ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode3 ビルダーの力

ロロンドは町に到着すると俺たちの作った家を走って見回った。本当に、テンションの高い男だな。

 

「あ、おかえり雄也!」

 

町に戻ってきた俺を見て、ピリンがかけよって来た。彼女はとても心配な顔をしている。急にメルキドが暗闇に閉ざされたからだろう。

 

「さっき空が暗くなって、怪しい影が見えたんだけど、なんだったの?わたし、こわくて家に隠れてたんだけど」

 

「竜王の影って言う凄く強い魔物が現れたんだ。何とか見つからないようにして、ここまで戻って来た。奴らはもう帰ったから安全だぞ」

 

「無事で良かった···。雄也たちに何かあったら、どうしようかと思ってた」

 

俺もリアルでメタルギアのスネークのようなステルスアクションは出来ないのでマジで見つかるかと思った。とにかく、生きて帰れてなによりだ。

 

「ところで雄也、あのロロンドって人、何だか胡散臭そうじゃなかった?」

 

お互いの無事を喜んだ後ピリンはロロンドについて話をした。

 

「まあ、やたらとテンションが高いし、変な感じの人ではあったな」

 

「だからわたし、最初に会った時声をかけなかったんだ。長いひげを生やしてて、いつも大きな本を持っていて、怪しい感じの人だったから」

 

自分でも、そんな人が目の前にいたら話しかける気にはならないが。

 

「その大きな本はメルキド録って言う本だ。町の発展に繋がる情報も書いてある可能性もあるから、怪しい本ではないよ。まあ、失われた古代の文字で書かれてるらしいから、ロロンドに解読して貰わないといけないけど。」

 

「解読が進んで、何か手伝わないといけないことがあったら教えてね」

 

怪しいなんて言っていたピリンも、ロロンドと協力する気のようだ。これからは3人でメルキドを復興させよう。まだ住民の数は足りないが、また新しい人が来ることもあるだろう。

俺とピリンが話をしていると、町をひととおり見終わったロロンドが旗の所に走ってきた。

 

「ここはなんて生命力に溢れた場所なんだ!まわりより暖かく、居心地の良い場所だ」

 

ロロンドも暖かいこの場所を気に入ったようだ。

 

「この地は、メルキド録に書かれた城塞都市、メルキドを復活させるに相応しい場所だ!」

 

相応しい場所と言うか、もともとメルキドの町はここにあったんじゃないか?まあ、そんなことロロンド達が知るわけないか。確かアレフガルドが滅亡してから数百年経っているはずだからな。

 

「そう言えば、メルキド録ってどんな内容が書かれているんだ?」

 

俺は出会った時からそのことが気になっていた。凄く分厚い本なので、たくさんの情報が書かれているはずが、その内容は聞いていない。

 

「メルキド録には、何百年も昔に失われた物の作り方や人間の歴史が書かれておるのだ。これを解読すればメルキドの町を復活させることも出来るだろう」

 

それって物凄く重要なことが書かれているって事だ。本当にロロンドを町の仲間にすることが出来て良かったな。

 

「我輩やピリンとともに、大きな町を作って行こうぞ!」

 

「俺としては、昔と全く同じな町じゃなくて、少し変えたほうがいいと思うな」

 

「もちろんだ。我輩が作りたいのはかつてのメルキドと我輩たちが考えて作る新しいメルキド。2つが合わさったメルキドだ」

 

俺の意見にも、ロロンドは同意してくれた。過去の知識と新しいアイディア、両方があれば、間違いなく最高の町が作れるだろう。

 

「ところで雄也、ここの建物は本当にお主が作ったのだな?」

 

盛り上がっていると、ロロンドは急に話を変え、当たり前に分かっていることを聞いてきた。

 

「今さら何聞いてんだ?もちろん俺が、いや、俺とピリンが作った」

 

「だが、ピリンに物作りの仕方を教えたのはお主であろう?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「つまりお主は元から物を作る力を持っていたことになる。と言うことは、お主はメルキド録に書かれた伝説の存在、ビルダーなのか?」

 

ビルダーのことはメルキド録にも載っているのか。確かに俺はビルダーと呼ばれていて、その力を使うことも出来る。

 

「確かに俺はルビスからビルダーって呼ばれてるな」

 

「おお、やはりそうか。お主がビルダーであるならば、メルキドの復興もよりはかどる!」

 

