ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode37 飢餓の治療(前編)

俺はゲンローワとの話を終えた後、病室にいるミノリとヘイザンの様子を見に行った。そこでは、いつも通りエルが病人の看病をしている。

俺は、エルに二人の様子を聞いた。

 

「ミノリとヘイザンはよくなってきているか?」

 

そう聞くと、エルはまだまだ治りそうにないと言う。

 

「カニやイワシだけでは、飢餓の病を治すことはできません。もっと栄養のある食べ物でなければ···」

 

確かにこのくらいの食べ物ではまだまだ栄養が足りなさそうだな。だが、これ以上栄養のありそうなものなんてこの世界にあるものでは思い付かない。

 

「それなら、何を食べさせればいいんだ?」

 

「実は、二人から食べたいもののリクエストを受けていて、ミノリ様はバケット、ヘイザン様はフライドポテトが食べたいそうです」

 

リクエストだと!?二人とも病人なのにぜいたくだな。それに、バケットやフライドポテトはそんなに栄養があるとは思えない。確かバゲットはフランスパンの一種で、フライドポテトは俺も好物のいもを揚げた料理だ。

 

「リクエストなんてしてるのか?ぜいたくな奴らだな」

 

俺は二人が自分から言ったと思ったが、エルは首を振った。

 

「いいえ、私が聞いたのです。好きな物を食べたほうが、元気になるかと思ったので」

 

確かに好きな物のほうがいいとは思うが、病気が治りやすくなったりするのだろうか。

 

「でも、栄養の面も考えたほうがいいんじゃないか?」

 

「栄養の面でも考えました。バゲットやフライドポテトは体のエネルギーになるのです」

 

そういえば学校でパンやいもは、体のエネルギーになる黄色の食品に分類されていたな。それに対して昨日のカニやイワシは血や肉になる赤の食品のはずだ。栄養が片寄らないようにということなのかもしれない。

それなら食べさせたほうがいいな。

 

「そう言うことか。作ってくるから待っていてくれ」

 

俺は病室から出た後魔法で、バゲットとフライドポテトの作り方を調べる。

バゲット···小麦3個、石炭1個 レンガ料理台

フライドポテト···いも5個、石炭1個 レンガ料理台

どっちも素材はあるな。だが、レンガ料理台がないと作れないようだ。レンガ料理台は料理用たき火1個とレンガ5個、鉄のインゴット1個で作れるはずだ。

調理部屋に料理用たき火があるし、鉄のインゴットはないが、さびた金属で代用できるだろう。

 

「あとはレンガを取ってこないといけないな」

 

レンガは農業の記録があった場所の近くにたくさんあったな。今すぐ取りに行くか。ついでに、さびた金属も大量に集めてこよう。

俺は旅のとびらがある場所に向かった。その途中、ノリンが話しかけてきた。

 

「なあ雄也。ちょっとお前に相談があるんだ」

 

メルキドでもあったが、旅のとびらに入ろうとすると頼みごとをされることが多い。探索のついでにしてきてほしいのだろうが、長い話になって探索の時間が短くなってしまうことがある。

 

「どうしたんだ?あんまり長い話はするなよ」

 

「この前不謹慎なことを言っても怒らなかった雄也なら、バカにせずに聞いてくれるかもしれないと思ってな」

 

バカにされるかもしれないってことは、またふざけた話ってことか。俺はそう言う話が好きなので、今回も聞くことにした。

 

「バカにしないから言ってくれ」

 

「雄也。実はオレ、頭がよくなりたいんだ」

 

ノリンはかなり意外なことを言った。理由は分からないが、ノリンはそんなことを考えていたのか。

 

「それで、魚をたくさん食べて頭がよくしようと思ってんだ」

 

確かに、魚を食べると頭がよくなるって地球でも言われているな。だが、ノリンはいつも魚を食べているはずだ。

 

「お前はいつも魚を食べてるだろ?」

 

「だけど、今調理部屋にあるたき火じゃ、あんまり上手く料理できないんだ。旅のとびらの先にはもっとうまい魚もいるはずなんだけど、上手く食べられないと意味がないからな」

