ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺がリムルダールに来て16日目の朝、最悪の事態を回避できた日の翌日、俺は浄化の霊薬を飲ませて治療した3人の様子を見に行った。
病室に入ると、3人はまだ眠っていて、エルはその様子を見ていた。
「雄也様、おはようございます」
俺はエルに3人の状態を聞く。魔物の気配が消えたとはいえ、完全に安心している訳じゃないからな。
「おはようエル。こいつらの様子はどうなんだ?」
「容態は安定しています。早ければ明日には起き上がれるようになるでしょう」
エルが見たところは安定しているのか。この3人が起き上がればこの町の人口は13人になる。魔物にもより対抗しやすくなるはずだ。
だが、結局この病の原因はなんだったんだろう。さすがのヘルコンドルも人間を魔物に変異させる病気が振り撒けるとは思えない。
「でも、あの病の原因はなんなんだろうな?」
「私にも全くわかりません。あのような恐ろしい症状は、見たことがないのです」
やっぱりエルにも分からないか。治療法が見つかったので無理に突き止める必要はなさそうだけどな。
「そうか···ヘルコンドルより恐ろしい存在がいるのかもしれないな」
そうとしか考えられないが、それが何者なのかはわからなかった。
今は考えても仕方ないので、俺は病室から出て、朝食を食べに調理部屋に行った。その途中、ゲンローワが話しかけてきた。
「雄也よ、昨日は恐ろしいことが起きそうじゃったのう···患者たちを助けてくれて、本当に感謝するぞ」
そう言えば、昨日もケンはゲンローワの弟子、ウルスの名前を言っていた。この前ゲンローワは知らないと言っていたが、やはり無関係とは思えない。俺はゲンローワにそのことを聞く。
「昨日ケンがあんたの名前を言っていた。やっぱりあんたはあの病気について知ってるんじゃないか?」
ゲンローワは言いたくないようでしばらく黙っていたが、話し始めた。
「知らないと言えば嘘になる。すまぬ、これまでは言いたくなくて黙っておったのじゃ」
そこまで言いたくないってことは、ウルスとの間に何かがあったってことだよな。
俺は早く続きを聞きたかったが、ゲンローワは本題に入る前にこう言った。
「雄也よ、わしの言葉を覚えておるか?病と戦うことは、死以上に辛く、苦しいと···」
そう言えばゲンローワは俺と初めて出会った時、そんなことを言っていた。ウルスとの間に何かあったからこそ、そう思うようになったのだろうか。
「ああ、覚えてるよ。それで、ウルスとの間に何があったんだ?」
そこで、ゲンローワはとんでもないことを言う。
「おそらく、あの病の原因を作ったのは、我が弟子、ウルスであろうと思う···」
ウルスがあの恐ろしい病気を作っただと!?ゲンローワの弟子は、いわゆるマッドサイエンティストなのか?
「そして、ウルスは密林の奥地で今も生きておる···」
ゲンローワは最初ウルスが死んだような言い方をしていたが、今も生きていて、研究を続けているのか。密林というのは赤の旅のとびらの先の場所のはずだ。
「そこでの、雄也。お主に頼みたいことがある。ウルスの元へ行き、あの病について聞いてきてほしいのじゃ」
もしかしたら、ウルスもこの町の仲間になってくれるのかもしれない。だが、密林は広いので、どこにいるかわからないな。
「でも、ウルスは密林のどこらへんにいるんだ?」
「崖のほうから密林に入り、左の方向に進むのじゃ。そこに、ウルスの研究所がある。」
密林の左のほうか···そこら辺はまだ探索したことがなかったな。探索もついでに行ってくるか。
「分かった。朝食を食べたら行ってくるか」
俺はゲンローワと一度別れ、調理部屋に入る。今日もノリンが釣ってきた魚を食べて、探索に備えた。
「そろそろ出発するか」
朝食を食べ終えててつのおのを持ち、俺は旅のとびらに向かった。その途中、ゲンローワがまた話しかけてきた。
ゲンローワは手に、手紙のようなものを持っている。
「雄也よ、待つのじゃ。ウルスは今、固く心を閉ざしておる。わしのこの手紙を持ってウルスを訪ねるのじゃ!」
俺はゲンローワからその手紙を受けとる。そこには、ゲンローワからウルスへのメッセージが書かれていた。
そして、その手紙をポーチに入れて、旅のとびらに入った。
「またしても濡れることになるのか···」
密林には何回も行っているが、服が濡れるのはいつまでたっても慣れない。