俺がビルダーであることをロロンドは信じてくれたようだ。確かゲームだと、こんなとぼけた顔の奴をビルダーだと信じる訳にはいかん!って言うんだよな。でも現実で町を作っていたり、自分を助けたりした人に向かって、そんなことは言えないだろう。

俺はロロンドとの話を終え、部屋に入った。今は特に作りたい物もないし、素材もたくさんある。することがないので、ベッドでごろごろしていると、15分後くらいに、ロロンドが部屋に入って来た。

 

「雄也よ、さっき言い忘れていたが、メルキド録には移動を簡単にする道具が書かれていたのだ」

 

「どんな道具だ?」

 

「キメラという岩山の近くに生息しているモンスターの羽根を集めて編みあわせると空を飛んで町に帰ることの出来る道具、キメラのつばさと言う物だ」

 

キメラのつばさ···。ドラクエシリーズ恒例のアイテムで使うと町に帰れるんだよな。ゲームでも、作れと言われるシーンがあったな。確かにあったら便利なので、作っておけばいいだろう。

 

「別に無理に作らなくてもいいが、あったら便利だと思ってな」

 

「作っておくよ。遠い所から歩いて帰るのは危険だし大変だからな」

 

キメラのはね五枚でキメラのつばさ三枚が作れたはずだ。俺は準備を整え、キメラを狩りに行くことにした。ゲームでは町の北東の岩山にいたので、そこを探して見よう。でもそこにはキメラが密集して生息しているはずだ。無闇に突っ込んで行けば複数のキメラに見つかり、メラを連発されるだろう。俺は出かける前に工房でスネークのかぶる段ボール箱のような物を作りに行った。草に紛れて進んでいける箱形の物、草地の箱とでも名付けておこう。俺はそれをビルダーの魔法で作ろうとしたが、一つ問題があった。

 

「じょうぶな草を使えば良さそうだけど、いくつ必要か分からないな」

 

草地の箱は俺が考えた道具なのでゲームには登場していない。そのため、つくるために必要な素材が分からないのだ。今回だけでなく、これからも自分で素材を考えないと行けなくなることがあると思うけど、これは現実、ゲームの主人公みたいに何でも勝手に閃く訳ではない。

何とか必要な素材が分かるようになれば良いんだけどな。

 

「ビルダーの魔法には、必要な素材が分かるようになる力もあります。」

 

今日も、ルビスが話し掛けて来た。困っているときは大体助けてくれるな。

 

「作りたい物を思い浮かべて何が必要かを考えると魔法の力で思い付くことができるでしょう」

 

俺はルビスの言う通りに、草地の箱を脳内に思い浮かべた。すると、作るのにじょうぶな草が5個必要なことが分かった。必要な素材も分かるとは、やっぱりビルダーの魔法の力はスゴいぜ。物を作るのと必要な素材を調べる、その2つがビルダーの魔法のようだ。もしかしたら今後、銃などドラクエにない武器も作れるかもしれない。

俺は草地の箱を作り、町の北東の岩山に向かおうとした。

 

「そういえば、ピリンに頼みたいことがあったな」

 

岩山に行く前にに、ピリンにしてほしいことを伝えないと。工房で作業をしていたピリンは、俺の声を聞いて出てきた。

 

「なあピリン、俺が出かけている間に、ロロンドにブロックの扱いや、物作りの方法を教えてくれないか」

 

これから町を作っていくために、最低限のブロックの扱い、物の作り方は知っておく必要がある。

 

「実はわたし、そう言われると思って、ロロンドのベッドを作るついでに、物作りの方法を教えていたんだ。ベッドと言っても、雄也が作ってくれたベッドと違って、緑色のベッドだけどね。じょうぶな草がすぐに干し草になったりは普通しないから」

 

「じゃあその調子で、二人でベッドを完成させて、寝室に置いてくれ」

 

さすがはピリン、もうロロンドに教えていたのか。本当にピリンは頼もしいな、安心して任せられる。俺はキメラのはねを集めに、岩山に行った。そこには案の定、キメラが多数生息していた。それに、ちょうど5体だ。

俺は草地の箱を被り、キメラの背後に回る。後ろにいれば、足音をたてたりしない限り、見つかることはないからな。

俺は群れから離れているキメラを狙い攻撃を仕掛けた。スネークの近接戦闘術を真似して、キメラを地面に投げ飛ばした。キメラの体は軽いようで、地面に落とされてもほとんど音は出なかった。投げ飛ばされたくらいではキメラは死ななかったが、気絶はしたようだ。俺は棍棒で気絶したキメラを何度か殴り付けて倒した。キメラは光を放って消え、一枚の羽を落とした。

