ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺が自分の死を願い、殺してくれと言ったエルにてつのおのを振り上げたその時だった、
「雄也よ、待て!待ってくれ!」
ゲンローワが息を切らしながら、俺のいる病室に駆け込んできた。
「どうしたんだ?ゲンローワ。エルにおのを振り上げたところで入ってくるなんて」
俺がそう聞くと、ゲンローワは必死に言った。
「やはり、エルを···わしのかわいい孫娘を殺してはならんっ!」
ゲンローワの言っていることは、さっきとは真逆だった。それにしても、エルはゲンローワの孫だったのか。ケーシーも気にしていたが、特別な関係があるように感じられたのはそう言うことだったのか。
「あんたとエルは家族だったのか」
「そうじゃ。雄也よ、どうか、どうか、どうか!エルを、救ってくれ!」
ゲンローワはどうかを3回も言い、俺に必死にエルを救うよう、頼み込んだ。家族を大切に思う話はいくらでも聞いたことがあるが、病に抗うのは間違っているなんて言う人が、ここまで変わるとはな。
「これまではずっと、病に抗うべきではないって言っていたのにか?」
「そうじゃ。わしももう、そんな考えはやめることにする」
今のゲンローワは、病に抗うのは間違っているという偏屈な薬師ではなく、孫の命を救ってくれという、一人の祖父になっていた。
エルの気持ちに反することにもなるが、それでもゲンローワはエルの命を救いたいんだろうな。ゲンローワにとっては、エルが死ぬことは何よりも悲しいことだろうから。
だが、肝心の治療法がないのではどうしようもない。
「でも、さっきあんたは治療法はないと言っていなかったか?」
「いいや、あるのじゃ。お主は再び旅のとびらを手に入れたのであろう?」
そう言えば、今日は緑の旅のとびらの先を探索する予定だったんだよな。今まで行ける場所にはないけど、新たな場所に治療法があるということか。
「ああ、昨日の襲撃でリビングデッドが落とした」
「旅のとびらは持ち主が求めるものがある場所へと道を拓くと言う」
ロロンドも言ってたけど、旅のとびらって本当に便利なものだよな。その性質を使って、エルの病気を治す手がかりを探しにいくか。
「それで、どこに病を治す手がかりがあるんだ?」
「ウルスも調べていた、聖なるほこらの跡地に立つという世界樹という大きな木じゃ」
そう言えばゲンローワがウルスのメモを読み終えた時、世界樹の話をしていたな。
「ウルスのメモによると、そこにあるいにしえの調合台なるものがあれば、特別な薬を作れるかもしれぬのだ···!」
いにしえの調合台か···調合ツボの上位版みたいな感じなのか。それでも、ゲンローワの言い方から考えると、100%特別な薬を作れるかは分からないんだな。だが、今はその唯一の希望に賭けるしかない。
「頼む、雄也!新たな旅のとびらの先で、いにしえの調合台を探してきてくれ!」
「ああ、もちろんだ!」
俺はエルの命を救うため、ゲンローワの願いを叶えるために緑の旅のとびらを設置し、中に入っていった。
いつものように目の前が真っ白になり、次の瞬間には新たな場所に移動する。
「ここが、緑のとびらの先か」
緑のとびらの先は、メルキドの青のとびらの先と同じように、けわしい山岳地帯だった。
しかし、ここは今まで行ってきた場所の中でも異様なところだった。常に謎の赤い雨が降り注ぎ、たくさんの墓が置かれていた。
「本当にこんな場所に世界樹なんてあるのか?」
しかも、生息している魔物もくさったしたいやしりょうのきしと言った、アンデッドの魔物だらけだ。自分が思っていた世界樹のイメージとは全く違うな。
「とりあえず、探索を始めるとするか」
居心地が非常に悪いが、俺はいにしえの調合台を探すために、その異様な山岳地帯の探索を始めた。
土ブロックでできた山の上には魔物と墓しかなく、気になるものは特になかった。
「メルキドの山は、木が生えていたりしたのに、本当にここには何もないな」
俺はくさったしたいたちに見つからないように、山の上を進んでいった。やがて、山が途切れて崖になっているとこれがあり、降りなければいけないようだ。
「崖の登り降りは慣れてるけど、大変だな」
植物が何もない場所だが、つただけは生えていて、俺はそれを使って崖を降りていく。降りている途中、俺が探していた光る金属かあった。