だが、そうして進むしかないので、俺は仕方なく水の中を歩いていった。
10分ほどで谷を抜けて、密林にたどり着く。そこから、まだ行ったことのない左の方向に向かった。
「ウルスの研究所はまだまだ先だな」
左の方向に進んでも、なかなかウルスの研究所は見えてこない。途中で、白い岩でできた岩山もあった。
「岩山か、これも越えないといけないのか」
メルキドでは何回も岩山に上ったことがあったので、今回も土ブロックで足場を作りながら登ろうと思った。
それと、その岩山の近くに気になるものが2つあった。調べておいたほうがいいな。
「大きな塔とか遺跡みたいなのがあるな」
ウルスの研究所ではなさそうだが、何か役に立つ物があるかもしれない。俺はまず、近くにある土ブロックでできた塔に登り始めた。
「こんな高い塔、誰が建てたんだろうな」
この塔の頂上には宝箱が見えたので、人間から宝を隠すために魔物が建てたのだろうか。そう考えれば、レアなアイテムが入っている可能性が高い。
俺はブロックを積みながら塔を登っていき、頂上にある宝箱を開けた。
そこには、必要ではあるが既にいくつも持っている物が入っていた。
「さびた金属が5つか、大した物じゃなかったな」
その宝箱には、さびた金属が5個入っていた。確かに加工すれば鉄製の武器が作れるため、魔物からしたら人間に渡したくないのだろうが、ちょっと残念だな。
俺はその塔を降りて、今度は遺跡に向かった。
「今度こそいい物が入っているといいんだけどな」
その遺跡は、ドムドーラのピラミッドと同じブロックで出来ていて赤色のとびらが付いていた。
さっそく俺はそのとびらを開けようとしたが、開かなかった。
「くそっ、鍵がかかってるぞ」
鍵がかかっているということは、間違いなく貴重な物が入っているようだ。農業の記録があった遺跡にも、鍵つきのとびらがあったな。
中に何があるか気になるが、鍵を持っていないため開けることは出来なかった。
「結局、あんまりいい物は手に入らなかったな」
俺は遺跡を去り、岩山を登った。この岩山を越えればそろそろ着くだろう。
俺は岩山の上に生息しているキメラの色違い、メイジキメラを避けながら奥の方へと進んでいった。
俺は岩山の上に生息しているキメラの色違い、メイジキメラを避けながら奥の方へと進んでいった。
メルキドの岩山でも何度もしたので、キメラを避けることには慣れていた。
そして、岩山の一番奥の崖の下を見下ろすと、人がいそうな建物があった。
「あれがウルスの研究所か」
俺はウルスに話を聞くため、崖を降りて建物へ歩いていった。
一方、その頃···
魔物の王 竜王の間
雄也がウルスの研究所に向かっている頃、リムルダールの魔物の1体が竜王に謁見していた。
「竜王様、この前メルキドのゴーレムを倒したビルダーが今度はリムルダールを支配しようとしております」
竜王は、メルキドでの雄也の活躍に少しは驚いていたが、まだ心配するようなことはなかった。
「それは分かっている。わしに何を頼みたいというのだ?」
「今、そのビルダーが魔物化の病を作った研究者、ウルスのところへ行こうとしています。そして、そのウルス自身もその病にかかっています」
魔物はこう考えていた。魔物化の病を竜王の闇の力で変異させれば、ウルスは強大な魔物になり、人間にとっての脅威になるのではないかと。
「竜王様の闇の力でウルスを強大な魔物にしてはもらえないでしょうか」
「確かに人間が増えすぎてはならぬ。わしの影をリムルダールに送り込み、闇の力で研究者を変化させてやろう」
竜王の影には、竜王本体ほどの戦闘能力はないが、同じくらいの闇の力を持っている。王である竜王自身が動く訳にはいかないので、自身の影にやらせているのだ。
また、再びビルダーの力を試すという目的もあった。無論、ビルダーを殺してしまうこともありえるが。
「ありがとうございます、竜王様」
リムルダールの魔物は竜王にお辞儀をして、去っていった。
それと同時に、この前の3体の竜王の影と、それらより大きな竜王の影の合計4体がリムルダールの地へと向かった。
一方雄也は、ウルスの研究所と思われる建物にたどり着いていた。中には、木の机がいくつもおいてあり、最近使われた形跡もある。
「ん、メモがあるな」
また、ウルスが書いたと思われるメモが置いてあった。
なぜだ!どうやってもうまくいかない!···やはり、病にあらがうなどムダなことなのか。