 

ノリンは十分料理が上手いと思うんだけどな。どれだけ料理が上手くなりたいんだ?でも、調理用たき火よりいい調理台にしたいというのは、俺も同じことを思っていた。

 

「それなら、俺が今作ろうとしているレンガ料理台ってやつがある。それでいいか?」

 

俺がレンガ料理台のことを話すと、ノリンはうなずいた。

 

「ああ、料理しやすい奴ならなんでもいいぜ!頼んだぞ」

 

そして、俺はレンガ料理台の素材を集めるため、赤色の旅のとびらに入っていった。レンガがあるところまでは、30分ほど歩けばつくはずだ。

俺は途中にいるぐんたいガニやじんめんじゅと言ったモンスターたちを避けたり、緑色の植物を集めたりしがら、密林の奥へと進んで行った。

 

「そろそろあのレンガの遺跡に着くな」

 

水に濡れながら歩き続け、さっき行ったレンガで出来た遺跡までたどり着いた。建物や地面がほとんどレンガで出来ていて、全部で何千個かはあるだろう。

 

「遺跡を壊すのは良くなさそうだが、仕方ないか」

 

昔の遺跡は大事にしたほうがいいと思ったが、もうここに住んでいる人はいないので、俺はあまりためらわずにレンガのブロックを5つ集めた。

俺はそこでキメラのつばさでを使ってろうと思ったが、もうひとつ気になることがあった。

 

「ノリンが言ってたが、ここら辺の海にはどんな魚がいるんだ?」

 

この密林の近くの海では釣りをしたことがないので、俺はどんな奴が釣れるか気になっていた。だが、ノリンや病人たちを夕方まで待たせるのもよくないので、1時間ほどだけ釣りをすることにした。

俺はレンガの遺跡のすぐ近くにある海に行き、つりざおの先を沈めた。

しばらくすると、イワシの時よりも強い反応があった。かなり大きな魚が釣れるかもしれない。

 

「何がかかったんだ?」

 

俺が釣り上げると、つりざおの先に大きなマグロがかかっていた。米がないから寿司は作れないだろうけど、刺身あたりには出来そうだな。

マグロの刺身···マグロ1匹

ビルダーの魔法があれば、俺でも作れる。

俺はマグロをしまい、釣りを続ける。それ以外の魚も釣れるかもしれないしな。

 

1時間くらい釣りを続けて、マグロ以外にもサケやタイと言った魚が釣れた。どれもイワシよりうまそうなので、病人の治療にも役立つかもしれない。

 

「ここは結構いい魚が釣れるみたいだな。今度ノリンも連れてくるか」

 

そろそろ午後になるので、俺はキメラのつばさを使い町に戻った。まずは、レンガ料理台を作らないといけないからな。

俺は調理部屋の料理用たき火を一度叩いて回収し、作業部屋に入った。

 

「早く作って、病人たちに料理を食べさせないとな」

 

そして、俺は木の作業台で魔法を使い、レンガ料理台を作る。調理用たき火とさびた金属とレンガが合体していき、メルキドでよく使っていたレンガ製の調理台になる。

 

「レンガ料理台になったな。さっそくバゲットとフライドポテトを作るか」

 

俺はレンガ料理台を調理部屋に置いて、エルから頼まれた料理を作った。そして、作った料理を病室に持っていった。

 

「エル、料理が出来たぞ」

 

「おお、ありがとうございます!さっそく食べさせてあげてください」

 

俺とエルは、料理を病人に食べさせる。お腹が減って動けない二人は、少しは元気になったようだ。だが、まだ完治はしなかった。まだ栄養が足りないらしい。

 

「まだ治らないか。あとどのくらい食べさせればいいんだ?」

 

「もうすぐ治りそうですが、完治にはとても栄養のある豪華な料理が必要です。今は患者様は眠っておられるので、また明日リクエストを聞きますね」

 

好きなものであって豪華な料理か···確かにそれなら飢餓の病は完治するかもしれない。明日になったらエルに聞きにいくか。

俺は病室から出て、ノリンにレンガ料理台が出来たことを報告しに行った。

 

「おい、ノリン!レンガ料理台ができたぞ」

 

それを聞くと、ノリンは大喜びで走ってくる。そこまで嬉しいことのようだ。

 

「これでたくさんうまい魚を食って、頭がよくなれるぜ!」

 

だが、なんでノリンはそこまで頭が良くなりたいと思っていたんだ?