「これは、金の鉱脈かもしれないな。みんなの分のはやぶさのけんも作れるな」
たくさんの金が眠っており、ゲンローワたちにもはやぶさのけんを作れそうだ。うち落としたところでみんなで斬りまくれば、さすがのヘルコンドルも倒れるだろう。俺はぎんのおのは戦いのためにとっておきたいので、てつのおので金を10個くらい集めて、ポーチに入れた。
「金はこれで集まったし、あとはいにしえの調合台だな」
金を集め終わると、俺は崖の下まで降り、探索を続ける。崖を降りたところからまっすぐ行くと、今度は白い岩でできた崖があった。
「また崖かよ···でも、横から迂回できそうだな」
その白い岩でできた崖を登らなくても、横から回り込んで進めるようだ。俺がそっちに向かってすすんで行くと、4回目の防衛戦で俺たちを苦しめた強敵、リビングデッドが何体もいた。
「リビングデッドがこんなに大量にいるのかよ。見つかったらまずいな」
町を襲った奴よりは弱いだろうが、それでも囲まれると危険だ。俺は姿勢を低くして、先に進んだ。
進んだ先には、今度は赤い服を着たゾンビの魔物、グールがいた。1体だけだが、体が大きく強そうだ。
「今度はグールかよ···本当に気味が悪いな、ここは」
緑のとびらに入ってから俺は、ゾンビの魔物しか見ていなかった。こんな場所、一刻も早く帰りたいぜ。
俺はグールの視界に入らないようにして、ゆっくり歩いていった。
そして、なんとかゾンビだらけの場所を抜け出すことが出来たが、そこでも大量の墓があることはかわりなかった。
「これって誰の墓なんだろうな」
墓どころか、埋められていない人のものと思われる骨もたくさん落ちていた。
「墓とか骨とかだらけで、本当に世界樹なんてあるのか?」
それどころか、ゲンローワの言っていた世界樹が見あたらなかった。そんなに大きな木であれば、遠くからでも見えるはずだ。
俺は不安になりながらも、墓場のある荒野を進んでいった。
途中、ピラミッドと同じ壁で作られた門のようなものがあり、その門の先は草原になっていた。
「何だ?この荒野と草原の境目にある遺跡は?」
その門は、ところどころつたがかかっており、かなり昔に作られたもののようだ。
よく見ると、門の上に上れるようになっていて、そこには俺も作ったことのある、大弓がおかれていた。
「しかも、何で大弓があるんだ?」
この遺跡は門ではなく、昔ヘルコンドルに大弓を当てるために作った高台なのかもしれない。
はしごがあったので、俺はそれを使って遺跡の上に登る。すると、大弓のところに立て札が立てられていた。
「これにはなんて書いてあるんだ?」
俺はその看板に近づき、文章を読み始める。
射手への伝令
空を飛ぶ怪鳥、ヘルコンドルを倒さねば、このリムルダールに未来はない。その忌々しいヘルコンドルは空中から攻撃してくる厄介な相手だ。そこで、奴に対抗するために、大弓を使うことにした。ヘルコンドルが現れたら、射手はただちに塀の上に移動すること。ヘルコンドルと同じ高さに登れば、大弓を当てることができるはずだ。諸君らの健闘を祈っている。すべては精霊の導きのままに。
射手への伝令か···昔の人も大弓を作って、ヘルコンドルに対抗しようとしたんだな。
そう言えばみんなは、ヘルコンドルを倒せば空の闇が晴れると言っていたが、マッドウルスは倒さなくてもいいのだろうか。伝説のアイテムを持っているのはヘルコンドルだか、強敵を残したままリムルダールを去るのも嫌だな。
そんなことを考えて遺跡を調べていると、誰かが書いたメモのようなものもあった。
ヘルコンドルはバシルーラという聞いたこともない魔法を使う。バシルーラは嵐を起こしてあらゆる物を吹き飛ばす恐ろしい魔法だ。バシルーラを砦の外で受ければ、はるか遠くまで飛ばされてしまうだろう。とはいえ、砦の中にいたとしても、嵐に飛ばされ天井に頭をぶつけてしまうはずだ。どちらも痛そうではあるが、わたしなら頭をぶつける方を選ぶ。
バシルーラはゲームではメンバーをパーティーから離脱させてしまう魔法だったけど、結構恐ろしい魔法だな。遠くまで飛ばされたら、落ちる速度によっては落下死するだろう。そう考えると頭をぶつけたほうがマシと言うのは分かるが、それでもかなり痛そうだ。
「何かに捕まって耐えるしかなさそうだな」