ウルスも病の治療には行き詰まっていたようだな。もしかしたら、魔物になれば病気にならずに済むと考えたのだろうか。
そして、建物の一番奥には金髪の赤い服を着た男がいて、俺に気づいて話しかけてきた。
「だ、誰だ···お前は···」
「俺は影山雄也だ。お前がゲンローワの弟子のウルスか?」
「そうだ。こんなところに···何の···用だ?」
それだけ言って、ウルスはまともに話そうとしなかった。なので、俺はゲンローワから預かった手紙を渡す。
「ゲンローワから手紙を預かってきた。読んでくれ」
ウルスは手紙を受け取り、それを読み始める。そしてウルスは、後悔しているような表情をする。
「私は···とんでもないことをしてしまった。すべてゲンローワ様が正しかった···」
やはり、ウルスが魔物化の病を作ったと考えて間違いないようだな。そう考えると、人間と魔物のどちらが悪なのか分からなくなる。
「お前があの病気を作ったので間違いないんだな」
「ああ。だが、人間が死を乗り越えるなどおこがましい、げほっ、げほっ」
それで魔物化の病を作ったってことか。別に狂っていた訳ではないんだな。
その時だった、突然空が暗くなってきたのだ。
「何だ?まだ昼間のはずなのに···」
そう言えばメルキドでロロンドを救出に行った時も空が暗くなり、竜王の影が出現したな。再び竜王の影が来るのかもしれない。
俺がそんなことを考えていると、ウルスが一枚の紙を渡してくる。
「これを、ゲンローワ様に···生命の樹を、世界樹を探すんだ···ぐひゃひゃ!」
紙を渡したと同時に、ウルスは昨日の3人のような声を発した。今まで気づかなかったが、ウルスも魔物化の病にかかっているのか!?
「アア···アゥアウェア···オオォ···。アオォオー!オオオオー!オオオオオーッ!」
ウルスは凄まじい声をあげて禍々しいオーラを纏い、恐ろしい魔物へと変化していった。そのオーラは、あの3人の比ではなく、とてつもなく強大なものだった。
「ウギョアアアーーー!」
そして、俺の目の前にいたのはドラクエ10のマッドスミスに似た巨大なゾンビだった。だが、マッドスミスより体が黒く染まっており、目は血のような赤色だった。
マッドスミスのウルス版、マッドウルスと言ったところか。ウルスの心は完全に失われており、俺を鋭く睨み付けてくる。
俺はここで戦わないといけないのかと思い、てつのおのを構えたが、マッドウルスはどこかへ去っていった。
「これが、魔物への変異か···」
魔物になる瞬間、ウルスはものすごく苦しそうな表情をしていた。それを見るとあの3人を助けられて良かったと思う。
「ウルスは助けられなかったが、この手掛かりは手に入ったか。持ち帰らないとな」
俺はゲンローワにウルスのメモを見せるため、町へ歩き始めた。だが、俺の恐れていた者が見えた。
竜王の影が、このウルスの研究所へ迫ってきていたのだ。偶然とは思えないし、ウルスがあそこまで強大な魔物になったのは、こいつらのせいかもしれない。
「ウルスを変異させた後は、俺を殺す気か?」
ロロンドを救出しにいった時のように、見つからないようにしないといけない。俺は研究所の裏に隠れ、体勢を低くして離れていく。
そして、竜王の影と距離をおいた後、キメラのつばさを使った。だが、竜王の影の魔法で封じられているようで、俺は飛び上がらなかった。
「どこかに隠れるしかないか」
俺は近くにあったヤシの木の裏に隠れて、竜王の影が去るのを待つ。やがて竜王の影は研究所に到達し、中を調べ始めた。
俺は竜王の影が研究所に集中している間にほふく前進で町の方向へ向かう。途中、竜王の影は俺が隠れていたヤシの木のところも探していた。早めに動いてよかったぜ。
土でできた山があるところまで逃げた時、その山に洞窟があることを見つけた。
「ここに入れば見つからないな」
俺はその洞窟に入り、竜王の影が去っていくのを待つ。じっとしているのは苦手だが、今は仕方がない。
今回は一時間では去っていかず、二時間くらい洞窟の中に隠れていた。竜王の影が去り、空が晴れたころには、もう正午を過ぎていた。
「朝出発したのにもう昼か、いろいろあって大変だったな」
ウルスが変異したり、再び竜王の影が迫ってきたり、一度に大変なことがいくつも起きた。まずは、ウルスのことをゲンローワに言わないとな。
俺はキメラのつばさを使い、リムルダールの町へと戻っていった。