 

「喜んでるとこ悪いんだが、何で頭が良くなりたかったんだ?」

 

「実はな、忙しいお前やエルの代わりに、オレたちがヘルコンドルに対抗するための武器を考えていたんだ」

 

そういえば最近、ノリンとケーシーとザッコが集まっていることがあったが、そう言うことだったのか。ヘルコンドルは飛んでいるので、射撃ができる武器がないと倒せないだろう。

 

「だけどオレ、バカだからよ。みんなの役にたてなかったんだ。だから頭がよくなりたくて、魚をたくさん食べようとしたんだ」

 

「そう言うことか。確かに頭がよくないと思い付けないかもしれないな」

 

ノリンたちもリムルダールを魔物から解放しようと頑張っている。みんなの協力があれば、必ずヘルコンドルを倒せるはずだ。

 

「とりあえず、ありがとな雄也!もし武器のアイデアをひらめいたら、お前にも教えるぜ」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

そう言うと、さっそくノリンはレンガ料理台の置いた調理部屋に行った。早く武器のアイデアが閃くといいな。

ノリンと話し終えてから俺は今日手に入れたさびた金属から武器を作るため、仕立て台のある部屋に入った。

 

「時間が空いたし、今のうちに鉄の武器を作っておくか」

 

俺がさびた金属に魔法をかけると、さびが落とされていき、剣の形に変化していった。

 

「このてつのつるぎもかなり強そうだな」

 

そのてつのつるぎは、炉と金床で作ったものと同じくらい輝いていた。これなら、だいたいの魔物は倒せるようになるだろう。

 

「あとは、みんなの分も作っておかないとな」

 

俺はさびた金属を10個くらい手に入れており、みんなの武器も作れそうだ。

ゲンローワのためにてつのつるぎ、ゆきのへと俺の分のてつのおのを作った。今病室で寝ている5人の中にも戦える人がいるかもしれないが、そいつらの分は治ってから作ろう。

俺は武器を完成させた後、まずゲンローワにてつのつるぎを渡しに行った。

 

「おお、雄也よ。ちょっといいかの?」

 

すると、ゲンローワの方から先に話しかけられた。どうやらゲンローワも俺に用があったらしい。何かと思っていると、ゲンローワは一枚の設計図を見せてきた。

 

「何だ、この設計図は?」

 

その設計図は、木でできたさくの中に、いろいろな植物が植えられているものだった。

書かれている植物は、まめと小麦といもの3種類だった。

 

「雄也から農業の記録を受け取った後、作物を育てるための農園の設計図を書いたのじゃ。お主と共に作りたくての」

言われてみると、植えられている植物は、みんな食べられる物だった。二人の患者の治療にも役立てたいし、今日のうちに植えたほうがいいだろう。

 

「ああ、分かった。俺が調合ツボで植物を種に加工してくる。ゲンローワは畑の土を用意してくれ」

 

今回もいつも通り、俺が必要なものを作り、ゲンローワに土ブロックで畑の形に組み立ててもらう。俺はそうしようと思っていた。

 

「いや、植物を加工するのはわしがやる。お主は木のさくやくまでも作る必要があるじゃろ?」

 

そういえば、畑を囲むためのさくや、土を耕すためのくまで、まわりより1メートル高い場所にある畑に登るための木のかいだんも必要なのか。確かに種を作るのはゲンローワに任せておいたほうがいいな。いつもとは違う分担の仕方になった。

「じゃあそうしよう。俺が畑も作って耕しておく」

 

土ブロックを積むのも何日かぶりな気がするな。

 

「おお、頼んだぞ!」

 