ヘルメットでも作れれば、頭をぶつけても大丈夫そうだが、作れないので、みんなで重い物に捕まって耐えるしかなさそうだな。
「この遺跡でいろいろなことが分かったし、そろそろ探索に戻るか」
俺ははしごを降りて、草原のほうへ歩いていく。
草原には、ここに来て初めてみる、リカントの上位種、キラーリカントや、ストーンマンの上位種、ゴールドマンが生息していた。
「ゾンビではないが、強力な魔物だらけだな」
ゾンビの魔物でないにしろ、まともに戦うと強力な魔物だった。草原で隠れるものはあまりないので、俺は姿勢を低くし、離れて歩いた。
そして、草原の近くにある岩山が、1ヶ所途切れている場所があり、そこに再び門のような遺跡があった。
今度の遺跡には、かがり火やタペストリーがあり、ここをくぐれば何かありそうだった。
門を抜けると、高さ30メートルくらいの、巨大な枯れ木が見えた。
「これが、世界樹か?完全に枯れてるな」
ここまで環境が悪化しているならば、仕方がないのかもしれないが、いにしえの調合台は無事だといいな。
世界樹の周りを調べていると、密林でも見た鍵のかかった建物もあった。
「まわりにはないみたいだし、やっぱり世界樹の上だよな」
俺は一番いにしえの調合台がありそうな、世界樹の上に登ることにした。土ブロックを積み上げていき、途中からはつたがあったのでそれでさらに上に行き、周りの岩山と同じくらいの高さのところまでたどり着いた。
そこに、謎の緑色の服を着た男がいた。こんなところに普通の人間がいるとは思えないし、恐らくは幽霊だろう。
「あんた、誰なんだ?」
その男は、俺に気づいて振り向いて、名前を名乗る。
「私は、探求者タルバ。そなたは、私の姿が見えるのか?」
タルバって何度も名前は聞いたことがある。確か、各地にクイズの建物を作ったり、農業の記録を残した人だったな。幽霊だけどまさか本人に会えるとはな。
「ああ、ビルダーの力で幽霊も見えるようになったんだ」
「そう言うことか、そなた、ルビスに使わされた、伝説のビルダーなのか」
タルバはビルダーのために農業の記録を残したと言っていたし、いにしえの調合台のことも知っているかもしれない。
「ビルダーよ。そなたはなぜ、このような地に来たのだ?ここはかつて聖なるほこらという神聖な場所があった地。しかし、聖なるほこらは竜王軍によって跡形もなく破壊されてしまったのだ。そして、その跡地に生えた聖なるほこらの力を宿した一本の生命の樹も、生を得ようとすがってきた人間のせいで枯れてしまった」
世界樹が枯れたのも人間のせいだったのか。メルキドで起きた殺しあい、リムルダールで起きた魔物化の研究や世界樹の破壊、魔物よりも、人間のほうが悪の存在なのかもしれないとふと思った。
「俺はいにしえの調合台を探しに来たんだ。どこにあるか知らないか?」
「いにしえの調合台も、世界樹が枯れた時に失われてしまった。だが、作り方は覚えている。そなたがどうしても知りたいと言うのなら、教えよう」
いにしえの調合台は自分で作らないといけないのか。でも、それならエルを救うこともできる。
俺はタルバからいにしえの調合台について教えてもらった。3メートル×4メートルのかなりの大きさのようだ。俺はすぐに、必要な素材を調べた。
いにしえの調合台···調合ツボ1個、石材5個、液体銀3個、きれいな水1個
今ある素材で作れそうだな。教えてくれたタルバにお礼を言わないといけない。
「ありがとうな、タルバ」
「ビルダーよ、そなたに改めて問う。お主の目的は何だ?リムルダールの地を浄化することか?それとも、この世界の闇を晴らすことか?いにしえの調合台を必要とすると言うことは、それなりに理由があるのだろう?」
俺が感謝の言葉を言うと、タルバは俺がいにしえの調合台を必要とする理由を聞いてきた。
「俺から言わせて見れば、どれもだな。ビルダーとして、必ずこの世界を復興させてやらないといけない」
「そうか、私からも頼んだぞ。そなたの作る世界を楽しみにしていよう」
俺が答えると、タルバはそう言い残して、消えて行った。
メルキドの町長の幽霊、ロロニアも似たようなことを言っていたが、こう言われると絶対に世界を救いたいと強く思えてくる。
とりあえず、これでいにしえの調合台の作り方が分かったな。俺は世界樹の上でキメラのつばさを使い、町に戻った。