 

「これがキメラの羽根だな。これを五枚集めればいいのか」

 

俺は残りのキメラも倒そうとしたが、群れで集まっていて手を出しにくい。しばらく待ち、はぐれるのを待った。キメラたちは俺が思っていたより早く分散し、ラッキーなことに一体だけで俺の所に向かってくる奴がいた。

 

「自分から向かって来るって、間抜けなやつだな」

 

俺は草地の箱を被りじっとしているのでキメラは見つけることが出来ず、俺の横を通りかかった瞬間に俺は草地の箱から飛び出し、キメラの頭を何度か殴って倒した。

 

「これで2つだな」

 

俺はこの調子で残りも倒そうと3匹目に殴りかかった。反撃させずに倒そうとしたが、奴は最後にメラを放った。俺はかわせたし、もう一度なぐると倒せたが、メラの炎が見えて残りの2体に見つかってしまった。

 

「見つかったか、やっぱり隠れて進むのはキツいな」

 

スネークのように完全ステルスで行くのは難しい。見つかってしまったので、俺はキメラと

戦うことにした。まずは左側にいたキメラを殴り付ける。2体なら、もう片方の動きを見ながら戦えばいいので、そんなに苦労することはない。目の前にいるキメラは俺をくちばしでつつこうとしたが、俺はかわせた。スライムの2倍くらいのスピードではあるが、十分反応できた。俺はキメラの横に回り、頭から棍棒を叩きつけ倒した。それに怒ったそこにもう片方のキメラがメラを打ってきたが、そっちの動きも見ていたので、俺に攻撃を当てることは出来なかった。

 

「次の攻撃がくる前に仕留める!」

 

俺は走ってキメラに突撃し、メラを使えないように連続攻撃した。キメラはなんとか俺の攻撃を止めようとくちばしで棍棒に噛みついたが、俺はその棍棒をキメラごと地面に突き刺した。キメラは口の中を貫通させられ、特大のダメージを受けただろう。キメラは息絶え、5枚目のキメラのはねを落とした。口の中を貫通させて殺すとは、我ながら残酷な方法をつかうな。魔物に対してだから、別に何も思わないが。

 

「敵に見つかってはしまったが、無傷でキメラのはねが集まったな。これでキメラのつばさが作れるだろう」

 

俺は町の工房に戻り、キメラのはね五枚に魔法をかけた。すると思った通りキメラのつばさが3枚出来た。手動でも作れないことはなさそうだが、キメラのはね五枚につきキメラのつばさ一枚しか出来ないだろう。

 

「あの二人は、寝室かな?」

 

俺はキメラのつばさが出来た事を伝えようと、ロロンドを探した。寝室に入ると、ロロンドとピリンが一緒にいた。どうやら二人は出来上がった草のベッドを寝室に置いているようだった。

 

「雄也!ロロンドと一緒にベッドを完成出来たよ!ロロンドも、物を作る力を取り戻したみたいだよ!」

 

これでロロンドもピリンと同じくらい役に立つ仲間になりそうだ。

 

「ピリン、これから新しく来る人がいたら、そいつに物を作る方法を教えてあげるんだぞ」

 

「任せて!上手く教えられるよう頑張るよ!」

 

ピリンとの話の後、隣にいたロロンドにキメラのつばさが出来たことを教える。

 

「キメラのつばさが出来たぞ」

 

俺はロロンドに、自分で作ったキメラのつばさを見せる。それを見て、ロロンドは感激してさらにテンションが上がった。

 

「おお、これはまさしくキメラのつばさ!さすがは伝説のビルダー、こんなものまで作れるとはな!」

 

さっきも聞いたが、この世界ではビルダーは伝説の存在のようだ。地球では、誰もが物を作る力を持っているのに。

 

「おぬしには、メルキドを復活させるのともうひとつある、我輩の夢についても話そう」

 

「もうひとつの夢?」

 

「それは、なぜかつてのメルキドの町が滅びたのかを調べることだ。」

 

メルキドが滅びた理由?普通に考えて魔物の攻撃を受けたからじゃないのか?