そして、俺は作業部屋、ゲンローワは調合室に入って行った。作業部屋で俺は、木のさくとくまでの作り方を調べる。

木のさく···ふとい枝5個

くまで···ふとい枝4個

どちらもふとい枝からできるようだな。木のさくは18個も必要なので、一度に大量にできればいいんだが。

俺は最初に木のさくを作っていく。一個しか出来ないのではないかと思ったが、一度に10個作ることが出来た。木のかいだんは最初にリムルダールに来たときに木の作業台のある高台に上るためにあったやつを使えばいいな。今はその高台は整地してしまっているので階段が必要なくなっていくつかポーチの中に入れてある。

「10個もできるのか。なら、もう1セット作ればいいか」

俺はもう10個木のさくを作り、その後に土を耕すためのくまでを作る。それにしても、くまでで土を耕すというのは、いまいちしっくりこない。昔のアレフガルドでは普通だったのだろうか。

 

「これで木のさくとくまでが出来たか。後は町の空いているところに、設計図通りに土をおかないとな」

 

俺は作ったものをポーチにしまい、町の西側の空いているところに土を置いていく。

土は33個必要で、そのうちの13個を畑にすると設計図に書いてある。耕すのは大変そうなので、俺は先にまわりに木のさくや階段を設置することにした。

最初に木のかいだんを置いて登り降りできるようにしていると、後ろからゆきのへに話しかけられた。

 

「なあ、雄也。何を作っているんだ?」

 

そういえば、ゆきのへやみんなには農業のことは話していなかったな。

 

「ゲンローワから畑を作ろうと言われてな。その畑の土を置いているんだ」

 

「もしかして、農業って奴か?」

 

どうやらゆきのへは農業というもの自体は知っているようだが、実際にしたことはないらしい。

 

「ああ、今日農業の記録って言う奴を手に入れてな。それがあれば作物を自分の手で育てられるらしいんだ」

 

俺がそのことを話すと、ゆきのへは喜んで手伝おうとした。

 

「ならワシにも手伝わせてくれ。実はワシはな、そろそろ鍛冶屋を引退して、農業をして暮らそうと思っていたんだ」

 

鍛冶屋を引退して農業をする···か。確かにゆきのへはもう50代後半くらいだろう。ゆきのへとは、リムルダールで別れることになるかもしれない。

 

「それなら、ゆきのへはこの設計図に書かれた場所を耕してくれ」

 

俺はゆきのへに設計図を渡し、畑のまわりに木のさくを置いていった。ゆきのへはかなりの速度で畑を耕していき、俺が木のさくを全ておくのと同じくらいの時に、13個の土ブロックを耕し終えた。後はゲンローワが種を作るのを待つか。

 

「これで全部耕せたぜ。後はどうすればいい?」

 

「後はゲンローワが種を持ってくるのを待つしかないな」

 

ゲンローワはもう少し時間がかかるのかと思ったが、少し話をしているとすぐに出てきた。

 

「雄也よ、種を作ってきたぞ!ん?ゆきのへも手伝っていたのか?」

 

ゲンローワはゆきのへに気づいて話しかけた。

 

「ああ、そろそろワシは鍛冶屋を引退して農業生活を送ろうと思っていてな」

 

リムルダールの空を晴らした後は、二人で農業をしていくことになるだろう。

 

「そうか。ならゆきのへに雄也よ、一緒に種を植えようぞ」

 

俺たちは3人で作物の種を植えていった。3人で植えたためあまり時間はかからず、まめと小麦を5個、いもを3個植えて、設計図通りの農園ができた。

農園が完成すると、ゆきのへとゲンローワはとても喜んだ。

 

「ついに道具だけでなく、生きた植物まで作れるようになったのう」

 

「ああ、明日どのくらい成長しているか楽しみだぜ」

 

俺も、明日どんな感じになっているか気になるな。大きくなってるといいんだが。

その日、もうすぐ日が暮れる時間だったので、俺はゆきのへとゲンローワに作った武器を渡し、寝室に入った。

今日はとても忙しかったので、俺はすぐに眠りについた。


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