゃな!」

 

横から俺の作業を見ていたゲンローワも、聖なる草の種が出来たことを喜んでいた。

 

「ああ、今から畑に植えてくる」

 

「頼むぞ、雄也。お主の手で、エルに聖なるしずくを飲ませてやってくれ!」

 

ゲンローワにそう言われた後、俺は畑に向かい、聖なる草の種を植えた。

種を植え終えると、もう夜遅い時間だったので、俺は寝室に戻って寝た。

 

リムルダールに来て19日目の朝、俺は目覚めると最初に、昨日植えた聖なる草の様子を見に行った。

聖なる草は、保管庫にあったものと同じくらいに成長していたが、まだ花が開花しておらず、もう一日待たないといけないようだ。

 

「まだ聖なるしずくは作れないのか。今日は決戦に備えての準備をするか」

 

何もしない訳にもいかないので、まず、聖なるしずくを作るためのいにしえの調合台を作っておくか。

調合ツボを回収して強化しないといけないので、調合室に向かった。

 

「雄也よ、聖なるしずくは育っておるか?」

 

調合室に入ると、中にいたゲンローワから聖なる草の様子を聞かれた。

 

「いや、あと1日はかかりそうだ」

 

野菜では、最大まで育てたものを刈り取ると、5個に分裂したはずなので、聖なる草も同じだろう。2つ植えているので、一度に10個収穫できるはずだ。

 

「それで、今日はできる準備をすべてしようと思っているんだ。調合ツボを強化するから、回収させてくれ」

 

俺はゲンローワにそう言ってから調合ツボをてつのおので叩いて回収し、作業部屋に向かった。

 

「他の素材はみんな揃ってるし、今すぐ作れるな」

 

俺は木の作業台のところで調合ツボ、石材、液体銀、きれいな水に魔法をかけ、変化させていく。

やがて、その4つが合体し、巨大な調合台になった。

「これが、いにしえの調合台か」

 

タルバから聞いた通り、3メートル×4メートルの大きさで、複雑な作りになっていた。

今の調合室の大きさだと、いにしえの調合台を置くことは出来ないので、俺は一度いにしえの調合台をしまい、土ブロックを使って調合室を増築した。

 

「これで置けるようになったな」

 

新しい調合室が出来上がると、俺はいにしえの調合台を取りだし、設置する。明日には、これを使って聖なるしずくを作ることになるだろう。

 

「まだ時間があるし、鍵のかかった扉でも開けに行くか」

 

いにしえの調合台が出来たので、俺は次に、今まで鍵が掛かっていて開けられなかった扉を開けにいくことにした。戦いに役立つ素材が手に入るかもしれないからな。

「鍵の掛かっていた扉は4つあったはずだな」

 

俺は調合室で4つかぎを作り、その後赤色の旅のとびらに入った。

 

「最初は、岩山の近くにあった建物だな」

 

俺は水没した谷底を歩いて密林に入り、そこから岩山を目指した。

途中にいたじんめんじゅやじごくのハサミなどのモンスターを避けながら密林を進み、鍵のついた建物の前にたどりついた。

 

「何が入ってるんだろな?」

 

楽しみにしながらかぎを使い、扉を開けると、中に一つの宝箱が入っていた。

開けてみると、銀色に輝く不思議な指輪が入っていた。確かこれは、ドラクエシリーズで会心の一撃が出やすくなる、かいしんのゆびわだったか。

「やっぱり戦いに役立つ物が入っていたな」

 

ここ以外の場所にも、こう言う戦いに役立つ物が入っているといいな。

俺は次に、農業の記録を手に入れた、探求者タルバの宮殿に向かった。

タルバの宮殿には、鍵付きの扉が2つあったはずだ。

俺は宮殿にたどり着くと、まず、左側の扉を開けた。

扉の先には、幅1メートルの狭い通路があったが、すぐに行き止まりで、そこに宝箱が置いてあった。

宝箱を開けると、中には金が5個入っていた。

 

「金か···みんなの分の武器を作る分はあるけど、これからも必要になるかもしれないな」

 

緑の旅のとびらの先でも金を手に入れているので、全員分のはやぶさのけんを作っても余るな。だが、金は貴重な金属なので、他にも使い道があるかもしれない。

俺は金をポーチにしまい、今度は右側の鍵付きの扉を開けた。

こちらの扉の奥にも、ひとつの宝箱が入っていた。

 

「あっちは金が入ってたけど、こっちは何が入ってるんだ?」

 

その宝箱を開けると、中には大量の聖なるナイフが入っていた。全部で50本もあり、町のみんなが使うとしても37本余る。

 

「壊れた時のために入れたのか?」

 

これなら、もし聖なるナイフが壊れたりしてもすぐに新しいものを使えるな。

俺は聖なるナイフを全てポーチに入れ、一度町に戻った。

 

「あとは世界樹の下にあるやつだけだな」

 

町に戻った後は、緑の旅のとびらに入り、世界樹の近くを目指した。今回は、岩山を越えて行ったので、足は疲れたがあまり時間はかからなかった。

そして、鍵のかかった建物に到着すると、鍵を開けて中に入った。

ここにも、宝箱が一つ置かれていた。その宝箱を開けると、今度は銀が15個入っていた。

 

「銀が15個か。戻ったら聖なる矢を作っておくか」

 