 

「それは竜王の配下の魔物のせいじゃないのか?」

 

ロロンドは、首を横に振った。

 

「いや、メルキドの城塞はとても固く、魔物ごときに壊せるはずが無いのだ。それに何より、守り神であるゴーレムがいたはずなんだ」

 

ゴーレム、ドラクエ1でも、メルキドを守っていたよな。そんな鉄壁の守りがあったのに、滅びた。それなら、単なる魔物の襲撃が原因とは考えにくい。

 

「だから我輩はメルキドの町が滅びた理由を調べているのだ。」

 

「そう言うことか。俺も協力する」

 

俺も、何か分かったら知らせよう。

 

その日の夕方、ピリンが休んでいた俺に話しかけてきた。

 

「ねえ、雄也!ちょっといい?」

 

俺は疲れてるんだが、また何か相談があるのだろうか?

 

「俺は疲れてるんだけどな···とりあえず話してくれ」

 

「雄也、わたしもロロンドも、ここら辺には生で食べられるものがモモガキしかなくてすぐお腹がすいちゃうの」

 

モモガキの実はウマイが、全然お腹がいっぱいにならないのが問題だな。

 

「昨日から、物を作ることも始めたから、なおさらすきやすくなったの。そこで思いついたんだけど、料理が出来る部屋があったらいいんと思わない?」

 

料理部屋か、確かゲームでは料理用たき火というものがあったな。確か材料は太い枝五個、じょうぶな草三個、たき火一個で作れたはずだ。魔法で確認したが、それで合っていた。

 

「確かにあるといいな。俺は調理用のたき火が作れるから今すぐ作ってくる。ピリンは寝室で待っていてくれ。」

 

俺は近くにいるスライムを倒し青い油をてに入れ、在庫が山ほどある太い枝二本と一緒に魔法をかけたき火を作り、そこからさらに太い枝に五本とじょうぶな草3本を取りだし料理用たき火を作る。青い油はこれからもたくさん必要になりそうだから、ロロンドにも手伝って貰ってたくさん集めよう。

料理用たき火が出来ると、次に料理部屋の壁を作っていく。寝室とくっ付けて作り、すぐに食べに行けるようにした。まだ土ブロックがたくさんあるので、調達しなくても壁を完成させることが出来た。

 

「料理用たき火を置いて、扉をつければ完成だな。」

 

俺はまず料理用たき火を置いてから、わらのとびらを作りに行った。太い枝やじょうぶな草は森で100個以上拾ったため、当分の間不足することはなさそうだ。調理部屋には料理の材料を入れて置くための収納箱を作ることにした。そう言えばゲームのように、完成した料理を収納箱に入れれば保存することができるのだろうか?今は一人なので、ルビスに聞こう。

 

「おいルビス、収納箱に入れれば、料理を保存することができるのか?」

 

「はい。収納箱に入れている間は、品質は変化しません。」

 

それなら、完成した料理を入れておくのにも必要だな。俺はわらのとびらと収納箱を設置し、この世界に来てから3つめの部屋、調理部屋を作った。

 

「ピリン、ロロンド!調理部屋が完成したぞ!」

 

お腹が減っているであろう二人は、ダッシュで調理部屋に駆け込んで来た。

 

「もうおなかペコペコだったんだ、ありがとう!」

 

「早速何か作ってみようぞ」

 

俺は今ある食材で焼く必要があるのはキノコだけなので、焼きキノコを作ることにした。ゲームではキノコ一つだけで作れるのに、何故か串が付いている。おそらくビルダーの魔法で作れば、本当にそうなるのだろう。

 

「焼きキノコでいいか?」

 

「もちろんだ!早く作ってくれ。そう言えば、メルキド録には男料理のページがあったりするんだ」

 

メルキド録にはあまり重要そうじゃなさそうだけどそんな記述もあるのか。ロロンドはキノコが好物のようだ。俺はキノコ3つに魔法をかけ、焼きキノコにした。一人一つずつだが、モモガキよりは腹が膨れるだろう。そしてやはり串は勝手に何故か現れた。

 

「できたぞ、一緒に食べよう。」

 

俺たち3人は焼きキノコにかぶりついた。俺とピリンはゆっくり食べたが、キノコ好きのロロンドはすぐに平らげてしまった。食べ終わると、今度は串が自動消滅した。

 

「ビルダーの魔法の力で発生した串はキノコを食べ終わると消えるようだな。それより、おかわりはないのか?」

 

ロロンドは、串が消滅する原理をそんなふうに言った。でも、ロロンドにとってはそのことより焼きキノコのおかわりのほうがだいじなようだ。

 

「食料は大事にしないといけないから、おかわりは無しだぞ。もし今たくさん食べれば、この先飢餓状態になるかもしれない」

 

おかわりを貰えずロロンドはガックリとして部屋に戻った。もう真っ暗な夜なので、俺たちも部屋に戻って寝ることにした。


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