俺の推測ではヘルコンドルより強力だと思うマッドウルスに対抗するために、大量の聖なる矢を作っておいたほうがいいな。奴も不死の魔物なので、聖なる武器には弱いはずだ。

俺は銀をポーチにしまうと、キメラのつばさを使ってリムルダールの町に戻った。

 

「結構使える素材が手に入ったな」

 

手に入れた素材を使って、魔物との決戦に備えていかないとな。

その日、俺は仕立て部屋で全員分の銀製の武器を作り、作業部屋で鉄の矢と聖なる矢を作り、さらに大弓を5台から8台に増やした。

8方向から狙い撃てば、ヘルコンドルも避けることは不可能だろう。

武器を作り終えた時には、もう夜だったので、明日聖なる草が育っていることを楽しみにして、眠りについた。

 

リムルダールに来て20日目、俺は起きると、早速畑に植えてある聖なる草を見に行った。

 

「おっ、ついに聖なる草が開花したな」

 

聖なる草は、昨日より大きく育っていて、美しい花が咲いていた。これなら、聖なるしずくを作るための量が集まるだろう。

 

「さっそく刈り取って、聖なるしずくを作るか」

 

俺がてつのおのを使って聖なる草を刈り取ると、野菜のように1本が5本に分裂する。もう一つ植えてあるので、合計10本の聖なる草を収穫することが出来た。

聖なる草が集まると、俺は調合室に入り、ビルダーの魔法を使う。調合室にはゲンローワの姿はなく、恐らくエルを看病しているのだろう。

 

「これでついにエルを救えるんだよな。2日間も待たせてしまったけど」

 

メタルギアのスネークなら、待たせたなと言っていただろう。俺もこのセリフは言ってみたかったんだよな。

聖なる草、液体銀、きれいな水に魔法をかけると、いにしえの調合台が光を放ち、目の前に一つの薬が出来上がった。

 

「これが、聖なるしずくか」

 

その薬は、浄化の霊薬とは比べ物にならないほど輝いており、まさに究極の秘薬といった感じだ。

俺は聖なるしずくを持ち、エルの待っている病室に入った。

 

「エル、聖なるしずくを作ってきたぞ!」

 

病室には、苦しい顔をするエルと彼女を必死に励ますゲンローワの姿があった。

 

「おお、雄也よ。ついに聖なるしずくが出来たのじゃな!」

 

ゲンローワも、聖なるしずくができたことを大喜びしていた。

俺は、エルの寝ているベッドに近づいて、

 

「待たせたな」

 

と言って聖なるしずくを飲ませた。

すると、エルを包んでいた強大な魔物の気配は消え、落ち着いた状態になった。

そして、話せる状態にまで回復し、俺に感謝の言葉を言った。

 

「おお、雄也様···。私などのために、お薬を作って頂いたのですね···」

 

「当然のことだろ。仲間が苦しんでいて、助ける方法があるのならビルダーの力を使って、必ず助けてみせる」

 

ゲンローワがどうしても助けてほしいと言っていたからな。もちろん、俺自身がエルの命を救いたいと思っていたのもあるけど。

 

「私は、ずっと夢を見ておりました。それは、恐ろしいヘルコンドルと、巨大なくさったしたいの夢です···」

 

巨大なくさったしたい···マッドウルスのことだな。色は違うのだが、エルは名前を知らないからくさったしたいと呼ぶしかないのだろう。

 

「これまで、雄也様のおかげでたくさんの病を克服することが出来ました。夢の中に出てきたくさったしたいが何者かは分かりませんが、魔物の親玉であるヘルコンドルさえ倒せば、このリムルダールに光が戻るはずです」

 

リムルダールの空の闇を晴らすまで、後少しなんだな。ヘルコンドルだろうがマッドウルスだろうが、必ず俺たちで倒してやる。

 

「分かってる。絶対にリムルダールを魔物から解放させてやる」

 

俺がそう言うと、エルは安心して眠りについた。明日には回復するだろうな。

エルが落ち着いたのを見て、ゲンローワが話しかけてきた。

 

「ありがとう、雄也よ。お主にはいくら感謝しても、感謝しきれぬ···!」

 

別に、俺はビルダーとして当然のことをしただけなんだよな。人々や世界を救う、それがビルダーの役目だ。

 

「雄也よ、わしは···わしは···自分がなさけない。間違った道に進んだ弟子のウルスを見捨て、そして、死を受け入れよなどと最もらしい哲学や理屈をこねておきながら、結局は愛する孫娘を見殺しにすることは出来なかった···雄也よ、わしは···わしは···本当に愚かな人間じゃ」

 

ゲンローワはまだその事を気にしていたのか。

「ゲンローワ、気にするな。俺はビルダーとしてアレフガルドを復興させてきて、分かったことがある」

 

「それは、どんなことじゃ?」

 

「愚かだからこそ、人間ってことだ」

 

俺がそう言うと、ゲンローワは驚いた顔をした。

 

「なに!?愚かだからこそ、人間らしいと。そうか、そうであったな、お主は最初に出会った時もそのようなことを言っておったな」

 

あの時は違う言い方をしていたが、意味はだいたい同じだな。ゲンローワは納得したようで、話題を変えた。

 

「さあ!これで一晩立てばエルの病も癒えるはずじゃ。お主もゆっくりと眠り、明日エルに声をかけてやってくれ」

 

「ああ、分かった」

 

ゲンローワの言う通り、今日は決戦に備えて体を休めておいたほうがいいな。準備もできているので、俺は寝室に戻り、一日中ゆっくりと過ごした。


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